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『仮面ライダー555』感想37

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第48話「あいつの青春はどこへ埋めてやればいい?」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
10円ライダーは身を潜めていた真理と照夫にも襲いかかり、自分が誰を襲撃していたかに気付く海堂だが、それを止めようとして勇治に殴り飛ばされる。草加と三原が真理を助けに現れて加わり大乱戦となり……OP開けたらいきなり、長石階段で頭痛に苦しむ草加が倒れて気絶、と頭の周囲を疑問符が飛び回る展開。
この後の成り行きを見ると、乱戦の末になんとか全員逃亡に成功したという事のようですが、さすがに端折りすぎて、OPが終わったらそこはBパートでした、みたいな困惑に陥ってしまいました(^^;
もともと、微に入り細を穿つというよりは、適度にすっ飛ばす傾向のある作品ですが、この最終盤、片付けるべき要素を残しすぎて尺が足りなくなってきた感。
3ライダーはともかく、真理&照夫(&配送車)が脱出成功しているのはかなり強引ですが…………これはむしろあれか、ブラスターを発動するなりしてムカデが死にそうになった結果、琢磨のサバイバー特殊能力である《戦闘シーンをカットして生き延びる》が発動したのか。
三原が真理と里奈に花形との再会を伝え、「昔のままの、父さんだった。優しい父さんの、ままだった」と語るなど皆の余裕ぶりを見ると、逃亡に成功したというより、撃退に成功した、という雰囲気ですし。
見えない所で大活躍だな琢磨!!
巧が電話で勇治との訣別を確認している頃、気を失った草加は花形によってスマートブレインのラボに運び込まれ、そこで目を覚ましていた。
「父さん……!」
「久しぶりだな」
「教えてくれ。父さんが流星塾を作った、本当の理由はなんだったのか」
ようやく重い口を開いた花形は、流星塾に子供達を集めたのは、オルフェノクの王を探す為であったと説明。だがそこに王は存在せず、スマートブレインの一部の暴走により、同窓会の夜の事件が起こってしまう。
背後関係の詳細は語られないのですが、推測を交えて経緯を整理すると、
〔花形(?)、オルフェノク達の社会生活の隠れ蓑としてスマートブレインを創設 → 王を探す為に九死に一生を得た子供達を集める → 王を守る為のベルトを開発 → (王探し、進まず) → スマートブレインが巨大になりすぎ、一部過激派の暴走で流星塾事件が発生 → 花形、3本のベルトを強奪してそれを子供達に → 花形、地下にこもる → 過激派と花形派の派閥抗争の間隙を突く形で野心家で喧嘩は強い村上が社長代理に就任 → 村上、王探しを継続しつつベルト回収を指示するが、どの派閥からも面倒くさいヤツ扱いされている為に重要な情報が回ってこない → 村上、仕方がないので個人的なコネ(冴子)を頼り、社外の独立遊撃部隊といえるラッキークローバーに依頼 → 同時に自分だけの手札として南に資金援助 → ラッキークローバーにこだわりすぎたり草加や巧を抱き込もうとしたりごちゃごちゃしている内に、状況がしっちゃかめっちゃかに → 王の目覚め →焦る花形、村上を失脚させ勇治に後事を託そうとする〕
……みたいな感じでしょうか。
辻褄を合わせながら流れをまとめてみると、改めて凄く可哀想な村上元社長。やたらめったらラッキークローバーにこだわって身を滅ぼす遠因となったのも、危ない橋を渡って南とのパイプを作っていたのも、要するに他に使えるコマが無かったのか。
花形はベルトを配送した事で子供達を過酷な運命に巻き込んだ事を弁解しつつ、正当性を主張。
「私は賭けてみたかった……幼い頃から、辛い境遇を耐えてきたおまえ達の……強さと優しさに。私は人間がオルフェノクの力に飲み込まれ、人としての心を失っていくのを何度も見てきた。そして悟ったのだ。オルフェノクは滅ばなければならない存在だと」
1年物の紆余曲折を押しつけられている所もありますが、王道のど真ん中を突っ切っていく身勝手な父親像。
綺麗事で糊塗していますが要するに、子供達がオルフェノクの印を持ったので丁度いいからベルトの力でオルフェノクオルフェノクの王もまとめて倒してもらおう、という事で極めて下衆い。またここで最低最悪なのは、花形は子供達を都合のいい道具だと思っているわけではなく確かに愛情を持っており、だからこそ一方的に運命を押しつけるし、その上で運命を押しつけた悪い父親なので子供達とは会わない事が自分の罰であると、本気で思っている。
ついでに、後事を託す人間(勇治)が見つかったし、もう時間が残っていないからと、自分で自分を許しちゃう。
花形には花形なりに、ここに至るまでの苦闘や挫折はあったのでしょうし、演じているのが道士カクこと中康次さんなので、生理的に胡散臭さ3倍増に見えてしまうというのはありますが、真っ当なコミュニケーションを取らないまま子供(達)に理想と後始末を押しつけて自分だけ1人でわかった気になっているという、無責任な父親像の描き方が容赦ありません。
コミュニケーションは取らないけど、アイテムは与える、というのがまた辛辣。
「なら滅べばいい。俺の手で……あんたを……!」
カイザギアに手を伸ばすも草加はまたも刺すような頭痛に苦しみ、植え付けられたオルフェノクの印が消えつつある事――カイザへの変身が限界に来ている事――を花形から告げられる。
草加があまりにも普通に使うので、そういえば元々は変身したら死ぬベルトだったのをすっかり忘れていましたが、この伏線はもうちょっと早めに欲しかった所。
その頃、10円戦士・海堂は勇治に突っかかっていた。
「おまえは人間を守るんじゃなかったのかよ。それがおまえの理想だったんじゃねぇのかよ?!」
「そんな俺の理想を! ……君は馬鹿にしてたんじゃなかったのかな」
「ばっきゃろ…………違うだろ。俺はな……」
言いよどむ海堂は、しゃちほこばりながらも、本音を吐露。
「…………心の底で、ずっとおまえを尊敬してました。本当はな……本当はおまえみたいに生きてみたかったんだよ!」
つまり、働きもせず悠々自適に過ごしたかった……はさておき、正直、勇治みたいに生きたい、というのが今ひとつ具体的にピンと来ないのですが、勇治のこの人たらしぶりは、もはや特殊能力レベル。経営の世界に打って出れば案外と成功したのではないか。目指せ、菊池クリーニング全国展開! で、みんながみんな、木場に任せておけば大丈夫、明確なビジョンがあるに違いない、と思い込んでいると実は何も手を打ってなくて、あれよあれよという内に経営破綻して夜逃げする……というのがまあ、今の状況ではないかと思うわけなのですが。
「……くだらない」
「てめぇ、ばっきゃろぉ!」
海堂は勇治を殴ると、10円ベルトを放り捨てる。
「おまえとは絶交だ。これからは俺がおまえの代わりになる」
ここまで色々あった海堂ですが、この言葉は非常に格好良かったです。
人間としてどうしようもない部分がかなりストレートに描かれていた海堂は、一体どうする事やらと思っていたのですが、ここで――理想化された勇治の――“魂を継ぐ者”という位置づけを与えたのは、お見事。
そして純粋なる魂が継承される事により、勇治の善なる面が、そこに抽出される。
一つ読めないのは勇治の真意で、さすがに海堂の反発は予想できたのではと思うのですが、それを承知で海堂を巻き込んだとするならば、自分が何をしようとするのかを海堂に見てほしかったのか。或いは、理想の継承者として海堂を保険にしたのか。また或いは、節穴が伝染して加速したのか。
スマートブレインを飛び出した海堂は、三原の元へ。
「ちょっと俺様に力を貸せ。どうしてもやらなきゃならない事があんだ。……頼む」
その真剣な様子に考え込んだ三原は、倒れた草加をじっと見守っていた花形へと電話をかける。
「父さん……覚えてるよね。今日みんなで会う約束。……俺、行けないかもしれないけど、真理も里奈も、楽しみにしてるから」
急に格好良くなるなよ三原!!
海堂にしろ三原にしろ、弱さや情けなさをズルズルと引きずっているキャラクターだったのですが、何かを選び取る姿を描き、ワンセンテンスで殻を破らせる切れ味はさすがの一言。
「もう一度会いたい。真理にも、里奈にも……」
まあ三原はどうでもいいかな、と切り替えた花形の左手からはまたも灰がこぼれ、花形は勇治に自らの状態、そしてオルフェノクに待ち受ける運命を明かす。
オルフェノクとは人間の進化形だ。だが、あまりにも急激な進化は――肉体を滅ぼす。いわばオルフェノクとは死に至る病と同じだ。放っておけば我々は滅びる」
澤田の症状、村上の狼狽、南の勝利宣言、花形の「時間のない」発言、と積み重ねてはきましたが、割とざっくり明かされる衝撃の事実。
とはいえ、そもそもオルフェノクが“一度死んで甦ったもの”であり、その死が“炎を噴いて灰になって消滅”として描かれる事を考えると、引き延ばされていた死が再び追いついてくるというのは必定ともいえます。
そう見ると今作の裏テーマは、“死の運命から逃れて得た時間で、人は何を出来るのか”という事かと思われるのですが、それがほとんどの場合、人倫を越えて欲望に飲み込まれて破滅を迎える、という形で描かれているのが今作の最も酷い所であるのかもしれません。勿論それは、ヒーロー物のギミックとしての必要性という部分が大きいのですが、なんらかのデフォルメされた象徴であるとはいえるでしょう。
もう一歩進めると、生きている人間はいずれ必ず死ぬわけで、今作の根幹にあるのはメメント・モリ」(死を思え)なのであろうかな、と。
「まさか……」
「私が君を選んだのは、君が心の底で、人間を深く愛しているからだ。オルフェノクと人間は共存できない。君は滅びの道を選ぶ勇気を持っている筈だ。人間の為に」
果てしなく好き勝手に、重い荷物を勇治の双肩めがけてトップロープから放り投げ、直訳すると「みんな揃って死ぬようにしてくれ」を「愛」とか「勇気」とか「人間の為」とかでデコレートする花形、目眩のする下衆っぷり。
なんという邪悪な、マジックワードの放り込み方。
目を覚ました草加は得意の立ち聞きでオルフェノクにまつわる秘密と王の正体について知るが、立ち去ろうとした所でその背に言葉をかける勇治。
「花形さんは何も知らない。俺の人間に対する絶望の深さを。滅ぶべきなのは人間の方だ。俺は死なない」
率直に花形、勇治の何を見ていたのかは果てしなく疑問ですが、スマートブレインの社長には節穴でないと就任できないのか。
その頃、海堂と三原は鈴木少年を守る為に10円ライダー狩りを開始し、海堂オルフェノクにバトルで見せ場が!! いったい何話ぶりだ!!! と動揺する展開が続きます(笑)
続くのですが、実は海堂、鈴木少年が狙われる理由も、鈴木少年が生き延びた場合にどうなるかも知らないので、一つの決断を下したけれど、(悪い意味ではなく)やはり道化のポジションに居るというのが、実に海堂。
真相を知った途端に鞍替えしそうでちょっぴり心配だよ海堂!
勇治と別れた花形は真理と里奈の元へ向かうが、その車の前に立ちはだかったのは、草加
「真理には会わせない……あんたに会う資格はない」
「よせ。前にも言った筈だ。おまえはもう、変身してはならない。それに……私と戦う必要はない」
花形は草加に、既に真っ黒になった左手を見せ、それは瞬く間に全身を覆い尽くす。
「これでいい……」
「父さん……」
「おまえは生きろ…………雅人!」
娘達の元に辿り着く事なく花形は灰となって崩れ去り、その灰を握りしめる草加
「俺は……生きる。生きて……戦う」
勇治に後を任せたつもりの花形は、草加には生きる為に逃げる事を勧めるのですが、草加にとって生きるとは戦う事であるし、草加には恐らく、ある種のエディプスコンプレックスの発露として父を乗り越えなければ真理を手に入れられないという衝動があるので、その言葉に従うわけにはいかない。
父殺しのテーゼが盛り込まれる草加ですが、では花形を憎いのかといえばそうは見えず、揺れ動く感情に苦しみながら父殺しそのものも果たす事ができない、というのはなかなか辛い。
啓太郎に電話して照夫の所在を確認した草加は、オルフェノクの王へと狙いを絞るが、とても悪い顔の勇治から連絡が入る。
「園田真理は預かっている。助けに来た方がいいんじゃないのかな」
「真理…………」
かつて真理の蘇生よりも打倒スマートブレインを選んだ草加は……
「真理……真理!」
サイドカーを反転させて真理の元へと向かう!
一方、海堂オルフェノクと三原デルタは10円ライダーズに囲まれており、またもベルトの外れた三原は、慌てて巧に救援要請。あの海堂の影に隠れて逃げ惑い、一瞬で色々と台無しだよ三原!!
まあ今作、主要キャラはほとんどの場合、格好つけても長続きしないのですが。
巧が駆けつけてベルトをトスし、三原は再びデルタに変身。激しい戦いの末、ファイズがアクセル成敗!によってなんとか10円ライダーズを撃破。……途中しばらく存在を無視されていたアクセルフォームが、この最終盤、何故かブラスターフォームより使用される不思議(^^; ブラスターが監督陣のお気に召さなかったのか、何やら使いにくい設定でもあったのか。
ファイズらが10円ライダーズと戦っていた頃、真理を助けに向かった草加の前には、100円クローバーが立ちはだかっていた。
(このまま変身を続ければ、おまえ自身が滅びる事になるだろう)
脳裏によぎる父の言葉を噛みしめながら、草加は3体のオルフェノクと向かい合う。
死すべき運命を前に、後ろを向いて逃げ出すのか、前を向いて立ち上がるのか――。
人は何をもって、自分が生きた事を証明するのか――。
草加が選ぶ、答は一つ。


Standing by...
「――変身!!」
――Complete

たっぷり時間を取った変身には、最後の瞬間、草加の僅かな躊躇も感じさせるのですが、それこそが父殺しを果たして英雄になりきれない、“人間”草加雅人らしさであるのかと思います。
恐らく草加は自分に残された時間が僅かな事を感じており、勇治がそれを消費させる為にピンポイントで自分を狙ってきた事も理解しており、その上で死という運命に抗い、決して死を覚悟したのではなく、生き続ける為に戦う事を選ぶ。
さらわれた車中で目を覚ました真理はカイザの苦戦を目にして巧に助けを求めるが、孤軍奮闘していたカイザの肉体には限界が近づき、とうとう変身解除。灰となっていく手をカイザギアに伸ばすもドラゴンの光弾で吹き飛ばされた草加は、なんとか身を隠そうと海岸線の岩場へ向かい、その背を見つめながら残されたカイザギアを手にする勇治。
「死んで……たまるか……」
岩場に倒れ込んだ草加が、必死に探す真理とすれ違ってしまうのが、また残酷。
「ま、り……」
激しい荒波が岸壁に打ち寄せる中、弱り切った草加に近づいたカイザはその体を持ち上げて首をねじりあげ――草加雅人、絶命。カイザギアを手に入れた勇治は、目を開いたまま倒れ伏す草加の死体を見下ろすと満足げに歩みさり、波の音と、真理の叫びだけが虚しく響き続ける。
草加くん! 草加くん!」
前年の『龍騎』で色々とやっていたので続けて見るとそこまででも無かったのかもしれませんが、無念の死が真っ正面から描かれて、凄まじい死に様。先にリタイアした結花が婉曲な描写で美しく消えていったのに対して、目を見開いたままの死体が波打ち際に転がっているという直接的な描写がまた、対をなして鮮烈です。
そして草加の死体は灰となって消え去り、誰に看取られる事もなく、波がそれを洗い流していく……。
(待ってろよ草加! ……草加!)
巧の思いも、もはや届かず、カメラはそこから、草加を探し続ける真理の姿をぐっと引いて、渦巻く海を映しながら、つづく。
草加はなんというかこう、余計に引っかき回したり、余計な嫌がらせしたり、余計な厭味を言い続けたり、人格にも行動にも難が多々あり、最後は勇治にクリティカルな罠を仕掛けられて散るというのは因果応報でもあるのですが、“人間”として生きる事に執着し続けたその姿は悪役としてバッサリと切り分けにくく、改めて、《平成ライダー》史上に残る強烈なキャラクターとして君臨し続けている事に、納得。
ヒーローである前に“人間”である、或いは、“人間”の延長線上としてヒーローを描く、というのは井上敏樹のこだわる所ですが、草加雅人というのは、生臭いまでに“人間”であったのかな、と。
劇作として上手いのは、そんな草加の数々の嫌がらせにもめげず、巧が草加を本気で助けたいと思っている事なのですが、であるからこそ草加にも死んでほしくないと思わせた所で、巧と交わる事なく草加が無惨な死を迎えてしまうのが、誰にとっても無情。
見ていて、“自分の中に居る草加”について考えさせられるという、印象深いキャラクターでした。
なお今回のサブタイトルは草加の最期から連想して脳をリフレイン中の歌からなのですが、「君は人の為に死ねるか」って、逆説的に草加のテーマのような気がしてならないのです。

戦って死ぬ事を どうして死んだのかとは 聞かない 聞かない
でもあいつの青春は どこへ どこへ 埋めてやればいい

次回――オルフェノクvs人類だけではなく、オルフェノク個々がどう生き延びるかという選択も迫られる大混迷の中、琢磨が超ハイテンション。