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『仮面ライダーオーズ』感想18

◆第25話「ボクサーと左手と鳥ヤミー」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子
左拳の骨折で引退するボクサー・岡村にセルメダルを投入する、アンクに酷似した左手。岡村から生まれたヤミーが後輩ボクサーに襲いかかると、後輩ボクサーの左腕が黒ずんで使い物にならなくなり、ヤミーはそこから生じた羽を岡村の左手へと突き刺す……そして、駆けつけたオーズとバースと後藤の前で、オウムのヤミーへと成長する。
「鳥の、ヤミー……?!」
ちなみに最初、伊達さんの「アンコ」ネタと引っかけて「インコ」ヤミーなのか……! と妙に感動していたのですが、オウムでした。全く関係ありませんでした。インコとオウムの区別があっさりと付く後藤さんは、家で文鳥でも飼っているのか!(待てそれは危険なフラグだ)
バースとオーズ、初めての並んで変身は割とさらっと流され、火を噴くオウムに苦戦する2人。バースはいきなりのブレストキャノンを放とうとするがオウムは岡村をさらって飛び去ってしまい、後藤は現場に先回りしていたアンクに、オウムはアンクが作ったヤミーではないか、と疑念をぶつける。
アンクは後藤の問いに明確な答を返さずに立ち去り、伊達さん大旋風と、後藤さん修行の日々が一段落し、再び“グリードとしてのアンク”に焦点が戻る、急展開。
「おまえは疑わないのか? ……鳥は、確かに俺のヤミーだ」
「いい加減おまえがやりそうな事かどうかぐらいはね」
後藤が率直に疑惑の眼差しを注ぐ一方、相棒の ねじ曲がった性格 ヤミーと戦う意志を信じる映司、という良い会話があるのですが、どうしてそこでパンツ姿なのか映司よ。
オウムは次々とボクサーを襲い、姿を消すアンク。
「火野、あいつがグリードだって事、忘れるな」
…………今頃気付きましたが、「火」野映司、ってアンクの属性と合わせていたのか!?
バースはオウムと交戦し、着々と、まともに援護射撃が出来るようになっている後藤さん。その上で、伊達さんが軽い感じで構えているのに対し後藤さんは前屈み気味、と差異をつけているのが細かい。
映司の前に現れたアンクはタジャドルセットを渡しオーズも変身するが、同じ火属性で決め手に欠ける事もあって、空中戦で撃ち落とされて敗北。援護しようとしたバースのセルバーストもアンクに邪魔され、3人はやむなく一時撤退する事に。
「あいつを倒されたら困る」
オウムを守るような行動を取るアンクの真意とは……でつづく。
ボクサーの語りや懊悩に、やたら荘厳なBGMをつけて正直合ってないのですが、ボクシング好きなのか、監督。そのボクサー・岡村役はなかなか好演なのですが、顔が、凄く誰かに似ていて、終始気になってしまいました。うーん、誰だっけ、この顔……。


◆第26話「アンクとリングと全部のせ」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子
前回から妙に、人物のアップでカメラ揺らすカットが続いて、ちょっと見づらい。
「おまえ自分に鈍感すぎ」
本職の伊達さんに治療を受ける映司、岡村のパンチドランカー症状を聞いてこれまで以上に映司の体調を気にする比奈、と、“やたら湿布を貼られるヒーロー”である火野映司の積み重ねが、じわじわと不吉な未来を想起させ、この辺りやはり、今作に『クウガ』リビルド的な要素を感じる所。
「俺さー、金貯めなきゃなんないから、あんま深入りしないつもりだったんだけど、そうもいかねぇか」
お金第一と言いながらなんだかんだ世話を焼いてくれる伊達さんですが、ここで伊達のお節介が個人の関係(後藤しかり、映司しかり、比奈しかり)から生まれているのに対し、ほぼ赤の他人であるボクサーの為に重傷の体で立ち上がろうとする映司が、実は「個人」を見ていない、いっけん無限のお人好しに見える映司が伸ばす手は「相手」よりも「行為」が重要である、という部分が浮かび上がってきます。
もともと伊達明は、火野映司という存在の陰影をくっきりさせる照明としての役割を持つキャラクターなのですが、伊達が映司達と関わっていくに従ってその対比として、誰にでも手を伸ばせるというのは、あらゆる他人が等価であるという映司の欠落がいよいよハッキリとしてきました。
だから映司は、自分を省みずに手を伸ばす対象が「今朝会ったばかりの刑事」でも全く頓着しないし、「肘の先からだけの怪物」相手でも、正面から話し合い共闘も出来る。
そうやって手を伸ばし続ける事が何かというならば、映司にとってのそれは、“執着”ではないか、という気がしてきました。
あまり過去作品を引き合いに出すのもよろしくないとは思うのですが、映司は小林靖子の過去作品で近いキャラを探すと、腑破十蔵(『侍戦隊シンケンジャー』)なのだろうなーと。
…………は?! 映司って本当は、内戦に巻き込まれた時にミサイルの直撃で死亡していて、現世に物理的な影響を与えられるほどの強い残念の塊なのでは。そう考えると、その日のパンツと小銭だけで、国境を越えて羽ばたける事にも納得できます!
……はまあ冗談にしても、映司がはぐれ外道に近い存在なのではないか、というのは私の中で凄くしっくり来るものが(笑)
そしてそうだからこそ、等価の他人の中でアンクだけに、「色彩を持った人外」としてむしろ人間相手よりも近い距離で接する事が出来ているのかも。
伊達の言葉を聞いた後藤店員はオーズについての情報を得る為、修行生活から鴻上ファウンデーションへの復職を決意するが、その頃ドクターはなぜか、マスター知世子をストーキングしていた。
「似ている……生き返ったかと思うほど」
その手帳に挟まれていたのは、知世子と瓜二つの女の古い写真。
「姉さん!」
どうやらドクターはシスコンだったらしく、まさかの知世子さん、ヒロインレースに参戦?!
なお現在の所、トップを行くのは映司です。
オウムヤミーによって岡村は左拳を取り戻し、リングに立ちたいという渇望と欲望を自ら認める。
(1ラウンドでいい……もう一度だけリングで!)
ヤミーはタイトルマッチで対戦する筈だったチャンピオン武田をさらい、対峙する2人。高い所で様子を窺っていたら、ゴング代わりにオウムに火球をぶつけられるアンク(笑)
アンクの狙いは、オウムがセルメダルを持ち帰る先――オウムを作った存在を突き止める事、であったが、逆にコアメダルを狙うオウムの攻撃を受けてしまい、ちょっぴり肉弾戦。右腕の先+身体能力ブーストだけではかなうべくもなくアンクがピンチになったその時、バイクで駆けつける映司。
…………なんか超久々に、ヒーローらしい登場だったような(笑)
「おまえのやる事は、だいたいわかるって言ったろ。本気で俺に邪魔されたくないなら、こんなメダル残さないしな。俺は万が一の保険だろ。メダルを守って、おまえを助ける為の」
「……ふんっ、持つべきものは使える馬鹿、だな」
「使いすぎ」
メダルキャッチからスキャニングを格闘戦に組み込み、格好いいタトバ変身。
時同じくして倉庫のリングでは岡村と武田の幻のタイトルマッチが始まり、2人は伊達と後藤の言葉にも試合を止めない。
「……たく、どいつもこいつも。人間てのは自分の命より欲しいものがあんだから、始末に悪い。後藤ちゃん行くよ。あっちのドランカーも助けないと」
今回随所で、映司とボクサーを重ねる台詞が連発されているのでさらっと口にされていますが、伊達さん視点で見た場合、目に届く範囲ならのべつまくなく手を伸ばし、人助けの軽重と自分自身との天秤がわからなくなっている映司の事を、人助けドランカーだと言っており、結構きつい一言。
全体的には映司とボクサーの重ねは、多すぎて上手い事言ってやった感みたいな雰囲気が強いのと、ヒーローの戦いとボクシングを重ねるという事自体がもう一つしっくり来なかったのですが、ここはびしっとはまりました。
オーズは前回ラストの負傷の影響で苦戦しており、そこに参戦するバース……て、結局、映司のヒロイン度がまた上がった(笑)
バースは全部載せのフルアーマーバースを発動し、その攻撃でオウムの動きが止まった所に、オーズがシャウタコンボからタコ足ドリルよいやさーーーで撃破。サブタイトルに組み込まれているのに前座扱いのフルアーマー(^^; ……なんかもう、バランス考えないで全部載せてみました、という見た目はあまり格好良いとは言いがたいのですが!
その頃、ボクサー2人も勝負を終え……
「どうやら魔法もここまでらしい。……でも、もう一度立つよ。リハビリして。本当の、俺の拳で……死ぬならリングの上だぁ!!」
「それまで……タイトル守っときます」
なんだか困った人が誕生していた。
いやまあ、自分一人の問題なら構わないのですが、前回は被害ボクサーの事を気にしていたのに、今回サンドバッグを叩いている内に何もかも忘れている岡村さん。被害ボクサーの腕が治っているか確認していないのにこれなので、凄い困ります。欲望そのものは白でも黒でもなく同じメダルの裏表に過ぎない、という今作の姿勢としては清々しく一貫しておりますが。
幻の試合を終えて憑き物が落ちるのかと思ったら、俺は俺の欲望の為に死ぬまで生きる! という結論になり、物語的にはそれが肯定も否定もされず投げっぱなしにされるのが、凄く『オーズ』。
とりあえず、前回岡村の引退会見を仕切ったジムの会長さんは、スパナで急所殴るぐらいは許されると思います。
欲望は自己責任で。
「アンク……おまえ以外に、鳥のヤミー作れる奴がいるんだよな。そのせいでおまえは、他のグリードとは違う」
「俺の目的は一つだ。必ず完全に復活――いや、それ以上の体を手に入れる。それまでオーズは必要だ」
果たして、アンクの秘密とは――“アンクと酷似した左手”は、映司とアンクの後ろ姿をじっと見つめ、鴻上ファウンデーションでは咆哮パティシエが、赤い羽の為のバースデーケーキを作るのであった……。
大きな謎が浮上した所で、次回、通算1000回記念お祭り回前編(999回)。
物語も折り返し地点という事でか、後半戦への大きな布石を置きつつ、ここまでの『オーズ』にかかっていた靄が確信犯である事、その中心には、火野映司の抱える自己の希薄さがある事、が濃厚に詰め込まれたエピソード。
たぶん映司、道でコンタクトを落とした人を助けるのも、銃を持った犯罪者に追われている人を助けるのも、同じ感覚でやってしまうのだろうなーと。
自分の重さを見失っている映司は、助ける相手の重さの違いをわかる事ができない。だから、手を伸ばすけど引っ張れない。手を取った相手が表と裏のどちらに自分の体を引き上げるかは、映司には左右できない。
「手が届くのに手を伸ばさなかったら、死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ。それだけ」
それだけ。
劇構造そのものが、映司とシンクロしているようですが、後半、今作がどこへ行くのか、楽しみにしたいと思います。