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『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想・第12話

◆忍びの12「最強決戦!奇跡の合体」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:下山健人)
見所は、EDダンスで好感度を取りに行くキンジ・タキガワ。
蛾眉との戦いに敗れた天晴が重傷を負い、八雲達はその穴を埋めるべく、訓練とオトモ忍の解析に励む。一方、赤との一騎打ちに勝利して満足した蛾眉は約束通りに九衛門に協力し、街で破壊活動を始める……とようやく、明確な悪事を働きました。
が、これまで様々な妖怪でちまちま恐れを集めてきたのに対し、蛾眉さん単純な物理的破壊で恐れを大幅に集めてしまい、若干の台無し感。それだけ蛾眉が強いという事なのでしょうが、そもそも蛾眉の“強さ”がしっかり描けていなかった為(何事も天晴を中心にしてしまう悪い作用で、天晴に匹敵する、という天晴との対比でしか蛾眉の強さが描かれていない)、どうにも巧く組み上がっていません。
そして、この展開に向けて狙い澄まして投入されている筈のスターが、全く物語に馴染んでこない。
妖怪ハンターだから戦国武将には興味が無いと蛾眉さんについては無視、かといって寝込みの天晴や忙しい4人を襲う気はない、何やら思う所あるらしく「家族」というキーワードにほろっと来て転がされる……と、「目的」と「優先順位」が時と場合によってバラバラすぎて、結果的に全てが中途半端。
これはまさしく、スターニンジャー/キンジ・タキガワというキャラクターの造形そのものなのですが、盛り込んだ要素が多すぎて軸がハッキリしない為に、かえって、その場その場で都合のいい行動ばかりを取ってしまっている。
今回、キンジ視点におけるエピソードの構造は、「妖怪退治にしか興味が無い」「ラストニンジャの弟子になる為にニンニンジャーと対立関係である」キンジが、「5人の姿に打たれて共闘する」というものなのですが、この場合、ドラマ性はどこに生じるかというと、キンジがその“行動指針を曲げる「選択」をする”という所にあります。
つまり、キンジの行動指針が強固である程、劇的な効果が発生する。
ところがキンジの行動指針を二つ(「ラストニンジャの弟子になる」「妖怪をハント(コレクト)する」)用意した上で、その優先順位などを描写していない為に、キンジの行動指針の強固さが物語として非常に不明瞭です。
勿論、どちらも大事、というのはこの場合矛盾しませんし、キャラクターを単純化すればいいというものではありませんが、少なくともキンジのキャラクターと、キンジの今回の用い方は、噛み合っていません。
自らの行動指針を曲げてまでニンニンジャーに協力する所にドラマが生じる筈なのに(少なくともエピソードはそういう構成になっている)、その行動指針に対する葛藤が描かれず、代わりに行動指針を曲げる理由としてキンジが背負っている「明かされざる背景(家族?の写真)」という、新たな行動指針が加わってしまい、ますます不明瞭に。
結果、キンジは複雑化というよりも、ますます分裂してしまい、最終的には前回見せたように「結局、いい人」という身も蓋もない所に着地してしまっています。
それを貫くならそれはそれで良いのですが、現状、「結局、いい人だから○○はしない」という逃げ道に使われてしまっており、キンジは一見物凄く濃いのだけど、実態は“物語を脱線させない為の言い訳で全身を固めている”状態となっており、設定された行動指針を貫ききれない、いわば、「キンジだからこうする!」ではなく、「キンジはこういう事はしない」でキャラが構成されてしまっています。
これはとても良くない。
で、そのキンジを転がした「家族」というキーワードなのですが…………今作でここまで描かれてきた家族の姿って、風花を心配する旋風とか、八雲と春風とか、脇に伸びればともかくとして、ことメイン5人に関して言えば「ガキ大将と舎弟達」「年上ほど優遇されるシンプルかつ冷酷なヒエラルキーであって、信頼とか優しさとか表現されていたとは言い難いと思うわけであります。
付き合いの浅いキンジがその関係性を把握していないのは仕方ないと言えるのですが、
天晴にとっての妹と従兄弟達=俺の為の前座
であり、その天晴が「あいつらが待ってる」と言っても、あまり良い話として受け止められません(^^;
まあ、「ワレ、わしの兄弟分に何さらすんじゃい!」「アニキー!」「アニキー!」という構図だと思えば、戦隊物のルーツの一つである任侠ものの延長線上には位置しているのですが。
この辺り、「家族愛」とはどうにも遠い所にある今作で、キンジの背景と繋げて1クール目を「家族」に集約したのは、凄く明後日の方向にボールを飛ばしてしまった気がします。
なんかもう今作、家族戦隊は家族戦隊でも、『痛快!天晴一家』みたいな感じで見ればいいのかもしれませんが。……そう考えると、キンジが渡世人口調である、真の理由が見えない事もなく。
そんなこんなで復帰した天晴が舎弟共の心意気に応える事で忍タリティーが高まり、4つの手裏剣から新たな技手裏剣が誕生。それによって放つ超必殺技により、アカは蛾眉を撃破するのであった。
話の流れはどうにもノれませんでしたが、展開した忍者刀がバリアになって敵の攻撃を防ぎ、その後で合わさった剣で斬撃、という新必殺技はとても格好良かったです。5色の忍者刀が展開しているので、今後は5人の合体技で放つのか、それとも天晴のアニキが今後も1人で使うのか。ニュアンスとしては5人の力を合わせているのに、実際は天晴が1人で使うというのが、とても今作らしい必殺技です(遠い目)。
アカの必殺剣に敗れた蛾眉は敗北を認め首を取るように告げるが、九衛門によって巨大化されてしまう(肥大の術を受けると、理性を失う事が判明)。二体のガシャドクロが巨大な剣となり(これもとても格好良かった)、それを振るう蛾眉に苦戦するシュリケンジンとバイソンキングだが、霞の研究と、新たに手に入れた「合」の手裏剣により、6体のオトモ忍が合体。神輿の5人の手前にバイク風のスターというかつてなくカオスなコックピットになりながら、新ロボの圧倒的な力で蛾眉を撃破するのであった。
牙鬼軍団一番槍・蛾眉雷蔵は、結局、困ったおじさんのまま終了。最後に武士らしい潔さを見せるのですが、そういうのは、ここまでの物語の中で少しずつ見せるから格好良くなるのであって、末期の台詞だけで突然キャラクターを立てようとしても空々しくなってしまうだけです。立ち上げ期間という事で尺を避けなかった部分も大きいかと思いますが、どうにも書き込みの足りないままの退場となりました。
この人がアカをライバル視していたのって要するに、知能指数が同程度だったのだなぁ……(^^;
それまでの流れを集約するエピソードで、多少の軌道修正を加えて綺麗にまとめてくるパターンと、そこまでの積み上げがガタガタだった事が浮き彫りになるパターンとありますが、完全に後者。
設定上は確かに家族(親族)戦隊なのですけど、あくまで従兄弟にする事で今作独自の距離感を出そうという方向性が見えていたのに、ろくに描いていない「家族だから」でまとめてしまった為、それならもっと素直に家族要素を描いておけば良かったのでは、という事に。過去に真っ向勝負の家族戦隊があるだけに、これまた非常に中途半端になってしまいました。
で、九衛門は爺ちゃんのかつての弟子だったとまたさらっと明かされましたが、あくまで爺ちゃん談なので保留。
バイソンキングは、爺ちゃんのテキストを元にキンジが自作したと語られましたが……あー……うん、その辺りにはこだわらない、という宣言なのでしょうが、それならそれで、もう少し面白く使えそうなネタを、どうしていつも投げ捨てるように明かすのか(^^;
次回登場の新幹部が、声といいデザインといい少し頭脳派寄りっぽいので、雰囲気を変えてくれる事に期待したいです。