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ガンダムエース9月号〔富野由悠季×安彦良和対談〕より(4)

あまり大幅な引用はしたくないし、かといってピンポイントすぎると幾らでも本文の意図と流れを無視した誤誘導できない事もないし、対談の切り出しは思ったより難しかった……という事で、なんか足かけ一ヶ月ぐらいかかっている事にトラックバック頂いて気が付きました(笑)
しかしまあ、こういうのはやってみないとわからないし、やって色々わかる事もあり、とりあえず、“自分が騙されないための勉強”にはなるなぁ。


安彦 さっき富野さんは、もう漫画ファン、アニメファンに対してという考え方を卒業しろとおっしゃったけど、卒業するもしないもガンダムの影響というのは、随分前からアニメの範疇を越えてるんだよね。もう二次的な影響さえある。
(中略)
つまり本来のサブカルのエリアを超えちゃったのね。なぜ超えたのかというのを、これから話し合っていきたいと思うんだけど…。



その回答は簡単です。コモンセンスで作ったからです。

分かりやすく言うと、右翼でも左翼でもなくニュートラルを貫いたんです。

子供が見るかもしれないんだから、絶対に右にも左にもブレないという覚悟を持って作ったんです。
しばらく、富野の語るコモンセンスと、安彦さんの語る時代性・世代論の話。

自分が子供向けの作品を作らなきゃいけないという立場に立たされたときに、さあどうしようって初めて考えたんですね。そのときに、ある文章と出会って、僕は命拾いしたんです。それはこういう文章です。
「目の前の子供に向かって、あなたにとってこはとても大事なことなんだよということを、大人が一生懸命話すことができれば、そのときに全部を理解できなくても、その子は絶対にその話を思い出してくれる」というものです。これに一つだけ条件を加えると、このことは今の君やあなたが知らなければならないことだ、気をつけなくちゃいけないことだという、その芯の話をすれば――です。
この話も過去に何かで読んだ記憶があるので、富野の創作の根の一つのようです。

僕、学識がないと同時にSFも知らないんですよ。SFが分からないの。
これは安彦氏も即座に「ウソでしょ」と突っ込んでますが、個人的にも意外。以前もどこかでそう書いていたような記憶はあるのですが、それこそ嘘だと思っていたので(笑) でも改めて言っているから本当なのだろうなぁ……まあ、“SF”と言ってもどの辺りの事を指しているのか、というのはありますが。
一SF読みの感触からすると、富野には欧米の40〜50年代SFのフィードバックというのは感じるのですが、直裁的な影響というよりはむしろ、一種のシンクロニティなのかなぁ。

逆に僕がアニメをスゴいと思うのは、本来、そういうジャンル分けをせずに物語を描くことができる媒体だからです。僕はガンダムをやってるときも『母をたずねて三千里』のコンテを切ってたけど、僕のなかでこの二つは全く等価なんですよ。

今、これだけアニメが隆盛を誇っているのに、アニメ好きに向けての偏った作品しかない。なぜ当事者達がこうもアニメを貶めるのかが、僕にはわからないんです。

もちろん、アニメ好きに向けての作品はあっていいんです。問題なのは、政治家まではアニメを話題にするようになった時代に、大人の目線に堪えうるアニメが、宮崎アニメしかないということなんですよ。それは情けないと思え。アカデミー賞を獲ったものだけがアニメの珠玉の作品みたいに思われるのはもうやめてほしい。

もう少しニュートラルにアニメという媒体をフル活用する作品があってほしいなと思うから、僕はそれを穴埋めしたいだけなのね。
前回紹介した部分を踏まえると、どうも最近の富野は、40代から啓発しなければいけないと思っているようです(笑) いや正直、そこまで責任取らなくても良いんじゃない? と思うのですけど。
続く。