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『ビーファイターカブト』感想7

◆第10話「対決格闘技マスター」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:浅香晶)
世界選手権連覇を狙う柔道家、日本一といわれる剣術家らが次々と絶滅怪人ガンガルーに襲われ、失踪。吸い込んだ者の力を自らのものとする能力を持ったカンガルーは、様々な格闘技術を身につけて自身を強化していき、その最終的な目標はビーファイターを吸収する事による昆虫魂の入手にあった!
健吾と蘭が連続行方不明事件の調査を開始している頃、甲平は今日も今日とて部活動に精を出し、助っ人の筈なのに1年生の指導までする甲平は本当にいいヤツ。
なおゲストの、甲平を慕うサッカー部後輩ズの一人が、後のブレイク限界ゴーオンゴールドな徳山秀典(当時14歳)。
サッカー部の後は茶道部の助っ人(部室の模様替えでも手伝わされるのか?)に向かおうとする甲平だったが、学校の卒業生である近所のボクシングジムの世界チャンプをガードする、と張り切っていた級友達が、忠告を無視してガードに向かってしまった事を知る。事件にメルザードが関わっていたら危ない、と後輩ズと共に慌てて追いかける甲平だが、目の前でガンガルーに襲われる、チャンプと級友達。
(こいつらの前じゃ、超重甲できない)
え? そうなの??(^^;
やたらに正体を知られない方が無難というのは確かでしょうが、既にメルザードには顔割れていますし、目の前で人命が危険にさらされている状況で優先するほどの秘密とはとても思えないのですが。
性格を考えたら甲平の意志とは思えないので小山内博士から強く言い含められているのでしょうが、甲平=カブトンである事を秘密にして守られるものって、(偶発的要因だったとはいえ)高校生を戦士として戦わせている事を隠しておきたいというコスモアカデミアの世間体では。
何か改めて契約書をかわしている可能性もあり、この件に関しては小山内博士もコスモアカデミア上層部との間で板挟みなのかもしれませんが、これ確実に、変に隠して傷口を広げるパターン。
“秘密の高校生戦士”という甲平のポジションはどうにも、初期コンセプトか何かが『ビーファイター』世界の設定と噛み合わないままあやふやに継続されている印象ですが、余計な地雷を無造作に踏んでくるのは凄く浅香脚本です。
甲平が電話ボックスを探している間にボクサーはカンガルーに吸い込まれてしまい、一足遅れで駆けつけたクワガーとテントウは、世界レベルのボクシングに苦戦。カンガルーの真の狙いがカブトンの昆虫魂にあると知ったクワガーは、取り込まれそうになる寸前に咄嗟に超重甲を解除して昆虫魂を守るファインプレイを見せるも、カンガルーに吸収されてしまう。
いっけん、クワガー/健吾を吸収したのは無意味、みたいな処理をされるのですが、健吾、跳び蹴りを放つと足が光って岩石を粉々に砕ける技を修得している空手の達人なので、凄く、強化したような(笑)
残されたクワガーチェンジャーを確保したカブトンとテントウは一時撤退し、博士は二人にカンガルーの弱点が判明するまで超重甲の禁止を指示。健吾および他の格闘家達が吸収されている事に対する扱いが凄く軽いのが引っかかったのですが、「取り込まれた人達は生きている」みたいな分析シーンが尺の都合でカットされたりしたのでしょうか。……まあ、クワガーに関して言えば、既に2代目はリストアップされているのですが!
「和也くん、亡き健吾の為にも、君の電光三段蹴りを地球の未来の為に役立ててほしい。……というか、昆虫魂に選ばれた以上、拒否は不可だ!」
人は死して名を残し、昆虫魂は永遠に不滅だ!
ひとまず怪我をした同級生を見舞いに行く甲平だが、後輩ズから友人達を見捨てて怪人から無様に逃げ出したボウフラ以下の臆病者め! と冷たく蔑まれてしまう。
「健吾……どうしたらいいんだ?」
ここで甲平がクワガタチェンジャーに向けてこぼし、事情を知ったゆいがわざと知らないフリで明るく兄を励ます、という流れは良かっただけに、甲平が「健吾の無事を知っている」のか「健吾の無事を信じている」のか、という感情の掘り下げが足りなかったのは残念。
メルザードがBFを誘き寄せる為に街を攻撃し、人々が避難する時間を稼ぐ為に、生身で立ち向かう甲平。
「甲平が超重甲せずに戦ってるのか?! 甲平! 私との約束事を守ってるのか」
……どこをどう聞いても、甲平は約束を守らないと思っていたようにしか聞こえないのですが、小山内博士はどこまで人間の底辺をゆくのか。
そしてカマキリ、
「なぜビーファイターにならん!」
目的をバラしたからだと思います!
「早く超重甲しろ。そしてその力を渡すのだ」
「おまえらの勝手にさせてたまるか! カブトのパワーも、この地球も!」
病院の避難が終わったと甲平に伝えに駆けつけ、わざわざ後輩ズをともなって甲平の勇姿を見せつけるゆいちゃん、安定のブラコン路線。変に賑やかしアイドル化すると嫌でしたが、その要素はむしろ蘭に入り、ゆいちゃんは気配りと知性を兼ね備えているのが、良い所。
蘭もやってきて混戦になる中、甲平がオブジェをミラクルシュートすると、カンガルーの腹の袋にクリティカルヒットしたダメージで、吸い込まれていた人々が解放される……と、ここまでそれほど悪くなかっただけに、解決が一気に勢いだけになってしまったのは残念。
「そうだ甲平、チャンスが見えた! 今がチャンスだ!」
健吾も復帰し、カンガルーの弱点部位を発見して超重甲する3人だが、そこに迫り来るメルザード戦闘機。前回スキップしたので2話連続は無理だったのかもしれませんが、カブトンの昆虫魂を吸い込む事が目的なのに何故か襲来する戦闘機→ネオビートマシンで適当に蹴散らす→マシンを降りて地上へ→回り込まれて「?!」みたいな反応を見せるカンガルー(笑)
と、ノルマの為に物凄く意味不明な事に(^^;
これは個々の脚本とか演出というより全体の責任ですが、日笠プロデューサーは割とその辺りの辻褄を気にしない方だったのでしょうか。
カブトンはカンガルーを《挑発》して敢えて吸い込まれようとし、開いた袋をクワガーがセメントビームで石化。無防備になったカンガルーをカブトンランスでフィニッシュし、メルザードの作戦は阻止されるのであった。
後日、甲平に対する誤解を解き、謝ろうとする後輩ズを制して笑顔で練習を始める甲平、ひたすらいいヤツ……以前にゆいちゃんに「乗せられやすくて、お調子者で、カチンて来る事もあると思うけど、でもあいつ、すっごくくいいヤツなんです、すっごく」という台詞がありましたが、甲平は「格好いい」とか「好青年」というより、とにかく「いいヤツ」で、演出も脚本もそこが一貫しているのは良い部分。
メルザード幹部陣が期待したほど面白くなってきてくれない中、甲平の好感度の高さはだいぶそれを補ってくれています。甲平がいいヤツであればあるほど、小山内博士はじめコスモアカデミア上層部の愚劣な暗黒ぶりが際だっていくのですが!
第6話に続き、特別面白いというわけではないものの、余計な枝葉を繁らせずにシンプルにまとまった見やすいエピソードで、今作ここまでのところ、浅香晶 > 扇澤延男という状況に、激しく困惑します(^^;
扇澤さん、前作で働き過ぎた反動なのか、一本化したプロデューサーとあまり相性が良くないのか。『ジバン』から数えると、<メタルヒーロー>シリーズを支えるローテ脚本家として8年目に入るので、勤続疲労的なものもあるのかもですが。作品全体としてはそれなりに楽しんでいるので、扇澤さんの浮上を切に期待したい所です。
次回――健吾に女の影。
……え、なんか、予告に見せてはいけないのではないかというシーンのカットが(^^;