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『特捜戦隊デカレンジャー』感想28

◆Episode.39「レクイエム・ワールド」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久
緊急サイレンが鳴り響き、闇に包まれたデカベース――その廊下に積み重なる、職員達の死体。デカルームに飛び込んだウメコが目にしたのは、ボス含め、6人の仲間達の無残な姿だった。
「嘘……こんな……こんな事って……」
がっくりと膝を付いたウメコはわずかに息の残っていたバンに駆け寄るが、
「わりぃ……俺……駄目だった……後は、頼む……」
赤座伴番、リタイア。
転がるSPライセンスに表示されたのは、ユイルワー星人ミーメ。デカルームに現れたミーメの攻撃をかわし、逃げたミーメを追ってウメコがダストシュートに飛び込むと、何故か風呂の中。
……全ては夢だったのか?
「ん? 私、なにかやんなきゃいけない事があったような……?」
考え考えウメコがデカ部屋へ向かうと、そこにはいつものメンバーが無事な姿で揃っていた。やはり惨劇は悪夢にすぎなかったのか……ところがジャスミンが振り向くと、その姿はミーメ! SPライセンスを奪われながらも、部屋の外へ逃げたミーメを追うと、今度は突然、街の中に。そしてウメコに問答無用で襲いかかる、錫杖持った托鉢僧の集団。
次から次へと場所が切り替わる、という、由緒正しい魔空空間ネタですが、托鉢僧に襲われるのは、意識的な『宇宙刑事ギャバン』オマージュでしょうか。なぜ托鉢僧なのかは『ギャバン』の頃から謎ですが、変な仮面とか覆面とか無しに、衣装で顔を隠せるという事情なのかと思われます(虚無僧パターンも同じ理由かと思われます)。……00年代ともなると、托鉢僧が知識として共有されているのかというのはあって、本格的に謎の存在化している可能性もありますが(^^;
無反応な人々の中、托鉢僧と戦うウメコは突然道路に開いた穴に落ち、再び風呂の中へ。しかし今度は制服のままで、明らかに夢ではない……と思ったら、相棒のヒヨコが大爆発。気がつくと、パジャマ姿でベッドに転がるウメコ
「やっぱり夢……でも……私の部屋じゃない!」
混乱するウメコに襲いかかる、熊のぬいぐるみ。布団に押しつぶされたウメコがわめくと、次に居たのはバスの中。椅子に座ると仮面をつけたバスの乗客に襲われ、蹴散らしてバスから転がり落ちると、今度はゴミの山の上。
「そうだ、私には何か大切な約束が……」
悪夢のような空間で、何かが心に引っかかる……小指を見つめるが、思い出せないウメコ。しかしその時、壁に貼られた礼紋探偵事務所の張り紙に気付く。
「居場所……そうだ、ミーメの居場所を探る、ジャスミンとの、約束」
ゴミの山の中に引きずりこまれたウメコは、解体(建造?)途中の船の中に。
同年放映の『仮面ライダーブレイド』で、橘こと役立たずさん、じゃなかった、役立たずこと橘さんがゼブラアンデッドと戦ったり、2回ほど登場している場所ですが、ここはいいロケーション。よく使われるロケ地もあるとはいえ、日常的な場所以外を同年の別作品でまんま使うとあれですが、魔空空間という事で、上手く使い回しました。
「けっこう遊んだから、そろそろあんたの魂、貰おっかなぁ……」
「あたしの魂は、どこへ行くの! 教えなさい!」
迫り来るミーメに対して、抵抗しながら問いをぶつけるウメコ。今回は結構、ウメコ、生アクション奮闘。
「あーもう、教えてやるわよ。神様みたいに、じーっとみんなを見守ってられるところよ。喜びな。――今度こそ、さ・よ・な・ら。」
しぶといウメコに返答するミーメだったが、その右腕から迸る光線が遂にウメコを撃ち貫き、白黒画面で崩れ落ちるウメコ
「あたし、もう、駄目みたい……。こんな……こんな最期、やだな……やだよ。…………ジャスミン……後は……お願いね」
空に向けて小指を伸ばしながら、ウメコリタイア。



「今、ウメコの意識が途絶えました……もう、何も感じません」
アリエナイザーに殺害されたかに見えたウメコだが、その体はデカベース医務室のベッドに横たわっていた。その額に手を当て、エスパー能力で読心しているジャスミン、それを見守っているのは、ウメコ主観の中では死んだ筈の仲間達。
「ミーメに魂を奪われたか」
「でも、夢の中でウメコはヒントをくれました。それを元に、絶対にミーメの居場所を突き止めます。ウメコが私を信じて、あれだけの決意で臨んだ作戦だから」
そう、ウメコが彷徨っていたのは、現実世界ではなく夢の中であった。――2週間前、若い女性が次々と、眠ったまま目覚めなくなるという事件が発生。捜査を開始ししたデカレンジャーは、被害女性達が若さを保つという薬の試供品を飲んでいた事を突き止め、被害女性の1人を読心したジャスミンは、ユイルワー星人ミーメの存在を知る。
「若い魂を沢山集めると、若返りの薬になるの。じゃあ、ばいばーい」
ミーメは夢の中に入り込んで魂を奪う能力を持ち、配った薬品の効果により、ミーメの潜入しやすい特定の脳波状態になった被害者達の魂を、次々と奪っていたのである。事件の真相は判明したが、夢から夢を飛び回るミーメの本体はどこにあるのか……? ミーメを早急に確保して被害女性の魂を奪い返さなくてはならない……とその時、ウメコが突拍子もない作戦を思いつく。
「ボス、あたし寝ます!」
関係の深い自分からなら、ジャスミンもより深く心を読んで、ミーメの居場所に辿り着きやすい筈。危険を承知で、ウメコは自分が囮になる事を進言。
ここは17話の、「ウメコは私と違って、とんでもないやり方で、突っ走れるじゃない」を踏まえていると思われます。そうは言ってもウメコが状況を先導する展開って滅多にないので、やっとアピールできたというか。24話のネゴシエーション回は一応ありましたけど。
「危険とわかっていても、人々を守る為なら飛び込んでいく。それがあたし達デカレンジャーの、使命じゃないの? そうでしょ?」
渋る仲間達を説き伏せるウメコ
39話にして初めて……なんかリーダーっぽい!
と今回、ここまでの諸々を拾ってきます。
またこの台詞を、笑顔で言う、というのはウメコらしさが出て良かったところ。
「それにあたしは、絶対帰ってくるよ。だって、2人で約束したじゃん。今度雑誌に載ってたカフェに、トリプルアイスを食べに行こうって」
ウメコ……」
「約束」
ジャスミンウメコは指切りをかわし……今、魂を奪われて眠るウメコの前で、ジャスミンはその小指を見つめる。
ギャバン』オマージュの魔空空間ネタから、女性コンビの友情エピソードへ繋ぐ、という面白い構成。
「俺たちに与えられたヒントはただひとつ。神様のようにじっと見守っている、という言葉だけ、ですか」
頭脳労働の苦手な面々が苛立つ中、センちゃん、シンキング。
「あ……わかった!」
ハイ緑の人、早かった!
「神様みたいに宇宙から地球を見下ろして、じっとしているもの。――静止衛星だ」
センちゃんの閃きに基づき、軌道上の静止衛星をチェックしていく地球署。チェックシーンで一般職員の姿も入れる事で、いい緊迫感の出た演出になりました。
そして遂に静止軌道上に――怪重機が発見される。
不在のウメコに替わってブレイクがパトウイングに乗り込み、デカウイングロボ、宇宙へ。
ちゃっかり特凶スーツの高性能ぶりがアピールされました。……嗚呼、スーツはSWATスーツ並の性能なのか、そうか、つまり……(以下略)。
「ふふふふふふふ、魂100人分、集まっちゃったぁ」
若返りの薬の製造開始の直前、デカウイングロボは怪重機(以前に登場した女性型怪重機)を撃墜。怪重機は大気圏へと落下していき、ミーメは集めた魂を持って、途中で脱出。追撃したデカレンジャーはそれを追い詰め、怒りのイエローがSPライセンスを向ける。
「ユイルワー星人ミーメ! ジャッジメント!」
……なんか、省略された(笑)
だがジャッジメントタイム寸前、ミーメが含み針・ドリーミーニードルで反撃。首筋に攻撃を受けた5人は変身が解除されて地面に倒れ、夢の世界へと引きずり込まれてしまう……。
「夢の中なら、私の力は何倍にもなる。ゆっくり楽しみながら、片付けてあ・げ・る。夢で逢いましょう
……寝込んだ所を肉体始末した方が早い気がするのですが(笑)
目を覚ますとジャスミン、映画館の中に。スクリーンの中に現れたレッドに、映像の向こう側からいきなり撃たれる。
これも恐らく、『ギャバン』第36話のオマージュか。
外へ逃げ出したジャスミンの前に現れる、巨大ミーメ。
「あんたエスパーね。あのピンクちゃんが変に粘ってた訳がわかったわ」
巨大ミーメの攻撃を受けた所に鉄鎖が巻き付き、バス停に縛り付けられるジャスミン。そこへ迫るバス……の屋根の上にミーメが座っているという絵が素晴らしい(笑)
「お友達と同じように、あんたも恐怖でぐしょぐしょに泣きながら、地獄に落ちな」
ジャスミンを押しつぶさんと迫り来るバス。その衝突寸前――
「なーんてね」
ニヤリと笑ったジャスミンは、鎖を引きちぎると、正拳突き一発で、バスを吹っ飛ばす。
「ぐしょぐしょに泣きながら地獄に落ちるのは、あんたの方よ」
「ど、どうして?! 私が支配できる夢の筈なのに?!」
「これがあたしの実力よ」
狼狽するミーメに、ジャスミンはワンハンドでDバズーカを突き付ける。
マーーーーーフィーーーーー!
「――と、日記には書いておこう」
「やめてぇ」
「ばいなら」
Dバズーカ零距離射撃が炸裂し……はっと目を覚ますミーメ。気がつくとミーメは地面に転がっており、それを見下ろすデカレンジャー5人。その手には集めた魂を収めたフラスコが回収されており、既に中は空。これにより戦列に復帰したウメコがそこへ並ぶ。
「いったい、なにがどうなって……」
実はジャスミンがSPライセンスを用いて行ったのは、ジャッジメントではなく、ミラージュディメンションの発動であった。対象をバーチャル空間に閉じ込めるミラージュディメンションにより、ミーメが、幻影の空間を彷徨っていたのである。
と、デカレンジャーけっこう性格の悪い意趣返し(笑)
これでジャッジが省略気味であった事、反撃したミーメが肉体を直接狙わなかった事(既に幻覚の中だった)、に理由が付きつつ、エピソードとして最初と最後に魔空空間が置かれる、と綺麗な構造に。
なおミラージュディメンションは恐らく、8話で一回使ったきり(^^; 序盤によくある、とりあえず個性付けの一端で特殊機能を持たせてみた→よく考えると強力すぎるので封印された、パターンかと思われますが、物語構造の美しさ優先で、引っ張り出されてきました。これは有りだと思います。
「卑怯よあんた達!」
「あんたが言うな!」
ここで流れ出す「girls in trouble! DEKARANGER」ツインカムエンジェル・テーマ曲)をバックに、ジャスミンウメコ、並んでSWAT変身。

「デカピンク!」
「デカイエロー!」
「「ツインカムエンジェル・SWATモード! GO!!」」

勢い良く突撃していく2人に、呆然と置き去りにされるぼんくら野郎達(笑)
ピンクとイエローは空中回転射撃技「ツインカムラブリータイフーン!」などノリノリでミーメを追い詰めると、SPライセンスを突き付ける。
黄「では改めて……」
桃「ユイルワー星人ミーメ!」
黄「宇宙薬事法違反、および!」
桃「若返り薬製造を目的とした大量殺人の罪で、ジャッジメント!」
当然デリート許可が下り、2人並んでDリボルバーでストライクアウト。
なお、射線の背後に棒立ちの男達が居ますが、デリートされたら、シカタナイ(おぃ)
「「ごっちゅう!」」
「これにて一件コンプリート!」
「2人の絆は、永久に不滅です!」
かくして難敵ミーメは、地球署の誇るツインカムエンジェルの友情の力に敗れ、約束のアイスを楽しむ2人。何故かそれを、遠巻きに見ている野郎達。
「まるで恋人同士みたいだね、あの2人」……って、同僚のいい男度が低すぎるからだと思いますよ?
仲むつまじい2人だったが、ウメコが手を振り上げた拍子にアイスがジャスミンの顔に直撃して……でオチ。何となく見覚えのあるカットなのですが、以前にも同ネタあったような無かったような。意図的な被せかと思ったのですが、感想読み返しても、そのオチに言及している箇所が見当たらず、単なる記憶違いかもしれない。
ちなみに、「ま、まあ色々あるが……」と、いつも淡々としているナレーションが動揺したのは、今回が初か?(笑)
おまけコーナーは、ツインカムエンジェルに負けじと男の友情を宣言するも、ナンパで一気にチームワークが崩れる野郎達(笑) センちゃんは単体だとモテるのに、同僚と一緒に居ると残念力が増大しますが、最近テツも残念フォルダに片足突っ込んでるし、これはつまり、ホージーさんの感染力が物凄いという事なのか。地球署の残念アウトブレイク
ギャバン』オマージュ的なウメコ回で始まり、中盤からジャスミン中心へ移行、過去ネタを幾つか踏まえてコンビの友情に繋げ、再び魔空空間を入れた上で、ツインカムエンジェルで締める、という構成が実にお見事。
前半と後半で、“ウメコのいい所”と“ジャスミンのいい所”をそれぞれ別々に見せつつ、しかしその為にエピソード本体を蔑ろにせずに、淀みなく綺麗にまとめた名品。
特に、掴みのネタだった魔空空間をラストでもう一回持ってくる事で、全体の統一感と完成度を上げたのが光ります。
煩悩とテクニックが変にハイレベルで融合した、実に荒川さんらしい傑作回(笑)
番組後半のエピソードという事で、積み重ねてきた諸々も上手く散りばめられており、荒川稔久はこれでテクニックなければホントどうしようもない人だと思うのだけど、こういうシナリオ書けるから、凄い(笑)
特に言及ないけど、それとなくマーフィー(Dバズーカ)が登場しているのは、竹本監督の、愛か。
また、タチの悪いアリエナイザーを、ベテラン富沢美智恵がさすがの演技で魅せ、キャスティングにも恵まれたエピソードとなりました。
非常に面白かった。
次回、とうとうブレイクパワーアップ?! と思ったら、上 司 来 た !
しかも、堅物の女上司!
デカレン』は当たり外れが大きいのであまり予告で盛り上がらない方が良いのですが、これは期待したい(笑)