はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

赤黒いアイツはデッドプール


 アメリカ某所――タクシーの後部座席で一人は寂しいと、強引に助手席に乗り移ってくる、真っ赤なボディスーツと覆面の男デッドプール。背中に二本の刀を刺し、拳銃の残弾数を数えるデッドプールは、タクシー運転手に陽気に恋のアドバイスを授けると、眼下のハイウェイを走る黒塗りの車に飛び降り、黒服の男達と盛大なドンパチを開始する。フランシス、という名の男を捜すデッドプールの正体と目的は?!
 今、スーパーだけどヒーローじゃない男の、凄絶なラブストーリーが幕を開ける……!
一人称は「俺ちゃん」、敵対する者は容赦なく葬り去り、下品な冗談を次々と飛ばす、異色主人公によるアメコミヒーロー映画。
見応えのあるアクション、テンポの良い展開、緩急のしっかりついたストーリーの構成、癖の強いキャラクター達も面白く、2時間飽きさせない出来でしたが、個人的なセンスとは、ちょっと合わず。面白かったけどツボには入らなかった、というか。
どういったノリの作品か、というのはある程度知った上で見たので文句はないのですが、我ながら血飛沫と下ネタは得意でないなぁと改めて(^^;
もともとアメリカのアクション映画は、特にバイオレンスを押していない作品でも、しばしばモブ戦闘員が無駄に惨い最期を遂げたりして軽く引いたりするのですが、今作は一つのセールスポイントにしている関係で、グロまでは行かないものの、かなりの流血量。「部分切断」とか「貫通」とか、とにかく“痛そう”な描写が苦手なので、好みからするとその辺りの刺激が少々強すぎました(^^; あと、地味に嫌だったのは、整氷車。
それから、もともと原作のデッドプールが『X−MEN』が初出のキャラだそうで、X−MENが居るのが前提の世界、で展開するのですが、私『X−MEN』映画を見た事が一つも無く、目から光線を出すリーダー・爪の人・磁力を操る悪いダンディ、ぐらいしか知識が無い為、ミュータント云々には若干ノリきれない箇所もありました(この辺りは私の前提知識不足の問題ですが)。
でも、コロッサスはこの映画の癒やしポイント。
特典映像の制作裏話によると、以前にウルヴァリン映画にデッドプールモチーフのキャラが登場しており、その際に演じた俳優(今作の主演俳優)などの思い入れにより、その時のウェイドは“同名の別人”であり、“真のデッドプール”映画を作ろうと数年かけて今作にこぎ着けたそうですが、その辺りの経緯を含めて、批判的な意味ではなく特にコミックファンに強く意識の向いた作品かな、という印象。
なので、あのデッドプールをコミックに忠実に実写化したぜ! という溢れんばかりの愛情と熱意にどのぐらい共感できるか、コミックにおけるデッドプールがどのように誕生してどういった歴史を積み重ねてきたのか、という文脈を共有しているかどうかによって、感触の変わる作品という気はします。
アメコミ門外漢からすると、近年のマーベルヒーロー映画はそういった文脈の共有をあまり求めない作りに感じていたので、そこが今作の特色かなと。
余談ですが、特典映像名物?、(主に)おじさん達が、俺達がいかに頑張ってこの映画を作ったかを目をキラキラさせながら語り続けるのは結構好き(笑) クライマックスの舞台は、トラック30台分のスクラップを運び込んで作り上げたとか、マネーとマンパワーの恐ろしさに震えますが。
おじさん達以外だと、ネガソニック役の女優さんが、昔デッドプール役の俳優と一緒に写っているように見える合成写真を作成した事がある、というほっこりエピソードが面白かったです。
ちなみにネガソニックは声が嶋村侑さんだったのですが、アイーダ様でもはるかでも年嵩のハスキー演技でもなく、ちょときつめの10代演技がまた全然別の引き出しで、幅広い。
一番好きなシーンは、冒頭の「デップー、いきまーす」による降下突撃。あ、ファンの間の通称だけではなく、自分で言うんだそれ、的な。そして、車の屋根を突き破って飛び込んできた謎の覆面男に対し、割と普通に対応する黒服達。この世界では、割とある事なのか?!
後、これから決戦に挑むぞ、という所までネタにスライドしてきたのは面白かったです。それも一発ギャグのヒーロー物パロディというだけではなく、割と尺使ったネタにしてきた所が。
一番好きなキャラクターは、タクシー運転手(笑) あんなにい奴だったのに……。
私のストライクゾーンからは少し外れていましたが、アクション活劇としては綺麗にまとまっていましたし、物語に緩急を付ける為の構成の工夫(回想の挟み方)が特に良かったと思います。それ自体が、“第4の壁”を越えるギャグになっていたのも秀逸。個人的な感覚としてはあれ、デッドプールの一日ドキュメンタリーを密着撮影している超人カメラマンが横に居る、みたいな気分になって見ていましたが(^^;