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『特捜エクシードラフト』感想21

◆第41話「対決!ふたりの拳」◆ (監督:石田秀範 脚本:扇澤延男)
拳に瓜二つの偽物が登場。借金をせびったり食事代をツケにしたりと、拳の顔と新聞の切り抜きを名刺代わりに、二人の兄とせこい軽犯罪を繰り返していたが、怪しげな風体の男に声をかけられ、ビルの一室に連れて行かれる。
「なるほど……こいつはそっくりだ」
「知ってましたよ。始めから、偽物だってことは」
兄弟は、1億円を提示され、拳そっくりの容姿を利用して、ある“大切な商品”を取り返してほしい、と頼まれる……。
一方、借金取りや食堂のおばちゃんに本部に乗り込まれ、捜査に乗り出したエクシードラフトは偽物グループの正体を突き止める。彼等は、地元では有名な仲の良い間抜け三兄弟。長男の清水亀造、次男の鶴吉、そして拳そっくりの三男、千代松であった。
と、拳役の榊原伊織(かえすがえすも、凄い芸名)が一人二役で展開。
二人の兄も食堂で「俺が叶隼人」で「俺が村岡耕作」と名乗るのですが、こちらは似てません(笑)
というか、それを聞いたら、隊長がバルカンカートリッジを準備しかねないレベル。
いかにも不穏な気配を感じながらも、1億円に目がくらんだ兄達に促され、中央科学研究所へと入り込んだ千代松は、エクシードラフトによって押収されたディスクを入手する。その中には殺人光線銃の設計図が収められており、所員からそれが「悪魔の発明である」と聞かされた千代松は、逡巡の末、ディスクを渡さずに依頼者の男を殴って逃走。
このまま自首するにはエクシードラフトが怖い、かといって死の商人らしい依頼者グループの元へは行けない……困った3兄弟は、とりあえず報酬の入ったトランクを“バールのようなもの”でこじあけようとする(笑)
「この1億円で南の島でも買おう」
と、どこまでも駄目な3人。
だがトランクの中身は、一番上だけが本物で、後はただの紙切れであった。風に飛ばされた数枚の本物(それでも10〜20万ぐらいか)を追いかけている内に巡回警官に見つかり、緊急配備の網にかかる3兄弟。足をくじいた長男は二人を逃してエクシードラフトに捕まり、次男もまた死の商人グループに足を撃たれて囚われる。
兄二人に叱咤され、ひとり逃げる千代松。
札束を握りしめたまま。
「俺に任せて先に行け!」をパロディしながら、兄弟の間抜けさと絆を描き、スラップスティックな感じでうまく展開。
間抜けな兄弟が悪事に巻き込まれて……というのは金銀ブラザーズの回(第15話)と同じ構造ですが、脚本があれを踏まえたからか、監督のセンスが話と合ったのか、出来の悪かった15話と比べると、かなり秀逸。
エクシードラフトの元で、死の商人のアジトの場所を必死に思い出そうとしながら、兄弟の来歴を語る長男。弟の居場所の心当たりを吐け、と拷問を受ける次男。いったいぜんたいどうすればいいのか、と頭を抱える三男。
妄想してみる。
−−−−−
例1:ディスクを死の商人に渡した場合
交換で、小さい兄ちゃん、助かる。
報復で、大きい兄ちゃん、蜂の巣(おぃ)
例2:ディスクをエクシードラフトに渡した場合
交換で、大きい兄ちゃん、助かる。
報復で、小さい兄ちゃん、蜂の巣。
−−−−−
どちらかを助けられない! というか、何もかも間違っている!(笑)
「俺に任せて先に行け!」で長男と次男をそれぞれ別陣営に捕まらせた事を、妄想シーンの対比(エクシードラフトと死の商人グループが、それぞれ同じ反応をする)で映像として面白く見せ、巧く活用。同時に千代松の馬鹿っぷりと兄弟の愛情を見せ、シナリオとしても、コメディとしても、ここは良かった。
今回は全編通して、兄弟の間抜けっぷりと愛情が常に同居している(だからタチが悪いとも言えるのですが)という見せ方が秀逸で、話が厭らしくなりませんでした。
二人ともを助けるにはどうすればいいのか……その時、警察手帳代わりに持ち歩いている拳の新聞記事を目にとめる千代松。
「キース……ドラフトキースだ!」
千代松は本部へ潜入すると、設計図のディスクと「盗んだディスクは返します。だから兄ちゃんを蜂の巣にしないでください」という置き手紙をガレージに残し、スクラムヘッドを強奪。死の商人グループのアジトへと走らせる!
相変わらず、本部のセキュリティがザルすぎるレスキューポリス
特殊車輌のガレージに認証システムぐらい、お願いします。
今作は当初、不審者は入り口で止められる、という描写があったのですか、いつの間にやらすっかり骨抜きになってしまいました(^^;
もう単純にシナリオの都合(今回ばかりでなく全体の)なのでしょうが、怪しい三人組も手紙爆弾も食堂のおばちゃんも、何もかも素通し。
シムの探知でスクラムヘッドの行き先を確認したエクシードラフトは、一緒に行きたいと懇願する長男を連れ、出動。一方、死の商人グループのアジト前に辿り着いた千代松は、ドラフトキースになって乗り込もうと、運転席で叫んでいた。
「実装!」
……が、変身できなかった。
「叫ぶだけじゃ駄目なのか?」
地球の科学力ですから。
この辺りのひねった感じは石田監督の味という気もしますが、全体としてセルフパロディ風味。
死の商人グループがアジト前に乗り付けたスクラムヘッドを警戒して、内部で銃器を構えて待ち受けるも突撃してこなくてきょとん、という映像もシュール。
スイッチをいじってバタバタしている内に、様子を見に出てきた死の商人グループに捕まってしまう千代松。次男と一緒にまとめて始末されそうになるが、そこに、本命突貫。
キースと千代松は共演できる、という着ぐるみの妙。
冷静に考えると、死の商人グループはスクラムヘッドを路上に放置していたのかと思うと、男らしい。
あっさりと死の商人グループを叩きのめすエクシードラフトであったが、組織のボスが最後っ屁で防壁を作動させ、次男と千代松が炎にまかれる壁の向こうに閉じ込められてしまう。キースの特殊警棒の一撃を跳ね返す防壁を、「ビルドライバーとか使うのめんどくさいし」と言わんばかりに、サイクロンノバで消滅させる隊長。
危うくまた、証拠物件(人間二人)が虚無へ還る所でした。
隊長はもう完っ璧に、先達の歩んだ魔道をトレースしているな……!
かくて死の商人グループは壊滅。だが、清水兄弟の犯した数々の犯罪が消えて無くなるわけではない。うなだれる3兄弟はパトカーに連れていかれ……キースはその背に声をかける。
「清水千代松!」
ヘルメットを外す拳。見つめ合う、そっくりな二人。
「羨ましいな、おまえにはいい兄弟がいて」
「そっちにも」
「え?」
「居るじゃないですか、拳さんにも」
「俺にも?」
両サイドから、拳の肩を叩く隊長と耕作。
「血の繋がりは、無いけどな」
魂の兄弟たちよ!
成り行き考えると綺麗にまとまり過ぎな感もありますが、ここは色々踏まえて飲み込んだ上で、拳が千代松の「心を救う」努力をしている、と捉える所でありましょう。
この辺り、やはり扇澤脚本はテクニカル。
ただ最後は無理に合成で向かい合った映像にしないで、別撮りでも良かったよーな。
くしくもデビュー回と同じ扇澤脚本で、前作で監督デビューした石田秀範が再登場。デビュー回は脚本が悪かったのか相性が悪かったのか良くない出来でしたが、今回はスラップスティックコメディ風味で、巧くまとまりました。
次回……
もう轢かずにはいられない!
それも真似しなくていいのに!