(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第38話「橘朔也、オンステージ」◆ (監督:長石多可男 脚本:會川昇)
今回は、橘さん面白すぎ。
「ジョーカー……カリス――排除!」
相変わらず謎の飛び道具を放つトライアルシリーズだったが、アルティメット・カリスはFビーム攻撃をあっさりガードすると、二刀が弓と合体。更に13枚のカードが1枚のカードとなり、新必殺技・ビューティーセレインアローでトライアルFを滅殺。
もはやお約束になった爆風の衝撃で吹き飛んだ剣崎は気絶し、そこへやってきた橘さん、ギャレンに変身すると、剣崎に近づいていたカリスを殴る、撃つ。
……多分一応、助けているつもり。
そのままギャレンがバイクで剣崎を回収していき、始さんは人間の姿に戻ってにんまり。
……もしかしたら今ちょっと、剣崎の事を忘れている。
川面にヒューマンの姿となった自分を映して安らぐ始さんのシーンで、手前に花入れているのは監督の趣味だろうけど、その花が曼珠沙華、というのが凄い(笑)
橘は拾った剣崎を忍者屋敷へ運び込み、広瀬父に紹介。
「この人のお陰で……俺たちは、人類は!」
「確かに……私はアンデッドを解放した」
久々にいきなり喧嘩腰となる剣崎に向け、広瀬父の口から3年前の出来事が語られる――。
不治の病に冒された妻・小百合を救う為、アンデッドの研究に没頭していた広瀬父だったが、3年前、とうとう妻が死亡。衝動的な狂気にかられた広瀬父は、アンデッドの肉体を生で分析する事で不死の秘密を手に入れれば妻を甦らせる事も出来るかもしれない、とカードの封印を解こうとする。だがそこを別の職員達に見咎められ、もみ合いになっている内に勢いに任せて鷲掴みにしたカードを機械に突っ込み、豪快に解放されたアンデッドにより、研究室はすし詰めの満員電車状態に(笑)
一挙に解放されたアンデッド集団は、酔っ払いのようにふらふらと外に出て行き、この惨状の始末を付けるために、理事長と呼ばれる男が、烏丸のライダーシステムの採用検討を決意する……。
と、新たな人物が登場した他は、特に意外な要素は無し。ちょっと勢いでやってみたら、もみ合っている内に思わぬ大事故になっちゃった、てへっ、という回想ですが、これもあくまで広瀬父主観の語りなので、烏丸トークばりに、信用していいものかどうかは、何ともかんとも。
「確かに、広瀬さんがやった事は過ちだった。だが、人の過ちをただせるのは、同じ人だけだ」
最近どちからというと人を信じやすい橘さん、いきなりの上から目線で剣崎を説得。
この事件で生死不明となり、ボードを離れて独自にアンデッドの研究を続けてきた広瀬父は、ライダーシステムの恐ろしい危険性を発見する。
また不備か!
そもそもライダーシステムとは、アンデッドと融合して自らの力へ変えるジョーカーの能力を限定的に再現するというものだった。だがその適性(融合係数)が人並み外れて異常に高い剣崎は、限定された筈のライダーシステムを通しながら、アンデッドと融合しすぎてしまうのだ。すなわち――
「ライダーに変身し続けると君は、やがてもう1人のジョーカーとなる」
「俺が……ジョーカーに……」
ここまで隠されてきた、橘と広瀬父が剣崎を確保しようとする理由が判明。ライダーシステムがジョーカーをモデルにしているならば、畢竟、使いこなせばこなすほど、その果てにジョーカーそのものに近づいていく。剣崎の強さがイコール危険なのである、と話を繋げてきました。
またここで一つ重要なのは、そもそもライダーシステムは対アンデッドの戦闘手段、というわけでは無かったようである事(多分ここまで、明確に語られてはいなかったと思う)。アンデッド解放事件からのタイミング考えればその方が自然なのですが、どうやらアンデッドの不死の秘密を探るアプローチの一つとして研究された、人間とアンデッドの融合手段、という事のようで、もともときな臭いのに、ますますきな臭くなってきました。
そんな話はつゆ知らず、ラウズアブソーバーを手にしてニヤニヤしている課金兵。
「使うには、カテゴリークイーンが足りないんだ」
「カテゴリークイーン? ははははははっ! 私か。封印する、私を?」
……ええと、本当にどうして、虎の女王様は睦月と同棲しているんですか。
お互いの目的が一致しているとも思えない上に、女王様はレンゲル睦月を嫌いな筈だし、さすがに意味不明すぎます(^^;
まあ新しい性癖に目覚めてしまった睦月が踏まれたいのはわかるけど(待て)
ちなみに、橘さんは120%Mだろうし、剣崎もいけるクチだと思われ、虎太郎は詰られプレイとか間違いなく好きなので、『ブレイド』男性陣はM分高め。特に橘さんと女王様の接触は、全力で避けた方が良いかと思われます。
睦月と女王様が牽制し合う中、始のものらしき足音を聞いて、外へふらふらと出て行く天音ちゃんと、それを追う女王様。
……いやどうして、女王様、天音ちゃんの面倒見ているの(笑)
視力の回復しない天音ちゃんは、外の階段を踏み外した所を始に助けられるという、すさまじいヒロイン力を発揮。最近、広瀬だか栞だかいう年増がアピールしてきていますが、まだまだ負ける気はない……!
「今の奴からはアンデッドの気配が全くしない……」
それを目にした女王様は敢えて手出しはせず、始は天音を背負って喫茶店へ。一方、携帯電話に謎の連絡を受けた睦月は外出し、天音が出て行ってしまった事に気付かぬも、始との接触を免れる。お陰で、マジギレ始さんによるジャッジメントを受けずに済みました。
もし遭遇していたら、危うく日曜朝に放送できないバイオレンスな消毒シーンになる所だった。
忍者屋敷では、橘が忍者から受け取った剣崎の血液サンプルを分析し始める。
「剣崎、おまえをジョーカーになどしない……」
……そういえば、研究者だった、役立たず。
ところが橘に仕事を与えて目を逸らせた隙に、忍者は眠らせた剣崎をベッドに乗せて運び出す。そこへ現れたのは、電話によって呼び出された、上城睦月。
「本当に剣崎が、もう1人のジョーカーなのか……」
姿を見せぬまま声だけで、もう1人のジョーカーであるブレイドを倒して封印すれば、今日から君が最強だ、とそそのかす広瀬父。
「なんで橘さんにやらせないんだ」
「彼は へたれ 優しすぎる。それに君の方が強い。違うかね?」
その挑発と誘惑に乗り、剣崎を蹴り起こす睦月。
「見せてよ、ジョーカーの力を」
橘が回収した筈のベルトとカードも剣崎の手元にあり、剣崎はブレイドに変身。睦月もレンゲルとなり、ブレイドへと襲いかかる……!
一方、始は喫茶店に天音を連れて帰り、虎太郎と接触。
「剣崎は、どうしてる?」
「橘さんと一緒に行く約束があるとかって……」
「橘が?」
さっき、殴られたキガスル。
その時、ブレイドとレンゲルの戦闘の気配に気付く始。
「今度は……俺の番か」
始は即座に駆け出し、久々に、というか、始さんはホント、すっと格好良くなって、役得。
(感じる……剣崎、おまえを必ず連れ戻す)
研究所では、レンゲルがブレイドをいたぶり、自らラウズアブソーバーを投げつける。
「キングフォームにならなければ、死ぬだけだ!」
冷凍ガスキックを受けたブレイドはレンゲルの殺意を悟り、キングフォームを発動。その姿を見ながら闇の中で嗤うのは――広瀬父。
「いいぞ。もうすぐ剣崎くんの肉体は限界だ。剣崎くんはアンデッド全てを取り込んで――ジョーカーとなる」
忍者から始接近の報を受け、立ちふさがる役立たず。
「来たか……ジョーカー」
「なぜ剣崎を変身させた」
「剣崎が変身している? そんな筈はない」
駄目だこの人。
脚本も演出も意図的だと思うのですが、こんな時に限って力強くキリっと断言する姿が、なまじ二枚目だけに、半端のない絶望感(笑)
「剣崎は戦いの中に居る。だが……俺が止める」
始は役立たずの横をバイクでスルーし、その姿に状況の変化を悟る役立たず。
「相川始の心を取り戻したのか? じゃあ、あいつの言った事は!」
……あ、一応気付いた。
「ふハははハっ、HAはHAハはははッ!!」
(これが剣崎?!)
肉体と理性の限界か、キングの力に飲み込まれて狂気の哄笑をあげるキングブレイドは、暴虐無比な力でレンゲルを圧倒。そこに駆け込んだ始はカリスに変身し、邪魔なレンゲルを押しのけようとするが、背後からブレイドに切られて乱戦に。
一方、現状を確認しようと忍者の部屋へ向かう橘だが、そこは既にもぬけの殻であり、隠されていたもう一枚のアンデッドカードが消えている事に気付く。研究室を覗いた橘は、トライアル冷蔵庫に閉じ込められる(笑)
わざとか! わざとやっているのかッ?!
「おーい、誰だ! 開けろ!」
覗き窓から顔を見せる広瀬父。
「広瀬さん、これはいったい?!」
「間もなく剣崎くんはもう1人のジョーカーとなる」
「それを阻止する為に、今まで俺たちは! ――まさか」
橘さんの、俺見えない所で地味な裏方仕事を超格好良く頑張っていた筈なのに、ええっ?! みたいな顔が、面白すぎます。
「あなたの本当の目的は……」
「人間がアンデッドと融合し、その結果ジョーカーになる時、その人間の細胞を分析すれば、永遠の命が手に入るとは思わないかね?」
広瀬父がトライアルを剣崎に差し向けていたのは、その身柄を確保する為ではなく、剣崎を追い詰め、キングフォームを発動させる為のものだった。そして、剣崎をジョーカーにする、すなわち、人間をアンデッドそのものに変える事で、人が不死になりえる秘密を解き明かす――。
「あと少しだ橘くん。剣崎くんがジョーカーになれば、彼の体から永遠の命の秘密が明らかになる。妻も、君の愛する者も甦る」
「俺は……そんな事望んじゃいない!」
橘の望みはあくまで、剣崎を破滅の運命から救い出す事。そして、広瀬父を、優しい父親として広瀬栞の元へと返す事。
……ああ成る程、最近やたらに、広瀬さんが橘さんを「このウジ虫野郎!」みたいに扱うのを強調すると思ったら、言われた通りに広瀬父の事を秘密にしつつどうにか親子の関係を丸く収めようと奮闘しているけど空回り気味も決して愚痴らず罵倒に耐える橘さんの男の哀愁、が裏の軸になっていたわけですね。
気を遣えば遣うほど、裏目に出る男、橘朔也。
「永遠の命が手に入れば、娘も喜ぶ」
もはや交渉不成立、と橘はギャレンに変身して冷蔵庫を強引にぶち破るが、いきなりの忍者パンチで反撃を受けて吹き飛ばされる。
「なんだ、あの力は……」
紫の燐光をまとった自らの拳におののきながらも、その場を逃走する広瀬父。ギャレンはとりあえず、ブレイドを巡る戦いに参戦し、それによって生じた隙を利用して、カリス、エボリューション。
アルティメット化したカリスは、後ろから殴りかかってきたレンゲルを手の平一発(笑)
「どうした、剣崎……おまえはそんな弱い人間か。やってみろ、剣崎。ジョーカーに支配されるようでは、俺を倒せはしない」
カリスに向けて振り下ろされるブレイドの大剣。だが、その刃は頭上すれすれで止まる。剣崎は自らの力で暴走を押さえ込むと、変身解除。ジョーカー化の回避に成功する。課金兵は3人に追いかけられるが、「俺はまだ、あんた達に負けたわけじゃない」と捨て台詞を残して逃走。
始の暴走、橘の迷走、剣崎の逆走、と続いた危機と混乱もひとまず収まり、一試合終えたスポーツマンみたいな感じで何となく和やかな雰囲気になる3人。
「おまえはもう、戦わなくていい。広瀬さんに騙されたとはいえ、俺はおまえに取り返しのつかない事をしてしまった。すまない」
「人の過ちをただすのは人、でしょ?」
とくだいのブーメランがたちばなさくやにちょくげきした!
かいしんのいちげき!!
32617のダメージ!!
始がジョーカーの暴走を乗り越えて新たな進化を遂げたように、自分にもそれが出来る筈。全ての人を守れるものになる為、剣崎は戦い続ける事を宣言する。
「俺の中のジョーカーに勝てれば、キングフォームは最強の力になる」
「ああ、そうだ」
「俺は、仮面ライダーです。――これが運命なら、負けたくありません」
そして……逃亡した広瀬父は謎の施設に辿り着き、その前に、3年前の回想シーンにちらっと登場した“ボード理事長”天王路博史が姿を見せる。何故か、サングラスがサイバーパンク(オーバー気味のテクノロジーを持っているという描写でしょうか?)。
「君が二人目のジョーカーを誕生させようとした時、変化が生じた。神が気付かれたようだ」
ここに来て、非常に思わせぶりな“神”という言葉が登場。
「私の……私の体に何をした、天王路さん」
広瀬父がシャツを開くと、その下にあったのは、生身ではなく機械の体。
「それが君の、本当の姿だ」
「俺は人間だ!」
「人間、広瀬義人は死んだ。君はその記憶を持った、トライアルBじゃないか」
冷淡に告げる天王路の前で、膝から崩れ落ちる忍者。
「栞……」
アンデッドの不死の秘密を探る為、剣崎をジョーカーにしようと画策していた広瀬義人の正体は、改造実験体トライアルBであった! そしてその背後にちらつく、ボードの影。人類基盤史研究所とはいったい如何なる存在なのか。ライダーシステムの生みの親、烏丸の真意はどこにあるのか。かつてない大きな闇が口を開き始める中、広瀬栞はまだ何も知らず、母の名の花を、机に飾っていた……。
次回、忍者、変身。
半年間今井脚本の相手をしていた為か、後半戦に入って正直、會川脚本と長石演出が今ひとつ噛み合っていなかったのですが、今回ようやくテンポがあった感じ。春田純一さんの好演もあり、全体に漂う不気味な雰囲気が巧く出ました。真紅の曼珠沙華で始まり、大輪の白百合で締めた演出も、実に監督らしい。
物語の方もいよいよ最終クール突入を控え、これまで裏で蠢いていた存在が、表に姿を見せ始めました。そろそろ春田純一さんがリタイアしそうな気配ですが、入れ替わるようにベテラン(森次晃嗣)の登場も嬉しい。ここからどうまとめるが本当の勝負になってきますが、期待します。
……それにしても、今回は、橘さんが凄すぎました。
余計な介入をして剣崎を回収→「だが、人の過ちをただせるのは、同じ人だけだ」と他者を赦す男の度量を見せる→久々に研究者っぽい仕事で張り切る→知らない所で上司からまたへたれ扱い→「剣崎が変身している? そんな筈はない」→冷蔵庫に閉じ込められる→「まさか!」→久しぶりに格好良く変身したのに、おっさんのパンチ一発で吹っ飛ばされる→乱戦に参加してみるが特に役に立たない→弟子に話を聞いてもらえない→後輩のカウンターでこめかみにブーメランが直撃する
過去に数々の残念キャラ、へたれキャラ、ぽんこつキャラを世に問うてきた東映ヒーロー作品ですが、1エピソードでこれだけやってのけたキャラクターは、なかなか記憶にありません、
まさに、へたれの中のへたれ、キング・オブ・へたれ、すなわち既にキングフォーム。
ここに永世へたれ名人の称号を謹んで贈るとともに、殿堂入りを認定したいと思います。
次回、更なる高みを目指して――睦月、縛られる。