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『仮面ライダーオーズ』感想24

◆第37話「眠りと1億とバース転職」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子
「ちゃんと病院に行かなきゃ駄目でしょ!」と伊達の隊長を気遣う後藤さんが、オカン状態。だがそんな後藤に伊達は、「後藤ちゃん、ちょっとめんどくさい」とコンビ解消を通告。
(俺のボケを最大限に活かせるツッコミは誰なのか……)
独り悩む伊達の前にドクターが現れ、なんと前金と成功報酬の合計1億円で事務所移籍と新コンビ結成を持ちかける……!
伊達と後藤が決裂した流れで、伊達の状態について知る事になる映司。脳に入った弾丸がいつ致命的な凶器に変わるかもしれないのに戦い続ける伊達が求める1億円はいったい何の為に、というのが改めてクローズアップ。
「俺達が居なくなっても残る医療支援でねぇと……」
伊達と一緒に戦地で働いた経験を持つ医者の言葉から、映司と後藤は、伊達が医療従事者を養成する学校を建設しようとしているのではないか、と想像の翼を広げる。
「自分が居なくなっても残る。凄い事ですよね」
主人公のトラウマに、アフリカの内戦という要素を持ち込んだ責任を、物語として取る一つの形として、メインキャラの一角である伊達も、現実の国際的な紛争とそれにまつわる問題にリンク。
この、紛争や貧困という、“ヒーローが直接戦えない敵”(むしろ、メタファーと戦い続けているが故に)と主要人物を直接向き合わせ、それを重要な芯の部分に据える、というのは今作のかなり挑戦的な部分であり、《平成ライダー》が構築してきた作劇の、更に一歩先へ踏み込もうとしたのかな、と思うところ。
前作『W』が、<仮面ライダー>(石ノ森ヒーロー)的なるものを、古典を意識的に踏まえながら次の10年に向けて再構築しようとした作品だとすると、今作は年間を通して現実の課題を直接提示し、白でも黒でもない世界を積極的に描く事で敢えて既存シリーズの作劇フォーマットを崩し、ヒーロー物の新たな作劇を志向する事で、平成ライダー》第1期からの脱皮を目指したのではないか――と感じます。
いわゆる狙った“問題作”ではなしに、世界にはヒーローの手が届かない問題がある、という事を基盤に据えて繰り返し向き合う事で、ドラマ性を新しい舞台に持ち込もうとしたのかな、と。
結果としてそれが、スッキリ着地しないエピソード群、その一方で過剰にエンタメしようとしている部分の見え隠れ、という年間を通してバランスの試行錯誤を引きずるという今作の短所にはなったのでしょうが、未来へ向けた目の付け所としては面白かったと思いますし、その挑戦がラスト1クールでどんな結末に辿り着くのか、楽しみにしたいと思います。
(そういえば、半分同期の『天装戦隊ゴセイジャー』も、かなり実験的な作品でありました)
その頃、グリード達はコアメダルを集める為に結託し、カザリの入れ知恵によってメズールとガメルが作り出した融合ヤミー・ウニアルマジロヤミーが出現。針を浴びせた大量の人間を不眠症にした上で一気に眠らせる事で、セルメダルをがっぽり回収。
アルマジロの装甲に苦戦するオーズだが、突然、地面から斧を取り出す(笑)
……え、プトティラの特殊能力ではなかったのですか(^^;
いい加減さに拍車がかかりましたが、オーズはタウバにチェンジすると電撃アックスでヤミーを粉砕。斧が急に『タトバ〜』と喋り出したり、この辺りの下りは正直よくわからず、とにかく斧をアピールしろ、という財団Bのオーダーを感じます。
大量のセルメダルに大喜びするアンクだったが、そこへ突然バースサソリ(出番があった!)が現れるとセルメダルを回収。それを、現れたグリード達に与えてしまう。
「突然で悪いんだけど俺、こっちに転職したから」
「え?」
「何言ってるんですか?!」
「まあとにかくそういう事でよろしく――変身!」
ドクターと共に姿を見せた伊達がバースに変身し、戦いが新たな構図になった所で、つづく。
本来なら衝撃の裏切り展開の筈なのですが、予告からサブタイトルから転職前提だったのでクライマックスの衝撃が全くなく、これはさすがに引っ張りすぎた感じ(^^; せめてサブタイトルはもう少しどうにかならなかったのか。


◆第38話「事情と別れと涙のバース」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子
「伊達さん、嘘ですよね?!」
「俺今まで後藤ちゃんに嘘ついた事ないでしょ」
後藤はバースに腹パンされ、アンクはカザリに追われ、オーズはガメル・メズール・バースの集中攻撃を受け、圧倒的な戦力差で大ピンチに追い込まれる映司達だが、後藤がバイクを爆破し、大量の缶ドロイドで目くらましをしている内に、なんとか逃走に成功。
「はんっ、夢なんてのは、おまえら人間が欲望を都合良く言い換えただけだ。綺麗も汚いもあるか」
伊達の裏切りを不思議な事ではないと嘲るアンクに対し、夢の為に金が必要というなら何とか捻出してみせる、と鴻上会長に頭を下げてお金を借りようとする後藤だが……算出された前借り可能金額は、78,000円(ちーん)
「君の欲望は、いつもここに留まっている。ここで感じたまえ!」
この期に及んで、頭でっかちで魂が篭もってない小さな男扱いを受ける後藤さん、ちょっと哀れ(^^;
「なあドクター。世界を終わらせるって、本気なの?」
「終わらせます。人も世界も、終わってこそ完成する」
「そうかなー? ずーっと続くからいいんじゃないの? 自分が死んだ後も何か残る。ドクターだってその人形を残して……」
「残れば醜い残骸です。美しい内に終わらせなければ」
ここで中盤、伊達がドクターに絡んでいた事が活き、人間/グリードであるドクターを少し掘り下げ。伊達の言葉に耳を傾ける事なく、ドクターは終末の為の行動続行を告げ、伊達と2人で、映司とアンクを誘い出す。だがオーズvsバース直接対決の寸前、そこに後藤が現れ、伊達の口から、1億円の使用目的が明かされる……それは、脳に入った弾丸を取り出すという超難度の手術を成功可能な闇の医者――ブラック○ャック先生への依頼代金だった!
「悪いね後藤ちゃん。俺最初っから欲望まみれなんだ。まだ死ぬわけにはいかねぇ、てさ」
伊達の言葉に、凄くいい笑顔で勝ち誇るアンク(笑)
「だったら……だったら俺が伊達さんを止めます」
伊達を死なせないという約束の為に、伊達の継承を目指す後藤は伊達に銃口を向け、伊達はバース変身。……しかし、バースは構えた銃口をドクターへと向ける。
「すまねぇな、ドクター。こんな仕事は俺にしか出来ねぇ。あんたをグリードにするなってよ、会長が」
まあ今更、伊達が裏切るという展開そのものがどうしても茶番風味が強かったのですが、実は会長の差し金でした、とあっさりバース反転。
「伊達くん。私にあそこまで近づいてきたのは、姉以外にはあなたが初めてでしたよ。そうでなければ本当に協力して貰いたかったのですが。――バースには自爆装置がついています。マニュアルに書いてあった筈ですが」
自爆――それは、機密保持の為の当然のセキュリティ。MAYDAY! MAYDAY!
「……マニュアルは苦手なんだ」
登場時の台詞が用いられ、ドクターは自爆スイッチをぽちっとなするが……バースは爆発しない。
「悪かったな。俺はマニュアルが大好きなんだ!」
バースの自爆装置は、何かとコンピューターをいじるシーンのあった後藤が、既に解除済みだったのだ!
色々と不遇な扱いの多い後藤さんですが、すっかりメダル銃を生身で撃てるようになっているし、メカに強いし、本来、常人レベルでは滅茶苦茶有能な人なのだろうなぁ……。
「後藤ちゃんナイス! ――悪いな、ドクター」
引き金を引くバースだが、そこにドクターが待機させていた3グリードが登場。3属性攻撃を受けたバースは、番組史上最高レベルの爆発でど派手に吹っ飛ぶ!
この際、ドクター(半分グリード)が、こっそり車のドアの影に隠れているのですが……ちょっと素?
大ダメージを受けたバースは変身が解けてしまい、倒れ伏す伊達に駆け寄る後藤。
「後藤ちゃん、俺を死なせないってやつ、痺れたわ」
「しっかり、今病院へ!」
「医者はここに居るっつーの。でも、もういいや。……後藤ちゃんが受け継いでくれれば、俺は死なないって事だ……そうだろ?」
「何言ってるんですか?! 俺にはまだ……」
「自分を……信じろ」
常に人生崖っぷちだった伊達に「受け継ぐ/残る」という言葉を前回今回で何度か重ねて乗せ、最後に後藤に渾身の激励を残した伊達明……リタイア? これまで後藤に数々の指南をしてきた伊達さんですが、今回冒頭の「俺今まで後藤ちゃんに嘘ついた事ないでしょ」という言葉が、ここでまた効いてくるという構成。
オーズ@サゴーゾはグリード相手に3対1で苦戦し、またも変身解除。だがそこに、苦節3クール、あの後藤慎太郎が、遂に、ヒーロー登場からのヒーロー歩行からの変身を決める!
「伊達さん……一緒に戦って下さい。――変身」
伊達の形見のバースベルトを装着した後藤は、セルメダルをぽきゅっとな。
今こそ誕生した後藤バース=略してごバースは、咆哮と共にウイングを装着して突撃し、その出鱈目な勢いに戸惑っている内にやられるグリード達。
……これも、ノリか、ノリなのか?!
「あいつ……伊達より酷い」
周辺のあちこちにぶつかって余計な被害を撒き散らしながら、ごバースはフルアーマーからブレストキャノンを炸裂させ、巻き込まれそうになる映司(笑) 危うく突然のライダーバトルから残り1クールで主役交代する所でしたが幸い外れ、アンクは吹き飛んだ3グリードから適当にコアメダルを回収するが、そこに子アンクが現れて炎を撒き散らしドクター組はまとめて退却。
工場に戻って倒れ伏す伊達に駆け寄る映司だが……
「あ……言い忘れた。退職金、俺の口座に振り込んどいて」
伊達明、復活。
……うん、まあ、そんな事だろうとは、思いました。
かくして、伊達明は今回の潜入作戦の危険手当+後進育成の報償+退職金、しめて5千万円を鴻上ファウンデーションから、そこにドクターからの前金を合わせて、きっかり1億円を手に入れるのであった。
「素晴らしい! 君の欲望ミッションコンプリーーートだ! おめでとーう!!」
鴻上ファウンデーションが諸々合わせて5千万円だとすると、ぽんと5千万円渡しているドクター、凄く、気前いい……(笑)
そして、普段の活動の儲けが全く加算されていない気がするのですが、やはりバースは赤字続きだったのか。
「生き残らなきゃ学校も作れないからな。火野、おまえもいつか来い」
「え?」
「おまえの欲、思い出せよ。……おいアンコ! たくおまえは……別れの言葉ぐらい無いのかよ」
「…………俺はアンクだ」
1億円を手に入れた伊達は手術を受ける為にブラッ○ジャックの元へと飛び立ち、後藤は黙々と特訓を続けながら飛行機を見送るのであった……。
伊達明退場編でしたが、「突然薄幸のヒロインと化した伊達さんがブラック○ャックに手術を受ける為に去って行く」という話の骨子は、正直いまいち(^^; そこは弱い自覚はあったのか、ドクターとの絡みと後藤さんの引き上げを合わせて、バース交代編も兼ねましたが、その為のギミックであるバース転職も、いまいち面白くならず。
伊達&後藤コンビへの思い入れによっても感想のだいぶ変わるエピソードかなとは思いますが、個人的には正直、後藤さんには小さいままで居て欲しかった(え)
いや、今作で一番、成長要素……というか、世の中の裏と表をあるがままに認める事を強いられているのは後藤さんなので、展開としては納得なのですが(笑) 後藤さんが不遇なのって、メインキャラの中で後藤さんが一番“真っ直ぐ”だから……という所に、今作のひねくれ具合を見る所であります。