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『魔法戦隊マジレンジャー』感想28

先週分。
◆Stage.41「先生の先生〜ゴール・ゴル・マジュール〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:前川淳
今日は楽しいクリスマスイブ、何かと祭りにする小津家は大はしゃぎだが、浮かない顔のヒカル先生は、スノウジェルから「赤の魔法使いから学ぶのじゃ」と助言を受け、魁に一日弟子入りする事に。
クリスマスイブはいつも、中学の時の同級生のケーキ屋を手伝っている、と珍しくいい所を見せる魁に付き合ってケーキの箱詰め作業を行う先生だったが、事故でケーキが倒れて全て駄目になってしまう。もう駄目だ、と沈む一家を励まし、とにかく少しでも何とかしよう、と一人で勝手にケーキを作り出す魁だが、考えなしのその行動が、ヒカル先生には非効率的で納得がいかない。
そんな中、新たな神罰執行神として、ドレイクが出現。ドレイクの無敵の鎧の前にはあらゆる攻撃が通用せず、マジレジェンドは一撃死。めくらめっぽうに突っ込んだ赤魔人の蹴りがわずかなダメージを与えるが、その赤魔人も攻撃を受けて変身が解けてしまう。ヒカル先生は何も考えずに無茶をする魁をたしなめるが、魁は全く利く耳を持たない。
「俺の何が駄目なんだ!」
「考え無しに突っ走る所がだ!」
…………何かまた、凄く基本的な所で揉めています(^^;
「ねえ。今日は俺が先生で、あんたが生徒だったんじゃなかったの?」
「な」
「俺から学ぶんじゃなかったのかよ!」
実に感じ悪い魁の態度に「君から学ぶ事など何もない!」と激高するヒカル先生だったが、そこへ現れたスノウジェルは先生に駄目出しし、超力招来によりバトルフォームを発動、自らドレイクの前に立ちはだかる。
「煌めく氷のエレメント・天空聖者スノウジェル!」
……なんだか、円谷っぽい雰囲気の戦士に。
やはり根っこは武闘派だったスノウジェル、かつては幼児のフリをしていた事もありましたが、武術の老師的なイメージだったのか、柔軟かつ多彩な技でドレイクを翻弄し、モニターしていたダゴンもちょっと動揺。
「たかが魔法使いが、ありえん」
「勇気だ。勇気とは立ち向かう力。俺たち魔法使いの武器だ。勇気を知らぬ貴様等に、俺たち魔法使いが負ける事はない」
何か、残念父が言い出した。
今回もダゴンとイメージ?で会話するウルザード、台詞そのものは格好いいのですが、この人に何故かウルザードの姿で言われると、素直に頷きがたい部分が凄くあって困ります。
ドレイクを相手に一歩も引かないどころか優勢に戦いを進めるスノウジェルだったがスタミナ不足を露呈し、マジレンジャーを引き連れてマルデヨーナ世界へと戦場を移す事に。ヒカル先生は「来るだけ邪魔じゃ」と要らない子扱いされ、みんな薄々思っていたのか、五人は特にヒカル先生をフォローする事なくマルデヨーナ世界へと乗り込んでいく。
残されたヒカル先生は、果たして立ち直れるのか?!
というかまあ、大体、オチまで読めるわけですが、うーん、うーん、うーん……。


◆Stage.42「対決!二極神〜ゴール・ルーマ・ゴル・ゴンガ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:前川淳
属性:氷のフィールド・沈黙の雪原でドレイクと戦うマジレンジャーとスノウジェルだっが、ドレイクは強引にマルデヨーナ世界を破壊してしまう。一方、要らない子扱いされて意気消沈のヒカル先生は、夜逃げまっしぐらだったケーキ店が、無事に予約のケーキを販売しているのを目にする。
使えない手伝い二人が逃げ出した後、魁の姿に触発された父が立ち直るとケーキ職人アルティメットフォームと化し、「アルティメットフォーーーム・スペシャルターボ!」により、全てのクリスマスケーキを作り直したのであった。
「魁のまずやってみるその行動が、道を切り開いたのか……そうか、何かわかった気がする。スノウジェルが魁から学べと言った意味が!」
先の事を心配しすぎて、行動してみる事を忘れていた自分に気付いたヒカル先生は、通常空間でドレイクに圧倒される6人の元へと急ぐ。
「もう考えない事にしました」
ああ、ヒカル先生が、向こう側へ……。
「見ててくれ魁先生。君から教わった事をやる。うまく行くかはわからないけど、やるべき事はわかった」
先生はな−、基本的に格好いいし好きなんですけど、結局、風向きを変えきれずに作品に呑み込まれてしまったなぁ……。
エネルギー切れのスノウジェル、変身の解けてしまった5人に変わり、先生はマジシャインに変身、ドレイクに立ち向かう。久々の見せ場で、いつもより余計に飛んでおります。
銃、剣、そして天空聖者体による魔法攻撃。無敵の鎧を持つドレイクに対し、あらゆる技を用いて立ち向かうマジシャイン。その攻撃はいっけん無意味で無謀に見えたが、くじけず諦めない連続攻撃の末、魔法乱れ打ちがドレイクの唯一の弱点、首の後ろの一点を突き止める。
爆炎をものともせずにドレイクへ突進したサンジェルは、まさかの投げ技、プロミネンスドロップを炸裂させると、プロミネンスクラッシュでドレイクを撃破。巨大化したドレイクに対し、マジレジェンドとトラベリオンも起動するが、そこへダゴンの要請でスレイプニルが出現し、冥府の二極神が地上に居並ぶ! 闇の戒律の遵守を絶対とするスフィンクスはこれを激しく批難するが、ダゴンの目的は、ン・マの魂を隠すブレイジェルを炙り出す事にあった。
ここで、絶対神ン・マの転生に積極的だったツートップが、手段の違いで対立、という要素を入れてきました。
冥府神一の攻撃力を持つスレイプニルの、冥府馬車によるチャージ攻撃の速さと鋭さに追い詰められるマジレジェンドだったが、その時、突如現れたウル馬神がスレイプニルの攻撃を弾き返す。馬、生きてた、馬……!
ウル馬神とスレイプニル戦車の対決は、なかなかの面白さ。前回今回と、最終クールに入る所での一つの山という事でか、ドレイクvsマジドラゴンの空中戦、激しく飛ぶヒカル先生、そしてこの騎馬戦闘と、戦闘にはかなり力が入っています。
馬車を破壊したウル馬神はウル皇帝に変形すると、「今は互いのやるべき事をやるのだ」と子供達に言い残し、得意技の強制転移。スレイプニルを冥府のどこかに放り投げて、姿を消す。
父がごく普通に最強の冥府神と渡り合ってしまいましたが、ウルザードの姿だから違和感があるだけで、天空聖者ブレイジェル本来の力だと思えば納得です。これだけ圧倒的な暴力を有しているならそれは、戦略も戦術も些細な事であり、「勇気があれば何でも出来る」という思想に辿り着くわけです。
残ったドレイクは弱点にファイヤートルネードを受けて弱った所をトラベリオンに吸い込まれて焼却。時には先が見えなくても行動する事で拓ける道もある、と魁から学んだヒカル先生は、一皮剥けて成長を遂げるのであった。
……考えるよりも行動する事で計算以上の力が出る、ってこれ完全に前作の「なんか、いい!」(by特凶)と同じパターンなのですが(笑)
こうしてマジレンジャーはクリスマスの窮地を突破し、ヒカル先生は要らない子扱いを脱出。だが、闇の戒律に背いてまでブレイジェルを誘き出したダゴンは、バンキュリアの手で自らの鱗をブレイジェルに貼り付けさせる事に成功し、その潜伏場所を突き止めようとしていた……。
それにしても、イフリートは実は、冥府10神の中でも凄く強い方だったのでは。
以下ちょっと、作品全体に関するネガティブな話。
「最近弱気になっていたヒカル先生が、行動する勇気を取り戻して殻を破る」という大筋自体は良いと思うし、「ヒカル先生が魁から学ぶ事もある」というのも問題はないのですが、このエピソードを前後編でやるのなら、「ヒカル先生が魁から学ぶ事もある」そして「勿論、魁がヒカル先生から学ぶ事も沢山ある」としなければ、バランスが悪い。
そもそもヒカル先生は元来、23−24話の禁呪エピソードで見せたように「今回は僕も教えられたよ。教える事の難しさをね。これからもお互い、学びながら成長していこう」と、変質者だけど傲岸ではありませんし、教師と生徒のエピソードとしてはこの24話が遙かに綺麗にまとまっています(まあこの24話は、本編中でも屈指の名編という位置づけになりつつあるけど)。
もっとも、ヒカル先生もそれから20話弱が経ち、教師として自信を深めるとともに独りよがりな部分が出(ているようには見えませんが)、その為に最近は一人で特訓して一人で格好つけて一人で弱気になり……と視野が狭くなっていたのをスノウジェルが正した、というニュアンスを含んでいたのかもしれませんが、それなら魁ばかりではなく他の兄妹とも関わらせるべきですし、逆にそこまでやれば24話を踏まえてうまく繋がりが出来たと思うのですが、そういった連動もない。
そして根本的な所では劇中において、魔法の技術的薫陶以外で魁がヒカル先生から影響を受けた描写は、記憶にある限り一切無いので、極めて一方的です。
またこの一方的な関係は、魁とほとんどの兄妹の関係にも当てはまり、とにかく今作は、魁のほぼ全ての行動と主張が概ね正当化されてしまいます。
今回、ケーキ屋の娘に「いつもうまく行くとは限らないけど」と言わせてはいますが、劇中においてそのような描写がされた事はほぼ無いので(たぶん4話と前々回ぐらい)、作り手が信じていないし、あまりにも言い訳じみています。
冥府神との戦いに入ってからでも、翼を立ち直らせるのが魁だったり、高校生の弟に説教されて芳香が恋愛観を改めてしまったり、後者は正直ひどい。
で、前回はそこから、山崎さんの忠告と、姉によって変化したサッカー部の姿を見つめ、4話で受けた指摘をようやく反省する、という魁の変化が劇中でほぼ初めて描かれたのが良かったわけですが、今回でまた台無しに。
「魁にも良い面がある」のは全くもって構わないのですが、「魁はこれで良い」が、あまりにも世界の法則を支配しすぎています。思えば3話で兄者が「魁は我が儘なイチゴなので、 真っ赤に育てるのが畑(長兄)の役目」と似たニュアンスの事を述べていますが、これは魁が“他者の影響を受けて”人間的成長をしていくから許されるのであって、魁がほとんど人間的成長を遂げず、むしろ周囲が我が儘なイチゴに影響を受けてしまうという今作では、全く逆の方向に進んでしまっています。
魁が精神的ダメージを受けるのってほとんど、ギャグ風味も含めて山崎さん絡みのエピソードの時しかないのですが、ああ、魁にとっての山崎さん=残念父にとってのクズ母で、ブレイジェルも人の話を全く聞かない暴走マシンだったという事か。
極めつけに、サンジェルとドレイクの戦闘中の
「あんな熱い先生、初めて見たぜ」
「なんか……魁みたい」
に至っては、作品そのものが“皆が魁になる”事を推奨しているようで、正直、ちょっと気持ち悪い。
マジトピアにおける勇気史上主義、そしてその「勇気」とはひたすら正面突破をはかる事、である以上、魁の姿こそマジトピアの理想であり、ヒカル先生こそが道を誤っていた、というのは世界観として成立するとは言えますが、「魁のやり方が正しい時もある」のは納得できても、むしろ「魁のやり方が正しい」寄りの作劇には、どうにもノれません。
ここまで来てなんですが、今作とは相性が悪かった、と言うしかない。
もともとヒーローのパワープレイがあまり好きではない(勿論、見せ方によりますが)ので、例えば人質を取られたら、取り返す為に策を講じてくれたりする方が好きなのですが、今作はどこまでもパワープレイ推奨。ヒカル先生の加入で少し変化がついたと思ったら、結局パワープレイ超推奨。
“そういう戦隊”として見れば良いのでしょうが、初期の「勇気」の使い方に引っかかってしまった事もあり、どうにも世界観と馴染めませんでした。ここまで来たので最後まで視聴するつもりですが、世界観にノれなかったマイナス補正がどうにも重くなってきてしまったので、後はぼちぼち。勿論、ここから好感度大逆転の展開があれば嬉しいですが。