素晴らしくバカ
ナチス特殊部隊の超兵器&強化兵士 VS 自由とマッチョの使徒、愛国戦士キャプテン・アメリカ、そしてルーツを同じくする、悪の改造人間vs正義の改造人間!
『アヴェンジャーズ』前振り映画群の中でもトップクラスのバカ度が光る、ストレートなバカ映画。
HAHAHA、貧弱で女の子に笑われていた僕も、この超人血清で理想のボディを手に入れてからは、彼女も出来たし宝くじも当てたし、毎日が薔薇色の生活さ! さあみんな、僕と一緒に戦時国債を買ってナチ野郎どもを皆殺しにしよう☆
時に1942年――第二次世界大戦の戦火が世界を覆う中、アメリカ人の青年スティーブ・ロジャースは兵士に志願するも、持病持ちで肉体的虚弱の為に何度も不合格となっていた。だが、出身地を誤魔化しての6度目の入隊試験において、彼はその愛国心と諦めない意志の強さに目を付けられ、戦略科学予備軍のアースキン博士からチャンスを与えられる。極秘裏に進められていたスーパーソルジャー計画の対象候補となり、陸軍での訓練を経てその勇気を認められたスティーブは、超人血清を打たれて肉体が驚異の変貌――今ここに、始まりのヒーローが誕生する!
概ね、こんな映画(おぃ)
国の為に戦える念願の肉体を手に入れたものの、肝心のスーパーソルジャー計画は、ある事情から頓挫。行き場を失ったスティーブはプロパガンダの飾り物の英雄として祭り上げられていき……と、まずは政治的思惑と経済的理由からショーアップされたヒーローが誕生する、というのがひねってきて面白い所。何かが掛け違っていく毎日――そんなスティーブに転機が訪れる。ショーのヒーローから、真のヒーローへ、“アメリカのキャプテン”となる時が。
力と心が伴ってこそ、真の英雄となれる、というテーゼが作品にあって、キャプテン・アメリカ誕生までが割と丹念に描かれます。地味ながら主人公の勇気や意志の強さを表現していく流れは納得のいく展開。
また、キャプテン・アメリカの“シンボル”としての要素を強く打ち出す為でしょうが、主人公は超人的な肉体を持つものの一人で全てを成し遂げる無敵のヒーローというわけではなく、戦争映画の体裁を取りながら、“戦友”と共に戦っていく、というのが特徴的。しかしあの格好なので、やればやるほどバカ度が増していく、という素敵仕様なのですが。
難点としては、キャプテンの驚異的な筋力を主に「敵兵士の吹き飛び方」で表現しているので、格闘アクション時の合成感が非常に強い事。ここはもう少し、生っぽさを出してほしかった。
また、基本的にはバカ映画として楽しめばいいのですが、後半に行くにつれ、アメリカンマッチョジャスティス臭がさすがに強すぎて、若干、引きます。人によってはかなり引くかも。
これには一つ、「ナチスドイツ」というのが“絶対悪”であって、“許されざる敵”であるという大前提が存在する、というのが原因なのですが、劇中で敵側の非道さを表現されるシーンが少ない(明確なのは冒頭のシーンぐらい)ので、正義と悪の対比によるカウンターパンチの弁護作用とカタルシス、というのが、一つの映画作品として見た場合には弱いです。敵兵を無機質な黒仮面軍団とする事でクッション効果を狙ってはいるのでしょうが、なまじ戦争映画の体裁を取っているだけに、引っかかる部分とはなってしまっています。
アクション面では、原作コミックの豊富なアイデアストックというのもあるのでしょうが、基本装備が筋肉・盾・拳銃という条件の中では、うまく魅せてくれます。見ている内に、だんだん、キャプテンが盾を取り落とした時の悲壮感(主に視聴者が感じる)とか、伝わってきますし(笑) 本人はあまり気にしていないようなのですが、盾が無い時のキャプテンの頼もしくなさと来たら、ポケットをなくしたドラえもんレベル。
誰もが楽しめる逸品、とは言いませんが、バカアクション好きには充分に楽しめる1本。
前振りシリーズで序列付けるとしたら、
『アイアンマン』>『キャプテン・アメリカ』>『マイティ・ソー』
と言った所かなぁ。
……まあ、最高に好きなバカアクション映画は『ロケッティア』! という人間の評価軸だと思ってください(笑)