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『仮面ライダーオーズ』感想15

先にどうでもいい告白をしておきますと、今回のエピソードの感想に『ジャンパーソン』を絡めまくるべきなのか、それとも忘れた方がいいのか、というアプローチについて立場上(立場上?)だいぶ悩み、結果として前回第21話はちょっと中途半端な感想になってしまったりしたのですが、熟考の結果とりあえず一発ネタだけにしておきました。
◆第22話「チョコと信念と正義の力」◆ (監督:田崎竜太 脚本:毛利亘宏)
見所は、隆少年に笑顔で接するヤクザグリーン。たぶん、アンクとカザリよりは子供の扱いは上手だ!
タジャバとバースが攻撃をためらう内にバッタとウヴァは逃走し、「俺達の邪魔をしないでくれ」と姿を消した神林親子は、バッタ世直しを開始。
「バッタヤミー・フォー・ジャスティス」
「悪い奴は、許さない」「許さない」
特訓中の後藤は、純粋に正義を信じる隆少年の言葉に、なぜ理想の正義を為していけないのかを悩む。
今回の前後編で一つ面白かったのは、正義大好きっ子で信念肥大の傾向がある後藤さんと、無垢な少年の世界を見る目とを重ねて、対比に持ってきた事。
大人が割り切って仕方がないさと飲み込んでしまっている部分を、子供から真っ直ぐに問いかけさせる事で、正義を為したいけど正義を為せない男・後藤が、“割り切りたくなくて足掻く男”として掘り下げられました。後藤のプライドというのが、そういう後藤の潔癖さである、という形である程度前向きな要素に変化したのも良かったと思います。
「後藤ちゃん、正義とか言ってて青臭いけど、けっこう気に入ってんだよね」
伊達さんは、後藤にレンタルしたものとは別に新しいメダル銃をドクターから強奪し、中盤の会話シーンなど、すっかり後藤と師弟状態。
そんな後藤は、正義を為すヤミーを倒すべきなのかを映司に問うが、映司は倒さなくてはと即答する。
「いっぱい見てきた。誰かを守りたいって気持ちや、自分たちの正義を守りたいって気持ちがどんどんエスカレートする事がある。正義の為なら、人間はどこまでも残酷になれるんだ」
「正義の、為なら……」
ここで「正義」のカテゴリが広がり、映司の過去の内戦体験なども含める形にしたのは、物語の流れを巧く拾い、映司ならでは、という説得力が出ました。
ところで今回、映司がけっこう長い台詞で重い事を言うのですが……言うのですが……その、服装が…………服装が……。
元々、映司(&アンク)のファッションは既存のヒーローとは一線を画しており、それを着こなしているのは地味に凄いポイントの一つだったのですが、しかし、今回の、映司の服が、どうしても、だぶだぶに丈の余ったキングサイズのズボンにしか見えなくて……!
折角格好いい事を言っているシーンでも、これからレンコンを堀りに行きそうにしか見えなくて……!
ちょっと困りました。
バッタ様の世直しじゃーと盛り上がる神林親子は悪徳代議士を襲撃するが、逃げ惑う無力な中年男の姿を見ている内に、一方的に振るわれる暴力に動揺を覚える神林。
「あれが、神林さんの考える正義ですか?! あれがやりたかった事なんですか!」
先に映司の言葉で正義のカテゴリを広げておいた上で、日常の小さな不道徳を戒めていた行為が気がつけばテロに近づいていき、正義が手に負えなくなっていくという流れが綺麗に見せられました。
個人的な好みでいえば、ここでもっと狂気に振れて欲しい所なのですが(笑) 動揺する神林は、割と正気。まあ、ここで神林を狂気に持っていくと収拾つけるの大変なので、親子の物語に収束していったのは正解だと思います。
バッタを止めようとするオーズだが、乱入したウヴァが隆少年を人質に取り、コアメダルとの交換を要求。3枚のメダルを渡すと見せかけてクジャク缶で回収しようとするコズル映司だったが、アンクの邪魔で失敗し、緑2枚を奪われてしまう。
「おまえらの仲が悪いお陰で助かったよ」
珍しく面白い事を言うウヴァにアンクはぐりぐり踏まれ、変身を解いた映司もバッタにやられて大ピンチの所で、今回も格好良く駆けつける伊達さん。
……伊達さんの参戦後、映司のヒロイン力の上昇具合が、コイ! リュウ! ウナギ! という感じで、留まる所を知らなくて危険。
「ガキの命とコアメダルどっちが大事だと思ってんだ!?」
「命!」
「……コアメダルは俺にとっての命だ……わかってんのか?!」
アンクが苦しそうな表情で珍しく本音を吐露するのですが、
「…………あいつ、いったいどこ行った」
映司は神林を安全な場所へ案内しており、完全スルーでちょっと酷い(^^;
「誰が正しくて、誰が間違ってるって、とっても難しい事だと思います。自分が正しいと思うと、周りが見えなくなって。正義の為なら何をしてもいいって思ったり。きっと、戦争もそうやって起こっていくんです」
「戦争ですか……でも、悪い奴等を、放っておいていいわけじゃないですよ」
「目の前で起こっている事に一生懸命になるしかないんです。……小さな幸せを守るために」
「小さな、幸せ……?」
「自分が出来る事以上の事は、出来ませんしね」
前回ラストで、神林に「(バッタの)力を借りる」と言わせているのですが、自分の力以上の事をしようとすれば正義も歪んでいく、だから、“正しい事は、自分の力でしなくてはいけない”と、歪みの根源を突く形に着地。これは同時に、“正しい事をする為には、自分がどうあるべきか”という問いであり、正義とは何かといえばそれはまず、自分(の力)を律する所から始まるのではないか、といえるのかと思います。
「難しいですね」
「でもやるしかないんです。自分に関わった人みんなを幸せにするために。――そうすれば、酷い奴もきっとわかってくれます」
「……おい! 今一瞬、俺を見たろ?!」
アンクと再合流した映司はバッタを追うが、その頃ウヴァが、逃げた後藤と隆を追い詰め、少年にメダルを投入。「同じ欲望の力を使う」と言っているのですが、多分、横のパーマに入れると、凄いヤミーが生まれそうな……いや、今、絶賛青春の苦悩中だからもやもやしたスライムみたいなのしか出来ないか……?
「正義の味方になりたいんだろう? さあ、欲望を開放しろ」
「隆! どうしていい事をしたいと思った?! 答えろ!」
「僕は……僕はお父さんに帰ってきて欲しかったんだ!」
「……くっ、そんな小さな欲望ではヤミーが生まれない」
新システムが判明し、消滅するメダル投入口。
隆は家族で一緒に居たいという小さな幸せの為に正しい事をしようとし、神林も息子を助ける事で、本来自分が一番最初にやるべきだった正しい事――小さな幸せをその手に抱きしめる。
オーズはタバドルを発動し、バースはドリルとクレーンを組み合わせた有線ドリルパンチでウヴァを攻撃すると、アンクとの連携でコアメダルを強奪し、ウヴァは逃走。残ったバッタはタジャドルを発動したオーズが、今度こそスピナーに赤いメダルを3枚入れ、火!火!火!そいやーーー! で撃破。飛行型のタジャドルに対して、地上からの上昇キックで立ち向かうバッタは、謎の男らしさで無駄に格好良かったです(笑) これが、正義か。
かくして神林親子を巻き込んだ混戦には終止符が打たれ、醜くセルメダルを奪い合う、バースとアンクであった。
バッタが代議士を襲撃する所から始まって、長い戦闘状態の合間に複数の会話シーンが挟まれるというやや変則的な構成なのですが、バッタが急に逃げ腰になったり話の都合による移動はあるものの、あちこち動きの多い展開をそれなりに違和感なく整理して見せる辺りは、さすが田崎監督といった所。
後日、神林一家がクスクシエを訪れ、
「弁護士を目指そうと思います。みんなの小さな、幸せを守る為に」
と宣言して大団円。妄想ブロガー回(脚本:米村正二)もでしたが、サブライター執筆のエピソードだと、主人公の行動と発言が明確な形でゲストキャラに変化をもたらす、というオーソドックスな作劇でまとめられます。
『オーズ』は敢えてそこで、主人公の存在がもたらす変化で綺麗にまとめない、という作劇が目立つのですが、まあ完全にタブーになっているなら、プロデューサーオーダーでサブライター回でもそこはしっかり型を守るでしょうから、サブライターにはそこまで要求しないけど、小林さんは意識的にやっている、という感じなのか。
というわけでこの後、『特命戦隊ゴーバスターズ』『手裏剣戦隊ニンニンジャー』『仮面ライダーゴースト』など、数々の東映ヒーロー作品に参加していく事になる毛利亘宏の特撮デビュー作。ど直球で「正義」をテーマにした意欲的な内容で、その意欲がやや先行して頭でっかちに思える部分もありましたが、全体としてはかなり綺麗にまとまっていたと思います。
その中で特徴的なのは、「正義とは何か?」を突きつけられて揺らぐのが後藤さんという点で、ここで映司や伊達が「個人の信念」を持っているのに対し、後藤が「組織の人」であるという部分が強く浮き彫りになっています。
以前に本人も述懐していた通り、後藤にはどこか、鴻上ファウンデーションという組織に所属している事自体に満足していた部分があり、世界を救う正義の組織に所属しているから自分は世界を救う正義の人間だ、という思い込みがありました。それが、パンツ一丁の不審者や人形と話す不審者やミルク缶背負った不審者に電動ドリルで足下をガリガリと削られていった所から、「自分を信じる」所に行き着く――またそれは、自分の力で守れる幸せを増やす為に自分を鍛える事でもある――、という後藤の成長エピソードとして組まれていたのは良かったです。
小林靖子メインライター作品は、しばしば、サブライターにとって主人公が一番触りにくそう、という難点を持つことになるのですが、そこで丁度巧く、後藤の存在がはまった感じ。
次回――伊達さんの過去に女の影あり?