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『ジャッカー電撃隊』感想25

◆第31話「赤い衝撃! スパイは小学4年生」◆ (監督:竹本弘一 脚本:上原正三
クライムの基地で、侵略ロボット・シャチラ汗が起動。
「隠れスパイになれ、シャチラ汗」
「はっ。隠れスパイとは?」
「隠れスパイとは、その土地の住人になりきり、戦略を画策する、スパイの事なり」
侵略ロボットに、凄い、無茶言い出しましたよ!
人生どん詰まり気味のアイアンクローの指令を受けたシャチは、港で釣りを楽しんでいた少年と玉三郎に、何故かはっぴ姿で釣り上げられる。
場面はいきなり切り替わり、
「隠れスパイ心得その1!」
本部でぐるりと回って両手を広げ、高らかに叫ぶアイアンクロー……ずるいけど、力技が頭おかしくて面白いと言わざるを得ません(笑)
「その土地に潜り込むためには、まず、同情を引くようにする事が肝要なりぃ!」
シャチは、戦闘ロボ試験に不合格になってしまいクライムに処分されそうになって逃げてきたと供述。更に少年が釣った魚を逃がして命に優しいアピール。
「隠れスパイ心得その2、子供を友にする事は、100万の味方を得たも同然なり。子供の心をうるには、あ、善なる行為を行うべしぃ!」
これまで、作戦発案能力に大いに疑問のあったアイアンクローですが、今回非常にいい所を突いています(笑)
玉三郎から連絡を受けて港へやってくるジャッカーだが、少年はシャチを自宅である町工場へ連れて行き、逃亡時に負ったという損傷をその父親が修理していた。
「すぐこっから出てってくれ」
「シャチラ汗は、いいロボットなんだよ!」
「なに言ってんだい。クライムなんかと関わり合いになりたかないよ」
「そうだ、出てってくれ」
息子の頼みで修理まではするけど、なぁなぁでほだされないという不審なならず者への対応で、妙な所で世界のバランスが保たれました(笑) まあ、クライムのロボを修理する時点で、前半の世界からは改めて崩壊しておりますが(^^;
ところがそこへ故障した車が持ち込まれ、手を怪我している父親に代わり、機械いじりの得意な所を見せたシャチは、家族の信頼を得て住み込みで就職する事に成功。
「隠れスパイ心得その3。隠れスパイは、まず、身辺の者の信用をうるべし」
シャチが順調に潜入任務を侵攻しているとは知らず、クライム抹殺すべし、とやたら軽快なBGMと共に現れたジャッカーは、今日も問答無用で跳び蹴りを浴びせてシャチを袋だたきにするが、少年がそこへ割って入る。いきり立つジャッカーだが、少年の両親もシャチの味方に回り、一旦引き下がる事に。
「このところ宇宙怪物で攻めてきたと思ったら、なるほど、今度は侵略ロボットってわけですか」
クライム側の自称がいつの間にかジャッカーとの共通認識になっているという、よくありがちな褒められない展開なのですが、今回は生ものではくロボット、というのがそんなに重要な点なのか、というのがそもそもよくわかりません(笑)
一見善良に見えても、クライムはクライムだから悪に違いない、とデビル野球回のトラウマを胸に、24時間の監視体制を取るジャッカーは、ごく自然に一般家庭を盗聴。
「ロボットらしい台詞がどこにもないな……こいつは相当なヤツだ、気をつけろ!」
シャチが最初からクライム側にスパイだと断言されている所が違いますが、無害を自称する怪ロボットが現れ、それに振り回されるジャッカーという基本の流れはまるっきりデビルバッター回。今作都合3回目ぐらいの、「この展開は前にもやったような……」で、例の如く例のように大先生が書きすぎなのでは疑惑なのですが、一方で大先生以外が脚本書いて面白かったのは曽田博久の第10話ぐらい、というのが如何ともしがたい(^^;
「サイボーグにならんか?」に始まり、『ジャッカー』世界はごく普通に何かが狂っているのですが、その、ごく普通に何かが狂っているという部分において、上原正三の色がかなり強い作品なのかもしれません。そう考えると、そんな空気と親和性が高かったのが後に80年代戦隊の要となる曽田博久であった、というのは何か納得するものがあります。戦隊で更にその後を引き継ぐ杉村升も、まさにこの、ごく普通に何かが狂っているラインですし(笑)
で、曽田戦隊と杉村戦隊の狭間であり、戦隊史におけるターニングポイントである『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)が、主人公を狂気に落とす所から物語を始めていたのは、戦隊史を見つめて戦隊を組み立て直す、という作品の意識において、必然であったのだと、改めて思う所(上述の3人と比べると、井上敏樹は正気と狂気の境界線がある人ですし)。
その後、そんな狂気が時代と合わなくなっていき、『激走戦隊カーレンジャー』(1996)において、北極星まで走り抜けて一度ビッグバン。
こう見ていくとメインライターに武上純希を抜擢し、中盤から小林靖子を投入した『電磁戦隊メガレンジャー』(1997)は、歴史的には“新世代の戦隊”という指向性を持っていたのかと思われ、恐らくそれが一つのゴールに到達したのが、『未来戦隊タイムレンジャー』(2000)だったのではないか、と……勢いで繋げてみましたが、話半分ぐらいで。
町工場に放置されていたラリー用の車に目を止めたシャチは、ラリーに出場する方向で少年と盛り上がり、その整備を始めるが…………その格好で、出場、出来るのか(笑)
ところが、深夜熱心に車の整備を行うシャチは、体内からこっそりと怪しげなマイクロフィルムを取り出すのであった……。
「隠れスパイ心得その4! 隠れスパイは、戦略を臨機応変に駆使する為に、生活環境を隅々まで、熟知すべし!」
その後もシャチは完全な偽装工作を続け、小学校で少年と一緒に授業を受けていた所へジャッカーが乗り込むと、ジャッカーが小学生から総スカンという図には、なんだか、メタな悲しみも感じます(笑) すっかり下町に馴染み、銭湯で気持ち良く歌い、帰りにおでん屋台でちょいと一杯に付き合うシャチを、暗がりに連れ込んで警告する桜井。
「人々はこんなに平和に、楽しそうに暮らしてる……それを破壊する事は、許さんぞ!」
最近は物価高で困るわねーと愚痴りながらも一家団欒、というシーンがあったのも効き、軽いギャグシーンであったものが、映像として“ジャッカーが何を守っているのか”を見せる効果を発揮した事で、ここで話に変な深みが。…………まあ、残念ながらこの要素は特に活かされずに終わってしまうのですが(^^;
そしてこれらのシーンから見える、この世界が凄く普通にネジが狂っているのは、「クライムは悪」として一般大衆にも認識されており、「変なロボットはだいたいクライム関係だから悪」という所までは共通だが、そこからクライムという要素が切り離されると、「変なロボット」そのものは、全く差別の対象では無い事。
ここに来て、ジャッカー達が、サイボーグなので生き辛い……といった描写が無いのは、世界そのものが大らかににネジが狂っているから、といった真相が明らかに(笑)
その頃、アイアンクローの元にシャインが現れ、アイアンクローの口から語られる「下町要塞計画」という言霊が、凄まじい破壊力。
シャインにせっつかれたアイアンクローは構成員を町工場に送り込んで計画を早めるように連絡し、構成員に「シャイン様が痺れを切らせているとの事です」扱いされるシャイン(笑) その光景を目にした少年は構成員に捕まってしまい、シャチは体内の装置を入れ替えてパワーアップ。
「シャチさん、悪いロボットだったの……?」
「隠れスパイ心得その5! 隠れスパイは、目的の為に手段を選ぶべからず。鬼となるべし……!」
翌日、町工場へ異変ありと連絡を受けて向かった桜井とカレンは、そこで待ち構えるシャチと構成員、そして囚われた一家の姿を目にする。
「下町要塞へようこそ」
「下町要塞?」
「難攻不落の要塞だ」
「街の中ではうかつに攻撃できないからな!」
確かに港・島・山中だと、桜井が容赦なくミサイルをぶっ放すからな……!
「だから下町を選んだのね」
「見よ! あれがカーミサイルだ!」
シャチがラリーカーを改造して密かに作り上げたのは、車の先端に小型水爆を搭載し、中に人質を乗せたまま目標(ジャッカー基地)にマッハで突っ込んでいく迎撃不能のカーミサイル!
一家を助けようと生身でバトルする桜井とカレンだが、人質を盾にされて捕まり、まとめてトランクの中に詰め込まれてしまうという悲惨な扱い(笑) いよいよカーミサイル発射のその時、突如現れる女神輿。神輿を先導する男に乗せられ、任務を忘れて喜んでそれに加わってしまうシャチと構成員、という、まあ、こんな事になるのではないかと覚悟はしていましたが、ドラマもサスペンスもビッグ・ボンバー!
前回と同じく、ひとしきり大騒ぎの後、正気の残っていた構成員が止めに入って任務を思い出すというパターンでしたが、そんなもの、パターン化されても嬉しくありません……(笑)
この大騒ぎの間に人質(桜井&カレン含む)は解放され、完全にデウス・エクス・マキナと化した番場は、さらし姿のちらりズムから早着替え。基本デビルバッター回をまるまる踏襲しながらも、最初に「スパイだ」と断言しておく事で、逆に侵略ロボの葛藤が描かれるのかもしれない……と期待させるという、プロット被りを逆手に取った裏技に、アイアンクローの一人芝居のインパクトという力技をミックスして割と面白かったのですが、クライマックスで何もかも木っ端微塵に粉砕されました。
敵も、味方も、物語さえも、あらゆる時空で全てを粉砕するビィッグ・ワン!!
クイーンがピンクレディーをBGMにセクシー光線を放ったりしつつ、シャチのかみつき攻撃に苦戦するジャッカーだったが、問答無用に例のやつが発動。前回のエース救済は、気の迷いだったようです。シャチはトウモロコシに喜んで噛みついて大爆死し、悪は滅びた。ラストは、ラリーに向かう一家を見送って大団円……てその車は、シャチが宇宙由来の科学で改造した車ではないのか(笑)
ナレーション「シャチラ汗の下町要塞は滅びた」
という言霊が、最後まで凄い(笑)
最後は番場が吹き飛ばしてしまうの前提なので、盛り込んだ要素に収拾つけるつもりが無いという点で酷い話なのですが、桜井の台詞は格好良かったし、途中までは面白かったので、最後まで真面目に書いてほしいエピソードでした。残念。