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『仮面ライダーオーズ』感想32

◆最終話「明日のメダルとパンツと掴む腕」◆ (監督:田崎竜太 脚本:小林靖子
最後まで入る、「三つの出来事」。2話セットの後編で必ず前編を振り返り、次の冒頭ではそこまでの話を軽くまとめて、というのを貫いたのは、キャラクターの入れ替わりなどが激しいのでわかりやすく、という意識が強かったのでしょうか。
サブタイトルと合わせて、作品の特徴付けとしては面白かったです。
完全体となったウヴァはWバースを変身解除まで追い詰めるというまさかの大活躍を見せるが、その時、鴻上さんちから重苦しい振動と共に近づいてきたのは――膨大なセルメダルをその身に宿した火野映司!
外観は映司そのままなのですが、足音が巨大生物のそれになっている、という演出が面白い。
鴻上会長は映司に、800年前のグリード誕生時に引き抜かれた“10枚目のメダル”――王の最初の変身、オリジナルのタトバコンボを託す。
「後藤さん……伊達さん……離れてて下さい。――変身」
結局最後まで、都合良く会長がメダルを持ち出す、というのも貫かれてしまいましたが(アンクがクスクシエに残したメダルホルダーに3枚隠しているものとばっかり)、変身したタトバは、恐竜アックスとメダル剣の二刀流を振るい、ウヴァ、あっという間に雑魚扱い。
……まあ、ウヴァだから、最終回1話前に見せ場があっただけでも別々それぞれだからそう奇跡的。
ウヴァは基本のライダーキックで吹き飛び、そろそろ面倒くさくなってきたドクターは、嫌がるウヴァにコアメダルを連続投入。
「手段は美しいとはいえませんが、もたらす終末は、きっと美しい」
それを止めようとするオーズだがドクターグリードに吹き飛ばされた所で、飛来するアンク。
「君の属性はコウモリですか。またオーズにつくとは」
ドクターの嫌味にアンクはニヤリと笑い、背景で逃げるウヴァ(笑)
カザリも最後けっこう悲惨な扱いでしたが、それを棒高跳びで軽々と飛び越えてくる辺り、ジェットコースター系悪の幹部キャラとしては高い資質を秘めていただけに、出番が飛び飛びだったのが惜しまれます。
「俺は……俺は嫌だぁ!」
「なんという見苦しさ」
ドクターはウヴァを追っていき、割と取り残され気味になる4人。
「アンク……どうして?」
映司に近づいたアンクはぐっと右手を突き出し……約束を告げる。
「――今日の分の、アイスよこせ」
その夜……進行するグリード化と迫る消滅の時、という爆弾を抱えながら、比奈を交えてひととき戻ってくる、穏やかな時間。映司とアンクは互いに隠し事を持ちながらも、アイスを手に、いつも通りに振る舞ってみせる。
(お兄ちゃん……私、どうすればいい? 映司くんの事も、アンクの事も、お兄ちゃんの事も、出来る事が見つからない。何も言えない……。私には、もう……。ただ……)
主題歌バラードver.が流れ始め、穏やかで美しいけどそれ故に儚い時間、考えた末に、比奈は、映司とアンクの間に入って、2人と2人の手を繋ぐ。
(ただ……)
「欲望ある限り、何かが変わり、生まれる。今日という日を明日にする事さえ、欲望だ。Happy Birthday!」
夜が明けて、開店準備中の知世子は、店内に真木そっくりの服とカツラを身につけた人形を発見。
最終的にドクターの人形は、終末に飲み込まれていく予定の世界で、姉の現し身(知世子)と自分の現し身(人形)を一緒に美しく終わらせる(添い遂げさせる)という、ドクターの“努力しなかった願い”を反映させる形に。
廃車置き場で苦しんでいたウヴァはとうとうメダルの器として暴走してしまい、巨大な立方体の姿になると浮上。周囲の物質をセルメダルに変換して崩壊させながら、それを吸収して生み出した大量のクズヤミーをばらまいていく。
「良き終末を――」
高層ビルも次々とメダルに変換されていく中、迫り来る自社ビルの崩壊を無視してケーキを作り続ける鴻上会長は、なかなかの貫禄。
オーズとアンクはクズヤミーに立ち向かい、短いですが、ここで満を持しての共闘展開。2人は駆けつけたWバースに地上を任せると、終末パズルを守るように天空に浮かぶドクターグリードへと飛翔する!
(映司くん、アンク……!)
比奈はそれを見つめて無言のエールを送り、フラッシュバックする前夜の光景で、手を繋いだ3人がオーズのベルトの三つのメダルになぞらえられる光景が素敵。
映司! 比奈! アンク! エ・ヒ・ア!!
そう、無限を越える000とは、そもそも最初から、命を繋ぐ力だった!
プトティラとアンクは空中戦でドクターグリードを撃墜し、地上で激突。一方、クズヤミーの大群に苦戦するWバースの元には、頼れる上司がやってくる。
「里中ちゃん! こんな状況で、よく来たな」
「ビジネスですから」
「さっすが俺の上司だ!」
突き抜けすぎて後藤さんが壊れ気味ですが、最後まで、里中さんは今作最強のヒーロー度を貫きました。
「この終末の素晴らしさを見て、まだ邪魔するんですか」
アンクはドクターに吹っ飛ばされてしまうが、オーズは接近戦で足下を氷結させ、互いの動きを封じると、恐竜アックスを振りかぶる。
「今俺の中には、あなたを絶対に倒せるだけの力がある」
それは、今日を明日に変える力――欲望のセルメダル。オーズは取り込んだ膨大なセルメダルを全て恐竜アックスに飲み込ませ、ファイナル廃課金せいやーーーーー!! を放つがしかし、それすら耐えてみせるドクターグリード。最後の手段として体内の紫のメダルを暴走させようとする映司だが、アンクはそれを止めると、最後のコアメダルを投げる。
「映司! よせ! これ使え!」
それは、アンクを構成していた、そして、アンク自身である、3枚の赤いコアメダル。メダルを受け取った映司はそこに入ったヒビと、泉刑事の体から離れ、消え去るアンクを目にする。
「わかってる……おまえが、やれって言うなら……おまえが、本当にやりたい事なんだよな。アンク……行くよ。――変身!」
アンクの願いを受け止め、変身する映司。
そして、響き渡るアンクの叫び。


『タカ! クジャク! コンドル!』

ここでアンク声のコンボボイスという燃える演出に、〔基本のタトバ→最強のプトティラ→物語として最も納得のいくタジャドル〕と、最終話のフォームチェンジは非常に綺麗に収まりました。
欲望を失った映司と、欲望だけのアンクが出会い、欲望だけの怪物はその存在を認められる事で命の充足を手に入れる。そして今、欲望だけの怪物になった映司の決して満たされない空虚の器に、アンクが手に入れた命が収まる――アンクはその為に、命の炎を燃やす。
『オーズ』が欠落を抱えたヒーロー未満の物語であるならば、今ここに、仮面ライダーオーズは命の重さを得たヒーローになったといえます。
そしてその敵は――全ての命が生まれる事のない、美しい終末を求める無。
タジャドルはドクターグリードに立ち向かい、オーズの攻撃に合わせて、ドクターを攻撃するスタンドアンク!
「プリンセスアンク……と、私はこいつを名付けて呼んでいる。プリンセスアンクの特殊能力……それは地味な嫌がらせをする事。君に地味な嫌がらせをさせてもらう。今夜もぐっすり眠れるようにね」 (※森川智之声で)
……ちょうど見たタイミングだったので、変なネタに脱線してすみません。
アンクの嫌がらせもとい攪乱を受けたドクターグリードは、プリンセスアンクとタジャドルが並んで放った爆熱グリードフィンガーの直撃を受け、終末パズルへと逃走。それを追ったタジャドルはスピナーに紫のコアメダルを詰め込むと、アンクと共に合体せいやー光輪を放ち、紫の力の直撃を受けたドクターグリードは、ブラックホール化。虚無の塊となって自らの体とパズル内部のコアメダルを飲み込んでいくドクターグリードの最期と共に、終末パズルは自壊していき、紫のコアメダル、オーズのベルトも次々と虚無の中に吸い込まれ、そして、アンクのコアメダルが、二つに割れる――。
ここでスピナーを使い切ってくれたのは、紫のメダルの始末にも綺麗に繋がって良かったです。終末パズルのなし崩しの崩壊含め、ラスボス戦そのものはちょっとぐちゃぐちゃの感はありましたが、映司とアンクの合体オーズという、しかるべき着地点が見られたので、個人的には満足。
ドクターと終末パズルは消滅し、世界の終末は防がれた。が、同時にオーズの翼を失い、地上めがけて落下していく映司。
だがアンクの腕が映司の顔をはたき、首根っこを掴み、気絶していた映司を叩き起こす。アンクが映司の首根っこを掴んで起こすというのは第1話との意図的な重ねでしょうが、この最終回ではまさにアンクが映司を、此の世の側に引き戻す役目を担っています。
「映司、目覚ませ! 死ぬぞ!」
「アンク……? ……あぁ、いいよ。もう無理だ。おまえこそ……」
「ふん、俺はいい。欲しかったもんは手に入った」
「それって命だろ。死んだら……」
「そうだ。お前達と居る間にただのメダルの塊が死ぬ所まで来た。こんな面白い、満足できる事があるか。おまえを選んだのは、俺にとって得だった。間違いなくな」
ここまで慎重に言葉にしていなかった事をここでまとめて台詞にしてしまってちょっと驚いたのですが、これはアンクから映司への「ありがとう」だと思うと、シンプルな五文字は口にしないのが、むしろアンクらしいのか。
そしてそう考えてみると、劇中でアンクに「ありがとう」を言われたのは、もしかして:後藤さんだけ。(※第19話) ギャグ扱いでしたし、その時点では最終盤でここまで重要なキーワードになるとは思っていなかったのかとは思いますが(^^;
「おい……どこ行くんだよ?!」
「おまえが掴む腕は、もう俺じゃないって事だ」
アンクの姿は遠ざかっていき、映司が伸ばした手の中に握りしめていたのは、半分になったタカのメダル――。
「アンクーーーーーーー!!」
地上では、比奈もまた、半分になったタカのメダルを拾う。
「アンク…………ありがとう」
そして、落下する映司に手を伸ばすフライトごばーす。
「もうなんでも独りで背負い込むのはやめろ! 俺達が居る、俺達の手を掴め!」
ここも最後にストレートに台詞にするのでが、この辺りはラストのわかりやすさ中心でしょうか。
地上では、比奈、伊達、知世子、里中が映司の為に手を広げ、映司は今、“こんぐらい”の先に手を伸ばす方法に気付く。
(俺が欲しかった力……どこまでも届く俺の腕。それって……)
ごバースの手をしっかりと掴む映司。
(こうすれば、手に入ったんだ)
OOO! OOO! OOO! OOO! Come On!
映司は無事に着地し、歓喜の輪の中で、手の中の欠けたメダルを見つめる。
(でも、おまえの手を掴んだのも、絶対間違いじゃなかった。絶対……)
「アンク……」
から主題歌が流れだし、後日談エンディング。
映司は旅へ、比奈は学校へ、お兄ちゃんはそれを送り、次作のキャラが通りすがり、伊達は医者に復帰し、後藤は警察復帰……? そして、どっこい生きていた会長と里中は今日もなんだか無敵であった。
最終的に、物凄く困ったおじさんだった鴻上会長ですが、善も悪も欲望のメダルの裏表、という今作の世界観においては、ラスボスになり損ねた上であまり反省しないでしれっと生き残っている、というのもらしい所でしょうか。たぶん、5年後ぐらいに、また悪気なく世界の危機を引き起こしそうな気がしてなりませんが。
後藤さんの警察復帰が割と謎なのですが…………上司とケーキに耐えきれなかったのか。
一方、比奈を学校へ送っているシーンしか描かれない泉兄は、1年間の謎の休職の末に本当に警察に復帰できたのか、疑問が膨らみます。もしかしたら鴻上ファウンデーションにスカウトされて、3代目バースになっているのかもしれない。
最後はクスクシエに皆で集い、映司からのビデオレターを観賞。
二つに割れたタカメダルを手にした映司は、明日のパンツを旗印に、今日も旅の空。
「いつか、もう一度……」
…………なんか、割れたメダルに、アンクの霊体ついてるーーー(笑)
と、やる事やったという事でか、最後は割とあっけらかんとした陽性のエンド。
映司のグリード化に関しては特に触れられないのですが、個人的には、グリードになりつつあった映司の中に、アンクの命が収まる事で解決した、という解釈です。改造人間テーゼとしてのヒーローと怪人の異形としての同一化を厳しく描いていた今作ですが、そこから“命の重さ”を得る事で、真のヒーローになる、というのが最終的な構造だと思うので。
いわゆる《平成ライダー》第2期の立ち上がりにおいて、前作『W』が「あらためて『仮面ライダー』を定義付ける」指向を持っていたのと比べると、今作は《平成ライダー》初期作品(『クウガ』〜『ブレイド』まで)のリビルドであると同時に、それを通して「ヒーロー作品のリビルド」、すなわち、「ヒーロー作品とは何か」(ヒーローとは何か、ではなく)をやろうとしていたのかな、と個人的には感じています。
普通のヒーロー物が、1から初めて10になるのを目指す物語だとしたら、今作は−10から初めて1になるまでの物語だったのかな、と。
であるからこそ今作はかなりアンチヒーロー的な構造であり、好みでいうともう一つ歯車の合ってこない部分を感じていたのですが、自分の命の重さを見失っていて、条件反射で人を助け、実は他者と向き合っていない、にも関わらず表向きは明るく底抜けのお人好しに見える火野映司という極めて屈折した主人公の在り方を徹底し、1年がかりでヒーローになる話、としてはよくもやり切ったと思います。
そして、そんなヒーローに対して、助けられる側が出来る事は、ちゃんと生きる事なんだ、という着地は綺麗。
「都合のいい神様」に寄りかからずに、ちゃんと生きて、ちゃんと手を繋げれば、その手は無限を越えてどこまでも届くのだから――。
ところで今作、映司とアンクを心配しながら見るのが一番面白いのかもしれない、なんて事にかなり最終盤になって気付いたのですが、ラスト数話の、いちいち色々と突き刺さるアンクは好きです(笑) もう少し早く、そこに気付いていれば……!
全体の構造がわかった上で、2周目見るとまた面白い作品なのかなーとも。
以上、『仮面ライダーオーズ』感想、長々とお付き合い、ありがとうございました。
そういえば:落下してきた映司を比奈ちゃんが「ふんにゃー!」と1人で受け止めなくて本当に良かった。