はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『特救指令ソルブレイン』感想11

◆第19話「亀ちゃんと探偵娘」◆ (監督:石田秀範 脚本:扇澤延男)
後に<平成ライダー>シリーズで主力を務める事になる、石田監督のデビュー回。
ううーん、全体的にテンポが悪いというか、おかしい。加えて台詞回しも変だし、筋もぐちゃぐちゃだし、扇澤脚本のアベレージを考えるとここまで出来が酷いというのはなかなか考えにくいのですが、監督の経験不足も含めて、現場のアレンジと元脚本の相性が良くなかったか。
脚本はシリアスのつもりで書いていたのに、監督がコメディだと思って演出した、という可能性もあるレベル。
ソルブレインに出向していた超分子科学の優秀な技術者・谷内が、自宅ポストに仕掛けられていた爆弾により死亡。捜査を進めるソルブレインは、事件前夜に谷内の家を訪れていた、妹を名乗る少女の存在を知る。だが谷内に妹はいない筈……彼女を追うソルブレインだが、少女の正体は、亀吉につきまとっていた自称探偵小説作家の卵・井上一二三。実は谷内は幼い頃に親戚の家に養子に出されており、一二三は間違いなく実の妹であった。亀吉に付きまといながら事件を追う一二三は、谷内の師・矢部博士を犯人ではないかと疑う。そう、事件の真相には、研究の功績を独り占めにしようという矢部の狂気と暴走があった……。
ゲストキャラの一二三が色々な意味で、当時人気のあったタレント、とかでもないと納得の出来ないレベルなのですが、調べた限りでは特にわからず。
亀吉の好みにどストライクだったのか、亀吉が普段死ぬほどもてないのか、写真を一度撮っただけで(しかもメインはドーザー)一二三への亀吉への転び具合が、ほぼ洗脳。なんかもう、俺に話しかけてくれたからあの娘は俺が好き、とか、中学生か、みたいな具合なのですが、その辺りは台詞で補強するか(「好み」だったら「好みだ」で良いわけで)、そうで無ければ一目惚れみたいな強調をしないと、物語の主軸にも関わらず説得力が無さすぎます。玲子さんが拳銃を持ち出して後ろから亀を撃ちかねないレベル。
やにさがって本部長に、事件について色々聞かれて喋っちゃいましたーてへっ、なんて報告するのも頭おかしいですし。一服盛られた可能性も考慮したい。
クライマックス、分子活性化システムの中にに入れられた一二三を救う為に、亀吉が工具を用い、玲子が酸素吸入器でサポートし、ブレイバーとドーザーが炎と瓦礫を防ぎ……と各キャラがそれぞれの得意分野で分業をする所は良かったです。
せっかくの亀吉スポット回だったのですが、上記の一二三との関係性における心情描写がすっ飛んでいるので、全てが唐突すぎて、スポットというほどスポットにならなかったのは残念。
そして増田はどうして、トマト色のシャツ。


◆第20話「涙の手錠を打て!」◆ (監督:石田秀範 脚本:山田隆司
伝説のバズーカ使い、日本上陸
自衛隊相模基地が謎の男に襲撃され、バズーカ砲や爆薬20キロなど、多くの武器が奪われる。そしてその武器を用いたと思われる、殺人事件が立て続けに発生。殺された大学生達の繋がりを追っていたソルブレインは、彼等が数日前に轢き逃げによる殺人容疑で事情聴取を受けていた事を知る。
実際に留学生を轢き殺していた3人の学生だったが、最後に残った一人・如月の父や別荘管理人の証言により、偽のアリバイが証明されていた。如月の父が代議士であり公安委員会の幹部だった事もあり、事件は闇に葬り去られようとしていのだ……しかし、それを許さぬ一人の男が居た。死亡した留学生の養父であり、FBI教官。FBI留学時代の大樹の師にして、隠密行動、格闘術、砲撃、そして爆薬のプロフェッショナル、その名は、デビッド・コスギ!!(演:中田譲治!)
何故バズーカ?
そしてFBIに留学したら、どうもSWATに放り込まれたっぽい大樹さん。
きっとロス市警。
別荘の管理人を拷問し、アリバイが偽証であったという真実を知ったコスギは、娘の復讐の為に轢き逃げ犯の二人を殺害、最後の一人・如月に標的を絞っていた。
一方、闇夜のバズーカ砲撃、冷蔵庫の手榴弾トラップという殺害の手口、自衛隊を圧倒する格闘術からコスギの存在を思いだしていた大樹は、轢き逃げの被害者が彼の養女である事、そして遺体引き取りの為にコスギが来日していた事から、復讐鬼となった彼が闇に蠢いている事に気付いてしまう。
回想シーンの大樹が、髪をおろしていて面白い(笑)
にしても、まさかこの数年後に、戦隊に本物のコスギ父子が出演する事になろうとは、恐らく誰も夢にも思うまい。
正木から捜査を外れるように命令される大樹だが、警官としての心構えを教えてくれたコスギと自ら対峙する事を決意する。彼の教え――犯罪者の心の哀しみに、手錠を打つ為に!
ソルブレイン』になってから珍しく、大樹がヒーローとしての意思を貫く為に正木の制止を振り切る、というシーン。前回ちょっと書きましたが、こういうシチュエーションはもっと早い内に入れておいた方が良かったとは思います。
一足早く如月親子の屋敷に向かった正木らは如月息子の身柄を確保しようとするが、父親に拒否される。だが既に、屋敷の庭にはトラップが仕掛けられていた! トラップを陽動に如月息子をさらうコスギ。駆けつけた大樹はブラスアップしてコスギを追うが、地雷コンボを受けて転がり回るソルドーザーすら倒すコスギだったが、最後はブレイバーと撃ち合い、必殺のバズーカを取り落とす。ジャンヌらが如月息子を助けた時、しかし最後のトラップが発動! 仕掛けてあった手榴弾の爆炎に皆が包まれるが、ソルブレインはなんとか如月息子を助け出し、コスギを逮捕する事に成功する。
科学バンザイ
捜査官としての腕で勝ったと思うなよ?! そのスーツの性能だという事を忘れるな! みたいな。
ブレイバーとコスギの対峙シーンでコスギが「おまえは撃てない」と言うのですが、大樹の葛藤が描かれずにいきなり撃ち合いになってしまうので、心の問題ではなく、スーツ着ていたから大樹が勝った、みたいなシーンになってしまったのはちょっと残念。実際まあその通りではあるのですが、シーンとしてはそういう表現をしたかったのでは無いと思うので。
犯罪者に堕ちた師匠との対決、という、これで盛り上がらない筈がないエピソードで実際なかなか面白かったのですが、同時に、『ソルブレイン』の良くない部分も出た回でした。
“醜悪な犯罪者(如月親子)が始末されない”というのは構いません、むしろ、“醜悪な犯罪者だからといって殺していいわけではない”という事こそが、今作ではテーマであるべき(そうでなければ『必殺!』になってしまうし、それはそれで有りだけど、別の作品)で、親子は視聴者の誰も求めなくても、助けなくてはいけない。
しかし、であるならば、エンターテイメントとしては、他のカタルシスが用意されなくてはなりません
今シリーズには、それが欠けている事が多い。
如月親子の抹殺はソルブレインが止めました、そして如月息子は自分の罪を反省しました……というのは綺麗事になるかもしれませんが、エンターテイメントとしては必要であると考えます。時には苦いエピソードがあっても良いかもしれませんが、今作はその辺りのバランスが悪すぎます。どうも、作り手の求めるリアリティが、悪い方向に出ている。
そして、やるせない話の中にも前向きなメッセージ性が込められているならわかるのですが、そういうわけでもない。
今回で言うならば、“醜悪な犯罪者だからといって殺していいわけではない”という所から、真の正義とは何かを問うていかなければならないのに、悪びれない如月父を殴り飛ばし息子の首にクロー技を決めたコスギを止めた大樹は、その息子を突き飛ばし、
「おまえがコスギ教官のお嬢さんをはねなければ、おまえたち親子が素直に犯行を認め、自首していれば!」
と、むしろ私情丸出しで、自分のやるせなさを吐露してしまう。
そして大樹がそれを吐露したところで、如月親子は特に反省するわけではない。
ここで重要なのは、もはやコスギに納得してもらう事ではなく、如月親子に物語の因果応報としての一定の罰ないし償いをさせる所にあると思うのです。どうもそこを、履き違えている。
だから、すっきりしない。
それだったらいっそ、コスギを逮捕した大樹が激しく慟哭するシーンで終わるとか、そのぐらい突っ切ってしまえばむしろ納得できるのですが、妙に綺麗にナレーションで「苦い事件だけど、明日からまた頑張ろう」みたいにまとめてしまうのも、今作の悪癖。
筋は悪くなかっただけに、どうもこの、シリーズのテーマ的なバランスの悪さが気になります。
こういう時こそ、正木に「私が必ずあなた達の罪を暴いてみせる」とか言わせてしまえばいいのですが。そうする事で正木のヒーロー性も担保されるし、涙を飲んで法の上の正義を執行した大樹と、そんな部下の為に改めて法に基づいて真実をあぶり出そうとする正木、というのが対比されて二人ともに浮き上がるのですが……こういう時に限って、正木も一緒にもやもやしているし。
もちろん私の好みの問題もありますが、『ソルブレイン』はどうにもこう、ツボから微妙にズレ続ける。
さて次回、


「あのギガストリーマーが帰ってきた」

えー、なんだろうこの、村人Aが封印を解いて眠っていた魔王が甦ってしまいました、みたいな気持ちは。
ま、それはさておき、

「そう、待ってたぜ、俺達の!」

……竜馬さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!
超、わくわく。