◆第19話「その男、ゼロのスタート」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
「俺は、桜井、侑斗だ」
愛理の消えた婚約者と同じ名を名乗る謎の青年に珍しく突っかかる良太郎だが、きつい態度であしらわれる。
「とにかく、過去の桜井侑斗と関わるな。でないと、時の運行が乱れるぞ」
果たして彼は何者なのか……良太郎を追い払い、一人になった侑斗に「意地が悪い」と呼びかける声。侑斗、自分の顔を殴る。
しばらく平然と歩いていたが……やはり、痛い。
「侑斗、大丈夫か」
姿を現す、黒いローブ姿のイマジン・デネブ(声:大塚芳忠)。
「おまえのせいだ、バカ!」
侑斗、イマジンにいきなりボディブレス……からプロレス技。本気で喧嘩しているというよりは一気にじゃれている感じになりましたが、素は間抜けという事なのか、桜井侑斗。キャラクターとして意図的なのかはわかりませんが、まだ、脚本・演出・役者、が噛み合っていない様子で、必要以上に落ち着かないキャラになっている感じ(^^;
一方、オーナーに3年前で停車してほしいと頼むが断られる良太郎。消えた桜井侑斗と同一人物である事を匂わせる侑斗であったが、良太郎には、とても同じ人物とは思えない。それを確かめる為にも“3年前に居た桜井侑斗”と接触したいと考える良太郎であったが、時間の指定されたチケットを持っていない限り、それは許されない事なのであった。
と、愛理さんが絡むので、珍しく我を強く出す良太郎。
この辺り、愛理さん絡みの件とそうでない時とで良太郎のアクティブさが大きく変わるのは、うまく物語の中で積み重ねてきて、効いています。またそれが、“喪失”を嫌うという、良太郎が電王として戦う理由の一つと繋がっている、というのもお見事。
桜井侑斗の顔を見て、良太郎が判断できない、というのはちょっとわかりませんが。若い頃は知らないけど顔立ちは似通っている気はするけど性格違いすぎて同一人物とは思えない、ぐらいの感じなのか。
なおここで、桜井が天文学者であった事、ミルクディッパーが星の本だらけなのは桜井の影響であった事が判明。
良太郎が落胆している頃、問題の桜井侑斗は、デネブが破いたお気に入りの上着の替えを買おうと、服屋を訪れていた。
「デネブ、8500円」
イマジンが、財布を握っている。
「高い」というデネブと「継ぎをあてた服で“あの店”に行けるか」、と試着室の中でもめる侑斗とデネブ……と冒頭に続いて、ここもコメディタッチ。コメディシーンは、コメディシーンだよ! と物凄く強調する演出にしていますが、個人的には、さらっと笑わせてくれる方が好みで、ちょっとやりすぎ。
デネブとの銭闘を制し、無事に上着の替えを購入した侑斗が向かったのは“あの店”……ミルクディッパー。カウンターでやかましい羽虫ーズ、山と積まれた“忘れ物”を目に、「けっこう楽しくやってんじゃん」とこぼす侑斗は超甘党らしく、愛理の入れたコーヒーに砂糖を山のように追加しまくり、愛理に止められる一幕も……というか明らかにコーヒー飲めない人の反応なので、無理して大人ぶって頼んでみた感。
「あの……どこかで……。もしかして………………良太郎のお友達?」
「全然」
愛理に対しても態度の悪い侑斗であったが、この前のシーンで、お洒落してからミルクディッパーを訪れている事はハッキリしているので、悪ぶっている、という立ち位置なのでしょうか。大学デビューしたい桜井さんと、世話焼きのおかん(デネブ)、みたいな。
くしゃくしゃの千円をテーブルに残して店を出た侑斗は、桜井問題についてハナと検討していた良太郎と行き会う。更にそこに、おつりを持って追いかけてきた愛理がやってきてしまう。
「俺の名前は」
「待って! 姉さん早く」
「さくらい」
「いいから戻ってよ! 関係ないから」
愛理の前で名乗ろうとした侑斗に、愛理を強引に店に帰らせる良太郎。
「どうして姉さんに……」
「問題あるか。おまえも過去にいるあいつと、顔合わせたんだし」
良太郎が3年前の時間で桜井と遭遇した事……その為、こそこそするのを止めて、“婚約者”に会いにきた、と語る侑斗。
はたして侑斗は、“桜井侑斗”と本当に同一人物なのか?
「何も考えてないっていうか……こういうの、おめでたいっていうんだっけ」
姉すら嘲るような口調に、“怒り”を見せる良太郎。そして侑斗の態度が我慢ならないモモタロスが憑依して、M良太郎参上。イマジンの匂いがする、というモモタロスの言葉に応え、侑斗もデネブをその身に憑依させる。
「言っとくけどデネブはおまえより強いぞ。後悔するなよ」
……あー…………まー……Mさんだからなぁ。
「ふんっ、おもしれぇ。どれだけ強いか知らないが……やるか」
D侑斗と対峙するM良太郎だったが、
「いや、謝る」
デネブ、侑斗の態度の悪さを謝罪(笑)
侑斗は本当は心優しいけどちょっとひねくれちゃってるだけなんだ友達も居ないし、とむしろ侑斗の友達になってほしい、と飴を配りだすD侑斗。たまらず侑斗が表に出てくるが、ここでデネブが砂ではなく実体化可能な事が目の当たりになり、これはイコール「契約している」という事だそう。良太郎が実体化デネブを見て「完全体」と口にしますが、この辺りの話が台詞になったのは初めてか。
おかんに家での恥ずかしい姿をばらされている状態の侑斗はデネブを引きずって撤退していき、そこへハナから、イマジンらしき存在が公園で暴れているとの連絡が入る。M良太郎が公園に向かうと、そこではジェリーイマジンが、契約者の男・天野晃平にタイムカプセルを掘らせようとしていた。
天野の願いは「遙香が埋めたタイプカプセルを掘り出したい」だったが、たまたま小学生の女の子が公園の砂場に埋めていたタイムカプセルを掘り出してそれで契約終了だ、と天野を触手でびしびし叩きまくるという、いまだかつてない強引なイマジンに、モモタロスすら若干引き気味。
自分ルール活用度の高いジェリーイマジンはソード電王の前口上の最中に攻撃(笑) 更に強力な電撃を浴びるソード電王だったが、良太郎の機転で狭い所に誘い込んで反撃。しかし液状化によって逃げられてしまう。倒れていた天野の為に救急車を呼んだ良太郎の前に再び姿を見せる、侑斗。
「優しいな、とか言わなきゃいけないのか」
「ちゃんと話してくれないかな、君のこと」
だが、侑斗は「時の運行を守りたいなら、桜井侑斗に関わるな」の一点張りで、自分の事を話そうとはしない。
……まあ、良太郎の周りに、未だかつて、丁寧に状況を説明してくれた人など一人も居た事がありませんが! ある意味、何も考えずにぽろぽろと重要な事を喋るリュウタロスが、一番情報源かもしれない(笑)
そして侑斗の背後に現れる、新たなる時の列車――!
「野上、時の運行を守るってのは人助けとは違うんだよ。中途半端に時間の中うろうろするな、いいな」
緑ベースで、先頭車両が牛っぽいデザインの時の列車に乗り込み、侑斗は姿を消す。
その列車の名は、ゼロライナー……。
◆第20話「最初に言っておく」◆ (監督:舞原賢三 脚本:小林靖子)
給仕をするデネブ。
良太郎が可哀想だと、膝で詰め寄るデネブ。
和食作ったり、つくろいものも出来たり、高性能だなぁ(笑)
Mさんもこういう、戦闘以外の一般スキルで勝負してみたらどうか。
そんな侑斗とデネブが、なんと直接デンライナーに乗り込んでくる。良太郎に釘を刺しに来たという侑斗と、「侑斗は心の中ではよろしくって」と飴を配って歩いて、追い出されるデネブ。更にもめ要員として、一緒に追い出されるモモとキン(笑) 3人はしばらく通路で懇親会。……というか前回今回と、キンの扱いが割と酷いのですが、実際けっこう迷惑なので仕方がない。
時の運行とは関係なくいい人属性で動き、弱いし運も悪いし、と良太郎をぶったぎる侑斗。こんなやつが電王で困ったものだ、と振られて、一瞬口ごもるチャンプ。
チャンプ! それは酷いよチャンプ!
そこに現れたオーナーは、ゼロライナーはある消えた時間とともに消滅した筈と尋ねるが、侑斗によると、ゼロライナーは「ある事の為に預かっただけ」らしい。侑斗の去った車内でハナはオーナーに“ある消えた時間”が“かつての自分の時間”かと問うが、オーナーはそれには答えない。
まあ、時の列車(デンライナー)そのものが、“そういうものだから”的なギミックなので、新しい列車が出てきても何ともかんとも、という所ではありますが、色々と全方位に爆弾を投げまくる侑斗。
そしてその火花は本人も思わぬ所に、引火、誘爆。
「カメちゃん……あいつ良太郎じゃないのに、お姉ちゃんの匂いがしたよ。――殺っていい?」
「まあまあ。今度愛理さんに聞いとくよ」
どうしてリュウタロスは追い出されないのかと思ったら、この仕込みでしたか(追い出したくても追い出せないという判断だったのでしょうが)。
背後で刺客誕生などつゆ知らず、これで野上も余計な事はしないだろう、とゼロライナーで一息つく侑斗だったが、へこみすぎてイマジン退治もしなくなるかも、というデネブの言葉に、自ら病院の天野に話を聞きに行く事に。
1年前……結婚する筈だった恋人・遙香とタイムカプセルを埋めた天野。結婚を前にボクシングの道を諦め、サラリーマンとなった天野だったが、遥香が病死。遙香の形見となるタイムカプセルをどうしても掘り出したい天野であったが、1年前はそれほど重大な事とは思わず、カプセルを埋めた場所がわからなくなってしまっていたのだった。
「今日、二度もこの話をするなんてな……」
「二度?」
既に良太郎が天野の話を聞きにきていた事に驚く侑斗だったが、そこへクラゲが急襲。天野はさらわれ、触手折檻を浴びて無理矢理に、どこかの学生達が掘り返していたタイムカプセルを掘らされてしまい、契約完了。ジェリーイマジンは2006年3月12日。天野と遙香がタイムカプセルを埋めた日へと跳ぶ。
イマジンを追った良太郎(ソード電王、変身済み)は、一旦変身を解除して二人の生存を確認した後、カプセルを埋めた場所を確認。公園で大暴れするジェリーイマジンを止めようとするが、良太郎が“過去の桜井”に気を取られた隙に手痛い反撃を受けてしまう。
「バカだな。また余計な事してるから、そうなるんだよ」
そこへ現れる、“今”の桜井侑斗。
「たく、こんな所で一枚使わされるなんて、ホント迷惑。――変身」
侑斗は腰にベルトをはめると黒いカードを通し、その姿は、新たな仮面ライダー――アルタイルフォームへと変身する!
頭の線路を牛の鳴き声っぽい効果音と共にマスクが走ってくるアルタイルフォームは、ど派手かつ無意味な稲妻落としで電王との違いをアピール。最初、天候操作系の攻撃手段かと思ったのですが、全く無意味なパフォーマンス(笑)
しぜんをだいじに!
「最初に言っておく。俺は、かーなり、強い」
クラゲの触手をかいくぐり、大剣を振り回すアルタイルフォーム。更にデネブを召喚し、クラゲの触手を掴ませ(デネブ、感電無効でそれとなくMさんとの格の差をアピール)、攻撃手段を封じたところで滅多切りに…………いいのか、主役でないけど、ライダーがそれでいいのか?!
と思ったら、突然、「駄目だ」と触手を手放すデネブ。煽りでダメージを受けた怒りのアルタイルは、デネブにフライングラリアット、と侑斗はプロレス路線。
実は電撃が効いていたのかと思い来や、
「なんで放すんだよ!」
「駄目だ……卑怯すぎる!」
正座で相対して膝でにじり寄るデネブ(笑)
…………ちなみに感想書きとしては、劇中のキャラクターに同じツッコミをされると、割とダメージを受ける事を、ここに付記しておきたいと思います(笑)
「じゃあ、おまえやれ」と言われたデネブは、背後からアルタイルフォームに合体。その姿は肩にキャノン砲(デネブの両手)が付き、マントを翻すベガフォームへと転じる。ベガフォームは変身時に地面が沈み込む、というこれまた無駄パフォーマンス。
……て、これもあれか、プロレスの入場シーンとかのイメージなのかしら。
「最初に言っておく」
「て、おまえもかよぉ」
「胸の顔は、飾りだぁ!」
「……はぁ?」
(おまえ、なに言ってんの)
更に、
「落ち着けぇ。さっきの攻撃はこっちが悪かった。謝る」
「はぁ?」
「侑斗も心ではそう思ってるから」
戦場の空気を弛緩させ、崩壊させていくベガフォーム!!
だが、両肩にキャノン砲、剣をボウガンに変形させるその戦闘力は本物。ベガフォームはクラゲを圧倒すると、フルチャージの一撃で、葬り去るのであった。
戦闘終了後、疲労から膝をつく良太郎に歩み寄る侑斗。
「やっぱり駄目だな、おまえ。時の運行を守るのは人助けとは違うって言ったろ。おまえ弱いし運も悪いし、おまけに何もわかってない。行き当たりばったりでいい人やるな。迷惑だから」
侑斗の冷徹な言葉に、しかし立ち上がる良太郎。
「やらなきゃいけないと思ったら、やるよ。これからも。人助けとかそんなんじゃなくて、出来る事があったらやるだけなんだ。僕が電王になった時みたいに」
「おまえ……」
「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない。僕の知ってる桜井さんが言ってた。桜井さんが生きてるなら、僕は必ず連れ戻すよ」
実は20話にして、良太郎が、“戦う覚悟”に関して、決意表明を言葉にしたのは初。
2話において、
「なんだかよくわからないけど……やらなきゃいけない事だけは、わかった気がする」
と、流され気味に電王になる中で一応の意思表示はしていますが、少々唐突かつ命を賭けるには覚悟が弱めで気になっていたのですが、その背景に、愛理さんのみならず桜井さんの存在もあった事が判明。
大雑把に、旧来のヒーローものが無自覚に「正義」を謳っていたのに対し、現代にヒーローが成立しうるにはその背景となる個人的な理念なり欲求なりが必要ではないか、という思想性を持ち込んで、「正義」の見直しと立て直しに基づいて“ヒーロー物”を構築し直したのがポスト『仮面ライダークウガ』の《平成ライダー》シリーズにおける基本理念なのですが、野上良太郎という主人公は、もちろん根っこには良太郎自身の「良心」と「優しさ」というものがあるのですが、野上愛理と桜井侑斗という、二人の人物の影響を大きく受けていた、という背景が明確にされました。
それは一つには、
喪失への悲しみと憤り――それを取り戻したいという想いであり(この台詞はモモタロスの使い込みを受けて、良太郎の事のように語られているけれど、愛理の事を念頭に置いているのは間違いない)、もう一つは恐らくかつての良太郎を励ましたであろう桜井侑斗の、
「僕の事はどうでもいいよ。慣れてるし。でも、泥棒とか、人にお金を要求したり、取り上げたり、好きじゃない。 大切なものとか……お金とか無くすのって、辛いよ」
(4話)
という言葉――。
「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない」
故に野上良太郎は自分の良心に従い、何かを失わせない為に、己の出来る事をやり続ける。
現代――2006年で確認した木の根元を掘り返す良太郎。そこへハナもやってきて、二人はタイムカプセルを掘り出すと天野にそれを届ける。中に入っていたのは、天野が捨てた筈のボクサーグローブと、ボクサー時代の写真だった……。
「私はね、良太郎が電王で、良かったと思ってるよ。本当にそう思う」
……て、チャンプのヒロイン度が上昇した?!
チャンプ、誰に吹き込まれたか知らないけれど、ヒロイン度を上げるには時に出番にこだわらず、ピンポイントで全力攻撃を仕掛ける事と学習した模様。
一方ゼロライナーでは、折れず曲がらず捻れない良太郎に、侑斗が苛立っていた。苛立ち紛れにデネブにヘッドバットするもむしろ自爆ダメージを受け、座席で体育座りモードに入る侑斗、その横で生真面目に謝るデネブ。
奇妙な二人と新たな時の列車――そして仮面ライダーが加わり、物語の謎は加速していく。
次回、愛理さんを巡る、男の戦い勃発!…………?
桜井ライダーの名称は知っているのですが、まだ劇中で名乗って……ないですよね? 聞き落としていなければ。出来る限り、重要な固有名詞は劇中で使用されるまで使わないという自分ルールがあるので、早く名乗ってくれないと、いちいち「アルタイルフォーム」と書くのが面倒くさいゾ(笑)
……まあそれ言うと「仮面ライダー」はありなのか? という話になるのですが、これはもう、メタ的に仕方ないという事でその辺りは適当で、はい(おぃ)
ところで「デネブ」って何だっけ、と思ったら、はくちょう座の一等星の事で、それで、「アルタイル」と「ベガ」で夏の大三角形で、星繋がりという事なのですね。
なるほど、ゼロライナーとアルタイルフォームは牽牛という事なのか。
……それはそれとして、緑+牛というと、祭忍ギュウマ(『世界忍者戦ジライヤ』)を思い出さずにいられないわけですが(笑) デネブは世界忍者だったんだ!(待て)