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『ビーファイターカブト』感想20

◆第31話「合体最強銃と哀戦士」◆ (監督:石田秀範 脚本:扇澤延男)
哀 かなしみの哀 いまは残るだけ 名も知らぬ戦士を討ち 生き延びて血へど吐く
と、脳内で井上大輔が歌い出すサブタイトル。
ライジャの後継者争い脱落で我が世の春になるかと思いきや、ビークラッシャーの登場ですっかり存在感の薄くなっていたデズルが、クラッシャーに対抗心を燃やして自ら出撃。親衛隊と共にクワガーを追い詰めるが、そこに新たな昆虫戦士が現れる。
「音の戦士――ビーファイターミン!」
黒とオレンジの配色で、ゲンジの2Pカラーのようなデザインの新たなビーファイターは、直剣二刀流と武術の使い手。更に胸アーマーが左右に展開し、アクセルフォー……じゃなかった、音波攻撃ソニックプレッシャーという、蝉の戦士らしい攻撃を放ち、デズル軍団を退ける。
「私のこと、君たちの同志思わないでほしい」
だが、本職は小学校教師だというリー・ウェン(李文)は、ビーファイターとして戦う事を拒否。戦いを嫌うリーは、自分がどうして昆虫魂に選ばれたのかわからないとこぼし、3つ目の追加武装であるセミッションマガジンも引き渡さずにブラックアカデミアから立ち去ってしまう……。
水鉄砲で遊ぶ子供達を見て「そんなに戦争ごっこしたいか」と呟くリーの描写に、『超人機メタルダー』の
「そんなに戦争ごっこがやりたいか!」
(から繰り出される春田純一の蹴り)
を思い出してしまったのですが、何か更に元ネタがあったりするのだろうかと思って検索かけてみたら自分の感想が引っかかったので、単なる偶然の模様。
健吾は、リーが昆虫魂に選ばれたのは何か意味があるに違いない、と説得を試みるが、街にビークラッシャー、そしてそれを制してデズルが出現。
「俺は生まれ変わった。デズルにしてデズルにあらず、今の俺は、デズルザグレートなのだ!」
……かつて、これほどまで期待できないパワーアップ名称があったでしょうか、いや無い。
ところが、出オチかと思われたデズルザグレートは、トンボマグナムもブライトマグナムも弾き返すという、予想外の強さを披露。
「リーが居りゃあ! セミッションマガジンさえありゃあ!」
……早くも、「絶体絶命でも諦めない心」とか「メカだけに頼らず、心で判断する」とか放り投げて、科学技術の恩恵にずぶずぶなんですが。
リーに助けを求めるカブトンとテントウに対し、戦う意味を見いだせないリーを修羅の昆虫魔道に引きずり込んではいけないと止めるクワガー。それを聞いたリーは頭をかきむしり、苦悶の中で戦う「理由」を自分の中に見つけだす――。
「私わかってるよ……ビーファイターの戦い、この地球から全ての戦いを終わらせる為の戦い。私……私もそのビーファイターの一人よ! 同志ーーー!!」
つまり、新帝国ビートルによる世界の支配と昆虫魂による人類の制御こそ、世界から戦いをなくす手段なのである! 起てよ同志諸君! ジークビートル!!
意外な新戦士との方針の違いという展開で、「戦う」信念と「戦わない」信念のぶつかり合いから新しい何かが生まれるのかと期待していたら、最初からリーの中で答は出ていた、という解決にはガックリで、どうも扇澤さんのアベレージが冴えません。
「戦う事悲しい。悲しい……悲しいから私の手で終わらせる!」
つまるところ、ビーファイターそのものを揺るがす信念の衝突というよりも、たまさか運命に選ばれてしまった一般人の悲劇、という題材だったようですが、30話越えてゲストキャラを通して炙り出すにしては、掘り下げ不足。もしかしたら扇澤さんの中で、前作終盤のジプシー拓也の再挑戦という意図があったのかもしれませんが、今回も中途半端になってしまいました。
「全ての戦い、終わらせる!」
中身が中年(?)男性という事で、ヒーローらしさを補強しようとしたのか、妙に格好いいカットが多いミンはデズルに猛攻を浴びせ、セミッションマガジンをクワガーへと託す。セミッションマガジンって何それ……と思っていたら、その正体は、ずばりマガジン(弾倉)部分。
インプットマグナムと組み合わせる事で、水や雷の力を発動させるセミマガジン。唐突に「水」とか「雷」とか漢字が浮かぶのは、中国支部で開発されたからという事なのでしょうか……発動するとイメージ映像でデズルが吹き飛ぶという適当さと雑な汎用性が、ウォンタイガー(『五星戦隊ダイレンジャー』)の「虎の子大秘術」辺りを思い出します(^^;
3つの新装備を合わせて完成したインプットライフルは、玩具としての再現度優先だったのかもしれませんが、ここに来ての新兵器にしては小ぶりでインパクト不足。折角の合体武器なのに、特にハッタリをつける事なくいきなり組み上がってしまうのも、どうも盛り上がりません。
衝撃の反動に耐えられるのはカブトンだけ、とライフルはカブトンに渡され、躊躇していた割に自分の名前をつけたカブトニックバスターが発射。余裕を見せてノーガードで向かってきたデズルザグレートは文字通りに木っ端微塵に吹き飛び、大方の予想通り、敢えない最期を遂げるのであった!
「俺、怖いよ……」
デズルザグレート(翌年の『電磁戦隊メガレンジャー』に登場する、究極生命体(失笑)を思い出すニュアンス)を撃破した喜びも束の間、メタルヒーロー名物オーバーキル武装の余りの威力にカブトンが恐怖を感じる、というのは良かったです。
「それでいいんだ」
そこへ出てくる小山内博士。
「武器を持つ事の重さ。引き金を引く事の重さ。それを忘れた時、どんな戦いも戦いの為の戦いでしかなくなってしまう」
リーとの関わりで健吾もこれといって深まらないし、ここまでの展開は残念でしたが、戦いへの意識を改めて見つめ直すという、このオチは良かったです。博士も厭味にならない程度に、それらしい役割を確保できましたし、これがもう少し、健吾とリーの絡みと連結してくれれば良かったのですが。
そして様々な前例を見る限りでは、カブトンは遠からずオーバーキル兵器の魔力に飲み込まれる可能性が高め(笑)
ビーファイターが戦いに慣れすぎてその意味を見失ってしまった時、それに歯止めをかけられるビーファイターの良心回路がリーなのかもしれない、と3人は去りゆくリーを見送って、つづく。
一方メルザードでは、五体バラバラに吹き飛んだデズルをドードが回収。ライジャ同様、要塞内部に保管してその復活を待つのであった……とビークラッシャーの代わりに新兵器の踏み台にされたデズルにも復活フラグ。結局ここまであまり面白くならないままだったデズルですが、一時退場する事で、再登場時の爆発に期待したいです。また、一度敗れ去るも復活の可能性がある事自体に、ライジャとデズルが何やら特別な存在である事が窺えますが、その辺り、マザーの思惑と絡んで面白く繋がってほしい。