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『激走戦隊カーレンジャー』感想30

◆第38話「バックオーライ!? イモヨーカン人生」◆ (監督:田崎竜太 脚本:曽田博久)
洋子のロマンス(?)回という予告からてっきり荒川さんかと思ったら、第18話(りんどう湖で産業スパイ)以来となる曽田さん。
冒頭、男のロマンを達成する為にボーゾックの後援についた暴走皇帝エグゾスが、相変わらず酒場でうだっているガイナモ達にお仕置きビームを放つ姿が描かれ、一方、その存在を察知した地球では……
「ボーゾックには、暴走皇帝エグゼスという凄いスポンサーがついた」
暴走皇帝エグゾス=口うるさいスポンサー、といういきなりのドロップキック。
今作の参加がラスト戦隊になる曽田さん(この年、杉村升らとフラグシップを設立)ですが、何やらリミッターが道ばたに投げ捨てられています(笑) 『特捜ロボジャンパーソン』での東映特撮復帰後、メインライターの軛を外した曽田さんは、色々と凄い。
これからも頑張るぞ、と円陣を組むカーレンジャーだったが、理想の男性と運命的出会いをするという占いを見て妄想の翼を羽ばたかせる洋子が、結婚してカーレンジャー辞めるかもと宣言し、早くも乱れる足並み(笑)
だがボーゾックでも、思わぬ問題が発生していた。芋羊羹作りに疲れた芋長の主人が引退を宣言して店を休業し、貴重な巨大化成分である、芋長の芋羊羹が手に入らなくなってしまったのである!
チーキュ侵攻を始めて半年以上になるのに、未だに必要に応じて買い出しに行っていたというのが凄いですが、職人の味は、グラッチをもってしても再現不可能なのです。
焦るボーゾックに対してエグゾス監督は、流れ星を原材料にした悪の若返りパックを提供。芋長の主人にやる気を取り戻させる為に、ボーゾック一のメイクアップアーティスト・PPチープリが地球へと向かう。
チープリは割れ顎に青ヒゲが目立つオカマキャラで顔のインパクトが強いのですが、ほぼ人間の顔で怪人感が極めて薄く、デザイン上の苦闘が窺えます(^^; そして声が飯塚昭三という飛び道具。
プリが使用した顔パックにより芋長の主人は50年前に若返り、それを見た奥さんは気絶。混乱してその場を逃げ出した主人は、雑誌に書かれた運命の場所で張り込んでいた洋子と衝突してしまう。
「タイプ……!」
洋子から熱烈なアタックを受けた芋長は、自分が若返る事になったのはもしかして運命なのかも……! と若い女の子に目がくらみ、気絶した奥さんを家に放置したまま、イモタクを名乗ってデートに突入(おぃ)
とにかく戦隊に限っても執筆本数がとんでもないので偶然かとは思いますが、『科学戦隊ダイナマン』の曽田脚本に、戦時中に軍の命令で毒ガス兵器を作るのを拒否して逃亡した事から青春時代を失っていた老科学者が悪の組織の陰謀で若返ってしまい、その効果が切れるまでの1時間少しを、お互い事情を知った上でダイナピンクと束の間のデートで過ごす、という渋い佳作があるのですが、プロットが近いのに、全く真逆の台無し感(笑)
「洋子さん、僕と一緒に、ケーキ屋さんをやりませんか?」
若い頃の夢を思い出した芋長はハイウェイを暴走し始め、計画の狂いに慌てて止めに入ったプリを相手に腕っ節の強さも見せる大活躍。カーレンジャーが駆けつけてプリは一時撤退するが、そこに意識を取り戻した芋長の奥さんもやってきて……
「その人が私の、亭主なんです」
「は?!」
「変な宇宙人が、うちの人を若返らせたんです」
大変ややこしい修羅場に(笑)
カーレンジャーは気絶した洋子をそそくさと連れ去るが、それを追いかけてくるイモタク。
「洋子さん、あの、僕たちもう一度、冷静に話しあいませんか?!」
「そんな……あなたには奥さんが居るじゃ」
「そうですよ」
「あ、婆さん!」
「お爺さん……あんまりじゃありませんか! 私達の50年の人生はなんだったんですか……」
都合良く奥さんは気絶したままかと思ったらガッチリ話に絡んできて、もはや魔球……!
落涙する奥さんと、突然の若返りに混乱状態と座り込む芋長の二人をなだめていた恭介達は、そもそも一体どうしてこんな事になったのか、とボーゾックの行動に疑問を抱く。
「ドキ! 一般市民までが疑問を持ち始めたプリ。芋羊羹でボーゾックが巨大化する秘密に気付かれたら、大変プリぃ!」
果てしなく頓珍漢な方向へ転がっていくのかと思いきや、善玉サイドの基地バレ・正体バレ的な危機意識を悪玉サイドが抱く、という絶妙な話運びで、『カーレン』ワールドを汲み取りつつも、曽田さんはどこか“戦隊”である事に真面目なのが、個人的にしっくり来ます。
ボーゾック怪人にしては頭の回るプリは、真の目的から目を逸らす為に自らカーレンジャーの前に飛び出すと、芋長の主人が被害にあったのはたまたまで、無作為に人類を若返らせて地球を混乱に陥れる作戦なのだ、と5人を騙す事に成功。
今作の作風と曽田さんの経歴を考え合わせると、ヒーローに向かって計画をベラベラ喋る悪の怪人、を逆手に取った熟練のメタギャグ、という要素もあったのかもしれません。
何故か無人の競馬場をパトロールしていたシグナルマン(80〜90年代作品にはしばしば登場しますが、近年あまり競馬場で撮影しなくなったのは何故なのか)は、カーレンジャーを引きつけて逃げるプリと遭遇。
「ボーゾック! 本官の許可なくそんな不細工な顔で走り回ってはいかぁん!」
誰もが思ってはいたけど言ってはいけない事を情け容赦なく突きつけた本官は、人権侵害のお返しに若返りパックを浴びせられてまさかのシグナルボーイになってしまい……着ぐるみがちょっと可愛い(笑)
そこにカーレンジャーが追いついてきて、英語主題歌をバックに戦闘開始。
メガレンジャー』『ゴーゴーファイブ』でも英語主題歌が劇中で使用された記憶がありますが、この時期の流行りだったのでしょうか(『パワーレンジャー』絡み?)。
シグナルボーイと怒れるカーピンクの活躍もありプリを追い詰めるカーレンジャーだったが、そこに修理されたノリシロンが出現。VRVロボで立ち向かうが、ノリシロンの強力な放電攻撃が街を破壊していき、逃げ惑う人々の中、落とした芋羊羹を拾い集める芋長夫人。
「これは昨日、私とお爺さんが造った最後の芋羊羹。これが無くなってしまったら、お爺さんと私の絆が、本当に切れてしまうような気がして」
妻の言葉に考え込んだ芋長は妻をかばって身を隠すが、その芋羊羹を拾い食いして、プリが巨大化。シグナルボーイがサイレンダーで強引に参戦して2vs2の激戦のさなか、巨大プリの放った若返りパックがノリシロンを直撃して、なんとノリシロンは付録に戻ってしまう(笑)
残ったプリはVツイスターで木っ葉微塵にされ、爆発時に発生した煙を浴びて元に戻る本官と芋長。
「婆さん……もう一度、おいしい芋羊羹作るの、手伝ってくれるかい?」
大切なものに気付いた夫婦は無事に復縁、初心を取り戻した芋長の芋羊羹は、ますます美味しくなったと大評判に。店を訪れた洋子達5人は「イモタクー!」と声をかけ、妻の視線を気にしながらもちょっと格好つけて手を振り返す、そんな芋長主人と奥さんが目を合わせて微笑み合う、というラストカットは秀逸。
そして結果的に、ボーゾックも当初の目論見が成功(笑) 代わりにノリシロンを失ってしまったので、プラスマイナスはマイナスな気はしますが。
久々の曽田脚本でしたが、今回も佳作。また、80年代戦隊の柱石だった曽田さんが50歳を迎えてのシナリオだと思うと、何やら感慨深い内容でもあります。80年代曽田戦隊も補完していきたいなぁ。
次回――終章前にキャラエピソード期間のようで、土門×不思議生物。「どんなに急いでいても、横断歩道では一旦止まりましょうね!」。