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『仮面ライダー555』感想32

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第43話「居候が多すぎる」◆ (監督:石田秀範 脚本:井上敏樹
カイザに組み付かれたファイズは自ら変身を解除して戦意の無い事を示し、割って入って戦いを止めるデルタ。
「俺も、彼が敵だとは思えない!!」
草加はそんな三原を殴り飛ばして巧に迫るが、振り抜いた拳はトンネルの壁を叩く。
「いいか! 今ベルトを持ってるのは俺たち3人だけだ! ベルトを持ってる以上、俺たちはオルフェノクを倒さなければならない。それが俺たちの使命だ! …………いずれ世界は真っ二つに分かれて、戦いになる。人間とオルフェノクとのな。君たちもどっちにつくのか、考えておいた方がいい」
復讐と自分の証明の為に戦う草加が「使命」という言葉を持ち出すのは違和感があるのですが、巧と戦う中で草加にも多少は迷いが生まれているのか、巧と三原(特に三原)を抱き込む為の方便なのか。
一方、ホースオルフェノクは警官隊を蹴散らすとショック状態の結花をマンションへと連れ帰る。
「俺たちはもう、ここには居られない。多分もう警察に知られているから」
「ああ、出てけ出てけ。おまえらの、とばっちりを喰らうのはまっぴらなんだよ。縁切りだ縁切り!」
悪ぶって勢いで物を言っても、後で反省したり結局は思い切れないのは海堂の常ですが(今回もなんだかんだ旅に出ずにマンションに残っている)、それにしてもここ数話の海堂は最低すぎて、鈴木少年の救出後にこつこつ貯めていた貯金を使い果たして借金に突入する勢い。
“目を開いて自分の足で立ち上がる事”を希望のテーゼにしている今作において、果たして海堂直也は現実に向けて立ち上がる事が出来るのか。ここまで生き延びた割に現状の位置づけがあやふやになってきているように見えて、ここからどう転がされるのか気になります。
オルフェノクっていったい……なんなんです?」
南達がやっている事は人体実験なのではないか、と疑念を呈する沢村だが、南に軽くあしらわれ、引き続き結花と勇治の行方を探すように命じられて追い払われる。
「……偽善者め。ああいう奴がいずれ我々の敵になる」
そして結花を連れてマンションを出た勇治は、人間とオルフェノクは共存できないのかもしれない、と巧にこぼしていた。
「あんたらしくないな。ま、多少の事は覚悟の上だろうがな」
「多少の事?」
無言の巧を見つめ、考え込む勇治。
「…………もしかしたら俺と君は違う人間なのかもしれない」
「どういうこったよ?」
「いや、いいんだ」
ここのニュアンスがちょっと掴めなかったのですが、巧の言う“多少の事”が、結花(自分)にとっては“多少の事”ではない、という意味合いか。
勇治は結花を菊池家に預け、もちろん否定的に反応する草加だが、突き刺さる視線の冷たさにさすがに退散。
……どうした草加、お腹でも痛いのか草加
ここでしつこく「それはどうかな」と言ってこそ草加じゃないか!
真理が積極的に結花を気遣い、啓太郎は 下心満載 喜色満面、その光景に表情を和らげる巧だが、勇治は堅い表情を崩さないまま菊池家を辞する。
「どうしても会ってみたい人間が居るんだ」
勇治の様子を気にする巧とともに、二人が向かったのは――スマートブレイン。
振り返れば、社内に忍び込んで社長と強引に面会しようと車上荒らしを敢行した事もありましたが、最近はすっかり顔パス同然で、全ては遠い過去の幻のように思えます。
「驚きました。まさかあなたがたの方からいらっしゃるとは。いい度胸だ」
いつもの席でふんぞり返る社長に、勇治は人類とオルフェノクの関係について問い質す。
「人類というのは、閉鎖的な、差別的な生き物です。それは歴史を見れば明らかでしょう。人間を襲うというのは、我々が滅ぼされない為の、いわば、自衛手段なのです」
「勝手に決めんなそんな事。俺たちだって同じ人間じゃねぇかよ」
「…………同じ……人間」
巧の言葉に、窓の外の暗闇を見つめながら社長はしばし考え込む。
「…………以前は私も、あなたがたと同じように思っていました。だが、普通の人間は、我々を人間とは認めないでしょう。これから、あなたがたが受ける迫害を思うと…………」
社長は沈痛な面持ちで語ると二人をそのまま返し、これまで掘り下げてこなかった社長の内面に触れているのか触れていないのか、どこまで本気なのかさっぱりですが、帰路のエレベーターの中で、あんな奴は信用できない、と巧はバッサリ。
多分そのエレベーター、ばっちり録画・録音されているからな、巧!
そして闇の中で鼻で笑う社長のもとを……南雅彦が訪れる。
「わかっていますよ。引き続き、あなたがたに対する資金援助を惜しみません。我々人間をオルフェノクの手から守る為なら、安いものです」
「助かります。スマートブレインがついていてくれれば、我々もより良い研究が出来る」
“人間として”警察のオルフェノク研究に資金援助していた村上は、スマートブレインで確保していたオルフェノクを貸し出すと爆弾発言し、無言で飛び散る視線の火花。
「あの男が何を考えてるのかはどうでもいい。利用できるものはとことん利用する。それが私のやり方だ」
南はそれを受け入れて帰り、一方の社長は、冴子さんに怒られていた。
「知りたいんですよ、私は。彼ら人間が、オルフェノクに対して何をするのか。何が出来るのか。それを知る事によって、人間対オルフェノクの、未来を占う事が出来る」
今回ひたすら曖昧な発言を繰り返して思惑を読ませない社長は、警察への資金協力についても対立とも融和とも、どちらとも取れる発言。人間が共存を視野に入れるなら融和の方向を探りたいようにも聞こえますし、対立が基本路線だけどもし人間が予想以上にオルフェノクに対抗する戦力を有するなら交渉などを視野に入れている、とも聞こえます。
上に立つ人間としては真っ当な戦略的態度とはいえますが……しかし、社長は基本的に節穴だ。
絶対的な数に劣るオルフェノクが人類に対抗する手段としては、バイクロボ量産が最適解だと思うのですが、もしかした花形お父さんしか作れないのか、或いは、スマートブレインを持ってしても年1台しか生産できないスーパーロボットなのか。
菊池家では、啓太郎が思い切って結花に告白しつつ、もう諦めたからと宣言。フられるのが明確になってから告白して一方的な潔さを押しつけつつ気持ちがゼロになったわけではないと存在感だけはアピールしておくという、最低のへたれ男ムーヴを発動していた。
「もし良かったら、ずっとうちに居てくださいね。ずっと、ずっと……」
危うし草加
……はさておき、下心抜きの懐の広さもアピールしてこれは多分啓太郎的には本気なのでしょうが、気にしないでと言われるほど凄く重いよ啓太郎! 全っ然駄目だよ啓太郎!
あと、気を遣って啓太郎と結花を二人きりにするという選択肢が大間違いだよ真理!!
啓太郎の優しさを受け取る資格が無い、と思い悩む結花はメル友の啓太郎にメールした事で、メル友の啓太郎=痴漢の菊池啓太郎という事にとうとう気付き、長らく引っ張ってきたメル友関係、遂に身バレ。
バレる時は特に凝らずにあっさりでしたが、中盤全く活用されていませんでしたし、面白いアイデアだと思って取り込んでみたけど、途中でちょっと面倒くさくなっていたのでは疑惑(^^; 井上敏樹お得意のすれ違いを印象的にするギミックとしては時代感覚も含めて面白かったので、個人的にはもう少し活用して欲しかったのですが。
他人から愛情を受ける事に慣れず、菊池家での距離感を完全に見失った結花は書き置きを残して失踪し、啓太郎、真理、巧、勇治は結花を探して街へ。巧と勇治を見つけた沢村より連絡を受けた南は、スマートブレインから送り込まれてきたオルフェノクを勇治に差し向ける。
「それと……沢村刑事の抹殺もな」
沢村ーーーーー。
思い入れは別に全くないのですが、沢村は端役もいい所から最終盤にいきなり知りすぎた男のポジションになっているのが変に面白くて(役者さんの井上敏樹への直談判によるとの事)、出来るだけ派手に散ってほしい(おぃ)
[ごめんなさい、啓太郎さん。これが、最後のメールです。啓太郎さん、こんな私の事を、ずっとずっと、励ましてくれて、ありがとう。私、気付いた事があるんです。知らない内に私、私、啓太郎さんを好きになっていたんだって。啓太郎さん…赤い風船が見えます…木の枝に引っかかって飛べない風船。私も、あの風船と同じ。さようなら、啓太郎さん。さようなら]
地に足のついていない浮き世離れした男に恋する自分に恋をしていた結花が、ずっと自分を支えてくれていた優しさの存在を見つめ直すのですが、例の二股発言以来、健太郎の恋路を1ミリも応援していない私としては、出来ることなら例の

[結花さん、これはきっとメールにはしないと思うけど……ごめんなさい。俺、実は好きな人ができました。……ごめんなさい。俺……どうしようもない男です。浮気物です。二股野郎です。でも……でも……好きなんです、長田さんが]

というモノローグの感想を結花に聞きたいです!(待て)
邪念はともかく今は必死に結花を探す啓太郎は、風船を見つめるその姿を発見し、メールとの一致に気付く。
「まさか、君が、メールの、結花、さん……?」
「駄目……来ないで……あたし……あたしは……」
啓太郎の《交渉》スキルが今試される時! だが――
「あなたにはもう居場所はない。いらっしゃい私の元へ! ――ラッキークローバーへ」
年下の男の子達がぼんくらばかりなので、年下の女の子を新たな愛玩対象にしようと、勧誘に現れた冴子がエビに変身。
一方、結花を探してバイクと車を走らせる巧と勇治は、装甲車に撃たれていた。
なんだかもうオルフェノクをレンタルレベルの話でなくなっているのですが、装甲車の屋根の上からは、二丁拳銃オルフェノクがひらりと降り立つ。ファイズとホースはオルフェノクの二丁拳銃に苦戦し、南の思惑通りに、戦闘に巻き込まれてばすっと撃たれる沢村。ファイズは沢村を守ろうとオルフェノクに組み付くが、足を撃たれて地面を這いつくばりながら助けを求める沢村を見つめて、ホースは迷いを見せる。
「木場どうしたぁ?! 戦え木場!!」
沢村の姿に結花を重ねたのか、変身を解く勇治――。
「逃げて結花さん! 逃げて!!」
同じ頃、啓太郎は海老に久々のキチガイダイレクトアタックを決めていた。僅かな逡巡の後、啓太郎を守る為に結花はオルフェノクへと変身し、エビと激突。BGM無しの敢えて盛り上げない戦闘で打撃の応酬が続いた後、カウンターの翼が直撃して、エビは退却。
「啓太郎さん、今のがあたし、あたしの本当の姿。だから……来ないで」
後ずさろうとする結花を啓太郎が背中から抱きしめ、いつものSE無しで、そのまま、つづく。
奥行きをつけた映像に無言の時間を長く取って登場人物の感情は婉曲に示し、情緒に振った時の石田演出が全開。個人的な好みからするとあまりにもカタルシスを廃しすぎには思えますが、次への前振りという事でか割り切った作り。
次回――追い出されるのは草加か巧か、或いはその両方か。それとも勇治も押しかけてくるのか。菊池クリーニングの部屋数は幾つだ?!
「あー、草加さんとたっくんは、台所に段ボールでいいよね? 頑丈だし」