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「この世はパーツの集合体。分解できないものはない」

プロジェクトクロスゾーン』(3DS)の登場キャラクターの出典を調べていた際に、好きそうな雰囲気で気になっていたRPGエンドオブエタニティ(PS3)を始めました。

End of Eternity SEGA THE BEST - PS3

End of Eternity SEGA THE BEST - PS3


遠い未来の地球――様々な要因により激変した地球環境に適応できず、滅亡の淵に立たされた人類は、環境を正常化する為の巨大な装置《バーゼル》を作り出し、地球に埋め込んだ。人々は、天空に向けてそびえ立つ巨大な塔のごときバーゼルの周辺に暮らし始め、やがてはその内部に街を作って住むようになっていく。
あまりにも永い年月が流れ、いつしかバーゼルの中で生まれ死ぬのが当たり前となった人類は、バーゼルの本来の役割も、自分達がどうしてその中で暮らすようになったのかも忘れ、ただバーゼルのみを世界と思い込み、階層化された世界で信仰にすがりながら生きていた。
そして、内部で人間が暮らす事によりバーゼルは徐々にその機能を低下させていき、バーゼルという小さな世界もまた、汚染による崩壊が一歩一歩近づいていた……。
運命を変える「銃撃多重奏RPG」というキャッチコピーといい、グラフィックといい、物凄いスクウェア・エニックス臭が漂いますが、販売はセガ、制作はトライエース
かなり尖ったゲームという事前情報は得ていたのですが、本当に尖ったゲームでした。
一つ二つ尖った要素があるとか、半分尖って半分オーソドックスとか、そんな生やさしいバランスではなく、全てが尖っているという、明明後日に向かって全力で放たれたボウリング球、みたいな一本。

とっつきにくい世界観。
とっつきにくいストーリー。
妙なこだわりを放つ着替えシステム。
メインキャラは26歳精神的おっさん。
敵のデザインがグロテスクで悪夢的。
武装の強化方法が独特。
LVアップの方法が独特。
マップの移動方法が超独特。
戦闘システムが超独特。
公式サイトが消滅している。

隣町のボウリング場でストライク出しています。
物語の舞台は、階層化されたバーゼル内部。大雑把に言うと、物凄く大きな塔の中に人類が街を作って暮らしており、その塔の内部のみが世界と信じている、という世界観。自分達が生きていたのが実は閉じた環境の箱庭世界だった……というのは古典的なアイデアですが、今作ではその点については最初からプレイヤーに提示されている、というのがちょっと独特。
機能低下の進むバーゼル内部は、害獣や暴走する機械人形などが蔓延り、謎の奇病が流行するなど、滅びに向かいつつある世界が薄暗いトーンで描かれます。一方、次々とややネジの外れた奇矯な人物達が登場するなど、そこだけでも非常に癖が強い、人を選ぶゲーム(^^;
プレイヤーが操るのは、バーゼル内部のトラブルを主に銃火器で解決する民間組PMFに所属するチーム・ヴァシュロンの3人、ヴァシュロン、ゼファー、リーンベル。この3人1組を“主人公”として操り、物語を進めていきます。
ゲームは基本、PMFのミッションを遂行していく、という形でチャプター単位で進行(ここはオーソドックス!)。
ミッションはチャプターの中心となるストーリーミッションと、PMFギルドで受け取る任意のミッションがあり、ストーリーミッションを完了するとチャプターが進み、任意のミッションは、達成してもしなくても先に進めるけど、達成すればするほどお得、という作り。
シンプルなクエスト型RPGです…………ここまでは。
チームのアジトがある街で依頼を受け、その依頼をこなす為に必要な手順をギルドで聞き、街の外に出ると……そこは!
六角形のマスが広がっていた。
階層に分かれ、エレベーターやリフトで繋がったバーゼル内部を冒険する事になるのですが、バーゼルの不調により多くの区域(主人公達視点ではワールドマップのほぼ全域)が通行不能になっており、主に敵を倒す事で手に入る<エナジー・ヘキサ>によって道を復旧させていかないと、マップを歩き回る事すら出来ません(笑)
エナジー・ヘキサ>は1マスずつではなく、複数のマスが例えるなら『テトリス』のブロックのように様々な形で繋がっており、これらをうまく通行不能マスに置いていく事で、そのマスが移動可能になります。
面白いのは、地域やストーリー進行で入手可能な<エナジー・ヘキサ>の形状が決まっている事で、行ける場所/行けない場所を巧く制限している事。RPGにおける“見えるけど辿り着けない場所”の処理方法としては、かなり洗練されています。特に、キャラクター視点ではともかく、プレイヤー視点においてのバーゼルは“全世界と呼ぶには狭い世界”なので、プレイヤーにそういった世界の輪郭を見せつつ、しかし詳細は見せない、という点において巧く着地しています。
また、目的地に辿り着くだけなら最低限のマスを移動可能にすれば良いのですが、マスを復旧させるとアイテムが出てきたりちょっといい事があるので、戦闘を繰り返して通路の復旧活動に勤しむも良し、最短距離でざくざく進むも良し、とちょっとした選択の余地があるのもいい所。
ゲームとしての問題は、そのアイデアの面白さに、プレイヤーへの配慮が全く足りていない事なのですが(^^;
まず第一に、マップは六角マスで区切られているのに、プレイヤーシンボルはフリーカーソルで動く為、復旧したエリアを歩いている感が足りない&慣れるまでどこに居るのか戸惑う。次に、復旧したマスとしていないマスの見た目に派手な差異が無い為、ぱっと見で復旧具合が掴みにくい。また、特殊な効果のある色つきの<エナジー・ヘキサ>を置いた所が、微妙にわかり辛い。
どれも慣れてくればそれほど気にならない要素ではあるのですが、独特のシステムであるからこそ、もう少し配慮すれば格段にわかりやすくなる部分に手が全く届いていない、というのが非常によろしくありません。
狭い入り口を抜けると面白くなるゲームだけに、そういった所の丁寧さが足りていないのが勿体ない。
さて、目的地に辿り着く為には道を復旧しなくてはならない→その為には<エナジー・ヘキサ>が必要→その為には敵を倒さなくてはならない、とRPGに付き物の戦闘が「目的地への障害」ではなく「目的地への必然」としてシステムに組み込まれているのが今作の大きな特徴ですが、重要な位置づけをされたその戦闘システムが、今作のキモ。
主人公達の武装は、ハンドガン、マシンガン、投擲武器(グレネード類)の3種類。
これらそれぞれに熟練度(LV)が設定されており、敵にダメージを与える事で武装ごとに経験値を得てLVアップ。三つの武装の熟練度LVの合計がキャラクターのLVとなり、LVアップごとに最大HPと、装備可能重量が上昇します。イメージとしては、武器の扱いに長ければ長けるほど戦場で生き残りやすくなる、という所でしょうか。
敵に与えるダメージには、
<スクラッチ・ダメージ>:仮のダメージ。時間経過とともに回復する

<ダイレクト・ダメージ>:確定ダメージ。その場でHPが減少する。また、与えていたスクラッチ・ダメージを確定する。
の二種類が存在します。
そして各武装は、
ハンドガ:ダイレクト・ダメージを与える。威力は低い。
投擲武器:ダイレクト・ダメージを与える。範囲攻撃で威力も大きいが、消耗品。
マシンガン:スクラッチ・ダメージを与える。威力は高い。
という特性を持っています。
例えばハンドガンでは5しかダメージを与えられない敵も、マシンガンなら100のダメージを与える事ができます。しかしマシンガンはスクラッチ・ダメージの為、与えた100ダメージは決定打にはならず、時間経過で徐々に回復してしまいます。そこでマシンガンで100ダメージを与えた敵にハンドガンで5のダイレクト・ダメージを与えると、このスクラッチ・ダメージが確定し、5+100のダメージを与える事が出来ます。
この、マシンガンで削って、ハンドガンでトドメを刺す、というのが戦闘の基礎。
戦闘は障害物などの点在するバトルマップ上でセミリアルタイム形式で行われ、パーティキャラクターの移動や攻撃中に時間が進行、敵ユニットも移動や攻撃を行います。移動中は行動力ゲージというメーターが減っていき、メーターが0になるか、攻撃をすると行動終了。次のキャラクターを動かします。味方のターン/敵のターン、という概念はなく、敵は全て、味方の行動中に行動します(行動順以外のキャラクターが受けた攻撃は、行動終了後に処理)。
敵味方問わず、攻撃の前提となるのが、攻撃準備にあたるチャージ。ターゲットを決めて攻撃を決定するとチャージゲージが表示され、それが溜まって初めて攻撃をする事が出来ます。恐らく、銃の狙いをつけているというイメージなのでしょうが、チャージゲージの溜まりは標的が近いほど早く、遠いほど遅くなります。また、チャージ中も行動力メーターを消費する為、移動距離が長かったり、あまり敵が遠いと、攻撃する前に行動が終了してしまう事も(^^;
武器レベルが上昇するとこのゲージをLV回まで重ねる事が出来るようになり、重ねれば重ねるほど、強力な攻撃が可能に。ただしこれも注意しないと重ねている内に行動力が空になってしまうので、戦況に応じて欲張るかどうかの見極めが肝心。
という形でバトルマップを移動しながら敵を狙って撃ち殺していく、というのが基本的な戦い方…………ではありません。ここまで、前振りです。用語説明です。
普通に移動して普通に攻撃すると、移動中に撃たれます、チャージしている間にも撃たれます。チャージ中に敵の攻撃を受けるとチャージがご破算です。装甲を持っている敵に正面から攻撃しては、マシンガンでもさしたるダメージを与えられません。
そ・こ・で、戦闘において肝心要となるのが、<インビンシブル・アクション>
平たく言えばダッシュ攻撃ですが、大きな特徴は、ダッシュ中は無敵、ダッシュが終わるまで連続攻撃が可能、というもの。I.S.ゲージというエネルギーを消費し、指定した終点までの直線移動しか出来ませんが、ダッシュ中の乱れ打ちは通常攻撃でちまちま削っていくのとは格段の性能差であり、今作の攻撃方法はむしろこれを基本とします。
そしてこの<インビンシブル・アクション>中の銃撃アクションが、今作の大きな売り。アクション中は通常の攻撃を移動しながら行う他にジャンプからの攻撃(標的の全部位にランダム攻撃できる)が可能となり、回ります、くるくる回ります、たくさん回ります、要するに、スーパー香港警察ごっこが出来ます!
これがネタ抜きで非常に良く出来ており、爽快感抜群。ハッピートリガー
更に、この<インビンシブル・アクション>によるダッシュで仲間2人の間を通過する事で、レゾナンス・ポイントというポイントが貯まります。このレゾナンス・ポイントを消費する事で、必殺の連係攻撃<レゾナンス・アタック>が発動。I.S.ゲージ1つで3人が一斉に<インビンシブル・アクション>をスタートし、3人をそれぞれの頂点とした三角形のラインを走りながら怒濤の連続攻撃を標的に仕掛けます。これがもう超格好いい。レゾナンス・ポイントを貯めれば貯めるほど走行時間が増え、延々とぐるぐる走りながら標的を蜂の巣にするのは、実に快感(途中で目標を倒すと自動で標的が切り替わるので一気の殲滅も可能)。
かくも非常に有効な<レゾナンス・アタック>ですが、仲間2人の間を走り抜ける事で1点貯まるレゾナンス・ポイントは、それ以外の行動をすると無くなってしまう為、ポイントを貯めるには連続して2人の間を走るように移動しなければなりません。その上で発動時にルート途中に障害物があるとダッシュが止まってしまう為、地形や敵との位置関係を考えて綺麗な三角形を作る必要がある、というのが一つの要点。
RPGにタクティカルな戦闘を取り込むと、移動と攻撃を一緒にすると最短距離しか移動しなくなる、移動と攻撃を別にするとテンポが悪くなりがち、という命題を抱える事になるのですが、「目標が離れていても攻撃可能だが、目標が近いほど効率的に攻撃できる飛び道具」と「ルートは指定できるが直線しか走れない移動攻撃」を組み合わせる事で、一定の移動の自由と攻撃を融合。
それにこの、非常に有効だが発動に制約のある<レゾナンス・アタック>を絡める事で、ダッシュ後の陣形を考えた移動を要求され、シンプルながら戦術的な要素を巧く付加しています。
その上でセミリアルタイム進行にする事でターン制を廃して煩雑感を減少させ、タクティカル要素のあるRPGの戦闘としては、非常に良く出来ております。
また、<インビンシブル・アクション>の発動に必要なI.S.ゲージ(初期値3)は、アクションに使うか、HPが0になると回復に使用して消費、敵を倒したり部位破壊をする事で回復、するのですが、これが0になると、主人公達がガタガタ震えだしパーティの戦能力が格段に落ちると共に敵の攻撃で受けるダメージが<ダイレクト・ダメージ>になるという極めて危険な状態になります(通常は<スクラッチ・ダメージ>扱いで、戦闘終了後に回復)。
今作は1人でも戦闘不能になると即ゲームオーバーなので、この状態になると本気でデンジャー。
この為、I.S.ゲージを維持しつつ陣形を組む為の敵を倒す順序、ゲージが残り1になった時に押すか引くか、などの駆け引きが生まれ、力技では突破できないが不合理ではない、という手応えのある戦闘が秀逸。ちょっとした油断でいきなりゲームオーバーになりますが、小銭を払う事で戦闘を最初からやり直す事も出来て、この辺りは親切設計。
妙に細かい所にこだわっている癖に、ゲーム的にそれはどうかという部分に手が入っていなかったり、色々と問題点は目立つ作品ですが、個人的にはかなり楽しんでプレイ中。システムのみならず世界観からして入り口の狭いゲームなので、力強くお薦めはしませんが、これはなかなか面白い。