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『仮面ライダーW』感想4

◆第4話「Mに手を出すな/ジョーカーで勝負」◆ (監督:諸田敏 脚本:三条陸
冒頭の見所は、爆炎の中でも、変なステップ踏んでいるダブル。
「あれは、あいつの家族……?」
翔太郎にも覗き見えた、フィリップのビジョン。家族の情報を求め、星の図書館を彷徨うフィリプだが、手にした本のページは引き裂かれていた。手に入らない過去に混乱するフィリップを気遣う翔太郎だが、そこへミリオンコロッセオへ侵入していた亜樹子から、連絡とコウモリメカを使っての中継映像が入ってくる。
そこでは和菓子屋の娘がオーナーとサシで勝負をして1億円を溶かした挙げ句、命をチップとした最後の勝負に敗北し、生命力をコインとして吸い出されてしまっていた。怒りの亜樹子はマネーにスリッパアタックを敢行し、危機に陥る。
その頃、園咲家では婚礼の準備が進められていた。
「霧彦くん。婚礼を行う前に、君を一発殴らせてくれるかな?」
「まるでホームドラマですね」
軽い洒落かと思ったら
「ふっふっふ、園咲家の者は、皆、我らミュージアムの中枢。この街の、いや、全ての人類の統率者だ。君が、ナスカメモリの能力を極めているかどうか、それを確かめねば、式を、あげさせられん」
お義父さん、本気でした。
テラーメモリを手にする義父だったが、若菜姫が代理を請け合い、クレイドールドーパントへと変貌。
「気取った男のメッキを剥ぐの、私だーいすき。うふふ」
余裕を取り戻した霧彦さんはクレイドールの飛び道具を、変態回避。どうして今頃、大股広げて、『マトリックス』回避なのか、霧彦さん。最後はクレイドールのパンチを真正面から受け止め、試験に合格。
クレイドールを見せつつ霧彦さんの力も見せ、そんな霧彦さんが思わず後ずさるテラーの底知れぬ力も見せ、と濃厚なシーン。また、翔太郎達とは関係なく、園咲家の方は園咲家の話が動いている、というのはいい所です。
亜樹子がマネードーパントを挑発した結果、ガイアメモリをチップ代わりにフィリップと翔太郎がカジノに乗り込む事となり、それぞれライフコインとガイアメモリを賭けて、ルーレット勝負が始まる。完璧な計算で次々と出目を読んで5連勝をもぎ取るフィリップだったが、オーナーが口にした「家族」という言葉で再び動作不良を起こし、出目を読み損ねてしまう。
一方、つつがなく進行する結婚式。
「お父様、私、幸せよ」
「ああ、世界一幸福な家族だ、我々は」
フィリップ「家族なんて、興味が無いっ」
成る程、随分と悪玉側の結婚式を大きく取り上げるなぁと思ってはいたのですが、それぞれ含みのありそうな悪の秘密一家と、フィリップの失われた思い出を繋げる、と来たのは面白い流れ。となると、鳴海探偵事務所は疑似家族の形を取っていくのか。
集中力を欠いたフィリップが連敗で追い込まれ、選手交代を宣言した翔太郎は、謎の人物・サンタちゃんに貰っていたトランプで、全てを賭けたばば抜きの勝負を申し出る。だが、翔太郎の視線やわずかな動きを読み、加えて巧みなカード捌きで完全にゲームを支配するオーナーに翻弄され、窮地に陥る。事態を把握しながらも手を出す事が出来ず絶望するフィリップに対し、翔太郎は勝負を諦めない。
「大丈夫さ。黙って見てな。おやっさんが言ってたぜ。男の仕事の8割は決断だ、そっから先はおまけみてえなもんだってな。俺はたとえ無謀でも、おまえを守って勝負すると決めた。だから、結果がどうだろうと悔いはねえ。おまえは……おやっさんから託された時代な相棒だからな」
それでも無理だ、と言うフィリップに炸裂する、亜樹子のスリッパ。
「君たち、2人で1人じゃない」
「そうだ……俺たちはダブル。2人で1人だ。いつも2人で1人だよな、フィリップ」
何かを閃いた翔太郎はフィリップに目配せし、その意味を悟るフィリップ。オーナーの巧みなカード捌きで翔太郎の左手がジョーカーへと伸びたその時、素早く動いた右手がエースのカードを弾き飛ばす。
「残った札はいらねえ。俺自身が、ジョーカーだからな」
翔太郎の表情を完全に読んで引く札を支配するオーナーに対して、こっそりとWドライバーを填める事で意識を繋いだフィリップが、右半身を操って翔太郎が引こうとしたのとは逆の札を引いたのだった!
前回、ドライバーをはめていると意思疎通が可能であるのを見せたのが、しっかり伏線として機能。
「良く気付いてくれたじゃん、相棒。……この勝負」
「あたし達の勝ちね!」
「だから格好いいとこ取るなよおまえは!」
おやっさん絡みの台詞の所で第1話冒頭の映像を引き、翔太郎とフィリップの2人の相棒関係を補強しつつ、亜樹子の意味もしっかり作った所は、非常に秀逸。また、翔太郎の中における、おやっさんの存在の大きさを随所に折り込み、鳴海探偵事務所が、不在のおやっさんも含めて一つの形になりました。
オーナーはマネードーパントへ変身し、2人にさっとメモリを差し出す亜樹子。亜樹子は少しバランスを失敗するとただ鬱陶しいだけのキャラになってしまいますが、今回の所は面白く収まっており、今後も巧く使っていってほしい所です。
「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
逃走するマネーをバイクで追い詰めたダブルは、サイクロンジョーカー→ルナジョーカー→ルナメタルとチェンジし、軟+剛で、メタル鞭を発動。しばかれたマネーは「家族」を持ち出してフィリップの動揺を誘おうとするが、フィリップはそこに、新しいデータを手に入れていた。
「家族……家族。それなら代わりがある。ちょっと冴えないけどね」
最後はヒートメタルからマキシマムドライブ、燃える鉄棒・メタルブランディングが炸裂して、メモリブレイク。翔太郎達はオーナーから回収したライフメダルを人々に返し、天国のカジノは店じまいとなるのであった。
後日――報告書を記す翔太郎の耳に届くラジオ。
「今日のお題は、仮面ライダーです。投稿、すっごい多いです。バイクに乗って怪物を倒す超人! ふふ、いや、若菜信じてます」
先日の戦いで、バイクに乗ってマネードーパント追うダブルの姿が、風都の人々に目撃されていたのだ。
それを聞き、テンションの上がる翔太郎。
「やったーーー! 若菜姫に笑われたぁ! 仮面ライダーだってよぉ。俺たち、いかがわしい都市伝説扱いされてるぞ!」
なぜ、嬉しそうなのか(笑)
「2人で1人の仮面ライダー
「「ダブル!!」」
おおここで、仮面ライダー」の劇中定義付けもやってくるとは、これはお見事。
どだい、ブランドタイトルとしては圧倒的なネームバリューを持つも、2000年代に劇中で再定義付けをして自称させるには苦しく、作品によっては最初から投げ捨てていた「仮面ライダー」という名称ですが、“都市伝説による他称”という形を取る事で、強引さを減じ、物語の中に収めてきました。
翔太郎とフィリップの相棒関係、おやっさんと亜樹子を加えた鳴海探偵事務所という場所が劇中で一つの形を無し、「仮面ライダー」という都市伝説の超人が生まれる。そして園咲家は婿を迎え、一つの家族が街を覆う悪意として明確になる、と盛りだくさんの内容が綺麗にまとまり、面白かったです。ラジオの噂に始まってラジオの噂に終わる、という構成も秀逸でした。