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『ウルトラマンジード』感想・第6話

◆第6話「僕が僕であること」◆ (監督:市野龍一 脚本:三浦有為子)
女性人気が上がって調子に乗るジードと、嫉妬に燃えるサンダーキラーが衝突し、頭から放ったマサカリが跳ね返されたのを腕のハードポイントで受け止める、というのはスポ根バーニングのメカっぽさも活かされて格好良かったです。
レイトはこの戦いを居間のTVを通して目にしており……東京都内で怪獣とウルトラマンが激突している真っ最中に、1ミリも気にせず幼稚園に向かう母娘はさすがにどうか(^^;
その辺りは深く考えないでほしい、という事なのでしょうし、怪獣が出ていても人々の日常は続く、という世界観と方向性なのでしょうが、「TVで生中継されても完全無視」となると、“脅威としての怪獣”の意味性が著しく損なわれてしまうわけで、ヒーローと怪獣が戦う物語としては、バランス感覚を欠いた描写であったように思います。
伊賀栗家、東京から遠く離れた住まいなのかもしれませんが、リクとレイトが直接会っている事を考えると、そうは捉えにくいですし。
どこまで意図的(物語としての伏線)なのかは判然としませんが、どうにも今作、“初見の視聴者を意識して衝撃や驚異を描く”という感覚がすぽっと抜け落ちている気がしてなりません。
ロケットパンチ光線も跳ね返され、苦戦するジードを見かねたゼロは、レイトの体を借りたままサングラスで初変身。リビングで変身するとマイホームが粉々になるのでは……と心配になったのですが、いきなり戦場に出現したので、何やら大丈夫だった模様。
「俺はゼロ……ウルトラマンゼロだ!」
しかしサンダージェラシーはその姿を見ると、陽炎のように消失。レイト/ゼロはリクに肩を貸して秘密基地へと運び込むが、当のリクはゼロの登場でジードの人気が急落した事に拗ねていた。
「まあウルトラマンやってりゃ、いろんな事があるさ」
「……ゼロはずるい」
「あ?」
「だって、最後の方に来て、シュッと立っただけ」
あのままでも勝てた、と意地になるリクだがライハにも一刀の元に虫けらのような敗残者と切り捨てられ、更にレイトが「僕がウルトラマンやります」と爆弾発言を口走って売り言葉と買い言葉がタイムセールに突入。
「はぁ〜?! サラリーマンに、ウルトラマンの何がわかるわけ?!」
「君にサラリーマンの何がわかるの?」
巨大化変身の余韻に興奮状態のレイトはリクと同レベルで口を尖らせ、思えばゼロの一言から、何やら職業のような扱いを受ける「ウルトラマン」(笑) 個人的に「ウルトラマン」は、「バットマン」とか「仮面ライダー」というより「スーパーマン」に近いイメージで捉えていたので、なんだか新鮮でした。
《リクとレイトは、何を揉めているのですか?》
「隣の芝生は青いってやつだね。人間にはよく起こる感情さ」
「「そんなんじゃない!」」
しばらく出番の少なかったペガのツッコミも効いて、この辺りのやり取りは面白かったです。
レムの作った装置により二人は一日入れ替わり生活を体験する事になり、レイトは基地でライハのスパルタトレーニングを受けるのですが、リクのトレーニング姿が描かれた事が一度もないので、相手の気が弱いのにつけ込んでライハがストレス解消しているだけなのでは。
「ハイ次は床掃除! 顔が映るぐらいピカピカに磨き上げるのよこの鈍間なメガネ!」
みたいな調子でこの機に色々な雑用をいいように押しつけられた気がしてなりません。
「勘違いしてました……。ゼロさんに変身した時、凄い高揚感だった。まるで、スターになったみたいな。でも……それは、ゼロさんの力だったんだ。僕はただ、ゼロさんの力を借りていただけ。あれは僕じゃない」
かくして小姑の執拗な責め苦に耐えかね、レイトはウルトラマンの道を断念。
伊賀栗さん(と中のゼロ)が、女の子の尻の下に(物理的に)敷かれながら罵声を浴びる事を喜ぶという性癖に目覚めず、愛する妻と娘を選んでくれてほんとーーーーーーーーーに良かった(涙)
一方のリクも、会社でレイトの代わりが務まるわけがなくサラリーマンの大変さを思い知り、平凡なサラリーマンの「日常」を抜け出したいというふとした願望と、青年の万能感とその挫折を同時に描きつつ、相互に補い合う事でお互いを否定せず、その上でスーパーヒーローにはなれないけれど「日常」を守り続けるお父さんの充実感というのを、肯定的に表現してくれたのは良かったです。
「どうして、そんなに頑張れるんですか?」
「それは……守りたい大切なものがあるからだね」
妻と娘を優しい眼差しで見つめるレイト。
「…………僕には、それもない」
「僕だって無かったよ。でもね、一つ大切なものが見つかると、他にも大切なものがどんどん増えていくんだ。ルミナさんと出会ったから、マユが産まれた。マユが産まれてから、この街や地球を前より愛おしく思うようになったんだ。僕が居なくなった後も、マユが生きていく世界だからね。……ま、僕ができるのはせいぜいこれくらいだけど」
レイトは落ちていた空き缶を拾い、ミクロからマクロへと視点を広げ、またそのマクロに繋がるミクロな行為の実践、と鮮やかにくるり。……正直今作で初めて、エピソードでやりたい事と言っている事が綺麗に繋がったような。
「……君は普通の人と逆なのかもしれない。僕たちは身近な人を大切に思うから、世界を守りたいと思う。君は……世界を守る中で、自分の大切なものを探していく。そういう運命を担っているのかも」
「……見つかるのかな」
「そりゃあ見つかるよ」
リクはレイトの「君が君でさえいれば」という言葉に励まされ、レムの装置でジードの姿を変えるという考えを捨てる。
「僕は、僕でいようと思うから」
……という流れに5話分の蓄積があれば良かったのですが、それが極めて不足しているのが実に残念。
ここでリクのアイデンティティの揺らぎに焦点を当てるなら、どうして3−5話、リクから焦点を外してしまったのか。そもそも地球人がベリアルの記憶を曖昧に所持している、という設定とも噛み合わせが悪く、どうしても、リクが自らの出自を思い悩んでいる、というのが伝わってきません。
どうにも作り手の側が、“ベリアルの息子”という時点でリクが大ショックを受けて当然だし、視聴者にもそれが共有される筈、という前提に寄りすぎている気がするのですが、《ウルトラ》シリーズはそういうもの、と割り切るしかないのか。
本来はこう持ってくるのならば5話までにおいて繰り返しリクの惑いを積み重ねておくべきだったと思いますし、3−5話においてそれが吹っ飛んでいたので、非常に唐突に接続された感が否めません。
レイトからリクへの、人生の先輩から迷子の青年への助言が、“人生の先輩”と“ウルトラマンの先輩”がかかっているのと、ぽっと出のゲストキャラの説教タイムではなくメインキャラの一角の掘り下げと同時というのも良かっただけに、この構成の不備が非常に勿体ない。
言うなれば、〔ホップ・ステップ・ジャンプ〕の筈が、〔ホッ・ンプ〕のようになってしまっており、率直に、シリーズ構成の失策だと思います。
その為、ここまで1エピソードとしては悪くはなかったのに、ここから先のクライマックスに向けた飛距離が大きく不足。
まずCM明け、怪獣の目的はジードかもしれず、今後こういう事が増えるから変身しないほうがいいかも、とライハが言い出すのがどうにも唐突。そこへジェラシーキラーが再出現して「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ」とリクが出撃するのも、実質的に第2話の動機付けを繰り返すだけになってしまっています。
「僕の名はジード。ウルトラマンジードだ!」
なので、ここで自らのアイデンティティを宣言、というのも今ひとつ盛り上がらない負の連鎖。
「必ず見つけてみせる……自分の大切なものを! それまでこの世界を、壊すわけにはいかないんだ! ジードクローーーー!」
そしてその勢いのまま新兵器を繰り出そうとして、大転倒(^^;
まあ基本的にフォーム変わるといきなり必殺技を使いこなす作品ですが、唐突に手を伸ばすとまるで当然のように武器が出てくる、というのはあまりに異次元に過ぎました。
本来なら、1−5話の積み重ねがあった上で、レイトとの交流で一皮剥けたリクがウルトラマンジードとして次の段階に進む象徴、という事で強行突破する算段だったのでしょうが、繰り返し、何故か3−5で物語の焦点がリクから外れていた為に、クライマックスという山頂に至る急斜面を登り切れず、ズルズルと滑り落ちながら手だけ伸ばすみたいな事に。
「新たな武器」
「機は熟した。そういう事ですね」
お陰で、基地からのフォローも凄く苦しい。
「今の自分を飛び越える!」
ジードはクローを振り回し……前作において中で黒タイツの人がカリバー振り回すのも気になってはいたのですが、ジャケットにTシャツ姿のリクが内部で振り回す事でクローの玩具感が凄く上がってしまっており、シンクロしている本体の持っているジードクローまで正直ちゃちに見えてしまい、もう少しどうにかならなかったのか。
クローカッティングで反撃したジードはおもむろに青く変身し、ハイスピードで嫉妬キラーを切り刻むと、最後は頭上から降り注ぐ光の雨によって粉砕し、ますます、前回のもう帰りたい光線が浮く事に。
また、自前で光の剣を出せるフォームで近接武器を振り回す、というのがだいぶ意味分からない事になっており、販促の都合で新フォームと新装備を一緒に詰め込んだら、色々と無理が出てしまった気がします。
かくして、助走不足から作り手の思惑よりだいぶ手前に尻餅つきながら着地してしまった感のある戦闘が終了後、ライハは自分の剣を貸してリクに竹の試し切りを促し、リクは見よう見まねで剣を振り回してみるも、切り込みの1つさえ付ける事ができない。
「武器を使うには、使う人間にそれ相応の器が要る。どんな名刀も、小さな器の人間が使ったら、棒以下よ」
そ れ は、オーブスラッガーランスのことですか?!!!
残念風来坊への流れ弾はさておき、これまた突然クローが出てきた事をリクの成長と絡めて理由付けしているのでしょうが、むしろ、
おまえの器は小さい
と断言されている感があり、良い方に解釈して喜んでいてはいけないのではないかリク。踏まれたい年頃なのかリク。モアに頼んだらきっとヒールで踏んでくれるぞリク。
第6話にしてようやくリクがライハから型を学んでいるようなシーンが入る一方、嫉妬キラーを撃破された伏井出ケイ@女子中高生からのファンレター募集中は、宇宙と電波で交信していた。
「全ては順調です。我が主、ベリアル様」
次回――激突!?
そんなわけで、エピソードとしてのメッセージはある程度しっかり描けたし、1−6話まででやりたかった事はわかるのですが、あまりにも助走不足でジャンプ失敗。
ライハとレイトは外せないとしても、宇宙Gメン組は何とか後回しにするような構成は組めなかったものか。そこはどうしようも無かったとしても、リクの主観中心に描く事はもう少し出来たであろう筈で、立ち上がりの躓きがそのままクライマックスの躓きになってしまう事になりました。このままズルズル、転んだままでないと良いのですが……次回、FDK先生の電波に期待。