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『手裏剣戦隊ニンニンジャー』感想・第13話

◆忍びの13「燃えよ!ニンジャ運動会」◆ (監督:金田治 脚本:下山健人)
弟子入りを懇願するキンジに対し、かつて自ら後継者と目して育てた九衛門がその力に惑い道を踏み外した過去から、刺客に徹する事ができず逆に孫達と交友を深めしてしまうような、心に揺らぎのある者は弟子には取らない、ときっぱり告げる好天。
「1人しか継げぬラストニンジャを、塾かなんかで学ぶ事と、混同するでない」
1クール目が、いきなり全否定されたゾ(笑)
爺ちゃんが作品の根幹を揺るがしかねない発言をしている頃、九衛門は蛾眉雷蔵大暴れによって集めた恐れの力を用いて、翁面の新幹部――牙鬼家の家老にして軍師、晦正影を復活させる。バトルジャンキーだった蛾眉さんとは打って変わって知謀の士である正影は、牙鬼復活の為に恐れを集めると共に、邪魔なニンニンジャーを始末する為の策を巡らすのであった……。
蛾眉さんが、般若面+青鬼みたいな如何にも暴れん坊だったのに対し、晦は翁面+……海産物? そこはかとなく宇宙的ホラーの雰囲気。中尾隆聖さんの演技も合わせ、如何にも嫌らしい感じです。
好天の言葉に自分の中の迷いを消し去ろうと努めるキンジは、伊賀崎家に向かうとお手伝いさん退職を宣言し、凪の英語の宿題の手伝いも拒否して姿を消す。
「どうしたんだろう……?」
あー、その人、サイコさんだから。
気にしたら負けです。
一方、暇を持てあましていた天晴は「忍者運動会」のチラシを目にし、伊賀崎流5人で参加する事になるのだが、それは勿論、正影のめぐらした策であった……というわけで、金田監督アクション回がやって参りました。
フラッグレースやトラップ有りの大玉転がしに奮闘するニンニンジャー(&モブ忍者達)、そこに乱入するサイコな刺客スター、がテンポ良く描かれ、楽しい出来。
基本的にライトな作風という事もありますが、ニンニンのメンバーは、あれこれ思い悩ませるよりも、はしゃがせておいた方が絵としても面白い。
昼食の時間、天晴が水筒を忘れ、飲み物を買いに行くパシリこと凪。5人分なのに、誰一人、一緒に行こうなどとは言いません、言いませんとも。この世には、変える事の出来ないヒエラルキーというものがあるのです。
その道中、凪は樹上で独りハンバーガーを口にするキンジを見つけて気さくに声をかけるが、なれ合いを拒否される。
「あっしは狙う方。坊ちゃん方は狙われる方。仲良くするのは、変でございやす」
「なに急にキャラ変わって。ただでさえ、変な忍者なんだから」
凪の何気ない一言!
キンジの心にクリティカルヒット
キンジは心に深い傷を負って木から落ちた!
「変で、ございやすか?」
「うん、すっっごい変! お爺ちゃんに弟子入りとか、変すぎ」
凪はキンジの落とした写真を拾い、キンジが思わせぶりに見ていた写真の人物は、妖怪ハンターであったキンジの父と兄と判明。写真を見られて動揺していた割には、実にあっさり、家庭の事情を話すキンジ(笑)
幼い頃に父と兄を妖怪に殺されて亡くし、「家族」というものがよくわからないキンジは、ただパシらされている凪の姿に家族愛を見て勝手に感動し、「家族」に対して少々麗しすぎる思い込みを持っている模様。
一応、前回の「家族」キーワードに対するニンニンジャーへの肩入れの理由も繋がりました。まあ前回は、後から理由付けすればいいタイプの展開ではありませんでしたが。
「とにかくあっしは、二人を超える妖怪ハンターになる為、ラストニンジャ様の弟子になろうと思ってるんでございやす」
……うん、その発想が、変。
「ですから、これ以上仲良くしないよう、お願いいたしやす」
「わかったけど……多分それ、無理じゃない?」
「え?」
凪が何か言おうとしたその時、二人は運動会の運営委員の男達が足軽兵に姿を変えるのを目撃。運動会は牙鬼一味の罠だと報せに駆け戻る凪とキンジだが、正影によって青桃白とモブ忍者達がくす玉の中に閉じ込められてしまう。
……あ、モブ忍者の皆さんは、本当に一般参加者だったのか(笑) てっきり、こちらも足軽兵の変装だと思っていました。
正影は運動靴から妖怪ヤマワラワを生み出し、赤黄星は、囚われた仲間達とモブを救い出す為にヤマワラワと三人四脚競争をする羽目に。俺様ワッショイの天晴と、思考回路が霧の迷宮のごときサイコキラーの息が合うわけもなく引き離される3人だが、凪が間に入ってリードをする事で徐々に噛み合い、快走を見せる。
「ナイスリード凪坊ちゃん!」
「合わせるの得意だからね!」
ああ、成る程、そうか、そうだったのか……。
長らく、ニンジャ一家の残忍で冷酷なヒエラルキーの中で、凪がどうやって心のバランスを保っているのか不思議だったのですが、上(主に八雲)からの圧力や、ナチュラルすぎるパシリ扱いを甘んじて受け入れていたのは、俺がこいつらのレベルに合わせてやっている、という視点だったのか!!
まさかの、最下層からの超蔑みの視線。
殺伐ニンジャファミリーの関係がくるっと一回りして、物凄く腑に落ちました(笑)
丸太を飛び越えたり、火薬の埋まった川の中を突っ切ったり、の三人四脚は、映像としてはあまり面白く感じませんでした。身長差の問題もあって、微妙に両脇から、真ん中の黄を持ち上げているっぽい時もあるし(笑)
途中、正影により青桃白3人の幻影が障害物として放たれるが、洗脳されているのだったら「後で謝る!」と、赤が本気攻撃で突破。
……微妙に既視感あると思ったら、去年、『トッキュウジャー』が似たような事をしていたなぁ(笑)
ピッタリと息の合った3人は僅差でヤマワラワを破り、囚われの人々を解放。先程の3人が幻影ではなく本物なら一大事だった、と赤に詰め寄る星だが、赤は伊賀崎流のニンジャとしての迷いの無さを見せつける。
赤「俺達はどんな状況でも、全力で戦うしかないだろ」
青「そうだな。ニンジャたるもの、悩むべからず。四の五の言ってられん」
桃「まあ、身内であっても、容赦はしませんよ」
…………たぶん、霞ねえの「容赦しない」は、赤と青の言う「全力」と、意味が微妙に違うと思います。
ここ、既存の戦隊で言うと、「お互いに信頼しあっているからいつでも全力をぶつけられる」みたいなニュアンスだと思うのですが、今作のここまでの積み重ねと、最後を締めた霞の台詞のせいで、ニンジャ一家の抱える邪悪な何かが滲み出てしまいました。
前作『烈車戦隊トッキュウジャー』は、一言で現すと、「ライトに狂気」な戦隊でしたが、それになぞらえると今作は「ライトに残酷」な感じで、もしこれを計算してやっているなら、後半に大化けする可能性があるかもしれないでもないかもしれない。
囚われていた3人も変身し、スターを交えて6人で揃い踏み、後ろでポーズを決めるモブニンジャ達(笑) これをアイキャッチ代わりにしてパートの切れ目にしたのは良い演出でした。
ヤマワラワは赤と星の同時攻撃でさくっとパーリナイし、巨大化後はキング手裏剣神でざっくり撃破。今回、金田回という事でロボ戦短めなのは配分通りでしょうが、キング手裏剣神はあまり動けないのではないか、という疑念がそれとなく募ります。
「仲良くなったら戦えないだなんて、あっしは本当に甘かったでございやすね」
殺伐としたニンジャ一家の姿を見て、キンジ、更に悪い方向に振り切れる……というか、この人のこれまでの行動を考えると、単に好天に「何おまえ標的と仲良くなってんの」と言われた事で、「仲良くなった相手は殺せない自分」という新しい妄想が発生し、自分自身がそれに騙されていただけで、一周回って、元のサイコキラーに戻っただけではないのか。
もしかすると、父も兄も「妖怪ハンター」という職業の存在も、全て妄想。
或いは、「父」と「兄」を殺し、自分を残された「弟」だと思いこんでいる妖怪なのかもしれない。
……ぐらいまで考えると、キンジのこの、一向に落ち着かず、全く軸の定まらないキャラクターに納得行くのですが。
まあ8割与太ですが、キンジの正体が妖怪「鵺」である可能性については、心の隅で抑えておきたい(笑) 雷の術、使うし。
凪が再び英語の宿題の手伝いを頼んで断られた所に爺ちゃんからの矢文が届き、正影を倒す力として天空のオトモ忍を呼び覚まして手なずけたらラストニンジャの最有力候補だ、と更なるガソリン投下。天空のオトモ忍……U、UF……ううっ、頭が割れるように痛い。
にしても、
好天「晦正影は、蛾眉とは違い、一筋縄では倒せぬ」
正影「蛾眉の奴は誤魔化せたようじゃが、儂を騙せると思うな。十六夜などという小姓、我が軍には、おらぬ。……ふっ、素性も目的も聞かぬ。おかしな事をやりおったら――斬る」
前回、無残な最期を遂げた挙げ句、敵からも味方からも脳まで筋肉のアンポンタン扱いを受ける蛾眉さん、死んだ後まで扱いが酷い。
好天の言動は一から十まで信用できないので本当に元弟子かはわかりませんが、九衛門に関しては正影からも、元からの牙鬼一味ではないと言及があり、少なくとも何かの含みを持って恐れを集めている事がハッキリしました。
正影が九衛門の名前をわざと間違えるネタは、単に喧嘩の強さで空威張りしていた蛾眉さんとはまた違った嘲り方が差別化されていて、良いと思います。
ところで凪は、英語の宿題に関して八雲とキンジは頼ろうとするけど、高校の英語ぐらい教えてくれそうな霞に声をかけないのは、霞に借りを作ると後でどんな目に遭うかわからない、と動物的本能が告げているのか(ガタガタ)