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『魔法戦隊マジレンジャー』感想19

先週分。
◆Stage.29「くり返す「あれ?」〜ジー・マジ・マジーロ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:横手美智子
注目は、すっかり窓際社員扱いウルザード
同じシャインでも、ヒカル先生とは大違いだ!
冥獣人四底王の1人、“地獄の賢者”コボルドのブルラテスの特殊攻撃を受けた芳香は、この1年分の記憶を奪われ、更に何を教えても1時間で記憶がリセットされるようになってしまう。
リセットの度に、同じ驚き演技を延々と繰り返す女優さんが大変そうですが、好演。
教えれば変身は出来るが、マジレンジャーの事もインフェルシアの事も1時間でまた忘れてしまう為、戦力にならない芳香の記憶を取り戻そうと、昨夜、シャインが芳香を助けた現場へ向かうマジレンジャー
そこにまさかの、テツヤ(スケルトンの呪いにかかり、芳香と結婚寸前まで行ったカメラマン)再登場。
しかし、芳香はテツヤの事も忘れていた(どうやら、この1年の間に出会っていたらしい)。
そして、2人のお付き合いは発展的解消していた(笑)
こういった、正直どうでもいいサブキャラを、妙に大事にするのは今作の長所ですが、兄者と江里子さんはなんだかんだで付き合いが続いていたのに、芳香の方はすっぱり別れていました(笑) 芳香がヒカル先生にべったりなので、その辺りへの配慮もあったか。
テツヤが生気を吸い取られて倒れた事から、芳香を置いて周辺を探った4人+先生は、大量の生気を集めるブルラテスを発見。更に、“四底王最強の男”イエティのズィーが姿を見せる。
「俺は戦いには興味が無い。何故か。俺より強い奴がいないからだ」
「ただ1人、天空聖者ブレイジェルを除いてはな」
最強ゆえに戦いが虚しくなったクール系かと思いきや、即座に同輩から蹴落とされたので、何をしたいやり取りなのかわかりません(笑)
……いや勿論、ブレイジェルの名前を出して因縁を作りたかったのでしょうが。
ブレイジェルに負けてから戦いに興味を失ったって、それただの、チキン野郎……(笑)
「戦わなければ負けないからよって最強」理論を振りかざすズィーだが、意外やただのぼんくらではなく、四底王最強の名に恥じない強さで、マジレンジャーを一蹴。スモーキーシャイニングアタックさえ打ち返すと、ブルラテスが集めていたシチジューロウとネリエスの力で更に強化され、シャインを苦しめる。
いよいよ立場の危なくなってきた先生は、記憶がリセットされてふらふらと現れた芳香をかばって大ダメージを受け、敗北。作戦を進行中のズィーとブルラテスは、余裕綽々で引き上げていくのだった。
遂に四底王に負けてしまったシャインですが、一応、芳香をかばって、という理由付けはされました。今後のバランスがどう取られるかはわかりませんが、言い訳のきかない完敗でないのは、良かった。
ズィーは、ややバランスを崩す形でやけに手が大きいデザインだと思ったら、途中で取り出した武器から、ホッケー選手がモチーフの模様。
ヒカル先生は戦闘不能になり、ズィーには全く魔法が通用しない。このままでは敵の計画を阻止する事など不可能……暗く沈む兄妹に、無邪気に「お母さんに相談すればいい」と口にする芳香に、魁は母の形見のマジカルステッキを突き付ける。
母は死んだ、と聞かされる芳香……だが。
「勇気を出して。よくわかんないけど、芳香達には勇気があるじゃない。芳香達の武器は勇気。いつだって、勇気が力を与えてくれる。それを忘れちゃいいけないよ」
芳香の中で花開いていた勇気はしおれない。強く根付いた勇気が、まるで生前の母のような言葉を、記憶を失った筈の芳香に口にさせる。
つまり、
父の残念な所を一番色濃く継いだのが翼で、母の頭のおかしい所を一番色濃く継いだのが芳香、と(え?)
例え1年間の記憶を失っても、その間に蓄積された心の成長まではリセットされていなかったのだ……という事なのですが、うーん……。
芳香と兄妹の、母親の喪失に関する致命的なズレを突き付けた上で、芳香の口からそれを乗り越える言葉が出てくる、というシチュエーションそのものは格好いい筈なのですが、母とシンクロさせすぎたのは良くなかったと思います。
結局、これだと母親の手の中というか、いっそ、母親の仕掛けた強固な暗示が顔を出したようにさえ見えてしまう(笑)
そして何より、作品として、「勇気」の定義づけが一番最初に戻ってしまっている。
むしろ物語としては、意図的に原点に戻したのでしょうが、その原点には問題がある上に、そこから20数話の蓄積が全く反映されていません。
いみじくも芳香の台詞に織り込まれているように、30話ぐらいかかって結局、「よくわかんないけど勇気」に戻ってしまっている。
ヒカル先生の登場後、徐々に改善しつつ修正してきていたのに、ここでまたまた、スタート地点の欠陥が、致命的な形で顔を出してしまいました。
物語の構成だけでいえば、ここで原点が顔を出す、というのはむしろ美しいのですが、今作に関してはその土台にこそ問題の根っこがあったので、原点を塗り直す事こそが、求められていたと思います(^^;
赤「俺たちだって前とは違う。諦めたり、びびったりしている場合じゃない。だって俺たち、正義の魔法使い・マジレンジャーなんだから」
黄「みんな……勇気出そうぜ」
ここで、母のステッキにみんなで手を重ねるのは、良かった。
(凄いよ。なんてことだろう。魔法使いとしての記憶はなくしても、希望を与える事が出来るなんて。芳香もまた、新しい伝説の担い手なんだ)
そして先生、ノルマ達成いたしました! おめでとう先生!!
一気に大量の生気を集める為にブルラテスが巨大化し、芳香を含めてマジレンジャーはマジキングに。くじけない芳香の勇気に応え、キングカリバーを強化する新魔法がDLされ、その一撃がステッキを破壊すると、ブルラテスは逃亡。そして芳香は奪われた記憶――昨夜見たものを思い出す。
それは、ブルラテスとズィーが人間の生気を集めて育てていた、悪魔の氷山。覚醒すると人間の生気を自ら吸収して世界を冷気で閉ざしてしまう、恐るべき、イーブルアイスであった!
サブタイトルから、もうちょっとトリッキーな展開があるのかと思って期待したのですが、割とストレート。そして引きネタでした。
ところで、細かい使い方などから見るに(芳香の年齢詐称に真っ先に気付くとか)、ライター陣の中で翼に一番愛がありそうなのは横手さんなのですが、翼回は芳香がらみの吸血鬼編しか書いていないので、可哀想だと思っているだけで、別に愛は無いのだろうか(笑)


◆Stage.30「伝説の力〜マージ・マジ・マジ・マジーロ〜」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:横手美智子
浮上したイーブルアイスを破壊しようとするマジレンジャーだが魔法を弾かれ、更にズィーによって叩きのめされる。
「俺とおまえらでは、強さが違うのだ」
「なんだと? 俺たちには勇気がある。勇気があれば……」
「「「「「絶対負けない!!」」」」」
「勇気? そんなものは力の前には無に等しい」
5人の連続攻撃も無効化するズィー、なんか、正しいウルさん、みたいな人です(笑)
ズィーに完敗した5人は、引き続きベッドの上のヒカル先生から情報を得、イーブルアイスを打ち砕く力を得る為、クズ母に魔法を授けた存在でもある、マジトピア最長老の偉大な天空聖者・スノウジェルの助力を求め、マルデヨーナ世界・嘆きの海へと向かう。
「力はやがて、更なる力に敗れる。そなたらの母のようにな」
なぜ力を求めるのか? 力があれば守れるのか? 力は自分自身を滅ぼすだけではないのか――長き生を過ごし、多くの魔法使い達の悲劇を見てきたがゆえに、これ以上、力あるゆえの不幸を見たくないというスノウジェルは兄妹への助力を拒否するが、食い下がる魁。
「それでも俺たちを信じてくれ。俺たちは絶対大丈夫だ。だから!」
「なぜそう言い切れる」
「俺たちには……俺たちには、無限の勇気があるからだ!」
あ、あれ?
ここでスノウジェルを翻意させる為の、言葉や行為があって、“ただの「力」とは違う”「勇気とは何か」が示されるのかと思ったのですが、まさかの「勇気」ごり押し。
作り手としては、これまで30話でたっぷり描いてきた小津兄妹の「勇気」がスノウジェルに認められた……という流れなのでしょうが、繰り返し書いてきたように、実際の所、「勇気とは何か」という事がしっかり描かれた事がほとんど無い為、非常に空虚。
「この光は、勇気の証。これは、誓いの指輪が、彼等の勇気に応えているのか」
補強として、伝説の指輪も5人の勇気を認めている――としたのでしょうが、かえってスノウジェルが、マジックアイテムに感心しているだけにしか見えません(^^;
また、そもそもこの指輪はヒカル先生が「僕の家に先祖代々伝わっていた」と持ち出したものなのですが、こんな超重要アイテムの登場が、それで良かったのか(重要度が高すぎて、さらっと出した巧い伏線、とは言い難い)。
ヒカル先生が天空聖者の中でもかなりアッパークラスというなら、それはそれで良いのですが(光ってるし、金色だし)、それならその説明は先に置いておかないと、超重要アイテムを持ち出すに足る納得力が足りないかと思われます。
結局のところ世の無常に背を向けた隠者であったスノウジェルですが、色々な問いへの回答は全て「勇気があるから大丈夫」で済まされてしまい、何も面白くない。
未熟でも青臭くても正解がなくても、そこで問いかけを乗り越えてこそ、だと思うわけなのですが。
今作の「勇気」テーマがどうしても便利用語の便利使いに見えるのは、今作全体のこの、命題から逃げている感じにも一因があります。
その頃、ドーピングで強引に出撃したマジシャインは成長し続けるイーブルアイスに一撃を入れるが、ズィーによって叩きのめされてしまう。
大ダメージを負った先生に、わざわざコメントを送ってくれる窓際騎士。
「弱さは悪だ。強さこそが絶対なのだ」
その台詞は! 自分の力で勝った時に! 言って下さい!
追い詰められたシャインにとどめの一撃が迫るその時、スノウジェルによって潜在能力を解放された5色の魔法使いが現れる――!
「もうお前達の好きにはさせない! 本当の力は!」


「「「「「勇気が生み出す!」」」」」
「「「「「超魔法変身!!」」」」」
「「「「「マージ・マジ・マジ・マジーロ!」」」」」

ここも、「ただの力」ではなく、「勇気を背景とした力」なんだ、という持っていき方そのものは良いのですが、肝心の勇気が空虚な為、「よくわかんない」から一歩も前進しておらず、素晴らしく残念。
最大限好意的に解釈しても、マジレンジャーの勇気って、「諦めずに何も考えずに突撃する事」なのですが、それでいいのか。
マジトピアだから、それでいいのか。
新たな変身呪文を唱えたマジレンジャーは、レジェンド化。
マントが消えて外部装甲が追加され、頭の形がそれぞれのモチーフに則って変形。………………段々見慣れてくるかもしれませんが、第一印象としては正直、言葉を選んで言うと、格好悪い。
特にレッドは非常にやってしまった感じなのですが、どことなく見覚えがあるけど…………なんだろう、日輪仮面?
「本当にスノウジェルの心を溶かしたんだ」
「にゃ〜んだよ。信じてにゃかったのか?」
「――信じてたよ」
スモーキーに助けられ、5人を見つめるヒカル先生、いい顔。
レジェンドマジレンジャーはダイヤル式の新・魔法のステッキで次々と強化された呪文を炸裂させる……のですが、背後で流れる水木一郎の挿入歌が気になって、いまいち映像に集中できない(笑)
先生「ダイヤルロッド……あれこそ原始のマージフォンだ」
て、そういう事かぁぁぁぁ!!!
杖もデザインとしては微妙だと思ったのですが、このネタで、全て許せる気になりました(笑)
それにしても2005年ともなると、幼年視聴者は何の事やらさっぱりわからなそう(^^;
レジェンドの放つ凄まじい魔法に、ブルラテスは一目散に逃亡。合体魔法攻撃・レジェンドフィニッシュによって、ズィーとイーブルアイスはまとめてチェックメイトされ、砕け散る。
窓際「遂に、原始の魔法まで手に入れたか、五色の魔法使い。ふふふふふ、楽しみだ」
発言だけは大物ぶって、今回も何の役にも立っていないウルさん、帰宅。会社のデスクに雑巾とか乗っているかもしれないけど、くじけるな!
そして駆け寄ってくる5人を、笑顔で迎えるヒカル先生。
「間違いない。彼等こそが新しい伝説の担い手なんだ」
そう、今ここに、新たなレジェンドが生まれようとしていた――。
えー、ヒカル先生の登場後、地道に改善してきた今作ですが、肝心のパワーアップ編で一周回って台無しになるという、まさかの大惨事。さすがにこの展開は予想外だった……!
次回、年上の女再登場で、レジェンドのデメリット発表? 逃亡したブルラテスなどの要素もありますし、少しでも面白そうな方向に転がってくれる事を期待。