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『仮面ライダービルド』感想・第24話

◆第24話「ローグと呼ばれた男」◆ (監督:山口恭平 脚本:武藤将吾
約一ヶ月ぶりになってしまったので、ここまでの物語を適当に振り返ります!
北都の東都侵攻! 北都のライダーはみーたんの下僕! ヒゲ長官更迭! 色々あった末、ギアナ高地におけるスターク師匠との修行を乗り越え、代表戦でグリスをくしゃくしゃのぽいした桐生戦兎はすっかり闇の力に溺れてしまい、今日もハザード、明日もハザード、足りなきゃもう一つおまけにハザードだ! と敵対する相手をぐっちゃぐっちゃのめっためったにしているかしていないか、正気に戻ってみないとわからないスリルに快感を覚え始めていた。
「は?! ……仕留められなかったか」
東都vs北都の間隙を突いて北都を制圧した西都の歯車兄弟に黄羽が殺され、怒りに燃えるグリスも敢えなく踏み台に。激しい戦闘力インフレの中、国境越えてきたら俺らがぼこぼこにしてやんよ、とアップしていたビルドとクローズ銀も案の定苦戦するが、更にそこに、西都のライダーが姿を見せて両者を瞬殺する。
「また会えたな……葛城」
葛城の為に生き、葛城の愛の為に戦うラブ・ウォリアー! ヘビーすぎる愛を携えたあの男が帰ってきて、どうなる第24話?!
「あなたは東都への復讐と、ご自身の安いプライド。どちらが大事なんですか?」
ファンクラブから追放後、難波重工西都研究所に辿り着いたヒゲ無職は、タイミングよく西都に居た内海に土下座して改造実験を志願。
「俺は全てをかなぐり捨てた。ただ強さを求めて」
だが内海からの嫌がらせにより人体改造は延期に次ぐ延期、独房に閉じ込められて毎日毎日『仮面ライダーブレイド』の前半戦だけを見せられるという責め苦を受けるヒゲの前に、あの男が現れる……。
「よお……お前を最強の仮面ライダーにしてやるよ」
かくしてスターク師匠の仮面ライダー講座:西都編、始まるよー。
「どうした……ブレイド』の後半戦を見たくないのかぁっ!! おまえの野心は、そんなものかぁっ!!」
今回も大変ノリノリで、マイブームは師匠ごっこのスターク、この調子なら最近影の薄い万丈にも、滝から吊したり崖の上から岩を落としたりひたすら餃子を作らせたり、大変アナクロな特訓をつけてくれるのでは。
「あてが外れたな。始末しろ」
しかしヒゲはスクラッシュドライバーを使いこなす事ができず、ならばここでクールな俺かっこいいーとモードを切り替えて玩具を燃えないゴミに出そうとする師匠だが、ガーディアンに殴る蹴るされている内に、屈辱と執念から文字通りに一皮剥けた幻徳は、仮面ライダーへと変身に成功。
「遂に覚醒したかぁぁぁぁっ!!」
「俺はローグ――仮面ライダー、ローグ」
かくして生まれ変わったヒゲ仮面ライダーは、俺が見た地獄を味合わせてやる……と戦兎達に告げ、喋りたい事を喋ったら満足して帰るのですが、第20話で一時退場後、第22話ラストではもうローグとして顔見せしており、不在期間の短さがどうしても地獄の重みと物語としての劇的さに欠けます。
勿論、一週間でも地獄は地獄なのですが、その頃酷い目に遭っているヒゲ、のシーンを挟む方が効果的になりますし、出てきて速攻で全て回想で語ってしまうというのは、どうにも話作りが弱く、展開の忙しさのもたらす悪影響。
そして戦兎から報告を受けたヒゲパパは息子について「西都に亡命」と発言しているのですが、そもそも東都で拘束せずに親子喧嘩の勢いで「出て行け!」とかやらかしていたわけで、第2部に入ってから埋設し続けてきた“政府関係者の行動の緩さ”と“現状の深刻さ”の歯車の噛み合わなさという地雷が、ここ数話、見ていて唖然とするほどの誘爆ぶり。
これが効果的な伏線の連動だったら膝を打って感心する所ですが、もしかして、地雷の自覚がなかったので回避するという意識もなかった……?というレベルで膝が抜けそうです。
青羽殺害現場に、黄羽の分の花も供えて手を合わせる戦兎の前に姿を見せるスターク師匠。
「ボトルを引き取りに来た」
「渡すと思うか?」
うわ、戦兎さん、酷い(笑)
「おまえと幻徳は似ている」
「……なんだと?」
物凄く厭そう(笑)
「大事なものを守るために戦うおまえと、自分の野心の為に戦う幻徳。二人に決定的な違いがあるとすれば、それは覚悟の差だ。失うもののない幻徳に対して、おまえは多くのものを抱えすぎている」
抱えさせたの誰だ。
かねてより戦兎と龍我の育成が目的であると公言しているスターク師匠ですが、戦兎とヒゲをわざとらしく比較してみせる事からどうやら、戦兎には色々なものを抱えさせ、ヒゲには色々なものを捨てさせるように仕向けてきたようで、さいてー、マスターさいてー。
「ゆえに、自分を解放する事が出来ない」
「知ったような口を聞くな」
「さあ、ボトルを回収させてもらおうか」
戦兎はビルドに変身してスタークと激突し、いつの間にやらパンドラボックスを開けようとするスタークと、それを阻止しようとするビルド(戦兎)、という対決の構図になっているのですが……全くそんな展開だった記憶がなく、戦争に踊っている内に、劇中冒頭からの最重要キーアイテムの扱いまで迷子。
第17話、


 「……最悪だ。俺はこの惨状から目を背けてた。戦争は俺のせいじゃない。俺には関係ないって。けど……おまえが気付かせてくれた。……もう綺麗事じゃすまされない。……俺は戦う。おまえを……この街を守る為に。この不毛な争いを終わらせる為に。ライダーシステムは兵器なんかじゃない。正義の為にある事を、俺が証明してみせる」
という戦兎の発言は、戦争の動機となっている存在=パンドラボックス、をどうにかするという意志表明だと捉えていたのですが、こ2ヶ月弱、特に何か考えていたわけではなく、目標は現状維持って、どうしてそうなった。
そこで状況を前進させる為の方向性を示すのが、主人公の仕事だと思うわけなのですが。
「もっともっと……おまえの全てを出し切れぇ!」
脳みその油切れが心配になるビルドは師匠に煽られて今回もハザードすると、暗黒海賊烈車で轢き殺しにかかるのですが、正直、ビルドアップ×ハザードは別に特性が目立つわけでもなんでもないので、だからなに感が激しくて辛い(^^; ハザードトリガー登場後の様々な要素との噛み合わせの悪さと地雷の破裂具合が本当に物凄くて、現状『ビルド』という物語の土手っ腹に杭打ち機で大穴開けた状態なのですが、一体全体どういう話し合いで飛び出してきたのかハザードトリガー……。
(大丈夫だ! まだ、いける! …………?! ……うう、駄目、か……)
もはやギャグになってきた。
「ハザードレベル4.2、4.4! これがハザードトリガーの力! いいぞぉ! リミッターを外せぇぇ!」
それはそれとして、自我を失ったビルドの連続パンチを受けながら師匠は大変楽しそうだった。
「俺の想像を超えてこい! まだ行ける筈だぁ……俺が求めていたレベルに達してみろ! さあ!」
師匠ごっこが最っ高に盛り上がってきたその時、乱入したグリスが飛び蹴りで外部からハザードを強制解除し、もう、止める人も誰でも良くなってきました!
邪魔が入ったとスタークは退場、故郷を取り戻すために力を貸してほしいと持ちかけられた戦兎は猿渡を受け入れ、居候がまた増えました。しばらく万丈の出番がドタバタシーンで確保された後、「ラブ&ピース」に腕輪が反応して美空が突然倒れるが、そのタイミングで東都政府に乗り込んだヒゲがパンドラボックスを強奪。
部下を退避させ、保管庫からボックスを取り出すパスワードを打ち込む首相がやたらと目をきょろきょろさせるので、ヒゲがパンドラボックスに手を伸ばした瞬間に大爆発――
「お、親父ぃぃぃ!」
「教えただろう幻徳! 自爆は、宇宙最強のセキュリティ! 後は頼んだぞ、仮面ライダー達よ!!」
(どかーーーん!!)
みたいな事になるかと思ってドキドキしたのですが、そんな事はありませんでした。
「俺たちの運命を狂わせたスカイウォール。これ以上ない舞台だろう。葛城」
ヒゲと葛城と“スカイウォールの惨劇”が、父への想いという回路を経由して、ねじれて曲がって繋がっているというのは面白いので、今後跳ねてほしい要素ではあるのですがその一方で、
「お前達からボトルを回収して、パンドラボックスを開けば……全てが終わる。いや――全てが始まる」
これまでずっと曖昧な扱いだった「パンドラボックスの中身」(なんかすっごいエネルギー……らしい)について今回から突然、侵略国家である西都は悪=だから西都の目的であるボックス開放も悪=だからヒーローはそれを阻止しようとするのが正義、という事になってしまっていて、戦兎が一度もボックスの中身について思考を巡らせた事もないまま(スプラッシュのエネルギー源にしているのはその伏線では無かったの……?)開放阻止こそラブ&ピースと謳いだす為、2話ぐらい録画失敗していたのだろうか、という気持ちに。
そしてそのスプラッシュは、今回もローグの前でW杯本戦2ヶ月前に代表監督解任するJFAばりの役立たずぶりを披露。
「こっちは、愛と平和の為に戦ってんだ! 復讐目的でライダーとなったあんたと、違うんだよ!」
「復讐……復讐、そんな考えはとうに捨てた。……俺がライダーになれたのは、東都を倒して、今度こそ自らの手でこの国をまとめる。その思い、ただ一つ」
「ハザードトリガーを使え! 暴走したら止めてやる!」
自我を失う事への恐怖をスターク師匠が指摘する一方、周囲の人間からは叩けば直る壊れた家電扱いを受け、当の本人も割とカジュアルにスイッチ押すので、一番深刻に扱ってくれているのは師匠じゃないかというハザードトリガーのハザードぶりが止まりませんが、師匠の台詞から考えると元来は、戦兎にとって極めて重要な意味を持つアイデンティティの喪失に関わるギミックだったのが、青羽殺害イベントと繋げてしまった事で、戦兎にとっての本当の恐怖とは何か、の焦点がぼやけてしまった感。一応毎度ボタンを押す前にためらう様子は描かれるのですが、無意識の内に人を殺してしまう事を心底恐れていたらボタン押せないと思うので、戦兎が本当に怖いのは、「自我を失った結果」よりも「自我を失う」事なのであろうな、と。そこの焦点をしっかり合わせて構築できていれば、ここまで存在が浮かなかった気がしますハザードトリガー。
「愛だの仲間だの理想だけを追い求める、おまえ達にはわかるまい。国を背負う重みを。貴様に、俺の信念は打ち砕けん」
たとえ歪んでしまった道でも、あくまで“国”の為を語り続けるローグの蟹挟みキックから投げ飛ばされたビルドはスカイウォールに激突して大爆発し、今作世界の象徴といえる壁を背負ったローグの頭上で大きな花火となってヒーロー惨敗、という構図は格好良かったです。
クローズ&グリスも歯車兄弟に完敗し、いよいよ全滅寸前、気絶していた筈の美空が裸足でその場に現れると、開いた瞳は碧――でつづく。