◆Episode.11「プライド・スナイパー」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久)
ボスが出張中で、書類に駄目出しをするホージーさん(署長代理)。バン、書類にも四字熟語が多いらしい(笑)
そんな時、地球に未確認の巨大物体が落下。消火活動を行ったデカレンジャーロボは、落下物がスペシャルポリスの宇宙船である事を確認し、現場で生命反応を発見する。
「大丈夫か?」
「ああ、街を破壊して申し訳ない」
軽いな宇宙警察!!(笑)
逃走中の凶悪犯の追跡中、犯人を何とかデリートしたが地球に墜落してしまったという宇宙刑事……それは、ホージーの候補生時代の親友、ヴィーノであった。音信不通になっていた友人との再会ににこやかなホージー、テンションあがって抱き合って、普段見せないフレンドリーな反応にぎょっとしたのか、やたらに驚く外野。だがどこか、微妙な反応を見せるジャスミン。
本部に連絡を取りたい、と言うヴィーノをデカベースに招くホージーだが、何故か惑星間通信が不能になってしまう。仕方なく暇つぶしに、射撃訓練を始める二人。ホージー以上の射撃の腕を持つというヴィーノは、格好つけて変な撃ち方で華麗に標的を撃墜コンプリート。
「フッ、実戦では役に立たん遊びさ」
あー、友達だわー(笑)
スペシャルポリスになって2年後、突然姿を消していたのは、捜査中の事故で記憶を失っていた為というヴィーノは、ホージー以外への態度はやたら冷淡。疲労の為か急に苦しみだし、ゲストルームに案内される事に。親友を気遣うホージーであったが、捜査本部ではヴィーノに対する不審が大きくなっていた。
「あの人、ちゃんと調べた方がいいかも」
最初からヴィーノに対して警戒を見せるジャスミン……それはヴィーノから、冷たく研ぎ澄まされた野獣の気、しか感じない為であった。スペシャルポリスとしてはあまりに不審。
「そんなはずあるか。あいつは俺の」
「――親友だからって事で、デカベースに入る時もチェックしなかったけど」
割と厳しくツッコむセンちゃん。ここぞとばかりに、ホージーさん集中砲火。1話の時はメンバーから結構信頼されている感じだったのになぁ!(遠い目)
その時、デカベース内部に突如、アリエナイザーが出現する。監視カメラに写ったその姿は、正体不明の暗殺者、宇宙各地で数々の要人を暗殺して指名手配を受けている凄腕の殺し屋・ギガンテスであった。駆けつけた5人を蹴散らし、ギガンテスは逃亡。スキル《野生の勘:LV5》を発動させたバンはヴィーノが休んでいる筈のゲストルームへ向かうが、そこは無人――。
「やっぱあいつの仕業なんじゃないか……?」
「奴の狙いはなんだろう」
「そんな筈はない! そんな筈は……」
親友を信じたいホージー、そこへそんなタイミングで出張からボスが帰還。事情を聞いて緊急対応を指示するボスを、死角に潜んでいたギガンテスの凶弾が貫く――!
「敵の狙いは……ボス……」
夜間のデカマシン出撃→デカレンジャーロボのギミック見せに始まって、ここまで全体的に落とした照明での進行が、シナリオに合わせて雰囲気の出た好演出。
ボスが撃たれて駆け寄るバン・センちゃん・ウメコ、衝撃に佇むホージー、ぺたんとその場に座り込むジャスミン、という見せ方もいい。
現場から走り去るギガンテスの姿に気付き、追いかけるホージー。ここで舞台は外になり、夜が明けたという事でか、対峙は青い空の下に。タイムテーブル的にはやや厳しいですが、野外で語り芝居だと明るい方がやりやすいというのと、前後のシーンとギャップをつけて雰囲気を強調する為か。
立ちふさがるホージーの前で、ギガンテスはヴィーノへと姿を変える。謎の殺し屋ギガンテスは、ヴィーノが強化改造手術によって変貌した姿だったのだ!
「ヴィーノ……おまえ、なぜボスを!」
「金さ……金で雇われたからだ」
「何故だ! あれほど正義に燃えていたおまえが」
「おまえは納得しているのか……デカの仕事に?
命がけの任務をしても、警察官だから当然だ、という顔の奴がたくさん居る。感謝されないどころか、わけもなく恐れたり憎んだりする奴等さえいる」
後者に関しては、組織の問題な気もします。
「デカなんて、割に合わない仕事だ」
「そんな事、最初からわかっていた筈だろう!」
感謝や報酬が目的ではない。
人々の笑顔と平和を守る為、たとえ報われなくても全力を注ぐ、それがデカ。
だが、その理想を捨て、自分の欲望を選んだヴィーノは、聞く耳を持たない。
「ある日悪魔が、俺に囁いた。お前はその射撃の腕に見合う金を貰っているのか? 自分の幸せの為に力を使え。それが賢い奴の常識だ。だから俺はこの腕で、最っ高に金が儲けられる仕事をする事にした」
「それが殺し屋か!」
「そうさ。世の中は全て金、金なんだよ」
某妖魔一族みたいに(笑)
「おまえは間違ってる、目を覚ませ!」
「ふっ、ふふは、はっはっははは、ははははははは、ははははははは、……あ〜ぁ」
交錯する二人の銃撃。ホージーのそれは外れ、ヴィーノの銃弾はホージーの腕にはまった思い出のリングを破壊する。
「とっくに覚めてるさ」
ヴィーノは右手を負傷して崩れるホージーを置いて歩み去り、残されたホージーの慟哭が響き渡る。
「ヴィーノ……ヴィーノぉ!!」
本性を現したヴィーノは抑えた喋りでの声質と悪役台詞がよくはまって好キャスティング。
また、残念ロードを突き進むホージーの対比に、デカの誇りを捨てて転落した親友を持ってくる事で、ホージーさんを人格的に持ち上げるのではなく、職業的意識の高さで持ち上げる(とりもなおさず、そこがホージーのポイントである)、としたのも良し。
暗殺任務を果たし悠々と歩み去るヴィーノに、今回の仕事を斡旋したエージェント・アブレラが接触する。
「まだ終わりではない。ドギー・クルーガーは生きている」
「なんだと?!」
そう、その頃ボスは、デカベースの医務室で目を覚ましていた。
「おはよう、ドギー」
スワンさんが「ドギー」を「ドゥギー」みたいな感じで発音するのは、ときめきポイントです。
「良かったでしょ、私の新型防弾チョッキ」
「ああ、また命を救われたな」
「新装備の開発が、私なりの戦いだもの。食べる?」
一瞬、素の生命力で生きてたのかと思いましたが、スワンさんの新装備のお陰でした。「また」という台詞は、過去ネタの伏線でしょうか?
右にスワンさん、左にジャスミン、その他有象無象、愛されるボス(イケメン)。
そして、候補生時代、正義の為に戦う事を誓い合ったリングの思い出を回想していたホージーは、道を踏み外した友に対し、一つの決意を固める……その夜、ボスは現場復帰、ヴィーノに関する調査が進み、2年前にビリーザ星の宇宙警察を退職していた事が判明する。ヴィーノはスペシャルポリスを装って地球署に入り込むと、電波攪乱装置で通信を遮断。動力室を襲撃したのは、肉体改造の副作用で殺人衝動を抑えきれなかった為であった。
……て、けっこう困った暗殺者(笑)
宇宙各地で要人を暗殺してきたヴィーノ/ギガンテスは既に宇宙最高裁判所でデリートが確定しており、発見次第、抹殺する事が許可されている――その時、デカベースに強制通信してきたヴィーノが民間人を人質に取って、ボスへ呼び出しをかける。囮になろうとするボスを制し、立ち上がるホージー。
「あいつに射撃で対抗できるのは、俺しかいないんだ」
呼び出しの場所に単独で向かうホージー。
「ヴィーノ、俺と勝負だ。俺を倒せば、次はボスが来る。それは約束する」
「いいだろう、だがその腕で、俺に勝てるか?」
廃墟となった映画館で、回り出す映写機。
光を映すスクリーンを背景に対峙した二人が、お互いの体を影にして変身する、という凝った演出。
「エマージェンシー」
「いつでも来い」
映写機のフィルムが途切れた瞬間、示し合わせたかのように何故か回転して撃ち合う二人。
二枚目なのにどこか残念な二人の対決は、一瞬の差でホージーが制し、外に待機していたとおぼしき4人が駆け込んできて人質を確保(一応、決闘に負けた場合の保険をかけておいたものと思われます)。
「なぜだ! その腕で、この俺に勝つなんて」
「今のおまえにはわからないだろう。この腕を支えているものが、なんなのか。
――デカの、誇りだ」
「はは、はっ、ふはは、笑わせるな! 誇りだけで生きていけるか。金以外に、正義なんかないんだよぉ!!」
安月給が原因でクリスマス前に彼女にフられるとか、なにか絶望的なイベントでもあったのか。
ギガンテスは薬物を飲んで巨大化。その際に、弾け飛ぶ思い出のリング。
ちょっと泣かせの聞いたBGMでデカマシンが発進し、しんみりした曲調のまま夜戦での対決は、デカロボが圧倒。
「グッバイ・フォーエバー。……アンエバー」
ホージー覚悟のジャスティスフラッシャーがギガンテスを貫き、ギガンテス爆死。
「これにて……一件……コンプリート」
朝焼けに佇むデカロボ、その勝利をベースから見届けるボスとスワン。
「辛い結末ね」
「ああ」
「それにしても、あなたの暗殺を依頼したのは、いったい誰なのかしら?」
「……心当たりはある」
色々、恨まれてそうですしね!!
戦い終わり、デカロボを降りたホージーは、地面に落ちていた思い出のリングに気付き、それを自らの腕にはめる。
未練だぜ。
「スペシャルポリスの世界は、時として非情だ。
それが、犯罪に立ち向かうプロフェッショナルの、ライセンスなのである。
捜査せよ、デカレンジャー!
戦え、特捜戦隊デカレンジャー!」
夜→朝→夜→早朝、という時間帯による背景の変化が映像とシナリオで上手くはまり、特に夜戦は効果的になりました。
前回が前回だったので、一安心の出来。今の所『デカレンジャー』は、出来不出来の波が激しい(^^;
『五星戦隊ダイレンジャー』が露骨でしたが、山場以外のエピソードでも2話完結形式を許す構造にすると、細かい要素を入れた話が出来る反面、それに甘えて割とどうでもいい内容をダラダラと前後編に引き延ばしてしまう事もあるので、やはりまとめられる話は1話でまとめて欲しい(まあ全体の尺が違うので『ダイレンジャー』は事情は少々違いますが)。
そこも良かった。
次回、また変な生き物に好かれるウメコ。
◆Episode.12「ベビーシッター・シンドローム」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久)
ウメコのバスタイム中、謎の物体が大気圏内に突入でデカレンジャー緊急出動。
……惑星保護バリア、全く役に立ってない。
このまま、有名無実になってしまうのでしょうか(^^;
シャンプーハットを被ったまま捜査本部へやってくるウメコ/ボスの顔に飛ぶ泡/そんなボスにシャンプーハット装着/くしゃみで飛ぶパトカー/ボスの怒声に轟く雷鳴
と、前回から一転、激しくギャグ演出。
緑「ここんところ、よくなんか落ちてくるよね〜」
センちゃんがツッコんだので、意識はしている模様。伏線になるのかどうかはわかりませんが。
桃「ボスの雷も落ちたし〜」
黄「オチつけてないで」
落下予測地点で物体を待ち受けたデカレンジャーロボは、今回は地表衝突前に空中で見事にキャッチ。その手にしたのは、巨大な宇宙ゆりかごだった。見守る5人の前で、蓋が開いて中から出てきたのは、巨大な緑の生き物。それは、オカーナ星人の赤ん坊(センちゃん大)であった。
「どっから来た? 名前は?」
「ホージー、相手は赤ちゃんよ」
子供の相手とか出来そうにないホージー、前回の今回ですかさず自分から落ちに行く見事な仕事ぶり。
目覚めた赤ん坊は5人を見回し……
「まんまー」
ウメコ、抱きつかれる。
「「「「ママ?!」」」
「ごめん。オカーナ星の言葉は、未習得」
一斉に視線を向けられ、首を左右に振るジャスミン。番組初期から翻訳係みたいな事をしていたジャスミン、SPライセンスの機能だとばかり思っていたのですが、本人が色々な惑星言語を学んでいたという事だった模様。相手の言語が理解できないと、テレパシーで思考が読み取れないとか、そういう設定でもあるのかもしれない。
或いはボスにスカウトされてスペシャルポリスになる為に特技として頑張ったとか妄想してみると、ちょっと可愛い。
ボス「よっぽど気に入ったんだな、ウメコの事」
揺り籠型宇宙ポットの情報から赤ん坊の名前はエイミーとわかったが、現在のところ捜索願いが出ておらず、身元がハッキリするまでエイミーを預かる事になる地球署。
頭からかぶりつかれてヨダレまみれになったウメコを見てさっとハンカチを出すボス、イケメン。
ウメコがヨダレを拭いたボスのハンカチをさらっと頭に乗せるセンちゃん、一歩間違えるとヘンタイ。
役者さんのアドリブかしら(笑)
お約束通り、泣き出すと激しい高周波を放つエイミー。一番なつかれているウメコが面倒を見る事になり、オカーナ星人の母乳に一番成分の似た豆乳を与える事で落ち着くが、豆乳を飲んだ瞬間、一瞬巨大化するエイミー。飲み終わっておしゃぶりをくわえると、また元に戻る。その後は街で自由奔放に騒ぎを起こすエイミーにウメコが振り回されて……と完全にマーフィーの時と同じパターン。
育児に疲れるウメコ、公園で赤ん坊の面倒を見る母親とほんわか語り合うもエイミーを見て逃げ出されるなどあったものの、その母親の言葉もあり、段々とエイミーへの情が湧いてくる。
「あたしが守ってあげなきゃ」
ところがそこで、宇宙警察の本部で預かって貰える事になったという連絡が。
「やだ。この子はあたしが育てる」
エイミーに押しつぶされながらも、心は母親。
「ウメコ……。でも、ぱいぱい出ないでしょ?」
ジャスミンの一言に男性陣がこけた所で、一行を襲う爆発。姿を見せたのは無駄に武人らしい事で有名な、イガグリ先生2号。エイミーはその泣き声を利用した生体爆弾として扱われる予定の、エージェント・アブレラの商品であった。しかし誘拐途中で事故が起こってエイミーは地球に落下、アブレラの命を受けてイガグリ先生がその回収に現れたのだった。
イガグリ先生&メカ人間部隊と交戦するデカレンジャー。前回がアクション弱めだった為か、今回はスーツアクション強めで展開。赤と桃はエイミーを連れて逃げ出し、途中で通りすがりの車を徴発。更にそれを盗んだバイクで追うイガグリ。
追いすがるイガグリをオープンカーの後部座席からデカレッドが銃撃。それをよけながら剣を振るうなど、敵ながらえらく格好良いバイクアクションを決めるイガグリ。白熱の追撃戦の末、最後はレッドが必殺ムーンサルトショットでイガグリを撃破する。が、逃走中にくわえたおしゃぶりが落下した事で、エイミーが巨大化。オカーナ星人はもともと巨大な生体を、抑制装置によって小型化していたのだ。50mに巨大化し、自動車をおもちゃ代わりにするエイミーを相手にビルドアップするデカレンジャーロボ。エイミーがおしゃぶりを無くしている事に気付くウメコだったが、そこへしぶとく生きていたイーガロイド操る怪重機・デビルキャプチャー3が姿を見せる。
「まずはこの、麻酔銃で眠れ」
桃「うちの子に、何すんだよ!」
格好いい「デカレンジャー・アクション」インストをBGMに、炸裂する飛び蹴り。
「おのれ!」
桃「あんたなんかに、かまってる暇はなぁい!」
体当たりから、ひとりジャスティスフラッシャー発動(笑) 超速攻の空中コンボにより、デビルキャプチャー3、敢えなく滅殺。
赤「すっげえなウメコ」
青「凄すぎだ」
緑「右に同じ」
黄「がちょーん」
ロボを降りたピンクはおしゃぶりを探しに行こうとするが、それに気付いた巨大エイミーが追いかけようとして、滑って転んで泣き出してしまう。街を蹂躙する高周波に、レッドがおしゃぶりを探し、ピンクがエイミーをなだめる事に。巨体の発する鳴き声によって巻き起こる強風の中、変身を解いて子守歌を歌うウメコ。
一歩間違えると凄くつまらないシーンになってしまうのですが、強風のアクセントと、吹き飛ばされそうになりながらも一歩一歩近づいて歌うウメコの姿をうまく描いて、いいシーンになりました。
「エイミー、お休み、いい子だから」
ウメコの歌は見事にエイミーに届き、泣くのを止めて落ち着くエイミー。
青「やった!」
黄「母よ、あなたは強かった」
緑「右に同じ」
バンが拾ってきたおしゃぶりでエイミーは元の大きさに戻り、事件は無事解決。すっかりエイミーと良好な関係を築くウメコだったが、本当の両親が見つかって引き取りに来る事になる。
「良かったねエイミー、パパとママに会えるよ!」
悲しみを押し殺してウメコはエイミーを笑顔で送り出し、飛び去る宇宙船を見ながらかすかに目を潤ませるのであった……と、基本コメディ調ながら、しっかりとまとめた良エピソード。
前回今回と、対照的な雰囲気のエピソードで、脚本と演出がともにいい仕事をしました。それぞれシナリオに合わせてリズムを変えながら、これぐらいしっかり演出して貰えると見ていて嬉しい。脚本と演出の呼吸の合った2本。
次回、
「俺を舐めるな。エマージェンシー・デカマスター!」
おぉ、変身するのは知っていましたが、こんなに早かったのか。
楽しみ。