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『仮面ライダーブレイド』感想3

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第5話「ヒロイン・サバイバル」◆ (監督:長石多可男 脚本:今井詔二
広瀬さんがもうちょっと可愛かったら、色々こう、もう少し違うのではないかな、と思う今日この頃。現状、悩めるヒロインポジションなのですけど、この率直なところ見た目が可愛くないのと、演出や脚本で可愛くしようという努力が一切感じられないのはどうか。
そんな眉間に皺系ヒロイン広瀬の前で炎上し、灰となった囚われ系ヒロイン烏丸所長……だが現れたか弱い系ヒロイン橘は、現場に越されたマグネシウムの粉から、それが発火装置を使ったトリックであり、燃え上がった烏丸はバーチャル映像、本物の烏丸の身柄はどこかに運び出されたに違いない、と推定する。
なんかどうも脚本家の中で、「バーチャルだ」と言うと色々解決する事になっている模様(^^;
一方、カリスと激突するブレイドであったが、烏丸炎上の件を小太郎が伝えに来た事で水入り。カリスはいずこかへと姿を消す。……ライダー同士が殴り合っている所に平気で話しかける小太郎の脳にも、治療が必要かもしれない。
亡くなった人の声が聞こえるという噂の、呼子の洞窟へと行きたがるほだし系ヒロイン天音だったが、人妻系ヒロインである母に拒否され、小太郎の元へ。最初は断る小太郎だったが、父親の声を聞く為に一人でもどうしても行く、という天音に折れて、一緒に行く事に。
この際、ちゃんと正面から、噂はおそらく風の音や波の音を都合よく解釈した幻想である事、「行ったら二度とそういう事言って、お母さんを困らせない。約束できる?」と小学生の女の子に話せる小太郎は、なかなか立派。取材源とはいえタチの悪い無職二人を同居させていたり、劇中で最も器の大きい人物なのかもしれません。
そこへにっこり笑って、何故か呼子の洞窟への同道を申し出る剣崎。
「俺も行くよ」
来なくていいよ!
どうしてこの男は、身内のデリケートな話に首突っ込もうとしますか。
結局3人で洞窟へ向かう事になるが、そこへ天音を連れ戻そうとやってくる始。
「良かったら一緒に行くか、君も」
「好きじゃないんです、人とつるむのが」
「ああそう! 悪かったね俺たちは、つるんでばっかりで!」
今日もひたすら、喧嘩を売り歩かずにはいられない剣崎さんであった。
道中、剣崎の両親は火事で死んでいた事(初回からイメージシーンで何度か挿入)、
「その日からなんだ……俺が欲張りになったのは。みんな助けたい、全部俺の手で助けたい、って。そんな能力もないんだけど」
という辺りが語られるのですが、毎度の事ながら、キャラクターの肉付けがそれ単独で突然挿入されるので、ついていくのが大変です(^^; そこで剣崎の背景を語るなら、出発前に始に憎まれ口叩かせて剣崎の性格悪いアピールを積み重ねなくていいと思うのですが、とにかく流れがちぐはぐで、物語進行の為の会話と設定説明の為の台詞が分裂しすぎて、主人公の人格がひたすら安定しません。
というか、小学生の女の子に、重い砲弾を投げ返すな。
立ち入り禁止の鉄条網をくぐって呼子の洞窟へ入った3人だったが、洞穴内で人々を襲っていたムカデアンデッドの毒液を浴びて天音が倒れてしまう。剣崎はブレイドに変身して戦いムカデは逃げるが、天音が原因不明の高熱を出し、二人は慌てて病院へ。
役に立たない二人は始さんにマウントポジションで泣くまで叩きのめされるべき。
病院で二人の口からムカデアンデッドの存在を聞いた始は「抗体が必要だ」と走り出し、説明を求める剣崎を殴り飛ばす。アンデッドの毒を治療するには、生きているアンデッドから抗体を取り出さなくてはならない。しかし、定宿にしているどこか不幸系ヒロイン女医さん宅で原因不明の病気が連続しているという情報にアンデッドの存在を感じた橘ギャレンが、いちはやくムカデと交戦状態に入っていた。
ギャレンにムカデを倒されると抗体を手に入れる事が出来ない……急ぐ始だったが、大丈夫、その人、弱いから。
カリスはギャレンとムカデの戦いに乱入し、始を追っていた剣崎もその場に辿り着く。自分の体を治すにはアンデッドを倒して封印し続ける事が必要だ、と是が非でもムカデを倒そうとするギャレンを止めるべく、ブレイドに変身する剣崎。二人が後方で掴み合いを演じる中、カリスは必死に、抗体の在処を探り出そうとしていた。
……て、抗体って、血液とか体液の中に含まれるものではないのでしょうか? ムカデ抗体袋みたいなものがあるのか。


◆第6話「エスケープ・フロム・農場」◆ (監督:長石多可男 脚本:今井詔二
カリスさんは抗体袋を発見(結局、触角みたいな所でした)・入手すると用済みとばかりにばっさりアンデッドを始末して封印し、殴り合っている剣崎とか放置して病院へ。届けられた抗体により天音は無事に助かり、一安心。剣崎は状況証拠としては真っ黒な始を問い詰める。
「言ってくれ、君なんだろ、さっきのライダー」
「知りません、なんの話です」
「じゃあ言うぞ! 天音ちゃんにおまえがライダーだって! そして何度も俺と戦っていると!」
どこまで性格悪いのか、剣崎。
さいてー、剣崎、さいてー。
後むしろ最後のは、「じゃあ悪いのは剣崎」という事になると思うのですが。
「そんな事を言ってみろ……俺は貴様をぶっ殺す!」
恫喝、そして、笑顔。
「嫌われるよ。お喋りすぎる奴は。誰にだって触れられたくない事がある。忘れるんだな」
……ごめんなさい、その男は、もう充分に嫌われ者なんです。
(なぜだ……なぜ俺は、この子の事になると冷静さを失う。人間のような感情、わからない)
病室で天音を見つめて独白する始/カリスは、これまでの諸々の台詞や緑の体液など、完全に“人間ではない”という事でいい模様。そして彼が雪山で最期を看取ったとおぼしき天音父との関係やいかに。
天音が持ち直して一安心で農場へ戻った野郎二人だったが、今度は父親の事をメモに書き残して、広瀬が家出。二人は広瀬を探して街へと向かい、その広瀬は京浜東北線に乗って大船の方へ去って行く烏丸所長を発見する。その烏丸は橘さん懇意の女医さんに接触し、伝言を託す。
「ライダーシステムに不備はない」
システムが適合者の肉体にダメージを与える事はない。だが、着用者の恐怖心が適合レベルによっては破滅のイメージを植え付けてしまう事はあり、それが臓器に精神的影響を与える可能性は存在する。
…………それは、不備というのでは(笑)
破滅のイメージを乗り越えるには恐怖心を取り除くしかない……そう告げる烏丸だったが、突如、謎のジープとトラックに追われて逃走する。
一方、剣崎と小太郎は港で広瀬を発見。自分の父が解放したアンデッドが次々と人を殺しているのかもしれない……いじけて埠頭で座り込んでいた広瀬に、またなんか、訥々と演説を始める剣崎さん。えーと、アンデッドが悪い事をしたら痛みに変えろとか、バネにしろとか、だから一緒にアンデッドを倒そうぜ、とか、そんな感じで。
そこへ着信する、烏丸からのメール。
「逃げろ。危険が迫っている」
直後、烏丸を追っていたのと同様とおぼしきジープとトラックが3人を取り囲み、謎の部隊が姿を見せる。問答無用で襲いかかってくる覆面部隊を迎撃する剣崎達だったが、広瀬と小太郎を逃がして剣崎は捕まってしまう。
ここで逃げ惑っているだけだと本格的に役に立たなくなる事を危惧されたか、アクションを見せる広瀬さんですが……広瀬さんが強いというより、覆面部隊の練度低すぎに見えるのが何とも。というか、どうして特殊警棒持って銃も構えているのに、素手で剣崎に襲いかかって殴り飛ばされているのか(笑)
バランス的にアクションシーンを入れたい、剣崎は捕まえたいけど二人は逃がしたい、故にいきなり本気で襲えない、と、色々なしわ寄せが来た感じに。
「ライダーシステム2号、ブレイドを確保しました」
覆面部隊は拘束した剣崎を連れ去り、始に精神的接触を行っていたり、橘と女医さんを覗いたりしていた、謎めいたサングラスの男に連絡を取る。そして烏丸から間接的に「この臆病者の、×××××野郎、そんなにライダーシステムが怖いなら、家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな、HAHAHA!」的な罵倒を受けた橘は、夜の街をフラフラしていた所、そのサングラスの男に出会う。
浮いた!
火を噴いた!
思わず橘はギャレンに変身して銃撃戦を開始するが、そんな二人の戦いを物陰から始が見つめていた……。
果たして戦いの行方は、そして囚われの剣崎の運命や如何に?!
……まあ正直、剣崎は割とどうでもいいけど。
薄々感じていた事をこの5−6話で何となく確信を得たのですが、今作の大きな問題点の一つは、脚本家に着ぐるみへの愛がない。
怪人(アンデッド)がただのストーリー上の障害物であって、キャラクターになっていない。
これは別に声をつけて個性を出せ、というわけではなく、あまりにも劇中の扱いが悪い。なんか出てくる→人間を何人か殺す→ライダーにやられる、というだけで、存在感があまりに薄く、怪人を活かした展開が全くない。そして、敵役の存在感が薄いという事は、必然、それを倒すヒーローの戦いも盛り上がらないのです。
ヒーローと怪人は作劇上はあくまで補完関係にあって、怪人の存在感があるからこそヒーローの存在感も増すのであり、怪人の扱いがあまりに雑だと、ヒーローも光を放てません。
実際、ギャレンさんなど実にリアル時間で一ヶ月以上、何の役にも立ってないわけであり、これ一つとっても、作品の構成として大きな問題と言えます。
多数の伏線と登場人物が入り乱れての連続ドラマ、長編サスペンス志向の試みはわかるのですが、パターン破りの意欲だけが先行して本分が置き去りになっており、視聴者にじっくり(しばらく我慢して)見て欲しいという構造なのに、じっくり見て貰う努力をしていない。
同時にキャラクターが、「ストーリーを進行させる為の台詞」と「自分の背景設定に合わせた台詞」を別々に語るので、揃って分裂気味。
とにかく、全てがちぐはぐ。
何度か書いている事を改めてまとめますが、今作のキーワードは、「ちぐはぐ」、「置いてきぼり」、「どうしてこうなった」(笑)
さて、長石監督参戦で、海が綺麗。
や、海が綺麗なのは監督の力ではないですが、綺麗な海を印象的に入れられるのは監督の力。風車と月のカットなども美しく、繋ぎのカットの綺麗さはさすが。個人的贔屓もありますが、安定の演出力。