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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第12話

◆Space.12「11人の究極のオールスター」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)
 イカの弱点を探るべく、橙青金銀緑が威力偵察に出撃。
 キューレットで赤が出なかった事に皆が驚くのですが、この局面で赤が出てこないのは、むしろますます確定に傾く仕込み疑惑。
 戦闘の結果、イカの肩や膝などで光るクリスタルは目であり、イカは10の目によって周囲全ての攻撃を視認している事が判明する。つまり、10の目を上回る11人の同時攻撃ならイカの回避も通用しない――筈。
 「そう、11人で同時に攻撃すれば、この戦い、勝てる」
 昔の偉い人は言いました。
 戦いは数だよ兄貴!
 「ごめん……俺……無理だ」
 ところが完膚なきまでの敗北を引きずるラッキーは出撃を拒否し、ますます自分の内に閉じこもってしまう。
 「宇宙を取り戻すんじゃなかったのか?」
 「……俺は昔からちっともラッキーなんかじゃない」
 ラッキーは司令に、両親と生き別れになり、脱出カプセルで着陸した辺境の星で成長した幼少期を語り、ラッキーの過去に関しては大まかに匂わせるに留めました。衣装からは王族の類が想像されて貴種流離譚の要素も入ってきそうですが、説明しすぎずに今後の伏線としてくれたのは良かったです。
 「つまり、俺は生まれつきアンラッキーなんだよ。なのに、ラッキーなんて……」
 「君が実際にラッキーかどうかなんて、どうでもいい」
 「どうでもよくないだろ?! 俺はラッキーだからキュウレンジャーになれたんだ!」
 第1話の感想でラッキーについて、
 “難事に直面してもその中にある希望を見つけ出し、だから自分は幸運だと状況を前向きに捉えていく”男
 ではないかと書き、ここまでそれをラッキーの“強さ”だと捉えていたのですが、敗戦とちょっとした不幸の連続でラッキーが思わぬ脆さを見せ、なによりラッキー自身が、幸運な自分自身という思い込みの繭で自分を防衛していた事が判明。
 思えばロボット合体の度などあまり関係ない時にもやたらと「よっしゃラッキー」を連呼していましたが(メタ的には“決め台詞”なわけですが)、それはむしろラッキーの“弱さ”ゆえに、常に繭を内側から紡ぎ続けなければいけない張り詰めた叫びであったと、巧く理由をつけてきました。
 「――違うね。君はどんな時でも幸運を信じる力があるから、キュウレンジャーになった。エブリタイム、よっしゃラッキー、じゃないのか? そうやって、運を呼び込む男だ」
 勿論、“難事に直面してもその中にある希望を見つけ出し、だから自分は幸運だと状況を前向きに捉えていく”という要素は意識してか無意識にかラッキーは持っており、それを間違いなく“強さ”だと評する司令。
 「…………そんな事言われても……」
 一度切れてしまった糸、割れてしまった繭を呆然と見つめ、その意味を取り戻せないラッキーだったが、そこへ飛び込んでくるもふもふヤクザ。
 「ラッキー! 歯ぁ食いしばりゃあ!」
 ガルはラッキーを殴り飛ばすと、反撃のパンチを以前とは逆に受け止めてみせる。
 「おまえが俺に火を点けた。戦えってな! だからお前には、戦い続ける責任があるんじゃぁ!」
 ここでガルを通して物語がラッキーに、おまえに「いち抜けた」する権利は無い、と突きつけてくるのは今作らしくて良かったです。一歩間違えると忠犬のただの依存になってしまうのですが、他人の命を勝手にベットしているラッキーには、正しく「責任」があるというのは、帳尻が合いました。
 そしてその言葉は、ラッキーに意味を与える。
 ガルはもう一撃をラッキーに浴びせ、このやり取りを、ブリッジから音声付きでモニターしている面々(笑)
 乙女日記を覗き見するスパーダとラッキーだけが非紳士的行為なのではなく、運命共同体の革命組織に、デリカシーとかプライバシーとか、そんなものは最初から存在しなかった!
 「俺は……俺たちは、おまえの運を信じ続ける!」
 忠犬はなぜ勝手に、皆を代弁して「たち」を付けるのか(笑)
 多分ブリッジで、スティンガー辺りが難しい顔で唇をねじ曲げている。
 「だから、もう一度、おまえの運を試してみんかい!!」
 ガルはラッキーに奮起を促すと足早に立ち去り、「運を試す」と「命を賭ける」が隣り合っているのが、とても『キュウレンジャー』世界です。
 もふもふヤクザに叱咤されながらもすぐには立ち上がれなかったラッキーは、皆が出撃した後のオリオン号で、ひとりキューレットを回すと……転がり出したのは赤。
 「そりゃそうか……一つしか入ってないんだもんな」
 それでももう一度、キューレットに獅子キュータマを入れてルーレットを回したラッキーは、再び転がり出たキュータマを握りしめて自らを鼓舞するように吠える。
 「よっしゃラッキィ!」
 それは幸運なのか、必然なのか、魂なのか……男が決めたのはただ一つ、世界を変える為に、その全てを、自分の力にする事。
 ラッキーを欠きつつも再びイカに立ち向かう10人のキュウレンジャーだが、ここに来て絶好調の力を見せるイカに苦戦し、まとめて変身解除にまで追い込まれていた。
 「そこまで気がついた事は誉めてやろうじゃなイカ。だが、私の目は、10個ではない!」
 イカが体中で蠢く無数の目を露わにし、数が上回ればいい、という攻略法はあまりに乱暴だったので、一度それをひっくり返してくれたのは良かったです。……まあこの後、結局ラッキーが更なる数の暴力で勝利するのですが(笑)
 「終わりにしようじゃなイカキュウレンジャー!」
 倒れ伏す10人のキュウレンジャーに死の銃口を向けるイカだが、その時、獅子キュータマをもう一度掴み取ったラッキーが現れ、双子キュータマを発動して2人……更に発動して4人……8人……16人……と倍々に増殖していき、膨大な多重分身でイカを取り囲む!
 ランチェスターランチェスター、と唱えながらラッキーがセイザブラスターを一斉発射すると、あまりにも膨大な量の弾丸がイカの視覚とその処理の許容量をオーバーし、無数の目の破壊に成功。
 誰か事前に思いついても良さそうな手段ではあるのですが、発動前のラッキーの台詞が
 「みんなが信じる俺の運、試してやるぜ!」
 なので、多重発動の負荷によるライジング爆発の可能性があったと推定され、みんなが俺の運を信じているという事はつまり、俺の運にみんなの命を全賭けしても良いって事だ!
 忠犬が口を滑らせたせいで、危うく救世主伝説が幕を閉じる寸前でした。
 双子キュータマの多重発動リスクが不明瞭な為に、ラッキーの行動がそこまで破天荒な既成概念の突破というトリックスター的行為に見えない(とりもなおさず宇宙幕府の打破というのが、現宇宙を支配する価値観の転覆であり、そこがマクロとミクロで連動しているので)のは弱い部分で、ラッキー不在の分を司令が双子キュータマで分身する事で補おうとするも「私の目は、10個ではない!」で打ち破られてしまうが、そこに来たラッキーが「無茶だ!」という制止を振り切って双子キュータマで多重分身をやってのける、ぐらいの段取りは足しても良かったかもしれません。
 宇宙一のラッキーとは、何か――
 自分がキュウレンジャーになった意味とは、何か――
 砕けた繭の内側で脆い自分と向かい合い、一つの答を得たラッキーは、高々と拳を突き上げる。
 「おまえらが支配している限り、この宇宙に運のいい奴なんていない。だから――俺は言い続ける! よっしゃラッキー! てな! 言い続けて変えてみせる。宇宙を、救ってみせる!!」
 今、宇宙幕府に支配されるこの時代に生まれてしまった事自体がアンラッキーであるからこそ、ラッキーは、それは違う、と言ってみせる。
 どんなアンラッキーの中でも、ラッキーを見出して掴み取る。
 宇宙一ラッキーな男とは、宇宙一諦めない男。
 そしてそれを涙する人々に伝えるのが、究極の救世主キュウレンジャー
 どんな地獄の底でも、生きている限り、スーパースターは拳を突き上げて抗い続ける。
 やがて、それが真実になる日まで――よっしゃラッキー!と。
 これまでラッキー個人のモットーであり自らに対する鼓舞だった「よっしゃラッキー!」が、明確に「世界と運命に抗うメッセージ」へと姿を変え、個人の象徴から物語全体の象徴へと見事にジャンプアップ。
 ラッキーが抱えていた“弱さ”がコインの表裏である“強さ”の面を表にし、自身の殻を破るという要素も通過したのが秀逸で、個人のモットー→ヒーローのスローガンというシフトと、それが示すラッキーの強さ→弱さ→強さ、という表現を同時に行うという、毛利さんがかなりテクニカルな事をやってのけました。
 悪の組織に支配された世界、という作品コンセプトもしっかりと取り込んで、ラッキーとは如何なるヒーローなのか、というのが鮮やかに完成し、「運命に抗う」というテーゼが好きなのはありますが、かなり良い主人公になってきたと思います。
 改めて第2話の仲間語りはやはりちょっとはみ出しているのですが、これでラッキー、もう少し他人の弱さが理解できるようになるやもしれません。……ラッキーには、それはわからないままでいてほしいという気持ちもありますが(おぃ)
 運命に立ち向かい、この宇宙を救うべく、11人は並んで変身し、ど派手に揃ったキュウレンジャーは、怒濤の連続攻撃でイカを追い詰める。
 「1人を相手に11人で戦って、卑怯だと思わないのか!」
 「おまえの相手は、11人じゃない!」
 「なんだとぉ?!」
 「俺たちは、平和を願う全ての人の思いを背負って戦ってんだ! おまえの敵は宇宙に生きる全ての人、いや――宇宙そのものだぁ!!」
 つまり悪人に、生存権は無い。
 宇宙に存在する権利を根こそぎ否定されたイカは、11人揃ったギャラクシーオールスタークラッシュで大爆発。
 「「「「「「「「「「「グッドラック!」」」」」」」」」」」
 元来は“強大な悪に力を合わせて立ち向かう”というコンセプトが、時に不均衡な戦いの構図に見えてしまう事に対するメタな要素も含んだやり取りでしたが、キュウレンジャーは何の為に戦っているのか、を示すと同時に、支配する側に立って他者に非道を働くならば、ひとたび事が起こればその全てを敵に回す覚悟はあるんだろう? と敵にも命全賭けを強いるのが、凄くキュウレンジャールールです。
 権勢に生きるか、革命に死すか、全ては俺とおまえの運次第。
 トモキュータマを取り返すキュウレンジャーだが、イカが巨大化し、キュウレンオーとリュウテイオー、そしてあまった金銀桃で立ち向かう。イカは雨雲を呼び、強酸の雨が降り注ぐフィールドを生んで地形効果を味方に戦うが、金銀桃ボイジャーが空にビームを放つと暗雲が晴れ、形勢が変わった所で、2体の巨大ロボットがスーパーセイザドッキング。
 キュウレンオー(5玉)の背中にリュウテイオー(3玉)がくっつくというシンプルな合体で……3つ余った。
 八玉合体リュウテイキュウレンオーは、イカの攻撃をものともせずに突進すると、8つの星の重なりから破壊光線を放つオールスタースクランブルブレイクでイカを撃破。
 背中に荷物を載せた姿なので如何にも動きにくそうではあるのですが、合体ロボとしては突進して飛び道具を放つだけで、冴えているとは言いがたい初登場(^^; 玩具展開の都合もあるのでしょうが、11人のオールスター、と盛り上げておいて8体合体というのは、コンパチロボにしてもかなり残念。
 リュウボイジャーは元より合体用ではあるのですが、リュウと小熊がしれっと入って、公式救世主3人が外れているというのも、消化不良に感じてしまいます。正統救世主ロボ(9玉+アルゴ船?)の予定が決まっているのかもですが、せめて余った3つを巨大な剣とか銃にする、というのは出来なかったのか(これも今後の可能性としてはあるかもですが)。
 最後はとりあえず11人並んで勝ち名乗りを決め、死闘を乗り越えて勝利を喜ぶキュウレンジャー。……だが、将軍ドン・アルマゲにより、地球には新たな家老が送り込まれていた。
 「実に楽しみだよ。キュウレンジャーと戦える事が。それに、懐かしい男に会う事ができる。なぁ――スティンガー」
 その異形こそ……蠍座の男。
 着ぐるみで登場した蠍座系家老は、ある種の仮面と鎧なのか、フォースの暗黒面に飲まれてこの姿になったのか、それとも実はスコルピオではないのか、とまずは一つの謎を提示。
 家老を迎えに行って結果として運良く難を逃れたタコは、てっきり「無能に用はない」と新幹部お披露目のファンファーレ代わりに始末されるかと思ったら、意外や生き残り。性格激変はこの布石でもあったようですが、折角なので、もう一度性格変わるぐらいは活躍を期待したいです。
 色々と駆け足だった第1クールですが、ラッキーとは如何なるヒーローなのか、キュウレンジャーは何の為に戦うのか、をきちっと収めて、ひとまずはハードルをクリア。あっという間に小熊が空気だったり、大人数戦隊というコンセプト部分が未だ面白みになっていないという不満点はありますが、挑戦的な枠組みの中で主人公が強く固まっている、というのは大きな長所だと思います。
 ……ラッキーという大黒柱が太い分、他の柱の栄養不足がどうにも目立ち、終わってみたら「ラッキーはしっかり描けていたけど、やっぱりキャラ多すぎたよね……」という感想になりそうな予感もしますが、『キュウレンジャー』としては、今回が本当の船出、という印象なので、今後の船旅に希望を持ちたい。第1クールをほぼ「ラッキーの物語」として着地させてきたので、今後もかなり割り切った作りになる可能性もありそうですが。
 後は「平和を願う全ての人」達の存在を劇中で積み重ねていかないと空疎になってしまうので、2クール目はキャラクターともども、中身を詰めていってほしい所。
 次回ようやく、黒とオレンジが絡みそうですが、果たしてチャンプのパワーボムは誰の脳天に炸裂するのか?!