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クリム・ニック許すまじ――『Gのレコンギスタ』感想・第12話

◆第12話「キャピタル・タワー占拠」◆ (脚本:富野由悠季 絵コンテ/演出:松尾衡
冒頭、月→メガファウナ、カットを下に切り替えて、地球→メガファウナ、と映し、地球からだいぶ離れた(小さくなった)事と、その一方で月に近づいている事を表現(勿論、地球〜月間の距離を考えれば前回→今回の移動距離は微々たるものですが、映像演出として)。
ちなみにおおよそ、

・地球低軌道:高度350km〜1400km
静止軌道:赤道上の高度約35786km
・地球〜月間:約384400km

第1ナットの高度はわかりませんが、アンダーナットは本編中の台詞から高度約350km程度と推測され、似たようなものだと思えば前回から今回までの間に各勢力はおよそ35000kmを上昇してきた事になります(クラウンだと一週間かかるとの言及あり)。ちなみに地球1周が約40000kmなので、地球一周分ぐらいの移動距離と思っておけば良いか。
その上で月との距離は更にその10倍となり、物語が宇宙へ出た事で、スケール感が一気に広がっています。
今作はこの辺り、視聴者の予習・復習に任せるというスタイルなのですが、こういう要素をもう少し物語の中に取り込んで説明しても面白いと思うので、その辺りは惜しい所。
まあ富野監督はあまり、SF的なスケール感には興味なさそうではありますが。
細かい描写はとても丁寧にやるけど、大きな世界の背景に関しては、あくまで舞台の道具立てというか。
ザンクト・ポルトのある静止衛星軌道を目指すメガファウナでは、G−セルフにアサルトパックが取り付けられるも、不評。ラライヤはスパナを手にアサルトパックに襲いかかり(スパナを振り上げた所で重心が変わってスパナを中心に回転するのが細かい)、それを止めようとするノレドはパチンコでコショウ弾を放ち、ベルリはラライヤをなだめつつもさらっとアサルトパックに毒を吐き、格納庫内部をふわふわと飛び回るラライヤとノレドをまとめてかっさらう姫様。
「腕力あるぅ……!」
そこか!
そこなのか、ベルリ!
まあこの際、加点できそうなポイントなら何でもいいのかもしれませんが……!
ベルリはもう、姫様に関しては、駄目な所も抜けた所も故障した箇所も全部含めてOK、になっている感じで、とても危険(笑)
最初からEDのイラストに描かれ、地上でもちらっと先見せがあったにも関わらず、出てきた途端に評判の悪いアサルトパックは狙撃仕様。次の戦闘では長距離射撃がキモになる、と大陸間戦争で培った技術屋の経験で請け合うハッパさんは、分厚いマニュアルをベルリへと投げ渡す(表紙のマークが「∀」でビックリしたのですが、アサルトの「A」を逆に持っていただけだった、というネタでした)。
「こんな船に配属されちまったってさ」
「え? なんです?」
元々、少数部隊で敵の本拠地に突撃してしまう危ない人(カーヒル)が実働部隊の隊長だったわけですが、ぼそっと呟くハッパさんは、自分の置かれた境遇には危機感がある模様。嬉々として実験装備を取り付ける割に、俺は死にたくないからおまえも死ぬな! と一番アピールするというのが、ハッパさんはいい味を出しています。まあ、ハッパさんの「死にたくない」は、「死んだら新装備でニヤニヤできない」だと思うので色々瀬戸際だけど人生は充実している感じですが。
「貴様に守ってもらいたいんだよ!」
「! 読んでおきます!」
説明書を手にベルリが去った後、パック調整中のハッパさんの背中のカットが入るのですが、フ……っと、笑い声が聞こえてきそう。「あいつちょろいなー」というか「姫様もこうやって転がせばいいのに」というか(笑)
前半、色々な思惑がありつつ、メガファウナにズルズルと居た理由の一つでしょうが、ベルリは割とシンプルに「誉められたい」「頼られたい」というタイプである事が明確になってきました。
キャピタルにおいては、運行長官の息子であるからこそ頑張ってきたけれど、同時に、運行長官の息子という色眼鏡で見られざるを得なかったのに対し、メガファウナでは素の自分が誉められる居心地の良さ、というのがあったのだろうな、と。
また、10話の高トルクパックの説明に続き、G−セルフのバックパックは、ヘルメスの薔薇の設計図に基づいて作ってみたけど他のMSでは使えなかった為、あちこちに無駄にある事がハッキリしました。メカニック的な問題なのかシステム的な問題なのかはわかりませんが、G−セルフの特異性がやや遅まきながらも明確に。
その頃、ザンクト・ポルトへ向けて先行するサラマンドラ艦隊では、宇宙で習熟訓練中。
「第一ナットの高度では、周回軌道での制限があって、自由に戦えなかった」
「重力がきついですからね」
「しかしザンクト・ポルトの高度なら、真の宇宙である」
こういう説明を、引っかかった次か次の回ぐらいで入れる作品なのですが、前回の感想でも書きましたが、この状況説明に関しては、前回の戦闘前に入れた方が面白くなったかなー。
ザンクト・ポルトへ近づくクリムは、キャピタル・タワーの運行規則を利用し、補給艦を遭難したように偽装して接岸させ、乗り込んだ人員により内部からザンクト・ポルトを制圧するという作戦を立てる。
嬉々としてこの騙し討ちを準備する艦隊ですが、ルール無用というより、ルールの忘れられた世界での戦争、というのを思わせる所。どこからどこまでやっていいのか、の判断基準が誰にもなくて、手探りと思いつきで戦争しているというか。
この辺りは、古代史の戦記物のつもりで受け止めればいいのでしょうが、
「天才クリムは、くうぜんぜつご、だれもおもいつかなかった軍略をひらめいた!」
みたいなノリ。
そもそもザンクト・ポルトを直接占拠するという計画そのものが、聖域侵略という、この世界における「革新」的な戦略という位置づけなのでしょうが。
一方、「これから聖地ザンクト・ポルトでパーティするぜ!」というクリムの宣言に対し、
「そんなとこへ軍艦で行ったら、悶え死にします」
「そんな罰当たりな事、反対だ!」
と兵士から反対の声があがり、アメリア軍における一般的なタブーの感覚も描写。メガファウナクルー(特に艦長)がスコード教に懐疑的な描写が幾つかあり、アメリア(軍)全体でタブー意識が薄いのかと思われましたがどうやらそうではないようで、メガファウナクルーがかなり先鋭的、という事の様子(軍内部でもそういうメンバーが選抜された、と見るべきか)。
こうなると姫様に関しては、カーヒル(世界革命家)に洗脳された疑惑があるけど!
スペースガランデンからの追撃部隊がサラマンドラに迫り、サラマンドラ、そして先行するラトルパイソンを支援する為、アサルトG−セルフとアルケインがメガファウナから出撃。
「マスク部隊の攻撃を、止めりゃいいんです」
「あ……ありがとう」
「どうしたんです?」
そんなに姫様がお礼言うのがおかしいかーーーーーー!
最近のベルリは、アイーダ様をちょっと馬鹿にしていると思います(笑)
でも、そこも好き、状態ぽく、どうすればいいのか。コショウ弾でも直撃させれば故障が直るのか。
「マスク部隊は、キャピタル・アーミィなのに、よく決心してくれたと思って」
「仕方がないじゃないですか!」
今更な事を言い出す姫様ですが、今更だろうと何だろうと、惚れた女に礼を言われたら、昔の身内も笑顔で殺すよ!
完全に割り切っているわけではないでしょうが、差し引き計算して「仕方ない」で済ませてしまう辺り、ベルリもだいぶ、地獄に馴染んで参りました。物語の設計上、10話が一つのターニングポイントだったわけですが、メガファウナを“家”とするという事は、“戦場に身を置く”事を肯定したというベルリの転換が一つ描かれています。
一方サラマンドラのクリムは、迎撃の準備を整えつつ、ザンクト・ポルト制圧との両睨みで部隊を展開していた。
アイーダ様と一緒に戦えるんで、嬉しいんでしょ」
「彼女にそれほどの腕は無い」
クリムーーーーーーーーーーー?!
「G−アルケインなら、戦力になりますけど?」
「期待はするな!」
クリムーーーーーーーーーーーーーー?!
「なぁに怒ってんです」
えー……只今を持ちまして当感想は、クリム・ニックを絶対許さない事を宣言します(真顔)。
クリムなんて、クリムなんて、MSとMSの間に挟まれてぺしゃんことか、シリーズ史に残る酷い死に方すればいいよ!(おぃ)
それはそれとして、デザイン的には登場当初から好きなのですが、メイン級に昇格してからのミック・ジャックは可愛い。
サラマンドラ艦隊を狙うマスク部隊のマックナイフは、股間に仕込んだ長距離ミサイルをスタンバイ。フォトンアイを内臓したこのミサイルは、ミノフスキー粒子散布による通信妨害下でも長距離射撃を可能にするという、掟破りの秘密兵器であった!
よく考えると前回、この股間思い切り蹴り飛ばされていたわけですが、内部のミサイルが潰れて誘爆していた日には、マスク先輩どころか、至近距離に居たG−セルフも吹っ飛んで、11話にして主役とライバルキャラが交代する危機だったのでは(その場合、二代目主役とライバルキャラはノレドとマニィか)。
サラマンドラに迫る長距離ミサイルだが、ベルリがアサルトパックによる長距離狙撃でその大半を撃墜。残りも艦隊の迎撃で撃ち落とされ、戦いは迫るザンクト・ポルトを背景に、接近してのMS戦へ。
「軍艦は飛行機には勝てないの!」
本格的に軍艦も加わっての大規模なMS戦が展開し、マックナイフが大活躍。そこへ先行していたクリム達が戻ってくる。
「成り上がりの軍隊に、戦艦が沈められるものかよ!」
「クリムは口より手が先だろ!」
薬莢をばらまきながら、大口径のガトリングガンを斉射するヘカテーが非常に格好良い。突然ですがバンダイ様、ヘカテーのキット化も、なにとぞ宜しくお願い致します。
「あっそれ! ――生意気だったのを、誉めてやるよ!」
「私の部下をアメリアごときにやらせるかぁ!」
マスク機、大回転しながら全身の火砲を周囲にばらまくという荒技を披露。
オーソドックスなジャハナム青、大型火器を振り回すヘカテー、アクロバットマックナイフ、とそれぞれのMSの個性が出たアクションに、丁々発止のやり取り(全部、独り言だけど)が加わり、面白い戦闘シーンでした。
「あんた達ぃ! ザンクト・ポルトの目の前でMS戦なんて、人類のやる事じゃありませんよ!」
戦域に到達するも、その光景に絶叫するベルリ。
そして乱戦がザンクト・ポルトに近づきすぎた事で、流れ弾を警戒して両軍は撤退。
「駄目でしょ大尉。焦りが丸見え。それじゃ青いジャハナムにやられる」
「もうサラマンドラに帰る頃合いです!」
と、マスクとクリムがそれぞれ、コンビの女性キャラに止められているのは意図的な重ねかと思われます(ベルリも、アイーダに促される形でメガファウナへ帰還)。ここまで、ベルリとクリム、ベルリとマスク、という対比の構図があった上で、ここ2話ほどは、クリムとマスクの重ねが多いのは、形状がどうなるかはさておき、今後の物語はその三角を軸に回っていくという事か。
また前半から丁寧に描写されている接触回線ですが、マスクとバララ、クリムとミックがそれぞれコンビ化している事により、会話の度に接触と距離感が描かれる、というのは実に面白い(構造によるものでしょうが、マックナイフは手と手を繋いでの会話だったり)。ベルリとアイーダの距離感も含め、描写の積み重ねによってロボットで肉感的な芝居を成立させているというのは、さすが。
「歴史的なMS戦をアメリア軍がやれるようになるなんて、私は感動している」
「艦長! 航海日誌なんか後で書いて下さい!」
サラマンドラ艦長の手元が無駄にアップになって何事かと思ったら、航海日誌をつけていました(笑) 同じ状況を目にしてベルリの絶叫とは全く別の感慨が、実に穏やかに描かれているのは、今作らしい所。
補給艦による制圧作戦を成功させたサラマンドラ艦隊はザンクト・ポルト周辺に停泊し、メガファウナザンクト・ポルトの直下、144番ナットへ入港。ケルベスの交渉が失敗してクラウンを利用できなかった事から、アルケインがG−セルフを捕虜にしたと偽装し、アイーダ、ベルリ、ノレド、ラライヤの4人がザンクト・ポルトへと潜入する。
近隣で戦闘が起こり、真上の聖地が制圧されているというのに、ひたすら日常業務を続けるキャピタル・タワーと、上下するクラウン。
地球上のエネルギー確保の為に動き続けているわけですが、いわばこれは、「食事」シーンみたいなものなのだな、と思ってみたり。どんな状況でも止めるわけにはいかない、地球人類の「食事」。
アルケインとG−セルフは姫様特権により、アメリア軍のMSが警戒するザンクト・ポルトへ入る事に成功し、4人はスルガン総監とクリムの後を追って法王の元へ。
外から見ると宇宙に浮かぶ黄金の大聖堂、とでもいうような形状のザンクト・ポルトですが、「これがスペースコロニー」という台詞があり、軌道エレベーターのアンカー(全体の遠心力が重力を上回るようにする為の末端の質量)として宇宙世紀のコロニーを利用し、その外観を聖地っぽくデコレーションしたという事でしょうか。
聖堂では、再び偉い人達が大集合。
ウィルミット「許しがたい。認められません。グシオン総監は、こんな若者のはしゃぎ性に乗せられて、見損ないました」
お父さん、ぐぬぬ(笑)
キャピタル・タワーを制圧したという事はアメリアが偉いという事だ、とタワーの管理権限を要求し、どんどんチンピラっぽくなっていく天才だが、そこに姫様一行がご到着。
「お父様は、宇宙からの脅威を、無いものにする為にいらっしゃったのではないのですか」
グシオン「アイーダ!」
ウィルミット「ベル!」
クンパ(この二人……)
それぞれ、言いたい事を言い出す面々。
ゲル「お若いのは、聖域のトワサンガの力を……」
クリム「トワサンガの連中などは、宇宙世紀の生き残りが、ヘルメス財団をでっち上げて――?!」
その時、緊急警報が鳴り響き、突如、補給艦が宇宙からの狙撃を受けて撃墜される。そして、月からの艦隊がザンクト・ポルトへ迫っていた……。
いよいよ、これまで姿形の見えなかったトワサンガの勢力が登場。艦隊の背景に見える月には帯状の人工的な模様が確認できますが、月の表面にソーラーパネルを敷き詰めて、太陽光発電フォトンバッテリーを地球に供給しているとか、そういう事なのかしら。
ザンクト・ポルトまでの道中→宇宙戦闘→ザンクト・ポルト内部、と、真ん中に戦闘を持ってきてラストで思いっきり引く、というやや変則的な構造でしたが(9話と似ている)、中盤の戦闘シーンが非常に良く、面白かったです。よくよく考えると主人公メカは長距離狙撃しただけ(アルケインに至ってはパックにくっついていただけ)なのですが、それを感じさせない充実ぶり。特にマックナイフは飛騨忍法・クンタラ大旋風により、一気に格好良くなりました。これまでパイロットとしての技量が特に描写されていなかったバララが、鮮やかに敵機を撃墜したり、マスクを諌める状況判断を見せたのも良かった。
次回、
「……あげくに一つのエレベーターにクリム大尉とマスクが一緒になれば、お姉さん達の香りに圧倒されてしまう。それはしまった事だった」
前と後ろが繋がってないよベルリ!!
なお、『Gのレコンラジオ』によると、次回予告のナレーションは富野監督がカッティングしながらその場の勢いで書いているという事(笑)