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『百獣戦隊ガオレンジャー』感想9

◆Quest10「月が招く!!」◆ (監督:竹本昇 脚本:武上純希
見所は、ナンパしたゲストヒロインとうまくいかなかったブルーを、これで、おまえもこっち側(非モテの国へようこそ)だな!と満面の笑みで励ますブラック。
ライオンの腹痛の原因は、考え無しにがっちゃんがっちゃんとパワーアニマルを付けたり外したりした影響でガオソウルが減少した為ではないかと判明し、その治療薬である“輝きのキノコ”を求め、パワーアニマル教団の伝承に伝わる聖なる森へ向かうガオレンジャー。しかしその森は、ニュータウン開発により切り拓かれ、既に失われていた。途方に暮れる5人だが、突然、月の光に導かれて不思議な森へと転移する……聖なる森とは異世界?の森だったのだ!
異世界で森の番人達と出会う5人だが……ヤバイバとツエツエも一緒にワープしていた(笑) 更に、オルグも一匹、迷い込んでいた(笑)
番人達の頼みを聞き、森を破壊しているという鬼(正体はブルドーザーオルグ)と戦う事になるガオレンジャー。番人達の“鬼”という単語にピンと来てもいい筈なのに「鬼退治とかやってる場合じゃねーし」という表情になったり、キノコとの取引を持ちかけるわけでもないし、番人娘に一目惚れした青がいい所を見せようとほいほい引き受けて皆が微妙な表情になるという、何とも締まりのない展開。
青は以前にホワイトにも粉を掛けており、女性関係に軽い路線のようですが、正直ゲストヒロインの容姿に、“異世界の女性”というハードルを無視するほどの説得力が存在しない為、青が何も考えていない感じだけが増しました。巧く付き合えたらどうするつもりだったのか、青。
ツエツエの魔法で巨大化したブルドーザーオルグと戦いになり、赤が病気のライオンを心配して仲間の進言を拒否する度に、ライオンが「俺はやるぜ!!」と訂正する展開は、ライオンの男は上がったのですが、ひたすら独り相撲している赤の男が下がりました(笑)
最初からなのですけど、ライオンの声は5人全員に聞こえる設定の方が良かったします(^^;
ガオキングダブルナックルが必殺技直前でエネルギー切れし、追い詰められるパワーアニマルとガオレンジャー。その時、番人娘が森の守り神に祈ると赤の手に新たなガオの宝珠が生じ、聖なる森の守護神・ガオゴリラが森の奥から走ってくる!
赤「ガオゴリラ、君が新しい仲間だったのか!」
……いやそもそも、仲間の勧誘に来たわけではないような(笑)
ゴリラ・クマ×2・牛・鷹による新百獣合体・ガオマッスルが誕生し、ブルドーザーオルグの体当たりをものともせずに弾き返すと、必殺マッスルラリアットで粉砕。つまり、
王 < 筋肉
ブルドーザーオルグを撃破すると共にガオレンジャーとパワーアニマル一行は元の世界へ戻り、一件落着…………ではなくて、キノコを入手し損ねてライオン・リストラ?! というかこれは、ゴリラの罠だ。
と思いきや、青が見覚えのある古びた祠を見つけ、実は聖なる森が異世界ではなく、過去だった事が判明。祠の中には、番人娘がブルー宛てに残した“輝きのキノコ”が収められており、時を超えた贈り物により、ガオレンジャーは無事にミッションコンプリートするのであった。
そもそも、前回神秘体験をしたイエローが、森へ飛ぶやいなや「ここは異世界なんだ!」と力強く断言し、皆が「あー、そういう事もあるかもね……」と何となく頷いてしまうというのが、ミスディレクションとして有りか無しかの判断は、各自にお任せしたいと思います(笑)
とにかくゴリラを出してガオマッスルにならなくてはいけない、というのが最優先ではあったのでしょうが、番人娘が祈るとゴリラが出てくるけど、ガオの宝珠は番人娘と一切絡んでいない赤の手元に生じ、勢いで帰ってきてしまったけどキノコは青が好感度上げておいたので手に入ったよラッキー、というか今回は時空を超えたシリアスなラブロマンスだったんですよ! と劇中の要素がてんでばらばらで連動せず、ゴリラの話とキノコの話が完全に分裂している、という空中分解エピソード。
ラブロマンスをやるならやるでしっかりやってくれれば良いのですが(そうすればキノコの入手にも“物語”の力により説得力が増す)、適当に始まってシリアスに終わり、それとゴリラを繋げる技巧は全く凝らされず、物語をまとめるという仕事が全くなされていない脚本も演出も総じて酷い。
新しいパワーアニマルを出して、ロボ戦の見せ場にも尺取って……と色々厳しかったのかもしれませんが、竹本監督も前回今回と、脚本を受けて一本のエピソードとしての筋道を整えるのを放棄したような演出で、第5〜第10話の6話で4体の追加アニマルを出すというのが、スタッフにとってかなり厳しかったのが窺えます。
何とか合間にキャラ話も挟みたかったのでしょうが、正直このペースなら、ウェディングドレスオルグ回とかやっている場合では無かったよなぁ……と(^^;
で、時間移動に関してはナレーションさんが「仲間になりたいと思ったゴリラが過去に呼んだのでしょうか」みたいな事を言ってまとめるのですが、ゴリラがガオレンジャーを召喚したと仮定した場合、時系列から数日前に召喚されたとおぼしいブルドーザーもゴリラが呼んだと考えるのが自然であり、ここから導き出される結論は、ゴリラが自分の存在をアピールする為に仕組んだ壮烈なマッチポンプ加えて、キノコなど採らずにさっさと帰還してあわよくばライオンからセンターを奪おうとした、卑劣な策略。
全て、ゴリラの罠だ。
1話冒頭の演出など見るに、『ガオレンジャー』は“御伽噺”というニュアンス(ナレーションさんは読み聞かせの“語り部”である)で進めたいのかなとは思うのですが、では御伽噺の雰囲気が作れているかといえばそういうわけでもなく、納得力としては、なかなか厳しいと言わざるを得ません。思えば『魔法戦隊マジレンジャー』(2005)も“御伽噺”をやろうとして巧く行かなかった節があるのですが、“戦隊っぽさ”と“メルヘン”の食い合わせの悪さを見る所です。