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『仮面ライダービルド』感想・第22話

◆第22話「涙のビクトリー」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:武藤将吾
「今度は西都のボトルか。は?! ……(カメラ目線)スタークか」
「ビンゴぉ!」
あらすじ劇場への参戦と、戦兎との師匠ごっこを満喫して北都へと戻り、今回もノリノリのスタークですが……うーん、さすがに、北都の首相が頭悪すぎでは。
東都に全軍を送り込んでいたので西都軍にあっさりと官邸を制圧されましたにしろ、すっかりスタークを信じ込んでいたにしろ、幾ら何でも国家のリーダーとは思えません。
基本的にブラッドスターク(マスター)があらゆる登場人物を掌で転がしながら進んでいく今作ですが、主人公の戦兎だったり、悪の組織のボス然として出てきたナイトローグ(ヒゲ)だったり、転がされる方にも格があるから、転がして蹴落として玩具にするのが面白くなるわけで、北都首相のこの露骨な当て馬ぶりと頭の悪さでは、スタークが裏切るという予定調和が全く面白くなりませんでした。
せめて、スターク裏切る→警戒していた北都首相が逆にスタークを拘束しようとする→しかしスタークと西都のライダーの力がそれを上回る、ぐらいの成り行きがあれば北都首相もそこまで馬鹿ではなかった事を描きつつ西都ライダーのデビュー戦を鮮烈に出来たと思うのですが、あまりにもビルドvsグリスに尺を割きすぎてしまい、西都のライダーもただガーディアンひきずってくるだけになってしまったのは残念。
……まあ、火星パワーを浴びると闘争本能が刺激されて感情的になると同時に知力が下がる(或いはもっと直接的に「スタークの誘導に逆らえなくなる」のか?)、など副作用があるのかもしれませんが、悪役が強大でないとヒーローが魅力的にならないように、悪事が一定のハードルを越えないと悪役も魅力的にならないのです。
そして頭が悪いといえば万丈……は今回、暴走したビルドA1を食い止めるという超久々の見せ場を貰い、馬鹿な手下への面倒見が良い猿渡から「殻を破った」と優しい視線を投げかけられてしまうのが面白かったのですが、問題はその暴走した人の方。
「そのスイッチを押すと、トリガーが破壊されて俺は消滅する」
ええーーーーーーーーーーっ?!
激しい修行を終え、万丈から代表選手の座を強引に奪い取ったライダーデュエル前夜、戦兎が美空に自爆スイッチを渡し、最初はただ「ビルドが止まるだけ」と説明するのですが……いやさそれ戦兎、もし美空がその言葉を真に受けた場合、
ハザードトリガーを使ったビルド暴走

美空、言われた通りにビルドを止めようと軽い気持ちでぽちっとな

ビルド消滅

戦兎ーーーーーっ!
という、物凄いトラウマスイッチなわけですが、何を考えているのか戦兎。
これ本気なら最悪にタチ悪いのですが、戦兎が美空をそこまで馬鹿だと思っていないだろうと考えるとそれもまた極めてタチが悪くて、つまり、停止スイッチという事にして渡す→美空がその正体を薄々わかっても敢えて問わない事を期待している、わけで、年下の女の子に甘え果てるにも程があるぞ戦兎。
それはみーたんも、「おいおまえ、こっち向いてちゃんと話せや」と怒るわけです。
自爆装置を突き返し、
「あなたは人間なの。自分より他人の幸せを優先する、馬鹿でどうしようもない人間なの!」
と、前回のマスター発言を受けて自虐的に「俺は兵器だから人殺しでは無い」と逃げ道を与えようとする(それが逃げ道にならない事は戦兎自身が一番知っているというのに)戦兎を美空が一喝するのは、では「人間」と「人間以外」の差はどこにあるのか? というテーゼを盛り込んできて良かったのですが……スイッチを頑なに拒絶する美空を説き伏せようとする戦兎、
「俺とおまえで作ったビルドだ! ……おまえにもその責任がある」
更に駄目男上乗せ。
この台詞自体は、第17話の「それが俺たちの作った、ビルドだ!」を裏返して負の面から用いる事に意味を見出したのでしょうが……いやさ戦兎さん、全てマスターの差し金だったとはいえ、美空のボトルの浄化に“正義”の理由を与えたのは、葛城巧でも佐藤太郎でもなく「桐生戦兎」だったわけで、それは戦兎が一番、美空に言ってはいけない言葉だと思うのですが。
これが逆、美空の側から「私とあなたで作ったビルドだから責任を取る」と自爆装置を握り、戦兎がそれを止めようとするも美空が押し切るなら良いのですが、幾ら切羽詰まっているにしろ、戦兎がこれを言ってしまうのはあまりにもいただけません。
で、ここしばらくの一連の流れ(と、細かい感想を後で書くかもしれませんが、Youtube配信の特別編)を見てハッキリしたのは、桐生戦兎というのは、物凄く「心が弱い」という事。
考えてみると、記憶喪失 → “理想のヒーロー”を演じる事で自己を保つ → それは俺の擦り込みなんだよ戦兎ぉぉぉ! → 俺は自分が信じる正義の為にあんたを倒す! → ところがおまえは俺の心の友、葛城巧なんだよぉぉぉ!
と、紆余曲折の末に取り戻した(と思われる)アイデンティティへの嫌悪が根っこにあるので、戦兎が本質的に自分自身を信じる事が出来なくて当然の面はあり、今作の真の野心的目論見はこの「心の弱い」主人公像、にあるのかもしれません。ただしかし、それで美空をここまで追い詰めてしまうというのは、ここまで地味にポイントを積み重ねて割と嫌いではなかった桐生戦兎への好感度が、今回だけで一気にマイナスに転じました(^^;
特別編で(幾ら販促用の番外編とはいえ)内海に煽られてハザードトリガー使った事に、いやさすがにそれは……と思っていたのですが、本編も似たようなレベルで酷かった。
加えてここ数話の戦兎と龍我の関係性に個人的にもうひとつノれなかったのは、要するに、心の弱い男同士がうじうじと互いの傷をいじり回しているからだったのだな、と納得。この辺りは今回、龍我が一皮剥けたのと、今後も続けて絡むのであろう大人の男・猿渡による化学変化を期待したい所です。
……しかし改めて振り返ると、
俺は悪魔のYoutuberだったのー?! → いや俺はナルシストで自意識過剰な正義のヒーローだ! → この氷室幻徳が煽って戦争始まったから一緒に戦おうぜ葛城! → 責任を感じて絶望 → 大事なもん守る為なら何度だって立ち上がる! → スクラッシュそしてハザード問題 → もうたたかいたくない → 修行すればハザードトリガー使いこなせるようになるかもしれないぞ戦兎ぉぉぉ! → 情熱の扇風機!
と、10話あまりの間に物凄いアップダウンと踊らされっぷり(^^;
ビルドvsグリスの代表戦は気合いの入った長時間のバトルでしたが、営業活動、もとい連続ビルドアップでまとめてベストマッチを見せると、今作のギミック的弱さが明確に見えてしまうのは難。
元々は、
1・新しいボトルの力を使う
2・二つのボトルの組み合わせで多彩なバリエーション
3・ベストマッチなら更に凄い力が!
という見せ方をしていくつもりだったのでしょうが、ある時期から1と2の段階をすっ飛ばしてほとんど3から始めてしまう為に、組み合わせの妙を楽しむ、という最大の魅力が完全に削がれてしまっています。
そして1と2の段階が無いので、3の特別性も失われてしまう、という負のドミノ倒し。
1クール目は比較的、玩具展開との連動が上手く行っていた今作ですが、2クール目に入ってから生じた綻びが塞ぎきれないまま広がって、ハザードトリガーで完全に破れてしまった印象。
……ハザード鷹ガトリングは技もえぐくて良かったのですが、一つ一つのフォームの意義もどうしても薄まってしまいますし、ボトルボトルボトル新ベルト新ライダーボトル新アイテムボトルボトルボトルの乱れ打ちが、ここまで連続で書いてきた脚本家のキャパを超えてしまった感もあって、心配。
そんなわけでビルドは代表戦でグリスを破り、一皮剥けたクローズチャージがビルドA1の暴走を止め、北都が西都に制圧され、西都のライダーが姿を見せたところで、つづく。