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『ジャッカー電撃隊』感想1

気が付いたら『ゴレンジャー』が終わって、『ジャッカー』が始まっていた! 『クウガ』も結局見始めてしまったし、手広げすぎて自滅するのではという気がしないでもないでもないのですが、最初の配信時に序盤途中で重くて見られない回があって視聴を断念してしまったので、雪辱を期してビィィィッグワン! あと、私の中の何かが、久しぶりに上原正三大先生分を求めているようです(危ない)。
第1話の感想は、以前に書いた感想をベースに加筆・再構成しました。
◆第1話「4カード!!切り札はJAKQ」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三
地球防衛軍の第7艦隊に奇襲による壊滅的な大打撃を与えた国籍不明の謎の戦闘機部隊――その正体は、犯罪結社クライム。世界各地で活動し、今、東京を犯罪都市にしようと目論むクライムは、鯨井大助率いる国際科学特捜隊日本支部の前に苦戦を強いられていた事から、強力な犯罪ロボットを投入。弾丸すら通用しない犯罪ロボットに対抗するべく、鯨井はかねてから計画していたサイボーグ部隊の設立に動きだす。
が、候補者の一人、オリンピック近代五種の金メダリスト・桜井五郎には、「僕は親から貰った肉体を大事にしたいんです」と、いきなり断られてしまう。
まあ、「僕の力でサイボーグになって悪の秘密結社と戦おう」と言われたら大抵の人は断ると思います。
変身ものの一つのテーゼとしての、“人ならざるものになる”所に最初のポイントを置いた今作では、明確に「サイボーグになる」=「人間やめる」としており、長官自らスカウトに赴くが拒否される、という所は後のシリーズ作品と比べても異彩を放っています。順序としては、今作の反動と反省を踏まえて、導入を重くしないようにしたのでしょうが。
続けて鯨井は、ボクシングの元ジュニアウェルター級世界チャンピオンにして、八百長事件に巻き込まれてアメリカの裏社会でくすぶるも、またも無実の罪で警察で追われる事になって日本に高飛びしてきたアウトロー・東竜をスカウト。相手の事情を確認した上で流れるように繰り出す、
「サイボーグにならんか?」
は実に痺れる名台詞。
「サイボーグ?」
「君は、電気エネルギーを内臓したダイヤジャックだ。そして、クライムを倒すのだ」
「クライム? 冗談じゃねぇぜ。クライムにたてつくほど馬鹿じゃねぇぜ俺は」
「……そうか。見込み違いをしていたようだ。残念だ」
またもスカウトに失敗する長官だが、車で去りかけた所に、男のプライドをくすぐられた東が後から無言で乗り込んできて、特に言葉を交わさないまま2人で低く笑い合うという演出が渋すぎます。
ここで犯罪ロボットの加入で調子に乗るクライムの暴虐が挿入され、
ナレーション「東京を、犯罪都市にしようと企むクライムは、次々と、殺人と、略奪を繰り返していた」
…………ん? なんだか、約15年後に目的達成されているような。
レスキューポリス》シリーズ(『特警ウインスペクター』など)の世界って、クライムが目的を達成した並行世界の未来なのでは(笑)
そんなクライムの犯罪ルートの一つを潰した女刑事・カレン水木は、クライムの襲撃を受けて重傷を負う。
「お願いがあります。私に……腕をください」
この襲撃により父親と手を失ったカレンは、自らサイボーグ手術を志願。
そして、海底都市の完成を夢見る研究者・大地文太は、事故による酸欠で、いきなり棺に入って登場すると、鯨井と旧知だった為に、勝手に改造。
「これで3人は揃った……あと1人なんだが」
3人のサイボーグ手術に成功した鯨井が振り返ると、そこに立っていたのは桜井五郎。カレンが襲撃された現場に居合わせ、燃え上がる車の中からカレンを助け出していた桜井は、クライムの非道に怒りを燃やし、体よりも次のオリンピックよりも大事な事があると、自らサイボーグ化を決意したのであった!
かくして揃う4人のサイボーグ。
「ようこそ、ジャッカー諸君」
秘密基地に揃った4人の前に、いきなり真っ黄色の軍服にグラサン姿で登場する鯨井長官。これまで、言動はともかく見た目は背広姿の穏当な中年男性として描かれていたので、このギャップから放出されるキチガイの気配が凄まじい。
トランプを華麗に操ってそれぞれのコードネームを告げながら

「ジャックのJ、エースのA、キングのK、クイーンのQ
ジャッカー(J・A・K・Q)
ジャッカー電撃隊

という演出は凄く洒落ていて格好いいのですが、
「そして私は、ジョーカー」
とか付け足す長官が、アクセルべた踏みすぎて誰も追いつけません。
それは、死んでいるのをいい事に、旧知の青年を勝手に契約書も無しにサイボーグにしてしまうわけです。
クライムの実行部隊が銀行を襲撃し、さっそく出撃するジャッカー。中性子スコープで地下の隠し通路を発見し、エレキカッターで壁を切り裂き、マグネチックカウンターにより車輌を追跡、とサイボーグの能力見せ。この際、サイボーグ化を強調する演出として、皮膚を開いて中の機構が見えたり、指先が伸びたり、などの描写はけっこうエグい。
金塊を積んだ逃走車輌を発見した4人は、飛行メカの中の強化カプセルで変身すると、犯罪ロボット・デビルキラーの前に登場。トランプが舞い散る演出が格好いいのですが、スペードのエースに燦然と刻まれた、Nintendoの文字が、無駄に笑えます。
必殺技のジャッカーコバックは、原子・電気・重力・磁力、の4大エネルギーを一瞬の内に相手の体内に注入して爆発させる恐るべき必殺武器、と、よくわからないが危険そうな事は伝わってきます。
ジャッカー電撃隊はデビルキラーを粉砕して初陣を飾り、クライムとの戦いが幕を開けるのであった……。
集団ヒーロー、の形を『ゴレンジャー』から引き継ぎつつも、この当時は厳密にシリーズ化しているわけではない事もあり、大胆なハード路線でどちらかといえば特撮ヒーロー版『Gメン’75』みたいな雰囲気を漂わせており、OPのトランプのシャッフルや、近距離で見つめ合う鯨井と桜井/東など、洒落っ気と男くささの入り交じった演出が特徴的。
概ね、Aパートは世界観説明とスカウト、Bパートはサイボーグの能力見せとバトルアクション、という構成なのですが、前半のスカウト部分で、長官と東の会話で裏社会ではそれなりにクライムの存在は知られている事、カレンの抱く復讐の情念、ヒーローとしての覚悟を決める桜井、というのがメンバー集めと並行して自然に盛り込まれており、大先生の脚本が鮮やか。
……大地は……うん、まあ。
重力だけサイボーグ見せ場が無かったりEDの紹介カットが白黒だったり1人だけ乗り物がバイクだったりそもそも目が覚めたらサイボーグになっていたり、露骨に扱いが悪いのは、凄く気になります(笑)
キングなのにヒエラルキーが一番低い、緑の明日はどっちだ!
ところで、ある種のリアリティ補強としてマシンの中で変身したり、犯罪組織と戦っていたり、そもそものコンセプトに特撮ヒーロー+刑事物という要素があったりと、そこはかとなく《レスキューポリス》シリーズの雛形なのかもしれない嗚呼世紀末TOKYOディストピア(多分言い過ぎ)。