はてなダイアリーのサービス終了にともなう、旧「ものかきの繰り言」の記事保管用ブログ。また、旧ダイアリー記事にアクセスされた場合、こちらにリダイレクトされています。旧ダイアリーからインポートしたそのままの状態の為、過去記事は読みやすいように徐々に手直し予定。
 現在活動中のブログはこちら→ 〔ものかきの繰り言2023〕
 特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)

『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第47−48話

◆修行その47「ピカピカ!俺の道」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久
「もうロンの思い通りになりたくない」
メレ救出への共同戦線を持ちかけられるも、失意の理央は背を向け、ジャンの呼びかけに対しても「メレは、ただの配下に過ぎぬ」と自分に言い聞かせるようにしながらとぼとぼと歩み去ってしまう。
5人はメレを助けに臨獣殿へ乗り込む事を決意し、その水先案内人つ務めようと姿を見せたのは……バエ。
こでハエが出てきたのは半ば忘れていたので驚きましたが、思えばハエ、アレな拳聖からいきなり裏切り者扱いで拷問とかされそうになりましたが、体質的事情があるとはいえ激獣拳と臨獣拳を結ぶ存在であったわけで、情報提供役としても、腐れ縁によるメレとの友好度からいっても、納得の役回り。
……ちょっと面白いのはこの前振りとして、ゲキレンジャーが猫師匠に、どうせおまえ知ってるんだろ? という前提で、臨獣殿の場所を質問している事(笑)
「ジャン、儂は、マクを救えんかったが、お主は、理央を救ってやってくれ」
理央を立ち直らせたいと別行動を決めたジャンに声をかけ、クマ様の件を拾ってくれたのは、遅きに失しましたが無いよりは良かったです。
いよいよ臨獣殿へと突入した黄青紫白は、リンリンシーを蹴散らすと本殿に迫り、紫と白がサンヨを引きつけている間に奥へ進むと、ロンに拘束された更にヒロイン力を上昇させるメレ様の元へ辿り着く。
「色々あったけど、今は君を助けたい!」
ロンに洗脳されていたに等しい理央様への同情はともかく、ロンへの怒りからメレ様の救出に繋げるのはやや説得力が弱くはあるのですが、虐げられている者を救う事こそ、激獣拳の“正義”である、という事なのでしょう。
「身の程知らずが。そんなに遊んでほしいですか!?」
「ゲキ、レンジャー……」
照明に照らされたロンは未だかつてない残虐な表情を見せ、思わぬ救援に、その名を口にするメレ。一方、ジャンは雪山で呆然と佇む理央を見つけだし、一面の白の中にジャンの赤と理央の黒が鮮やかに映える、見事なロケーション。
「俺は……俺は、いったい何をしていたんだ。何のために生きてるんだ」
「理央……」
「……ハ、惨めな俺を笑いに着たか」
芸術点10の素晴らしい負け犬モードを発動する理央を、何とかメレとの繋がりに向き直らせようとジャンは言葉を重ね、一方的に押しつけられた「宿命」に反発し、一度は世界との線を全て断ち切ろうしたジャンであるからこそ、理央への言葉に説得力が生じるというのは終盤の展開が巧く連動しました。
「自分の気持ち信じて、ワッシワッシで乗り越えるしかないんだ!」
それでも自分の中の真実と向き合おうとしない理央をジャンは殴り飛ばし、怒りの理央に殴り返された事に、その怒りはロンとは全く関係ない、理央自身の怒り、理央自身の意志だ、と喜ぶ。
「おまえにもあるんだ……ロンの思い通りなんかじゃねぇ! ピカピカの……おまえだけの気持ち」


(あの時の光、あの時の理央様の言葉。あれが今の私の、始まりだった)
それは恐らく、かつてのメレが感じた、黒い憎悪にまみれたがらんどうの人形ではない、理央の中の命の光。
「おまえの道はなんだ? 理央」
「俺の……道」
「そうだ! おまえの! 理央の道だ!」
「……俺の道」
……大変いいところで、どうしても書かずにはいられない事が一つあるのですが、理央様の実年齢(40前後?)を考えると、20近く年の離れた面々に囲まれて「もうおまえ、告白しちゃえよ〜」と背中を押されて煽られている構図なのが、凄く辛いですね! まあ理央様、真っ当に情操が発達する環境で育っていたとは思えないので、「大きな幼児」であるジャンより少しだけ成長した文字通りの「大きな中学生」というわけでつまり、真墨ぃぃぃぃぃぃ(風評被害
ここに来て、ジャンと理央の対比関係の本質が見えてきて、色々なパズルのピースが収まる所に収まってくるのですが、中盤ぐらいからもう少し、要素の連動が部分部分であればと思わざるを得ず、ロングパスの中にショートパスを効果的に交えられなかったのは、勿体なかったと感じます。
臨獣殿の激闘でゲキレンジャーが押し込まれていたその時、乗り込んできた赤と黒のダブルパンチ、からのダブルキックがドラゴンロンに炸裂し、理央は囚われのメレを救出。
「理央様……どうして?」
「俺に理由を言えというのか?」
変なところで王様ムーヴを発動し、無言でメレを抱きしめる理央……ううむ、まさに、真墨・完全体。
「ふ、メロドラマは終わりですよ、理央。さあ、共に参りましょう。人間には味わえない、「最強」の向こう側へ」
「俺はもう貴様の思い通りになどならん。何故なら俺がここで、貴様を倒すからだ!」
黒幕として馬に蹴られる事を恐れないロンのいやらしい囁きに対し、理央様はびしっと指を突きつけて拒絶し、場外の二人(紫白)の事はこの際忘れて、格好良く並ぶ5人(笑)
新生ゲキレンジャー、誕生の瞬間である(待て)
「残念ですが、あなたは既に幻獣王。あなたには、破壊神になる運命しかないのです」
「いいや、覆してみせる。この俺の力で、この俺の意志で、それが俺の……ふっ……ピカピカだ。俺の決めた、俺の道だぁ!」
宿命の戦いにこだわり続けた理央は今、自らの手で自らの道を切り拓く心を取り戻し、スーパーゲキレッドに敗北→クマ様のパシリに降格、のWショックから約半年、長い彷徨の期間を経て遂に、「運命と戦う」ヒーローとして復活する。
黄金の闘気を放った理央は、ロンの血盟により体内に混ぜ込まれた幻気をメレと共に消し飛ばし、元の姿に。
「見たか! これが俺の意志だ」
「そして、これが私の愛!」
数々の暗躍を繰り広げてきた幻獣コンサルタントのロン……なんというか、割と真っ正面から愛の力に敗北。
戦隊ヒーローにおいて、「公の大義」と個々人がどう折り合いをつけるのか、というのは繰り返されてきたテーゼの一つですが、「公の大義」を持たないダークヒーローである理央が、「運命と戦う」という道を選び、それを支えるメレの「愛」が説得力を持って描かれ、1年間の蓄積が集約された完全なる主人公ムーヴで巨悪の前に立ちながら、徹底して「私」でしかない、というのは、裏主人公ならではの仕掛けと言えますが、かなり大胆な作劇。
正義と邪悪のシンプルな対決の構図を打ち出し、前作との差別化も含めて王道路線寄りに見せながら、端々に新機軸の要素を取り込んでいた今作の、挑戦的部分の一つの結実といえるでしょうか。
もうこのデータは削除して破壊神メーカーを最初からやり直します、とサンヨと合流するロンだが、それを追い詰める獣拳使い達。黒獅子は、倒れていた紫に手を伸ばして立ち上がらせ、にいさぁぁぁぁぁぁん(感涙)
「理央…………戦う顔に、戻ったな」
……うん、なんかもう、ゴウと理央の友情に関しては、これで満足しました(笑)
ハードル設定が物凄く低かったので、拾ってくれただけで満足です!
「もう誰も、シクシクのメソメソにさせない! そのためにロン、おまえを倒す! それが、俺たちの道だぁ!」
運命を弄ぶ奸智の徒に今、正義の獣たちが牙を剥く!

「猛き事、獅子のごとく。強き事、また獅子のごとく。邪龍を葬る者、我が名は黒獅子――理央」
「理央様の愛の為に生き、理央様の愛の為に戦うラブ・ウォリアー! 臨獣カメレオン拳使いの――メレ」
「体にみなぎる無限の力! アンブレイカブル・ボディ! ゲキレッド!」
「日々是精進、心を磨く! オネスト・ハート、ゲキイエロー!」
「技が彩る大輪の花、ファンタスティック・テクニック、ゲキブルー!」
「紫激気、俺流、我が意を尽くす! アイアンウィル・ゲキバイオレット!」
「才を磨いて、己の未来を切り拓く! アメージング・アビリティ、ゲキチョッパー!」
「「「「「燃え立つ激気は、正義の証! 獣拳戦隊・ゲキレンジャー!!」」」」」

全員フル名乗りの勢いで「ゲキレンジャー!」に参加してしまうかと思われた理央メレはさすがに声を合わせず、両サイドに立っているだけでした(笑)
とはいえ今作の凝った名乗りポーズと口上がぴたっと収まり、格好いい揃い踏み。
黄青紫白はサンヨを引き受け、ジャン理央の方へ回されるメレ様が凄い(笑)
だが、ドラゴンロンとサンヨは共に激臨戦隊を凌駕する力を見せ、重力攻撃により危機に陥る黄青紫白。しかしその時、突如としてサンヨの動きが鈍り、ステルスしていたメレ様が姿を見せると、気の流れを止めて実質的に戦闘不能に陥らせるという、とんでもない裏技を初披露。……もともと実力派のメレ様ですが、ここに来て溢れるヒロイン力がオーバーロード気味。
一方の赤黒はドラゴンロンの一撃により物凄い勢いで天高く吹き飛ばされるが、その時、二人の脳裏に惨劇の記憶が甦る……
「負けてたまるかぁ!!」
「貴様の慰み者にはならん!」
「俺たちは俺たちの力で、おまえを倒す!!」
……これやっぱり、憎しみの力なのでは(笑)
ロンのエネルギー波を断ち切り、地上に降り立った赤黒が突撃したところで挿入歌が入って一端シーンが切り替わり、メレ様と愉快な格下ーズは、紫激気アッパー→ダイナミック激気チョップ→Wスーパーゲキクローアタック→臨技アルティメットラブスピン(これ、先日ゴウが必死に修得した技なのでは……)の怒濤の必殺技連打(技と技の間をスクラムジャンプ台で繋ぎ、あくまで連携技として見せているのが素晴らしい)で、サンヨを撃破。
トドメを刺したメレ様が爆発と格下ーズをバックに決めポーズを取り、アルティメットヒロインとして格の違いを見せつけます(笑)
赤黒もまた、懐かしのヌンチャクも交えてロンを押し込む鬼神の連撃を浴びせ続ける。
「なんだ、この力は……?!」
「「これが 憎しみのオーラ力 獣拳だ!!」」
息ピッタリの宿命の二人(兄さん……)は空中コンボからの激臨ミックス砲で遂にロンを粉砕し、幻獣拳との決着を付けた7人は合流。……理央様は今頃、なんか俺、勢いで告白してしまった気がする……と照れていた。
だがしかし、「面白い。もっと私を楽しませなさい」と、不屈のコンサルタント力で巨大ドラゴンロンが降臨。
闘気を合わせた7人により、主題歌をバックにサイダイゲキリントージャがバーニングアップし、デザインの微妙な事には定評のあるサイダイゲキシリーズですら格好良く見えてしまう、主題歌、恐るべし(毒されすぎでは)。
巨大化してもいやらしい待ちドラゴンの落雷攻撃に対し、臨気の飛び道具で反撃すると、ビースト連続攻撃から最後は大回転ギロチン斬りが炸裂。
「サイ! ダイ! ゲキ! リン! ざーーん! 決まったーーー!!」
「これが獣拳か……くっ……はは……面白い……面白いぞぉぉぉぉ!!」
高速横回転で胴体を連続斬りするという、劇中最高レベルに殺意の高い必殺剣を受けたロンは大爆発し、サイダイゲキリントージャ、WIN!
「これからどうするんだ?」
「わからない。……考えたい、これからの道を」
もうすっかり仲間認識のジャンは理央とメレをスクラッチに誘い、一応止めるランとレツを気にせず強引に肩を組む、が……恐るべき幻獣の闇は、まだ払われたわけではなかった。
「まだ終わってないよ〜。サンヨは何故だか、不死身よ〜」
と、城茂みたいな事を言い出したサンヨの、嘔吐シーン(おぃ)で、つづく。
次回――理央メレはこれまでの所業が所業なので、さすがに獣拳無罪になる事はなく責任問題を問うてくれるようで一安心しつつ、どう着地させてくるのか、注目。


◆修行その48「サバサバ!いざ拳断」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:横手美智子
ジャンに強引に引っ張られた理央とメレはスクラッチを訪れ、改めて理央−ゴウ−美希、同期3人の友情が補強されるのですが、不吉な予感でガラス割れしたままの写真立てを、理央様はどう受け止めればいいのか(笑)
(……こ、これは、遠回しな、「おまえを吊す」宣言なのか……?(ガタガタ))
メレ様が美希に嫉妬の炎を燃やしたり、久々に動いたトレーニングロボが壊されたりしつつ、和やかな雰囲気から離れた位置に立ったまま渋面を浮かべるランとレツ。
私たちの、立場が、無い!
……じゃなかった、
「いいのか、こんな事で?」
「このまま、理央とメレを許してしまってもいいの?」
臨獣殿の当主とその片腕として、これまで数多の臨獣拳士を世に送り込み、悲鳴や絶望を集める為に行ってきた非道を無かった事にしていいのか、と一同に問う二人。
「これは違う……全然違う話だよ!」
「どんなに人々が苦しみ、悲しんだか」
「じゃあどうしろっていうんだよ二人とも?!」
「わかんないよ!」
物語的な因果応報も含めて理央メレの責任問題に言及した上で、かといって単純に断罪できるほど割り切れているわけでもない、という部分に、情と若さが出ていて良かったです。
そんなやり取りに背を向けていた理央は、一瞬かすかな笑みを浮かべるとすぐに表情を引き締め、敢えて傲岸な王様モードでレツに近づくと、獣拳に伝わる拳断――裁く者と裁かれる者の命がけの決闘――を提案する。
ランとレツはそれを受け、この最終盤、物語の歯車から外れてしまっていたランとレツが、メンバーの中で最も長く臨獣拳と戦ってきた古株の二人としての存在感を出してくれたのは良かったです(そうすると今度は、ゴウとケンが外れ気味になってしまうのが、今作の短所なのですが)。
「あいつら二人は、理央とメレの罪を裁くという辛い役目を、敢えて引き受けてくれたんだ」
なおゴウ兄さんは、友情の勢いでなぁなぁにしてもいいかな、みたいな雰囲気になっていました!
3日後に拳断を約束した理央メレは臨獣殿本社ビルへと戻り、妙にハイテンションなメレ様が不意に静かになると、口を開く理央。
「俺についてくる義務はない。別の道を行く事も出来るんだぞ」
「いいえ! メレはいつも理央様のお心のままに! 覚悟は出来ております」
「そうか……」
しんみりとする二人だが、そこへ現状に不満を抱えるジャンがやってくる。
「理央もランもレツもわかんねぇ! なんで拳断なんかやる」
「なんでか……」
「そうだ。なんでだ!」
「……臨獣拳はこの世から消える。そして獣拳は昔のように、激も臨もない、ただの獣拳に戻る。拳断はその為に必要な儀式なのだ」
「臨獣殿が、消える為の儀式……」
「ああ。臨獣伝は俺が復活させた。幕を下ろすのも、俺の務めだ」
理央様の若々しい外見は、
〔戦隊的なキャスティングとジャン達との対比を成立させるビジュアル的事情×肉体を若く保つ事による強さへの執着の表現×それと表裏を成す精神的未成熟さの象徴(少なく見積もって原因の5割は拳聖)〕
という意味合いがあると思うのですが、ランとレツの気持ちを受け止め、またここでジャンに、柔らかく言葉を選んで語る姿には、憑き物の落ちた理央が「大人」の立場となった、という変化が見て取れますし、大人への道を踏み出しつつある大きな「子供」であるジャンとの対比も活きました。
また一方で、背景が判明していくと共に割と困った人である面も浮かび上がってきた理央に対し、最初から最後まで「理央」として向かい合い続けられるキャラクターという面でも、ジャンが社会的常識に縛られない野生児である事が必要であったのだな、と改めて。
「そしたら、理央もメレも、ただの獣拳に戻るのか?」
顔を輝かせるジャンに対し、背を向けたままの理央とメレ、というのが今後の展開に向けて暗示的。
「俺たちは戻りはしない。ただ変わるのだ。いや……」
そこで、理央はさっぱりとした表情で振り返る。
「もう変わったのかもしれん。おまえや、あいつらのお陰で」
「ええ。今はサバサバした気分です」
「理央とメレ、サバサバ? ……サバサバ」
二人の真意を汲み取る事ができず、スッキリとしない面持ちのジャンを、どこかもの悲しくも微笑ましげな視線で見つめるメレ様、いつでも、全方位にあざとい……。
「さらば、臨獣殿」
理央は会社に火を放って倒壊させ、いよいよ、拳断の日――猫とジャン達が見守る中、対峙した4人は拳を打ち合わせ、かなり力の入った生身バトル、から、あ、変身ありなんだ(笑) いやまあ、殺陣の都合でしょうが。
「そうか……理央」
そして3周ぐらい遅れて理央の真意を悟る猫師匠、もはや何の驚きもない、安定の節穴ムーヴ。まあ、ここで猫がしゃしゃり出ても面白くはないですし、7拳聖とクマ様が共に敗れた時点で既に時代は次に移り変わっている、というのが今作の構造なのですが、喋れば喋るほどボロが出るのが大変困ります。
この最終盤、これまで放置してきたものも含めて劇中各要素の集約と整理がかなり巧く行っている中、7拳聖だけ、どうにもならないのが辛い。何度か書いていますが、クマ様撃破の時点で、もっと劇的に、7拳聖の立ち位置そのものを変える必要があったのではないかな、と(率直にもう、強化展開とも関わらないわけですし)。
何かに使えるかも……と中途半端に引き出しの底に残しておいた事で、かえってキャラを殺しているような事になってしまい、残念。
「この程度で、裁きを下すつもりかぁ!」
「本気で打ち込んできなさいよ!」
理央メレの挑発に応えた青と黄は必殺の秘伝激気技を放ち……それを、ノーガードで受けようとする理央とメレ。
これまでの流れから想定通りの展開ではある中、屍者であるメレ様はまだともかく(まあそこに人間性を既に見てしまってはいるわけですが)、一応まだ人間である理央様とマッチアップしているレツの背負う十字架が不意打ちで重すぎる気はなしないでもないのですが、“拳断を受ける”とはその覚悟を決める事であり、それはまた今作における、“正義の看板を背負う”という事の、意味づけなのでありましょう。
最終盤、ジャンとの関係性が断線に近い状態になってしまった事で、物語のメインストリームから分断されてしまっていたランとレツですが、最終回直前にして、ゲキレンジャーの初期メンバーであり、激獣拳使いとしての強い誇りを持つ二人に、ふさわしい役回りが与えられたのは良かったです。
ある程度、物語の因果応報としての理央メレの着地点は見えつつも、悪行への落とし前をどうつけるのか、という責任問題にじっくりと時間をかけた今回ですが、それと同時に正義の責任を描いてみせたのは面白く、これは塚田P作品でいうと、後に『仮面ライダーW』で描かれる、“法治を尊重するヒーロー”に繋がる部分であるのかもしれません。
そして、主人公であるジャンは最終回直前に他者に対する“憎しみ”を覚え、この役回りがランとレツに来る、というのも、今作の挑戦的な部分であり、ある意味では、他者と繋がるからこそ“憎しみ”が生まれるわけで、ジャンにとっては、そういった自らの心の中の獣と向き合い飼い慣らしていくのは、この物語の先の課題なのであろうな、と。
拳断の終幕――決定的な一瞬の寸前、しかし復活バジリスクがその場に乱入して4人を吹き飛ばす。
「サンヨは不死身よ〜。決して死なない。何故なら……」
「私の一部だからです」
その影から姿を見せたのは、胴体真っ二つになった筈のロン。
「私は永遠の命を持つ者。何者も、何を持ってしても、私を破壊する事は、出来ない。その私の、不死の部分が、サンヨ」
幻獣コンサルタント改め幻獣イリュージョニストとして、頭部から黄金の龍身を噴き出したロンはサンヨと融合し、かつてジャンと理央を地獄に叩き込んだ怪物、巨大な多頭の黄金龍へと変貌する。
「私の真実の名前は、無限龍。古来より、ある時は導き、ある時は惑わし、人間どもを操り、弄んできました」
ロンの正体、それは、古今東西、数多の伝説や民話などに語られてきた、あらゆる龍やドラゴンそのもの、であった!
8プラスアルファの龍の頭を持ち、八岐大蛇と麒麟の融合、とでもいったデザインのロン――転じて無限龍は、真のラスボスにふさわしい大迫力。
「ここしばらくは、あなたたち獣拳使いのお陰で、かつてなく面白い日々を送る事ができましたが……ゲキレッド! 不覚を取ったのはおまえの為! 私の意図から外れて動いたのは、おまえ一人!」
破壊光線で一同を吹き飛ばした無限ロンは執拗にゲキレッドへと牙を剥き、次々と迫り来る巨大な龍の顎、立て続けの大爆発、とかなり気合いの入った特撮。
あまりにも巨大な存在に翻弄される赤黄青をかばったメレが龍に噛み砕かれてぺっとされ、怒りのゲキトージャウルフとサイダインが出撃し……頑張れ前座ーズ。
「なんでだメレ……なんで俺たちをかばってくれたんだ」
「あんた達が、格下ーズだからでしょ。……しっかりしなさいよ」
前座ーズが奮闘している間にジャン達は瀕死のメレを抱き起こし、理央とメレの真意を知る事になるジャン。
「あんたには感謝してるわ。理央様と私に、道を示してくれた」
「メレ……」
そして理央様がやってきて、選手交代。
「理央様……申し訳ありません。……メレは、先に参ります」
「ああ。……だが一人にはさせん」
伸ばされたメレの手を握った理央は空いた右手をその頬に伸ばし、これが井上脚本で今が90年代だったら間違いなくキスだな! と思ってドキドキしましたが、抱きしめて頬を寄せるだけにとどまりました。ただ前回もでしたが、アーマーの都合か身長の問題か、理央様の、体の片側に抱き寄せる抱きしめ方が格好いい。
「あと少しだけ待っていろ」
「はい」
理央に抱きしめられながら涙をこぼしたメレは灰となって土に還り、その灰を握りしめ、立ち上がった理央は自らの秘孔を突く。
「メレ……俺もすぐに行く」
結構頑張る前座ーズは無限ドラゴンビームの直撃により最大シールドが溶けていくという大ピンチに陥っており、無限ロンに自らの全臨気をぶつけると宣言する理央。
「そんなの駄目だ! 一緒にやろう。俺たちもう仲間だろう?!」
だが理央は既に、臨気を全解放する為の禁断の経絡を突いていた。
「やらせてくれ。これは俺が決めた道だ!」
ロンの思い通りではない、ピカピカの、“俺の道”……その言葉に、ジャンは理央を止める事を諦めて項垂れる。
「……最後に頼みがある」
理央は秘技・全臨伝授により、臨獣拳に伝わっていた全ての技を、3人へ強制アップロード。
「受け取ってくれ。臨獣拳アクガタの、全ての臨技だ。正義の心で、臨技が使われる事があるならば、マク、カタ、ラゲクを始めとする、俺たち臨獣殿の存在も、僅かなりと意味を持つ」
以前にクラゲがメレについて「激臨の大乱の頃に臨獣拳に入門した者」と表現していましたが、今作の構造的に恐らく、大乱時代(生前)の臨獣拳士達の中には、様々な事情でやむなく臨獣殿の門を叩いた者もあり、そしてそもそも、3拳魔自身が、ロンの策謀やシャーフーの行動やシャーフーの行動などで心を歪めてしまった存在でありました。
勿論、臨獣拳士としての非道は許されるわけではないし、中には最初から邪悪な意志で臨獣拳に入門した者もいるでしょうが、しかし、せめてその者達の技だけでも残す事で供養にしてほしい……幻獣王を捨てた理央がここで、臨獣拳最後の当主として、死者達の王としての仕事を全うする。
この最終盤に至って、驚くほど多くの劇中要素を拾っていき、正直、中盤から40話台前半はなんだったのか……と思わなくもないのですが、3拳魔の存在も忘れる事なく、理央が自らの座っていた玉座の意味に向き合う(それはまた、屍者を甦らせて使役していた事への贖罪でもあるのでしょう)というのは、大変嬉しかったです。
……まあその分、3拳魔と全く向き合う事がなかった(過去の大乱の決着で心の整理が完了していた、という弁護はできますが、やはりそこは視聴者に見せておくべきだったとは思うわけで)猫ぉ……! が猫ぉ……! なのが大変際立ちます(笑)
「俺たちを、おまえ達の手で、未来へ連れてってくれ」
受け渡された荷物の重さとその意味に呆然と立ち尽くす3人にハッパをかけ、王としての最後の務めを果たした理央は、拳士として、愛の戦士として、最後の闘いへと踏み出し、そんな理央に、涙をこらえながらエールを送るジャン。
「いらねぇそんなズシズシ……。理央……おまえが持て! 最後までおまえがワッシワッシで持ち続けろ! じゃねぇと……俺ギュオンギュオンに強くなっちまうぞ! いいのか? おまえ追いつけないぞ!」
ここぞとばかりにジャン語を注ぎ込んできましたが、物語の集約点という事で、悪くはなかったです。スウグとの決着の際に、ここでジャン語を「卒業」しても良かったのでは、と書きましたが、前回今回の理央との対比を見ると、ジャンが「大人」になるのはこれからで、恐らく『ゲキレンジャー』という物語そのものが、1年かけたジャンにとっての成人へのイニシエーションであるのだな、と。
「どうだろうなぁ……俺は負ける気はないぞ」
敢えてニヤリと笑った理央は、無限ロンの元へと歩みを止めず、ジャンに背を向ける位置へ。
「……なら勝負だ。……おまえのライオン拳と俺のタイガー拳、どっちが強いかもっかい勝負だ! おまえなんか……ギタギタだからな」
「ああ。約束だ」
振り返って微笑んだ理央は俯くジャンの拳に自らの拳を打ち合わせ、役者さん会心の、物凄く綺麗な表情が1枚の絵として切り抜かれて、素晴らしかったです。
「その時を楽しみにしていよう。ジャン」

――獣を心に感じ、獣の力を手にする拳法、獣拳。
戦う宿命の拳士たちは日々、高みを目指して、学び、変わる!

「これが最後の、臨獣拳だ」
時間は稼いでくれた前座ーズが敗北し、臨気鎧装した理央は、一人、巨大な無限龍と対峙する。
「ふふふ、今更何をする気です、理央」
「ロンよ! これもおまえの筋書き通りなのか?
俺はようやく、本当の強さを身につけたぞ」
結局、死による精算となる理央メレですが、その精算の寸前に、理央が、求めて止まなかった“真の強さ”に辿り着くというのが、裏主人公カップル1年間の物語の集約として、凄く良かったです。
ヒーローサイドの制約から離れる事で比較的自由度が高く、筋を貫きやすかったというのがプラスに働いた面がある一方、中盤で負けさせた後の扱いには今作らしい迷路にはまっている部分も見えましたが、しっかりとここまでの積み重ねを踏まえて飛翔を決めてくれ、ここまでの今作で、一番好きな台詞。
全体の構図としては巨大な無限ロンを見上げる黒獅子でありながら、カットしては、崖の上に立つ黒獅子を下からのカメラで撮っている(理央は今まさに頂きに居る)という演出も良い。
「なに?」
「仲間が……俺に戦う意志と力をくれた。――喰らうがいい。臨技! 大解放!」
無限ロンの口から体内へと飛び込んだ黒獅子は、全ての臨気を解放して内部で壮絶な自爆を遂げ、そのエネルギーに耐えきれずに内側から粉々に弾け飛ぶ無限ロン……そして、自らも砕け散りゆく理央が最後に見たのは……
惨劇の夜。
のしかかる暗闇。
降りしきる雨。
――その、終わり。
天賦の才能ゆえに運命を弄ばれ続け、降りしきる雨に蝕まれてきた男がいつの間にか手放せなくなっていた世界との絆……臨獣カメレオン拳使いのメレは、理央の心の雨を止め、射し込む光と共に歩み寄る。微笑みを交わし合った二人は手を取り合い、白い光の中に消えていく…………
やりきった!!
どうせやるなら徹底的にやり通してほしい、と考えていたのに、やり過ぎでは、と動揺するぐらい、やりきりました!!
最終的にメレは「愛」を、理央は「強さ」を手に入れ、劇中の非道との因果応報を考えると充足しすぎでは、という思考もよぎらなくはないのですが(正直もうちょっと、二人とも悲劇的な最期になるかと思っていました)、基本的にこの二人は好きなのと理央ラストの「俺はようやく、本当の強さを身につけたぞ」が凄くツボだったので、満足。
「理央……」
「馬鹿野郎……」
ジャンは破壊の現場に遺された拳魔の腕輪を拾い、そういえば理央様、3拳魔の腕輪、最後まで身につけていたのか……と、最終回直前に畳みかける「猫ぉ……!」案件(笑)
「理央よ、おぬしは真の獣拳使いとして一生を全うした。見事じゃ」
最終盤で恐ろしいというか拾いきれずに切り捨てられたのが理央と猫師匠の関係性なのは冷静に考えると色々とアレなのですが、気がつくと理央様から3拳魔以下の絆ヒエラルキーにされていた猫は、なんとなくいい事言った感じで存在をアピールするが、やはりどうにも空転気味なのであった。
そしてそんな猫の一言が悪かったのか……
「ふふふふふはははあははは! 愚か者は繰り返す。何度も同じ過ちを」
呵々大笑しながら甦るロン、に向けたジャンの、目が、殺意で巨大化できそうです!
「俺今グラグラだ……メレの気持ち、理央の気持ち! ここでアツアツのグラグラに煮えたぎってる! 俺たちが、ゲキレンジャーが、獣拳が! おまえを絶対の絶対に倒す!」
ジャンはグローブの上から理央の形見として拳魔の腕輪を身につけ、ビジュアル的にも激と臨気が一つの獣拳へと戻り、次回――最終決戦!
道中、多くの不満を述べてきた今作、塚田Pの統制の下で色々な脚本家を起用してきましたが、最終的に残る事となった荒川さんと横手さんの筆により、劇中要素を拾えるだけ拾ってしっかり繋げ、大変満足のいくラスト前でした。道中の不満が帳消しになるわけではないのですが、今回に関しては、本当に満足。
後の心配は、最終回が今回より盛り上がるのか? という事ですが、ここまで来たらラストも期待したいです。もう少し書きたい事はある気もするのですが、えらく長くなってしまったので、後は最終回の感想で。
なお、幻気を吹き飛ばした際の副作用?でハエはメレと離れても大丈夫な体質に戻った事になりました。……まあ、現場に関係ない所でハエにキラキラされても反応に困るので良し(笑)