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『獣拳戦隊ゲキレンジャー』感想・第44話

◆修行その44「ワフワフ!父ちゃんのメロディ」◆ (監督:諸田敏 脚本:横手美智子
見所は、
「不可能はないと信じる力か。……それなら、俺の中に溢れているぜ!」
おもむろに脱ぐゴウ兄さん。
そう、筋肉こそが真理に辿り着く手段!
年明け正月、着物姿で初詣する激獣拳の面々だが、一人ジャケット姿のゴウは特訓に行くと別行動を取り、臨獣殿では理央様がシャドー幻獣拳にいそしんでした。理央様の拳舞に小鼻をひくつかせて不満げな表情を見せるロンは、ゲキレッドへの執着から、幻獣王としての本来の力がせき止められていると言及。ゲキレッドへの刺客として、スウグを放つ事を進言する。
「スウグを作った私が言うのですから、間違いありません。ひとたび命じられれば、スウグはゲキレッドを、躊躇なく殺します」
……なんかつい最近も、こんな事を言って身ぐるみ剥がされた宇宙商人を見たような。
一方スクラッチでは猫師匠が、スウグはゴウの激気魂を利用した力だけの人形であり、決してダン自身ではない事を改めて説明し……似たような手段で師匠の魂を石像に封じ込めて決戦兵器にしようとした結果、敵味方問わずに獣力開花してしまう本質的にコントール不能のシステムが誕生してしまったので、聖地と称して封印していた人達の一人が言うと、物凄い説得力ですね!!
「俺がやる……俺が、トラピカ倒してくる」
ジャンは覚悟を決めてスウグとの決戦に臨み、それを観戦するロン、そしてバジリスクの洩らした「新たな理央様」という一言に今さながらロンの思惑に疑念を抱きロンを見張るメレ。一方、街では四幻将への昇格を目出す犬拳士が暴れて黄青白が立ち向かい、ゴウはペンギンに賄賂を送って、ペンギンの知るサイ仮面の残した究極奥義について教えを請う。
と、ぎゅぎゅっと詰め込まれた3つのエピソードが同時進行するのですが、因縁の親子対決と、理央を倒すために奥義を得ようとするゴウはともかく、その間の青黄白vs犬戦が、壮絶な面白くなさ。
戦隊としてメンバー中3人を放置しておくわけにもいかないですし、スタンダードなバトルと勝利の要素があるのは良いと思うのですが、あまりにもドラマとして温度差がありすぎます。
これはそもそも、双幻士の扱いに問題があるのですが、幻獣拳の登場当初こそ、現生動物から伝説の動物へというモチーフの変換にインパクトがあったものの、やっている事は臨獣拳士と大して変わらず、しかも臨獣拳士は悲鳴と絶望を集める事で自身を強化しながら臨獣殿の世を作る、という明確な目的意識があったのに対し、黒幕たるロンの思惑を隠している事もあって、幻獣拳士達の究極の目的がよくわからないまま、臨獣殿と似たような事を繰り返しているだけの為、極言すると話数を潰す為だけの存在になっているので、盛り上がりの生まれようがありません。
おまけに一応の首魁たる理央様は自らの宿命にこだわるばかりで組織としての活動に意欲を見せない為、幻獣拳編に入って以降、臨獣殿の悪の組織としての魅力が壊滅的になっているのが非常に残念。
もはや物語の構図として、理央を間に挟んでロンvs激獣拳という構図になっているので、幻獣拳はギミックに過ぎないというのはわかるのですが、看板としての幻獣拳にも魅力を持たせるもう一工夫が欲しかったところです。
犬拳士がコブラの弟を名乗ってメレ様に絡んでくるのは、せめてもの面白みを付加しようとしたのかもしれませんが、それが物語の中で特に何も活かされる事なく、残り物ーズにあっさりやられるだけなので、効果的にはならず。
「俺は……おまえを倒す」
何故かここに来て五毒拳が掘り返され、全ての獣拳を模倣するキメラの拳に翻弄されるも、怒濤のラッシュで反撃するスーパーゲキレッド。
「トラピカ! ……さよならだ」
だが、トドメに放ったブーストゲキナックルを、打ち込みきれずに寸止めしてしまう。
「なんでだ……なんで倒せない。あんなに……あんなにハッキリ決めたのに」
がっくりを膝をついた赤はトラの一撃で変身解除級のダメージを受け、逆に一方的な殴打を受ける事に。
「ふふふふふ、父親の激気魂にトドメを刺されるか。さぞや良い悲鳴をあげ、極上の絶望をくれるだろう」
大変いやらしいロンと、攻撃の度に血しぶきを想起させる赤いエフェクトが画面にかかる、という演出が冴え、スウグの爪の前に血まみれの死を迎えようとるすジャンだったが……
「とう、ちゃん……」
その呟きに、キメラの拳もまた、止まる。
「…………とうちゃん…………あれもっかい聞きたいな。葉っぱで吹いてたろ、ワフワフの曲。俺あれ聞くと、ギュギューてされた気持ちになるんだよな。……なんだよ……激気魂だけになっても、父ちゃんは父ちゃんじゃないのかよ! 一回だけでいいから、俺の事…………俺の事……ギュギューってしてくれよ……!」
「何をしているスウグ……ありえん。スウグの幻気が揺らいでいる」
ジャンの必死の叫びがその魂に届いたのか、スウグが動きを止め、猛虎打線爆発!! からのリリーフ陣大崩壊!! という現実にロンは来季FA市場について考える事にした。
「私の大願成就の為には、あいつは邪魔者」
「私の大願……? 理央様の為じゃない? 何か別の考えがあるって事?」
変身したロンはジャン目がけて弓矢を放つが、むしろそれが最後の一押しとなり、スウグはジャンをかばってその矢を受ける!
「スウグ……いやダン! 血盟を上回る激気魂があるというのか」
ロンとメレは撤退し、スウグとジャンは抱きしめ合い……果たして父の魂は子の叫びに応えて目覚めたのか否か、でつづく。
そしてここから、メレ様キャラソンという実になんともいえない空気となり、次回――友情、それは前座。
終盤戦入ってからの今作は、横の人間関係、親子の問題、怪人ポジションの扱い……などなど、個人的にどれもこれも歯車が何枚か足りず、一つの巨大な物語として連動しきらないという印象で、総合的に後一歩、物足りない出来。勿論これは、展開するテーゼが自分の中でしっくりはまるかどうか、という好みの問題もありますし、肩入れできるキャラが一人居るとだいぶ変わるかとも思いますが。
そういう点では、メレ様はいいキャラだと思うけど好きとはちょっと違うし、理央様は途中から株が下がってしまったしで(自分で道を切り拓かなくなったのが痛い)、キャラクターに対する強い思い入れが生じきらなかったのは残念。たぶんこの終盤は、ロンかジャンが好きだと面白そうではあり、両者とも嫌いなキャラではないのですが…………色々考えてみると、好きなのは三拳魔で、苦手なのは七拳聖の気がしてきたのですが、つまり私の今作に対する思い入れによる加速燃料は、源獣郷編で尽きていたのかも(笑)