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『Gのレコンギスタ』感想・第4話

◆第4話「カットシー乱舞」◆ (脚本:富野由悠季 絵コンテ:斧谷稔 演出:吉沢俊一)
アイーダの操るG−セルフで、海賊の潜伏場所へ連れていかれる事になる、ベルリ、ノレド、ラライヤ。クリム・ニック中尉は、コックピットハッチが壊れていても、高笑い。そんな中尉の軽い嫌がらせを受けて、しれっと回避するベルリ。
一方、クンパ大佐が前回G−セルフを逃すように誘導したのは、戦闘の回避、海賊の潜伏場所の発見、キャピタルアーミィを動かす大義名分作り、と一石三鳥(以上)の思惑があったようで、アーミィの式典と共に、ベルリ達を連れ戻すという名目でデレンセン大尉の率いるカットシー部隊が出撃する。
ここで、ベルリ母からクンパ大佐へ
キャピタルアーミィのやっている事は、科学技術を進歩させてはならいという、アグテックのタブーを犯しています」
という台詞があり、今作の世界では、恐らく自然環境の保全や地球人口の調整の為に、技術的な進歩に宗教的タブーが制定されている事が判明。どうやらベルリがビームサーベルに驚いていたのは、このタブーの為だったと思われます。そしてカットシービームサーベルが搭載されていたのは、キャピタルが自らタブーを犯しているという意味である模様。
また、キャピタルの外ではアメリアとゴンドワンの大陸間戦争が起きている事に触れられ、クリム・ニックの戦闘技術はそれによって培われたもの、アメリア軍における戦争による技術の発展も窺えます。
海賊の潜伏場所ではクリムがベルリをG−セルフに乗せようとし、アイーダの回想により、G−セルフの出自に関する衝撃の事実が判明。
ラライヤがデレンセン大尉に拾われた月曜日、カーヒル大尉が拾ってきたMSをそのまま使っていました!
姫様、これが私のMSです、みたいにしれっと乗っていたG−セルフは、しばらく前に拾ってきて勝手に名前までつけたMSであった事が発覚(笑)
姫様、破壊力高すぎるよ、姫様……!
一応、元々のアイーダのMSであるG−アルケインと似たフレームを使っている事から、G−セルフと名付けたそうですが、これによりG−セルフに関してはアイーダ達もよくわかっていなかった事が判明。海賊の中ではアイーダしか動かせなかったけど、キャピタルの手に渡った時点で他に動かせるパイロットが居た可能性はある、とカーヒルと部下がG−セルフに攻撃を仕掛けた理由は、一応納得のいく範囲に。
カーヒル大尉は1・2話におけるヘルメット被った見た目が男くさい中年に見えたので(EDのイラストも)、やたらカーヒル大尉を持ち上げるアイーダの感情は、男女の愛というよりファザコン的なものなのだろうか、と考えていたのですが、今回の回想シーンだと爽やかな大学生みたいになっていたので、男女の好意だったと思ってよさそう。
……まあ、回想シーンなので、アイーダさんのフィルターがかかっていた可能性も否定できませんが(笑)
中年好きという可能性もあるし。
あと、カーヒルが姫様の指に絆創膏を巻いているのを見て、その距離感にムッとするクリム、面白い。
如何にも自分の物、みたいな態度と言動なので、1話冒頭時点からG−セルフは宇宙海賊と繋がりがあるとすっかり思い込んでいたのですが、まさかの拾い物という衝撃の展開(海賊がG−セルフを回収したのはわかったけど、元々の自分達の物を回収したのだと思っていた)。アイーダとラライヤが面識が無い事も素直に繋がるのですが、姫様の、「え? カーヒルが拾ってきたから私のものでしょう?」ノリが凄すぎます(笑)
姫様、美人の姫様でなかったら絶対に許されない人だけど、美人の姫様だから仕方ない。
それにしても、アホ可愛い姫様と、自由すぎる大統領の息子が同乗している、こんな職場はとても嫌だ。
まあ中尉はあれで、ジャベリンの整備に礼を言ったり、好き勝手だけど気さくな描写があったりはするのですが。
この辺りで、技術的タブーに関する「ヘルメスの薔薇」という言葉が出てくるのですが、ヘルメスが錬金術の神様なので、そういった神秘的なハイテクノロジー、のイメージか。宗教と科学が一体化していた時代から、それが分離し対比されつつある時代へ、というニュアンスも含んでいるのかもしれません。
ベルリがG−セルフを動かして見せる中、島へ迫るカットシー隊。海賊部隊は迎撃の準備を始め、ベルリも戦闘を止める為の協力を決意する。
「返せる借りじゃないけど、返す努力はします!」
「あの子……」
ここで、カーヒルを殺してしまった事に対し、ベルリがベルリなりの責任を取ろうとする、という動機付けは巧い。そしてこれを聞いて、アイーダの態度にも僅かに変化が生じる。
天才(笑)がモンテーロで華麗にカットシーを迎撃する中、ノレドとラライヤを守る為に戦闘を止めようとするベルリのG−セルフ。接触回線でデレンセン大尉と話が通じそうになるが一瞬、クリム・ニックの横槍により会話は途切れてしまう。
今回の非常に重要なポイントがこの、交戦中の敵味方でもその気になればコミュニケーションが取れるという事。
勿論、諸条件は厳しいですが、ミノフスキーによる通信の途絶を繰り返し描いて強調してきた今作において、戦闘中のベルリとデレンセンの接触と会話が印象的に描かれた事は、大きな意味を持ちます。
コミュニケーションとディスコミュニケーション、人間同士の触れ合い、というのは富野監督の主要なテーマの一つですが、ここで一つ、“わかりあおうとする事/とその失敗”が描かれた。
そしてまた、今作においてこれまで、シリーズのお約束の補強的な用いられ方だったミノフスキー(粒子)が、ここで始めて、劇中でオリジナルの意味を持つに至る。相互の通信が途切れるという事が、非常に物語の中で大きな意味を持っていたという、それが繰り返し描かれてきた理由が見えてくる。
設定の為の設定ではなく、物語の為の設定となり、物語と繋がった設定となった。
そういう点で今作は、部分的に最初の『ガンダム』をやり直しているというか、おざなりに約束事で済ますのではなく、描くべき部分をオリジナルで描いて物語の中に取り込む作業が丁寧。
戦闘終了後、実戦の感覚に震えるベルリが、そもそもの味方であるキャピタル側を何人も殺したクリム・ニックと繋がって安心してしまうというのは、実に皮肉。
また、デレンセンとの接触の失敗と、海賊との成り行きの交流も対比になって描かれています。
この戦闘中には、G−セルフが謎の能力を発揮して、3機のカットシーを撃退。いきなりベルリが「スコードぉ!」とか叫びだして凄く謎ですが、G−セルフはかなり、謎を秘めたスーパーロボット路線で行く模様。
2話のグリモア戦で見せたように、何やら他のMSに作用するフィールドを発生させているようですが、フォトンバッテリーに影響を与える能力なのか?
デレンセンに再び後れを取った天才(笑)は、G−セルフを戦力として当てにする事を考え、海賊部隊はG−セルフの解析を進めていく。アイーダとベルリが共にコックピットに入ると新たなデータが表示され、2回目で気付いたけど、しれっとガンダムハンマーの図が(笑)
そしてベルリは、軌道エレベーターを狙う勢力の存在を知る。
「君の母上を脅かすものが、宇宙から降りて来るとわかったから、キャピタル・アーミーが新設されたのだ」
「宇宙から来るもの?」
果たしてそれは、宇宙海賊とはまた別の脅威なのか。ベルリはこのまま、なし崩し的に国へ帰れなくなってしまうのか。次回、変なパピヨンマスクが遂に登場!
今回も濃密で面白かったです。
細かい部分に触れているとキリが無いのでだいぶ割愛していますが、もう今作は、物語の密度と疾走感によるアトラクションとして成立しており、それだけでも面白い。
で、他のアニメ作品を見ていてちょっと思ったのですが、今作は凄くガンアクションムービーだよなーと。もともと富野監督は映画的な志向が強いので、情報の圧縮と映像的スペクタクルを重視しますが、今作の、色々あってちょっと辻褄わかりにくい所もあるけど派手にドンパチあって、最終的な着地点は何となくわかる、というのは常に増して映画っぽさが強いな、と(その上で、繰り返し見ると細かい仕込みの積み重ねが見えてくる、というのがまた面白い)。
今作ここまでの毎回の感想を凄く圧縮して書くと、「なんか凄かったなー、面白かったなー」になるのですが、これは個人的に、面白い映画を見て、映画館を出る時の後味に近い。
それがTVシリーズの作劇としてふさわしいのかは良し悪しあるとして、とにかく楽しい。