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『侍戦隊シンケンジャー』感想31

◆第四十五幕「影武者」◆ (監督:加藤弘之 脚本:小林靖子
「まさか……こんな形で……」
突然の姫――真の志波家十八代目当主――の登場に動揺を隠せない彦馬。
「彦馬さん……殿様は、殿様ですよね?」
「丈瑠は……あの女の子の、影武者ですか」
一足早く帰ってきた4人は次々と彦馬に疑問をぶつけるが、そこへ志波薫も戻り、座布団のグレードが上がる(笑)
薫は意識してそういうキャスティングにしたのでしょうが、ちょっと丈瑠と似た雰囲気。
奥で負傷を治療中の丈瑠は目を開き、思い出の紙飛行機を思い出す。


「強くなれ……丈瑠。志波家18代目当主。どんなに重くても背負い続けろ。――落ちずに飛び続けろ」

ここでOPに、というのは良かった。
OP明けて、シンケンジャーと血祭ドウコク率いる外道衆の戦いの歴史をナレーションでざっくりめに辿り、実は度重なる熾烈な戦いにより、志波家を中心としたシンケンジャーの力が弱体化していた事が明かされる。
そして遂に、先代――17代目当主(演じるは、現在は主に声優として活躍中の元メガブルー松風雅也)は、重臣達との協議の末、窮余の一策を決断する。
「影武者を立てる……」
17代目は妊娠中の妻のお腹に居る子供に志波家の未来を託し、敢えて先代シンケンジャーと共にドウコクとの決戦に出陣。この戦いにより先代シンケンジャーは全滅し17代目も命を落とすが、17代目はその死の間際に不完全ながらも封印の文字を用い、ドウコクを三途の川に一時的に沈める事で、次代の為の時間稼ぎに成功するのであった。
そして、本物の18代目の存在を外道衆から隠す為、侍の血統ではないがモヂカラに優れた子供を育て鍛え上げた影武者――それこそが、志波丈瑠の正体であった。
だが、なぜ、“今”なのか――。
本来この影武者作戦は、志波家の力を温存し、その血脈を広げる事で外道衆に対抗する戦力の安定と拡大をはかろうという、数代にわたっての長期的な計画の筈であった、と反駁する彦馬。
さらっと言ってますがつまり、良さそうな遺伝子の持ち主を見繕ってきて(以下検閲)という、サラブレッドブリーダー計画。
生まれてきた18代目が女だったので、男より効り(以下検閲)
実態の冷徹さとロングスパンのスケール感は、非常に今作らしくて良いと思います。
「黙れ! 黙れ黙れ! 全ては姫のご意志。おまえたちの都合など」
丹波!」
「はっ」
「声が大きい」
「はっ。……よいか! 姫に逆らう事はすなわち」
「うるさい」
甲高い声で高圧的という、如何にもな憎まれ役のお付き・丹波歳三に向けて、後ろから扇子を投げつける姫の図は、可愛かった(笑)
「日下部、許せ。丹波が申した通り、私が決めた事だ。影武者の影に隠れて生きるのは侍として卑怯。だから、死にものぐるいで修得した。封印の文字を」
影武者計画の実態を知ったら、それは死にものぐるいになるわけです、乙女として。
ドウコクを完全封印する為の文字を使える――そう告げる薫だが、これまで丈瑠と共に幾多の死線をくぐり抜けてきた家臣達はそう簡単に切り替える事ができない。
「それは、そうです。しかし……!」
千明は真っ先に反対の声をあげ、侍の鑑である流ノ介までもが、使命と丈瑠との思いの間で揺れる。
根回しが足りなかったせいで、穏当な当主交代イベントの筈が、すっかり謀反イベントになってしまい、家臣団の忠誠度ガタ落ち。
「生憎だな。俺んち、侍じゃねえし」
丈瑠ではなく姫に仕える理由は無い、と立ち上がる源太だが、むしろこれ幸い、寿司屋不要、と戦力外通知を受ける。
ハイきっと、そうなると思っていました(笑)
時代錯誤な身分差を振りかざし、寿司屋を嘲る丹波の物言いに真っ先にキレたダイゴヨウが大暴れして騒ぎになるが、そこへやってきた丈瑠が皆へ頭を下げる。
「俺はおまえ達を騙してた! ずっと騙し続けるつもりだった。預けなくてもいい命を預けさせて、おまえたちが危険な目に遭ってもそれでも黙ってた。そんな人間が、これ以上一緒に戦えるわけはない。侍なら、この世を守る為に……。姫と」
第三十九幕において茉子へ叫んだ「俺は……違う!」を裏打ちする、自分は「みんなと一緒に居るのが、普通」であってはならない、その資格がない、という心情を吐露する丈瑠。
変な話、あくまで上層部の指示でやむなく行っていた、と言い抜けようと思えば出来なくもないとは思うのですが、4人と近づきすぎた事で、かえって丈瑠が自責の念にかられてしまう。
丈瑠にしてみれば、外道衆との戦いを通して4人との間に信頼関係が生まれ、互いの距離感が縮まれば縮まるほど、偽りの自分の立場により首が絞まっていくという……誰だこの酷い設定考えたの!
レッドが交代するというインパクトだけではなく、困難を乗り越えてお互いの絆が深まっていく事で力を得、やがて強大な敵を打ち倒す、という戦隊シリーズの基本構造を逆手に取っている、というのは実にお見事。
確信的かつ意味を持った、正しい手法としての掟破りとなっています。
また、丈瑠の通信障害は、コミュニケーション機能の故障にも原因があるけど、同時に実は丈瑠自身が、コミュニケーションを発展させたくなかった為でもあった、というのは巧い目くらましになっていました。
ここまで、「嘘つき」に始まって、死んではいけない筈なのに家臣をかばうなど、幾つかこの真相に至る伏線や布石がありましたが、こうなってみると、第41話で、丈瑠を“真の主君の身代わり”として育ててきた彦馬が、自分を“姉の代わりのシンケンイエロー”と捉えていることはを諭す、というのは実に重い内容でした。
彦馬には彦馬の、殿に対する愛情や引け目があると思われますが、本当は言ってあげたいけど丈瑠には言えない、
「誰の代わりでもない、おまえにしかなれない、シンケンイエローだ」
という言葉をことはにかける。
一方丈瑠は、その言葉は聞かぬまま、その前のことはの姿に全てを呑み込む覚悟を決め直す。
ことはの姉エピソードは使いやすそうなのに最終盤まで取っておいたのは、この最終章までそれとなく内容を覚えていてほしかった為だった、というのは実に納得。
そしてそう考えると、そもそもことはの設定自体が、丈瑠の正体の布石だったわけで……誰だこの酷い設定考えたの!
「影武者とはいえ、なかなか見事。侍でなくとも、長年フリをしていればそれらしくなるものだなぁ、ははははは」
一礼して去って行く丈瑠の姿に、謎の特権意識で5人の反感をあおりまくる丹波
これまでそういった部分は描かれていませんでしたが、命を賭して陰で一般市民を守っているという意識が肥大化した、こういう侍も居るという事か。まあ丹波丹波で、お家大事が行き過ぎてちょっと歪んでしまった人、という程度のフォローは最終的に入りそうな気もしますけど。
丹波
「は?」
「黙れ」
真の当主――姫――が感じ悪くて、わかりやすく対立をあおる展開は嫌だなぁと思ったのですが、わかりやすい憎まれ役は丹波が担当し、直接的ではないものの、姫がそれを適宜たしなめる、という構造でホッとしました。……姫も通信機能に問題がありそうな上に、丹波が話を聞いてませんが。
「おまえらは丈ちゃんの言うこと聞いてやれよ。でも俺は我慢できねぇ」
源太も屋敷を出て行き、先に屋敷を出た丈瑠は、足下に落ちる紙飛行機の幻を見る。志波家18代目当主――それを背負って飛び続けた紙飛行機の。
「終わったんだ……これで」
非常にあっさりリストラされてしまった元殿ですが、現役家臣団の誰よりも武芸とモヂカラに優れ、その上で社会適応能力ゼロとか、野放しにしておくと危険すぎるので、時給1200円ぐらいで雇うべきだと思うんですが!
そもそも他人の人生を20年ぐらい買い取っておいて、志波家は再就職の世話をする気は無いのか(^^;
丈瑠の言葉に屋敷に踏みとどまらざるを得なかった4人だが、そんなタイミングでナナシ軍団が出現し、隙間センサーが反応。姫を加えた5人の初出陣となり、シンケンレッドが変わった事を強調する形で、この終盤に来て、
「シンケンレッド、志波薫」
から始まってのフル名乗り。
名乗り終えるや敵に駆け出す4人に対し、姫はゆったりとその後を歩きながら、向かってきたナナシを薙ぎ払う、という殺陣。烈火大斬刀を操っては、小柄な体と筋力不足を、足を使って補うというアクションが、殿との差を出しつつ格好いい。
その頃、寿司屋は川岸で黄昏れる無職を発見していた。
志波家が再就職の世話をしてくれない限りは、2人で日本一周リアカー寿司の旅しかないなぁ。殿はまともな接客は出来ないから、マスコットの着ぐるみに入るしかないなぁ……。
「丈ちゃん。俺は……寿司屋だから。丈ちゃんが殿様じゃなくたって関係ねえよ。全然! 前とおんなじ! うん」
と、ここでようやく効いてくる、侍ではない寿司屋の存在。
正直源太、十臓の踏み台にされたまま寿司桶の底で力尽きるのかと思っていましたが、良かった、光が当たった!(笑)
「そうか……。俺は殿様じゃない自分は初めて見た…………ビックリするほど何もないな」
だが丈瑠は、再就職とか考えもつかないレベルで、思いの外、燃え尽きていた……。
干からびたガリのような丈瑠のあまりの様子に慌てた源太は、丈瑠に何か創造的な事をやらせようと屋台を引っ張ってくるが(小学生扱い)、その間に丈瑠は姿を消してしまう。
一方、戦場では4人の心の乱れが剣に出る中、姫がスーパー化してナナシ軍団を薙ぎ払い、オオナナシ軍団と巨大ロボ戦。
「サムライハオーとやらで行く」
知らない間に生まれたハオーを使ってみる姫、5人なのでちょっと折神の名前を書くのが大変そうなモヂカラ大団円で、オオナナシ軍団は壊滅。……そういえば源太は、海老の所有権は主張しても良かったような。
「これにて、一件落着」
(確かに本当のシンケンレッドかもしれねえけど……でも、俺が超えたいシンケンレッドは、別にいる……)
(丈瑠……こんなこと抱えて、ずっと……)
(侍としては、姫に従うべき。しかし……)
(違う。こんなん違う……殿様!)
同じロボットの中で戦っていても、4人の思いは全て丈瑠に向いていて、ちょっと可哀想な姫様(^^; 
姫様も姫様で、初対面の連中とチームを組んで生きるか死ぬかの戦いに赴かないといけないという大変な立場であり、本来は忠実な侍である流ノ介あたりがそこを汲んで潤滑油にならなくてはいけないわけですが、流ノ介にも余裕なし。
“団結の象徴”とも言える戦隊ロボを用いての心理演出としても、面白い。
その頃、丈瑠は志波家の菩提寺の片隅に立てられた、小さな墓を訪れていた。第23話で印籠を取りに来た際に丈瑠が見つめていたその墓――それこそが丈瑠の父の眠る墓だったのである。
「父さん……」
丈瑠が死んだ目でいいなぁ(笑)
だがその時、何の因果か同じ境内に家族の眠る、筋金入りの真・無職がやってくる。
「シンケンレッド……いや、違うらしいな。が、そんな事はどうでもいい。俺と戦う。おまえはそれだけで、充分だ」
ここでとうとう、今までで最高に熱い告白が来ました。
心の隙間に忍び込む気満々です。
さすが十臓、伊達に現世で嫁が居たわけではない!
「それだけ……」
十臓の言葉を噛みしめ、口元を笑みの形に歪める丈瑠。
「何もないよりかはマシか」
……はいいとして、どうやって戦うのか、と思ったらシンケン丸は引き続きモヂカラで召喚できる模様。……そういえば、印籠と秘伝ディスクは回収されたけど、書道フォンは取り上げられた覚えがないのですが……持ちっぱなしのままで、シンケンレッドにも変身できてしまうのか? ますます危険すぎて、普通に放置しておいてはいけないと思うのですが、元殿。
ただの1人となった、志波丈瑠と腑破十臓は向かい合い、お互いの刀を構える――果たしてその斬り開くは百鬼夜行か冥府魔道か、次回、更なる激震。
急に出てきすぎた姫
態度の大きすぎる丹波
発言権の低い彦馬
潔く去りすぎだけど調整機能とかついていないから仕方ない丈瑠
いったい誰が一番悪いのか、肝心の最前線の心のケアを放棄した事で激しく空中分解しているシンケンジャーですが……これあれか、最終盤で敵ではなく味方組織が内部分裂してぐだぐだになる、というのも狙い済ました逆セオリーなのかもしかして(笑)
丹波の言によると丈瑠は「侍の血筋ではない」という事ですが、回想シーンで何度か出てくる丈瑠父は影武者作戦に全面協力したり、先代シンケンジャー全滅の際に共に討ち死にしていたりという事を考えると志波家に仕える侍と見た方が自然で、となると、丈瑠は養子という事でしょうか。
多分にキャスティングの都合もありますが、丈瑠が父の事しか思い出さないのと、影武者という居場所に座り続けるしかなかった背景なども合わせて想像すると、志波家が影武者計画とかその他様々な目的で、全国の施設に黒子を派遣してモヂカラが強く身寄りの無い子供を探してきた、と考えると色々しっくり来ます(というか、黒子ってもしかして……)。
そもそも君主というのはそういうものではありますが、最も決定権のない運命を押しつけられていた丈瑠が、第1話において「家臣とか忠義とか、そんな事で選ぶなよ。覚悟で決めろ」と4人に向けて問いかけていたのも、実に皮肉。
それにしても、これまで実際の規模や影響力が今ひとつわからなかった志波家ですが、出来る範囲に関してはかなり苛烈――目的の為には手段を選ばないに近い――な活動を行っていたと想像され、その上で、影武者を軟着陸させる気配が見えなかったり、非情な一面も垣間見えます。……これ、丈瑠と源太と彦馬、折を見て暗殺される手筈なのでは。
そんな志波家の真・主君、姫こと薫は、やはり視聴者にあまり嫌ってほしくないようで、丹波を徹底的な憎まれ役に置いた上で、次回予告の台詞で早くもフォロー。
……うん、ここまでお読みいただいて露骨におわかりかと思いますが、登場2話目にして姫に肩入れして感想書いている人がここに居ます。……だって、姫、この設定、絶対可愛いじゃないですか?!
口に出しては「影武者の影に隠れて生きるのは侍として卑怯」という言葉になっていますが、徒に影を影の人生で終わらせない為に、自ら日の光の下へ出てくる心意気。面倒くさそうなおっさん達に育てられ(推定)、恐らく通信回路に困難を持ちながらも、悪感情を承知で初対面の家臣達と剣を振るう姿。
そう、姫は、今作ここまでのメインキャラクターの中で、最も、男前……!(あれ?)
何か着地点が少しズレましたが、多分姫、登場人物達の中で一番、「運命と戦っている人」ではないかなー、とそんな目で見ています。
まあ、姫がもう少し段取り踏めばここまでややこしい事にならずに済んだのでは疑惑はあるのですが、どう考えても段取り機能とかプログラム段階で組み込まれていないので仕方ないのです、事態をややこしくするのは姫様の属性効果なのでやむを得ないのです!
で、今こんな感じなのでそういう気配は全くありませんが、これ姫、姐さんの好みのどストライクだと思うんです(待て)
今、私の脳内における今作ベストカップルが姫×姐さんになっているのですが、どうすればいいのか!(もう黙れ)
えーと……次回、あれです、彦馬が大ピンチ。