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『特警ウィンスペクター』感想7

◆第9話「爆弾じかけの犬」◆ (監督:小西通雄 脚本:高久進
正木の家(やたら立派)を見張っていた怪しげな男は、公安が要注意人物としている、北見次郎だった。正木は彼の目的を調べる為に、久子に捜査を指令。やがて久子の調査から、北見の正体が、5年前に行方をくらました爆弾魔・唐沢五郎であるという可能性が浮上する。
タバコを分析したり、写真から整形前の顔を割り出したり、今回はマドックスが大活躍。
整形により顔を完全に変えて舞い戻った唐沢の目的は、5年前に自分を追い詰め、今は引退した爆弾探知犬・アレックと、その現在の飼い主であり捜査一課時代の因縁を持つ正木への復讐だった。
5年前――捜査一課に在籍していた正木と、小山姉弟の父である小山正信は、当時現役だったアレックの活躍により唐沢が新幹線の高架に仕掛けた爆弾を発見。解除が間に合わないと悟った小山父は外した爆弾を自らの体でかき抱くと高架から飛び降り、壮絶に爆死。その尊い犠牲により大惨事は寸前に防がれる。付近に潜んでいた唐山はアレックに傷を負わされるが、逃走に成功、そのまま姿を消していた。
……えー、あー、“爆弾の破壊力が不明なので、少しでも威力を減じる為に自らの肉体を壁とした”と解釈してほしいのはわかるのですが、爆風の逃げ場が無い所ならともかく、高架下が警官隊以外に人気の無い河原(しかも高さ有り)なので、爆弾だけ投げれば良かったのではないかとどうしても思わずにいられず、小山父は物凄い無駄死に感がひしひし
せめて、「爆風を防ぐ為にはこれしかない」とかなんか台詞かモノローグを入れた方が良かったかとは思います。基本的に物語開始時点で死んでいる人物ですし、ベタになりますが子供をかばってとか、もっとこう、他にどうしようもなかった、というような死に様にするべきだったのでは(^^;
加えて今回は、超説明的かつ情緒のない台詞ばかりで、げんなり。
正木が何か喋る、竜馬か女刑事が「それは、○○という事なんですね」というやり取りが何回かあって、脚本にしても演出にしても、ちょっと酷い。
特に、より凶悪化する犯罪から人々を守る為に、捜査活動と救急活動を一緒に行う新しい部署が必要ではないろうか……と、かつて小山が正木に語っていたというくだりで、回想シーンの後に
「それが特警ウィンスペクターの、設立の発端だったんですね」
とか竜馬が言ってしまうのですが、そういうのは、台詞で言わせなくても、わかるものなのです。
子供だってわかる。
より言えば、わかるように見せないといけない。
それを味も素っ気もない台詞で補ってしまうという、事がウィンスペクターの始まりに関わるだけに、ここだけとっても非常に残念回。
脚本が悪いのか、演技指導が悪いのか、全体的に台詞回しがぎこちないのも拍車をかけています。
父の為にも唐沢は私が逮捕したい、と力を入れる隠密同心。
それをあっさりと許可してしまう本部長。
ここまでのいい『ウィンスペクター』だったら、唐沢を相手に気負いすぎるなと正木が久子に注意するも、父の仇を前に平静でいられない久子がミスをして……とか、そういう筋で話が転がると思うのですけど、急に話のプロットが80年代ヒーロー物の悪い時の水準に下がって本当に残念、今回は残念、話が話だけに何度でも書きますが残念。
久子の奮闘もあり、北見と唐沢が間違いなく同一人物であると確証を得たウィンスペクターは身柄の確保に向かうが、一足遅く、唐沢は爆弾を仕込んだ犬の首輪を正木家&アレックと親しくしている少年に渡し、首輪を付け替えさせる事に成功する。正木家を離れる唐沢を見つけた竜馬・純子・久子の3人は、明らかに、手から爆弾を発生させる能力者の唐沢を、アクションの末に何とか逮捕。その口から、アレックの首輪の爆弾があと30分で爆発する事を知る。
そのアレックは何故か、正木家を飛び出してどこかへ走り去っていた為、急遽、バイクルとウォルターを起動。バイクルが犬の匂いを記憶して追跡、ウォルターが空から探した結果、アレックは警視庁の方向へと走っている事がわかる。
その頃、純子の連れてきた唐沢の顔にスポットライトを浴びせながら、「貴様を必ず極刑にしてやる!」取り調べ可視化されたらまずい台詞を口走っていた正木は、唐沢の口から「死なばもろとも」という不思議な台詞を聞く。そこへ竜馬から、アレックが警視庁へ向かっているという一報。
「そうか……唐沢のヤツ、アレックを使って私と、この警視庁の爆破を狙ったってわけか」
いや待って、なんで、どうして
超強引に解釈すると、優秀な元爆弾探知犬であるアレックは自分の首輪に爆弾が存在する事に気付くと、それを取り外してもらう為に正木の元へ向かっていた………………て、そんな筋がアッテタマルカ。二千歩譲ってそれがアリだとしても、爆弾犯が犬がそんな行動を取るのが前提なのがオカしすぎます。爆弾犯が「犬とおまえの家が木っ端微塵だ」と言っているが何故か犬は警視庁に向かっていた……ならまだわかるのですが。或いは、爆弾の気配に気付いたアレックが、自ら人気の無い所へ走っていく、とかならアレック格好いい! となるのですけど。というか最初に駆け出した時はそういう筋だと思っていたのに、むしろ昼間の人口密集地帯に突撃していて、こちらがビックリですよ犬。
警視庁の爆破を阻止する為、表の駐車場でアレックを待ち受けた正木は首輪を外そうとするが、勿論、そんな簡単に外れるわけがない。正木さんはあれですか、復讐の為にわざわざ帰ってきた爆弾屋の知能を馬鹿にしていますか? 誰かがひょいと外せるような首輪に爆弾仕込んでいると思っていたのでしょうか。
竜馬達も現場に到着するが、爆発まであと3分。
ついさっきまで無人だったのに、何故か狙い澄まして、駐車場にやってくる人々。
正木の指示で女刑事達は人々を逃し、着化したファイヤーは、何故かアレックとどこかへ向けて走り出す。
駐車場から人々を逃がして無人にする→また別の場所へ向かう
頭 か ら 書 き 直 せ
もはやファイヤーも、首輪を外そうとしているのか、誰もいない所を探して犬を投げ捨てようとしているのか、たぶん本人にもわかっていません。
そして爆発の寸前、何故か首輪が外れ、爆弾は爆発するものの、ファイヤーとアレックは無事に生還。
えー。
あー。
ひどい話でした。
折角の重要な過去話なのに、これはない……。
通常回なら、「とうとう出来の悪い回来たなぁ」ぐらいでまだ済みますが、正木と久子の過去に関わり、更にウィンスペクターの始まりにも繋がる超重要回を、どうしてこんな凄く適当にやってしまったのか。
本来ならパイロット回のコンビでやってもいいような話だと思うのですが、どうしてこうなった。
杉村升とか藤井邦夫とか、続々とやれば出来るじゃないかと思っている所で、高久進……
先日の鳥回に続いて、一人でアベレージ下げまくり。
そしてクライマックスの主題歌の入れ方(とりあえず格好いいので流せば誤魔化せる的な感じ)が、『ジバン』第1話と悪い意味でそっくりだなぁと思って確認したら、監督同じだった……。
うんもう、今回見ている配信作品は、ここまでプロットの丁寧な作品が多かったので、久々はきつかったです、ええ。
それ抜きにしても駄目脚本のサンプルとしてもっと細かく分析・解説したいぐらい酷い。
最低限、後半だけでも、
〔「住宅街で大爆発だ」と嘯く唐沢→しかし爆弾を仕掛けられたアレックは人気の無い海岸(など)を目指して走っていた→「まさか、アレックは爆弾の被害を少なくしようと……」→海岸で追いついた竜馬は首輪を外そうと試みるがタイムリミットが迫る→アレックよりおまえの命だ、と竜馬に退避を命じる正木→小山刑事の思いを受け継ぐ為にもアレックは必ず助けてみせるとそれを拒否する竜馬→爆発→小山の姿がかぶる正木→だが爆発の寸前、首輪を外す事に成功した竜馬はアレックを連れて高速移動で退避に成功していた!〕
とか、幾らでも燃え展開にしつつ過去と未来を繋ぐモチーフを入れたり出来ると思うのですが、あまりにあまりだったので、妄想炸裂ですよ(笑)
……えーまあ、そろそろ落ち着くとして、あんな着ぐるみと一緒に走る演技を出来る、訓練された犬は凄いなぁ。走りながら、ちらちらファイアー見ていたけど。


◆第10話「大人をやっつけろ」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升
ファイアー特訓中。
クラステクター(プ?)の着用制限時間(5分)を克服しようと、地雷原を突破したり爆発で崖から吹き飛ばされたりするファイアーだが、簡単には克服できない。

竜「すいません、僕の体の鍛え方が足りないんです。もう少し頑張れば」
藤「なに言ってるのよ、ちゃんと毎日トレーニングしてるじゃない。竜馬さんだから5分保つのよ
竜「しかし、今より1分、いや、30秒でも装着時間が延びれば、それだけ事件で救われる人が多くなるんだっ」
正「焦るな、無茶をしたら、命に関わる。時間をかけて、少しずつ伸ばしていくんだ

着用制限時間を超えると脳波に影響が出たり、ファイアーのスーツはやはり、物凄く人体に負担がかかる模様。。竜馬が若くして警視正なのは、殉職時の遺された家族への手当てとか諸々な要素を含みまくった、重い階級なんだろうなぁ……3年ぐらい働いていると、普通に廃人になりそうですし。
一応この辺り、設定とからめつつ、竜馬はなぜ「着化」してから敵のアジトに突入しないのか(しいてはヒーローはなぜ、最初から変身して戦わないのか)のエクスキューズにしているのは、この作品らしいところ。
日常戻って、小山姉の弁によると、竜馬は日本中の警察官を対象にした選抜テストをくぐり抜け、スーツの着用者として選ばれたとの事。
「後は科学の問題よ」
うん、ほんと、そう思う
そんな平穏をいきなり破ったのは、喫茶店に投げ込まれた、ゴキブリの詰まった袋。
更に近所のファミレスでは殺虫剤で火災報知器が鳴り、本屋では泥棒騒ぎ、六角刑事と竜馬は振り回されながらも、あちこちで悪戯を繰り返していた4人の子供達を捕まえる。六角刑事はキレながらもオトナの対応を見せ、喫茶店で4人から事情を聞く。それによると4人はある日、怪しい男を見て追いかけた先でボヤを発見したものの逆に犯人と疑われ、「大人は僕たちを信じてくれない」と、大人達へ仕返しをしようとしていたのだった。
久子の協力もあって(こういう時に、半民間人・小学生の弟ありのお姉さんがクッション役になるのはスムーズでいい所)子供達に悪戯を止めるよう言い聞かせた竜馬は、このボヤ騒ぎの真相を確認したいと申し出る。「わかってます。管轄が違う事ぐらい」と、ちゃんと一線をひいて、本部長にお伺いをたててから首を突っ込む辺りのディテールの書き方も今作らしく、そういう所で手を抜かないのが、(ここまでの)このシリーズのいい所です。
「あの若い刑事さん、優しそうだったもの」と、小学生女子のハートキャッチしていた竜馬。「仕返しが駄目なら、俺達の手で犯人を捕まえよう」と決意した子供達は、ボヤ騒ぎのあったマンション周辺の住人を観察、騒ぎの時に1回は自分たちをかばってくれた不動産屋の男の特徴的な首の動きが、現場で見た怪しい男と同じだと確認。兄弟をこっそりと見張る事にする。
ボヤ騒ぎの真犯人は、子供達が思った通り、マンションの近くにある田村不動産の兄弟であった。地上げに絡んでマンションを破壊しようと企んだ兄弟は、兄が放火に失敗すると、マッド科学者である弟が、超音波で物質を破壊する超振動波発生装置を作成。それをマンション地下のボイラー室に仕掛け、後をついてきた子供達に気付くと、縄で縛ってボイラー室に捕まえてしまう。
一方、事件の真相に迫っていた竜馬らは、マドックスがキャッチした超音波の報を受け、現場のマンションに急行。現場を離れようとしていた兄弟の逮捕に成功する。
特警の正規職員が少ないのって、正木本部長を始めとして、最低でも“相手が手にしている銃だけを撃ち落とす射撃技術”を有していないといけないからだよなぁ……ハードルが高すぎる。
田村弟が使っていた謎の電撃発生装置は、子供達を傷つけずに捕らえていたし、超科学なテイザー銃(ワイヤー針タイプのスタンガン)みたいなものでしょーか。
……この世界の日本はホント、民間の武器を一度大々的に取り締まったほうがいい(笑)
もしかしたら二次大戦後にアメリカに占領された並行世界の日本という可能性もありますが。
田村兄弟から子供達をボイラー室へ閉じこめたと聞いた竜馬は、バイクル、ウォルターと共へ地下へ向かうが、超音波を受けて、バイクルとウォルターはあっさりリタイア。
役に立たない
スーツの着用限界と超振動によるマンションの爆発、二つのリミットが迫る中、竜馬は子供達を救いたいという一心つまりは勇気と根性己と科学の限界を突破、装置を停止させてマンション爆破を阻止すると共に子供達を救出するのであった。
クラステクターが、着用リミットを過ぎると強制的にパージされるのか、着用者が自分で外さないと外れないのかは気になっていたのですが、今回を見ていると、強制解除の機能は無い模様。本部長の動きを見ると、なんらかのスイッチを押して(?)、外から直接外す事は出来るみたいですが。まあ、着用者が着たまま気絶する場合もあるだろうし外部から外せないとまずいと思うのですが、最後の最後はマドックスから強制解除できるのかなー……と一応、思っておく。
ファイヤーの正体は微妙に秘密説を思い当たってみたのですが、下から竜馬さん出てきても、子供達が割と普通に受け入れているな。
んー、ベテランの監督なのですが、演出はいまいち。Aパートの、六角&竜馬と子供達との追いかけっこなんかは、どたばた感がうまく出ていて良かったですが、今回こそ、クライマックスで素直に主題歌入れてくれれば、こちらも素直にノれるのになぁ。
ラストはもう少し、限界突破感を出して欲しかった。
微妙に、「スーツの着用リミット」と「マンションの爆発まであと……」の時間進行がズレてましたし(^^; これ多分、脚本と撮っている段階では矛盾が無かったけど、編集して繋いでみたら前後がちょっと噛み合わなくなったのだと思いますが。
『ゴーバスターズ』のタイムリミット演出は、こーいう諸々を踏まえてやってみた、というのはわかるのですけど、やっぱりやるなら、ビルが吹き飛んで諸共に全員あの世行き、ぐらいの緊張感が必要だよなぁと……逆に、『ウィンスペクター』であれやったら燃えると思うので(演出的には凄く大変ですが)、作り手が一度やってみたかった、というのはわかるのですけど。
前回があまりにあまりだったというのはありますが、今回は筋はそんなに悪くなかったのですけど、肝心の犯人が杜撰すぎました。どう考えてもすぐに捜査の手が伸びそうですし、地上げのついでに目撃者の子供達を勢いで消せるメンタルとか、そもそもの地上げを通り越している感とか、色々やりすぎ。
無理に背景作らずに、放火魔か破壊魔にしておいた方が、すっきりしたかと思います。まあ、何でも愉快犯とかサイコさんにしてしまうと話の縛りが緩くなりすぎるので、なるべく犯罪者に確たる動機を持たせる、というのをシリーズとして作劇上のテーマにしているのかな、という節はありますが、今回は合理的にする筈がむしろ非合理になってしまったという、悪い形で出ました。
それでも久々のレスキューアクションなど、これぐらいの水準なら、安心して楽しめる、という出来。
相変わらず、アベレージは高い。
そして次回――なんか犯人が凄い武器持ってる!!!
だからこの日本は一度(以下略)