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『特救指令ソルブレイン』感想30

◆第49話「大好き!悪い子」◆ (監督:小西通雄 脚本:杉村升/浅附明子)
ベンチで亀さんが昼寝中、子供達に囲まれてお話をせがまれたドーザーは、過去の事件について語り出す。
「こないだ起きた事件の話をしよう。その子に会ったのは……」
と、回想にして本編へ。
トロール中(?)に、もう学校が始まっている時間だというのに、『ジンギスカン』の替え歌を大声で唄いながら公園で落書きしている小学生に出会うドーザーと亀。気軽に「今度は本部に遊びにおいで」と言ってしまったのが縁で、本当にその2時間後に、同級生の女の子・真理子を連れてやってくる、悪ガキ・義彦。
そろそろソルブレイン本部は、本格的にセキュリティを考えた方がいいと思います
連日、授業中の時間にも関わらず学校を抜け出して本部に遊びにやってくる二人だったが、ある日、ぱったりと来なくなってしまう。最初はほっとしていたものの、何となく不安になってきたある日、真理子が一人でやってきて「大変だ」とドーザーを連れて行き、それに玲子もついていく事に。
玲子とドーザーが真理子に連れて行かれた教室で見たのは、なんとすっかり優等生になった義彦の姿であった。真理子によると、母親に塾に通わされるようになってから、義彦は人が変わってしまったのだという。最初に催眠術をかけ、勉強の前に社会道徳を教えるという塾を一応調査する玲子とドーザー。訪れた英心塾の塾長は、自分の催眠術により、いずれ日本中の子供達が公衆道徳と規律を守るようになるだろう、と豪語する。
この捜査シーンでは、玲子×ドーザー×小学生、という実に珍しい組み合わせ。
ドーザーと真理子の心配はともかく、表向きは良い事に思えた道徳催眠術であったが、クラスの多くの親が義彦くんに続けとばかりに我が子を英心塾に通わせだした事で、少々事態がおかしくなっていく。道徳と規律をガチガチに守るようになった子供達はそれを周囲にも押しつけ始め、大人達のマナー違反に集団抗議。ついには違法駐輪の自転車を勝手に片付け始め、それを通りすがりの警官に止められる、という不思議な構図に発展。同じく通りすがったソルブレインもそれを止めようとして、
ソルブレインは悪い奴らの味方か!」
「ルールを守らなくていいの?!」
と言われてしまう始末。
事ここに至って英心塾に捜査のメスを入れるソルブレインだが、塾は既にもぬけの殻。塾長の飯村が偽名であり、その正体が城南大学の神経外科の教授、柴田博士である事が判明するが、大学に聞くと博士は一ヶ月前から行方不明となっていた。それも、研究開発中だった“人間の良心を増幅させるマシン”を持ち出して……!
装置は、人間の精神に影響を与えてより秩序的な存在を作り出す事が出来る機能を持っていたがまだ未完成であり、長時間ないし強いパワーで使用すると、人間の頭脳を破壊してしまうという。
またそれか
義彦をどうしても元に戻してもらおうと、夜逃げする柴田博士のトラックに乗り込んだ真理子は博士によって強制的に装置にかけられそうになり、彼女が最後にかけてきた電話から、急いで渋谷付近を捜索するソルブレイン。一方、博士について調べる為に柴田家へ向かった大樹は、博士がみどりという孫娘を交通事故で失っていた事を知る。
祖父(柴田博士)に駆け寄ろうとして赤信号を飛び出して事故に遭ったみどり……それ以来博士は、孫も事故も自分自身も憎む事が出来ず、彼女が交通ルールを厳格に守っていれば、というその思いだけで研究に没頭し、その心はもはや狂気に蝕まれていた。
日本中の子供達を、ルールを厳しく守るように染め上げる――
真理子の姿にみどりを重ねた博士は彼女に最大出力で装置を作動させようとするが、博士がついていた小さな嘘(催眠術ではなく機械を使っていた)が許せずに外へ飛び出した義彦とドーザーが遭遇し、間一髪でドーザーが廃工場へと踏み込む。
ここで、ドーザーと義彦が遭遇する所から、OPテーマが入るのは格好いい。
が、何故か人間の良心を増幅させるマーンからビームが迸り、直撃を受けたドーザーは、人工頭脳に狂いを生じてしまう。そこへ続けて駆け付けたブレイバーらが登場し、博士の身柄をあっさり確保。格闘時の衝撃でマシンは大爆発し、「みどり! みどりぃ……!」という博士の狂気の叫びが虚しくこだまするのであった……。
んー、折角、OPテーマを入れて“今回のヒーロー”としてドーザーを扱ったのだから、博士を捕らえるぐらいの活躍はしてくれても良かったのに。結局そこをブレイバーにさらわれてしまうのは大きく不満です。ブレイバーはその後の爆発から子供達を守るぐらいでも良かったような、或いは逆でも良いのですが、ドーザー、突入するまでは格好良かったのに、人間の良心を増幅させるビームを食らった後は、一切見せ場無し。
なぜかスポットを当てたキャラが活躍しきらないという今作の悪癖が、最後でまた出てしまいました。
まあ、“人間の良心を増幅させるビーム”を受けて影響が出る事で、ドーザーの人工頭脳が“より人間らしく成長している”事を演出したかったのかもしれませんが、わかりにくかったですし、ドーザーの見せ場優先で良かったと思います。……ただでさえ普段から、見せ場あまり無いわけですし。
こうして事件は解決、ドーザーのお話は終了し、子供達は解散していく。彼等を見送ったドーザーは、義彦くんと真理子ちゃんに思いをはせる…………て、どうして最後、義彦くんと真理子ちゃんは私の心の中で生きている、みたいなオチだったのでしょう(笑)


もしかして:マシン壊したので義彦くんは元に戻らなかった


……うわー、凄まじくブラックなオチだ(^^;
「ドーザーが過去の事件を語る」という一風変わった構成でドーザーに焦点が当たったのは良かったのですが、使いすぎると頭脳破壊・大人と子供のトラブル・狂気の科学者、と定番のネタを、構成で誤魔化しただけ、という感は否めません。さすがに“使いすぎると頭脳破壊”は用いすぎでしょう(^^; クラステクターに始まるレスキューシリーズのお家芸、とはいえ。
一方で、この構成により、3話では亀吉がさぼって公園で寝ている間に街に出たら大騒ぎで不審ロボット扱いだったドーザーが、同様の状況でもどっしり構えて、子供達にお話をせがまれる程に慣れ親しまれており、そして見事にお話してみせる、という成長を描いたのは非常に良かった点。
惜しむらくは、小学生への語り、という手段を用いたからには、なにか教訓めいたオチをつけるなど、“手段の意味”をプラスアルファして欲しかった事。
そこで一ひねりが足りず、手段が手段としてだけ終わってしまったのは残念でしたが、ドーザーものとして、なかなか面白いエピソードでした。しかしここでこのドーザー話を持ってきたという事は、ロボット刑事のアイデンテティ問題については、今作も踏み込みそうで踏み込めきれずに終了かなぁ……どだい、脇で扱うには、重すぎるテーマなのですが。