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『侍戦隊シンケンジャー』感想33

◆第四十七幕「絆」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子
ひたすら剣を交える丈瑠と十臓。
――嘘だけでは、決して嘘だけではない筈……
(それでも、嘘は嘘だ。俺には、これが……)
爺の言葉を振り払うように剣を打ち合わせ続ける丈瑠の元へ走る、茉子、千明、ことは……からOP。明けて、サブタイトルの音楽が普段のものではなく、切ない系のBGMでそのまま物語へ、というのが如何にも最終盤で盛り上げてきます。
「結局私は……答も出せずこのまま……」
日が落ちた後も屋敷で、悩み座り続ける流ノ介。
「今行かなければ、後悔の苦しさは、今以上のもの」
その背に声をかける1人の黒子……それは、第7話に登場した、先代に仕えて死んだ侍の友人、を名乗っていた謎の漁師であった。
随分と懐かしい人物がここで再登場しましたが、この人、あまりに「友人」をアピールするので、実は引退した先代シンケンブルー本人、という可能性を考えていたのですが、どうやら違う模様。その辺りは今回も特に触れられませんでしたが、侍の在り方に疑問を呈していた辺り、志波家の暗黒面に呑み込まれて命を落とした丈瑠父の友人とかだったのかなぁ。
「侍として守るべきは姫です! これは間違ってない! ただ、ただ私は……」
「あの殿なら命を預けて一緒に戦える! ……あんたが言ったんだ。あんたが命を預けた殿というのは、志波家当主という器か! それとも中身か! ……勿論、姫は守らなければならない、当然だ。が、人は犬じゃない。主は自分で決められる。――どうか、侍として、悔いのなきように」
割と直接的に「このまま黙って姫に付き従うなら犬だ!」と言っていて、この会話を耳にする姫が、超、可哀想(^^;
というか黒子の隠密能力なら姫の接近に気付いている気はするので、わざと姫にも聞かせている節もあり、まあ、一度は志波家を離れたという、スタンスゆえでありましょうが。
その頃、苛烈を極める丈瑠と十臓の戦いも、宵闇の中で終焉を迎えようとしていた。
……中澤監督はなんとなく、夜戦が好きなイメージ。
「最高だな、いや、これこそ、究極の、快楽……! 剣のみに、生きる者だけが、味わえる!」
(剣、のみ――――剣のみ!)
十臓の打ち下ろしを受け止めて切り返した丈瑠は、裏正を弾き飛ばすと、十臓を真っ向唐竹割りに両断する! 十臓は火花を散らして爆発し、変身が解けた状態で炎の中に倒れ込む。精も根も尽き果て、同じく変身が解けて座り込む丈瑠。
「やった……」
「それこそが、快楽」
確かに手応えがあった筈なのに、ゆらりと半身を起こす十臓。
「なかなか死ねない体でな。手でなくば、足。でなくば、口。剣を持てるかぎり、この快楽は続く。所詮、人の世の事は全て、命さえも幻。が……この手応えだけは真実! お前も感じた筈。何が、おまえの真実か!」
十臓の狂気が隙間の向こう側から丈瑠を手招きし、丈瑠を深淵の底へ引きずり込む朱い光が両者の間で揺らぐ。
「真実……」
刀の柄を握り、魅入られたように見つめる丈瑠。
「俺の……」
「駄目ぇぇぇぇぇ!」
その時、響く声。
「丈瑠!!」「そんな話聞いたらあかん!」「おまえには、剣だけじゃないだろ!」
「お前達、どうして……」
「よそ見をするな! まだ……終わっていない」
地面に突き立つ裏正を支えに立ち上がり、丈瑠に迫らんとする十臓、が、一瞬、BGMが途切れ、十臓の足を止める着物の手。
驚く十臓が目にしたのは――その足に絡みつく亡き妻の姿。
おおお、凄い。
何が凄いって、もっとファンタジックで綺麗に演出しようと思えばいくらでも綺麗に撮れるのに、敢えて地面近くで伸びた手が十臓の足を掴む、というどこか薄暗い情念を感じる絵にしている事。
これは勿論、丈瑠の弾き飛ばした裏正がたまたま十臓の足先を地面に縫い止める事になったのが、十臓にはそう見えた、という解釈を可能にするなぞらえという面もあるのですが、同時に裏正の材料となった妻の魂は魂で、奥底において「十臓を止める」という事にのみ執着する存在になっていた……という事も思わせる、凄みのある映像です。
時制に若干無理が出るのを承知で、丈瑠vs十臓のクライマックスバトルを夜戦にしたのは、炎を引き立てる為というのが第一でしょうが、このシーンは、夜の闇あってこそ嘘っぽくならず、お見事。
「裏正……」
十臓は裏正を引き抜こうとする(妻の手を振りほどこうとする)が、どんなに力を込めても、それは引き抜く事が出来ない。
「ここに来て! ……いや、この時を待ってか! ……裏正ぁぁぁぁぁぁ!!」
「それは……おまえの……真実なんじゃないのか」
「いいや! 全て幻だ! この、快楽こそぉぉぉ」
絶叫する十臓の体を、縦に割る赤い線が走る――。
「おまえの、剣……骨の、髄まで……うぁぁぁぁぁぁ!!」
十臓の体が弾け飛び、ますます荒れ狂う炎を、駆けつけた流ノ介が水の剣で切り裂き、茉子達は何とか炎の中から丈瑠を救出。そして十臓は灰となって崩れ落ち、今度こそ完全に最期を遂げる。
俺ルール系バトルジャンキーないし俺美学系ライバルキャラは、俺ルールと組織の兼ね合い、俺ルールと物語の事情、などにより話を都合良く引っかき回す為の道具になりがちなのですが(十臓も第11話辺りはそういう感じだった)、途中から完全にフリーランスに移行し、俺の俺の為の俺ルールを貫ききる事で、独立した己の道を全うしきりました。
そしてその俺の俺の為の俺ルールが、志波家のルールを守り誰かの代わりを演じ誰かの為に生きてきた丈瑠が全てを失った(と思いこんだ)時の誘惑になる……というのは良く出来た構造で、秀逸。
マッド人斬り愛好家としてはもっと弾けてくれていても良かったですが、まあ、対象年齢の問題もあるか(^^;
「死んだよ、腑破十臓……」
「そうか。200年の欲望、満たされたのかどうか」
「さあね。そういう、お前さんはどうなんだい。せっかくドウコクが直した三味線、ちっとも弾かないじゃないか」
「ああ……どうしてだか」
「おまえさんの三味の音なら、きっとドウコクが回復する決め手になると思うんだがねえ」
「この、音色か……」
三途の川では、迫るドウコクの復帰に呼応するかのように、次々とナナシ軍団が生まれていく……。
夜が白み、再び集うも、黙りこくる5人。
意を決して口を開くことはだが、
「殿様!」
自分の言葉にハッと固まってしまう。
「俺のせいで悪かった。早く帰って――」
それをきっかけに立ち上がる丈瑠だが、ことはが続けて言葉を紡ぎ出す。
「嘘じゃないと思います! ……ずっと一緒に戦ってきた事も、お屋敷で楽しかった事も全部、ほんまの事やから。せやから……」
「俺が騙してた事も本当だ。……ただの嘘じゃない。俺を守る為に、おまえ達が無駄に死ぬかもしれなかったんだ。そんな嘘の上で何をしたって、本当にはならない。……早く姫の元へ帰れ」
「丈瑠」
「たく……」
茉子の声も空振りに終わる中、立ち上がった千明は歩み去ろうとした丈瑠をふん捕まえると殴……り飛ばそうとしてかわされる。
「よけんなよ馬鹿ぁ!」
今度こそ千明は丈瑠を殴り、座り込む丈瑠に、駆け寄ることは。後ろの姐さんが、“男の子の解決法”にすかさず笑顔になる辺り、いいなぁ(笑)
「今ので、嘘はちゃらにしてやる。……だからもう言うなよ、何も無いなんて言うなよ! 何も無かったら、俺たちがここに来るわけねえだろ!」
自責の念にかられる丈瑠には、どんな言葉も理屈で否定されてしまう。そんな丈瑠に対して、物理的な殴打で片を付けて責任を取らせる……という、千明らしくて素晴らしい解決。
そして更に、ずっと背中を向けていた流ノ介が近づいてくると、初めて、丈瑠を上から見下ろす。
「志波……丈瑠。私が命を預けたのは貴方だ。それをどう使われようと文句はない! 姫を守れというなら守る! ただし! 侍として一旦預けた命、責任を取ってもらう! この池波流ノ介、殿と見込んだのはただ1人! これからもずっと!」
――そして、改めて膝を付く。
自分を許せない丈瑠の感情に千明が物理的手段で片を付けた所に、流ノ介が流ノ介理論により「侍として」丈瑠を認める、という見事な男の友情コンボが炸裂! 2人の立ち位置の違いも、上手く盛り込まれました。
「……俺も、同じくってとこ。まだ……前に立っててもらわなきゃ、困んだよ」
「うちも……うちも同じくです。それに、源さんや彦馬さんも」
「黒子の皆さんもだ」
ことはは流ノ介と並んで膝を付き、そして1人、丈瑠と同じ目線に膝を詰める茉子(片膝付きで臣下の礼を取るのではなく、膝を揃えて腰を落としている)。
「丈瑠……志波家の当主じゃなくても、丈瑠自身に積み重なってきたものは……ちゃっんとあるよ」
「俺に……」
これまでの日々、志波家での出来事を思い返す丈瑠。
「俺にも……」
「うん」
丈瑠の問いに、笑顔を返す茉子。
正室、圧倒的貫禄
それぞれの顔を見つめて丈瑠は涙をこぼし、その肩に手を置く茉子。そして再び心を繋げた5人の背後では、裏正が人知れず消滅する……。
丈瑠が失ったものを取り戻し、それを信じる(←ここが重要)、という今作の物語の一つの総決算として脚本も力が入っているのですが、4人それぞれの丈瑠との距離感や関係性が立ち位置などでも表現されていて、演出面でも非常に計算された名シーン。
まずは地面に突き立つ裏正が映り、バラバラに離れた5人の遠景で、ずっと丈瑠に背を向けている流ノ介。ことはと丈瑠の会話の最中に、丈瑠の背中と流ノ介のアップ(顔はぼやけて見えない)が入り、遠ざかっていく丈瑠を強引に捕まえて殴り飛ばす千明。ことはが咄嗟に丈瑠に駆け寄り、茉子は後から近づいていき、最後にやってきた流ノ介が、丈瑠を見下ろし、そして改めて膝を付く。
ここで流ノ介が一度、殿と家臣ではない関係性を丈瑠に提示してリセットをかけた上で、改めて殿と家臣になる。
千明は照れ隠しに歩きながら喋って少し距離を離し、流ノ介の後ろに。
丈瑠に最接近していたことはは距離を取り直し、流ノ介と並んで膝を付き、ここで流ノ介・ちあき・ことはが、一緒に映るカット。……て、ことは結局そちらか(笑) まあ、ことははまだ精神的に幼い、という扱いなのでしょうが、それ故の思い切りのよさと勢いで最接近する大胆さも盛り込まれています。
そしてカメラ位置変わって、丈瑠と茉子、の2人が映るカット。丈瑠に距離を詰めて目線を合わせる茉子。
茉子の言葉を受け、丈瑠とそれぞれの顔アップを交互に映し、丈瑠が涙を流した所で、再び遠景、今度は一つの輪になった5人。泣く丈瑠に茉子はもう少し距離を詰め、千明は流ノ介の肩を叩く……そして消滅する裏正(このシーンが裏正に始まり、裏正で終わっている――外道への誘惑の象徴という所か)。
場面変わると、独り座る姫、という絵。
中澤監督はやっぱり上手いなぁ。
それにしても、姐さんは演出的に明らかに別格で扱われており、この終盤に来て、非常に良い扱いになりました。初期から丈瑠に対して最も独特な距離感ではありましたが、ここまでクロースアップされるとは、正直思わず。
かといって、ことはが消えているかといえばそういうわけでもなく、ことはらしい言葉がちゃんとあり、4人それぞれの考え方と良さが出ているのがいい所であります。構造的に、“赤と他者の関係”、というのを軸にしてきた作品でありますが(00年代戦隊の幕開けといえる『未来戦隊タイムレンジャー』と鏡写しのコンセプトなのは恐らく意図的)、この最終盤において、4人それぞれの丈瑠との関わり方が表現されているのが素晴らしい。
かくして、丈瑠が失ったと思い込んだ絆を取り戻し、嘘の人生という呪縛から遂に解き放たれた頃、屋敷では丹波が復活していた。
「けしからん!」
その怒声を耳にして足を止める、通りすがりの源太と彦馬。
「姫! これはもはや謀反。謀反でございますぞ!」
「馬鹿を申すな! 影とはいえ、家臣との絆は結ばれているのだ。私は自分の使命だけに夢中で…………私が出る事で、彼等を苦しめる事にまでは、思い至らなかった」
「何をおっしゃいます。姫は、血の滲む努力で封印の文字を、修得されたのです。有り難がりこそすれ、苦しむなどと。これはやはり、力尽くでも連れ戻さねば」
「よせ!」
丹波を止めようと扇子を投げつける姫だが、丹波はそれをひらりとかわす。
「はははは、丹波もまだまだ、衰えてはおりませんぞぉ。誰か、誰かある! 至急、侍たちを!」
姫、すすっと歩み寄った黒子から大型のハリセンを受け取り、ハッスルする丹波に背後から一撃。
「うん……これはいい」
変な武器スキルを修得する(笑)
ここで丹波も姫への愛情を見せつつ大幅に崩し、徹底した憎まれ役から大団円に向けて憎みきれない憎まれ役にシフトチェンジ。「はははは」以降、テンション高く大袈裟な身振りをしながら、動きに合わせて姫のハリセンに叩かれるリズムは絶妙の演技(笑)
「お姫様もやるねぇ」
そして源太は姫の心を知るが、その時、隙間センサーが反応。オオナナシ軍団が港町に出現する。
「侍達に連絡を。私は先に出る」
ここで定例の格好いいBGMが入り、独り出陣しようとする姫の前に立ち、ニヤリと笑う寿司屋一匹。
「寿司屋で良ければ、お伴するぜ」
「おまえは侍では!」
甦った丹波の後頭部に再び炸裂するハリセン。
「頼む」
丈瑠と4人が絆を取り戻す一方で、孤独な姫の本心を知る者も少しずつ増えていく……特に感情的なしこりのあった源太をここに配し、鮮やかに丸く収まったのは良かったです。源太も貴重な男前ポイントを獲得。
姫はゴールドと大海真剣王に乗り込み(後は猛牛大王でコンプリート(笑))、オオナナシ軍団と激突。連絡を受けた4人も駆けつけてナナシ軍団と戦い、黒子が誘導した避難経路では、フォローに回った丈瑠がナナシ達に立ち向かう。
視聴者の混乱を避ける為にかシンケンレッドに変身こそしないものの、これがまあ、丈瑠の正しい運用方法です(笑)
あと姫様がお昼寝したい時とか、「影、ちょっと行ってこい」て、スカート履かせて(待て)
ナナシが暴れ回る中、此の世に現れた薄皮太夫は、海辺で三味線を弾き始める。
(わちきはずっと目を逸らしていたのだ……何があったか、何をしたのか。そして……わちきが何者なのか)
なるほど、太夫がアヤカシとそりが合わなかった理由は、はぐれである事に加え、太夫自身が外道である事を認めたくなかった、と。……まあ、あんなヒャッハーな連中ばかり見ていたら、そう主張したくなる気持ちもわかります。
(ドウコク……おまえが最初から言っていた通り……わちきは)
ナナシと戦っていた桃は太夫に気付き、剣を向ける。
「ここで何を」
「外道であれば知れた事。此の世を苦しみ嘆きで満たす」
「だとしたら……私はあなたを斬る!」
「望むところ。……少しは知った者の方がいい」
本格的な絡みにまでは発展しませんでしたが、一応この2人の因縁関係も最後まで拾ってくれました。背中を合わせて回りながらお互いの隙を窺う、というシーンは太夫の初戦闘シーンを思い出す殺陣。そこから太夫の攻撃をかわしたピンクは空中からの斬撃を浴びせ、太夫はわざと、その剣に三味線と自分を斬らせる。
「いつか、わちきが此の世の価値を手放したと言ったな。ようやく……人であった過去も、手放せる」
取り落とした三味線が裂け、そこから噴出する数百年の苦悶。それに反応し、一気に三途の川が増水する……と、以前にアクマロが三味線を楔に使おうとしていた、というのが伏線として機能し、遅々として進んでいなかった行くぜ人間界!三途の川増水プロジェクトがここで一気に進行。
そして――極上の嘆きと苦しみによりお肌の手入れが行き届いたドウコクが、完全復活を遂げる。
「戻ったぜ、太夫
いきなり人間界に現れる外道衆御大将・血祭ドウコク。侍達はこの宿敵に、打ち勝つ事が出来るのか! 次回――いよいよ最終決戦。