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『仮面ライダーオーズ』感想28

◆第43話「ハゲタカと対立とアンクリターンズ」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:小林靖子
泉刑事の首を締め上げるアンクだが、その肉体から剥がれ落ちていくセルメダル。再び手だけの姿に戻ったアンクは、泉刑事を気絶させてその肉体を奪い取る。
「比奈…………心配するな。大丈夫だ。おまえは、おまえの出来る事を……」
最後の気力を振り絞って比奈に言葉を残すどこまでも妹想いのお兄ちゃんでしたが……短い、短い復活でした(涙) 前回、“泉信吾”としての活躍を見せる事で、視聴者に改めて人間・泉信吾の存在を印象づけ、その上で即座にアンクを憑依させる事により、これまで圧倒的にアンクが優位であったアンク/泉信吾の関係(状態)が受け手にとってまた違って見えてくる、という展開が見事かつ凶悪。
第1話からの仕掛けであったが故に、どうしてもアンクとして認識する事になっていた泉刑事が、「物語の道具」から「物語の被害者」へと完全に変化し、アンクの身勝手さというのも明確に浮かび上がってこの次の展開へと繋がっていきます。
なお前回のコアメダル割りに関しては、紫のメダルの力であるとアンクが言及。こういった設定の説明が強引になりがちなのは、最終盤まで今作の短所になってしまいました(^^;
「はっ、コアが消えても、偽物が居ないだけでこうも違う。800年前と同じ、俺の力だ」
お兄ちゃんボディを手に入れたアンクは背中から両翼を広げ、ここで見慣れた人間アンクの背中に、虹色に煌めく2枚の翼、という人外の存在としての絵が非常に格好いい。
捨て犬系美少年声で喋る自分の分身という物凄く目を逸らしたい存在が片付き(なお逆から見ると、派手に髪を染めて俺様モードの青春のはしか真っ最中の自分であり、やはり消し去りたくて仕方なかった理由がしみじみわかります)、メダルも増えてエンジン全開のアンクは、ホルダーのコアメダル全てを奪い取ろうと映司達に迫る。
「アンク! こんな酷い事していいわけないだろ! 信吾さんから離れろよ。比奈ちゃんに返せ」
「くどい!! いいからメダル寄越せ!」
積み重ねてきた時間を踏みにじるアンクの行為に映司も一歩も引かず、その体から迸る紫色のオーラ。
「信吾さん返せよ……でなきゃ、コアを全部砕く!」
「映司ぃ! そんな事してみろ」
紅と紫の波動がぶつかり合ってアンクは引き下がって姿を消すも、遂に面と向かっての激しい決裂に役者さんの熱演も合わさり、迫力のあるシーンになりました。
自我を取り戻すも結果として3枚のコアメダルを失う事になったアンクは、様子を窺う“緑の瞳”の廃品回収の男に気付くと、セルメダルを投入して遂にヤミーを作成。
誕生したヤミーを画面手前に置き、翼を広げてその頭上をはばたくアンク、というカットは、人外の存在としてのアンクが極めて強調され、そこにイントロが被さってOPへ――という流れはいよいよ『オーズ』最終章の開幕として、びしっと決まって格好良い入り。
アンク姫の作り出したヤミーは、街でカップルの男を襲うと、ハゲタカヤミーに成長。今後の事を相談していた映司と後藤が駆けつけ、アンクにタカメダルを持っていかれたので頭部に悩んだ映司、とりあえずラトラバに変身。里中の支援を受けつつもハゲタカ突風に苦戦した二人は、ハゲタカに逃げられてしまうがヤミーを乗せて走り去るトラックを目撃する。
(アンク……ちょっとは近付けたと思ってた……。もしずっとこのままだったら、お兄ちゃんはもう……映司くんとアンクもきっと戦う事になって、そんなの絶対……)
一方、ひとりマンションに帰った比奈は、悩む心の裡に兄の言葉を思い出す――このまま彼を、都合のいい神様にしちゃいけない。
(私……また勝手な事ばかり思ってる。辛い事は、全部映司くんに任せる事になる)
今、自分に出来る事は何か、を懸命に考える比奈。
「ちゃんとしなくちゃ」
その頃、アンクはドクターと接触
「おまえ、映司が持ってる紫のメダル、狙ってんだろ?」
「ええ。より完全な力をつけなくてはなりませんから」
「なんの為に?」
「暴走したグリードが世界を喰らい尽くした後、そのグリードを排除するのは私の役目です」
「ほぅ……念が入ってるなぁ。で、最後におまえが残るのはいいのか?」
「存在そのものが無であれば、美しい終末は汚しません」
「協力してやってもいい」
「ほぉ……それは例えば」
「俺をメダルの器にしないかって事だよ」
ここまで、癖のあるグリード達にメダルの器になる事を求めつつも、手っ取り早く自らメダルの器になろうとしていなかったドクターの最終目的は、美しい終末の世界で無として永遠の停滞を過ごす事、と判明。……まあこれはちょっと、ドクターが自ら器にならない理由の為の理由、という感じはしますが(視聴者より先にアンクにツッコませているのも苦しい自覚がありそうというか)。
鴻上会長に現状を報告した後藤は、コアメダルは破壊してはいけないと命じられ、映司達の体の安全とメダルの保全のどちらを優先するかの板挟みに。最近色々と振り切れ加減だった後藤さんですが、世界が、そう簡単に、後藤さんに優しくなる筈が無かった!
今日も河原で魚を焼く映司は腕にも異変を感じ、映司の変貌が容赦なく刻み込まれていくのが、破滅へのカウントダウンとして巧く機能。そこへ、お弁当を手にやってくる比奈。
「映司くん、私……お兄ちゃんもアンクもなんて、都合のいい事思わない。勝手な事言わない。ちゃんと自分に出来る事をする」
「……比奈ちゃん」
「それって、今はきっと、何があっても、映司くんの側に居るって事。戦いは無理でも、ちょっとは役に立てると思う」
「…………うん。て言っていいかわかんないけど、今はそういう気分かな」
「じゃあ……うん」
「……うん」
比奈は自分に出来る事を見出し、そして、物語のスタート以来、初めて映司が、他者との繋がりにこだわる。
コミュニケーションを蔑ろにするわけではないし、むしろ社交的ではあるけれど、しかし、朝からの付き合いも1ヶ月の付き合いも半年の付き合いにも“大きな差がなかった”映司がここで、誰かとの繋がりに頼ろうとする、というのは、映司がそれだけ追い詰められている事を示すと同時に、大きな転換点という気がします。
また、勝手な事を願わない比奈の為に、映司が両取りをするという、「ヒーローの可能性」もここで浮上。
泉刑事からのパスを受けて、比奈ちゃんが、大きな役割を果たしました。
……しかし、映司が対人関係において一定以上に近づけさせないタイプとか、比奈ちゃんが重度のブラコンとか複合的な要因はあるのですが、映司と比奈ちゃんの関係って、ここまでやっても1ミリもいい雰囲気が生じなくて凄い(笑)
いやもしかしたら私だけかもしれませんが、比奈ちゃんから映司への視点には、凄くいい人だけど、彼氏としては絶対ありえないというオーラを感じてなりません。
平成ライダー>シリーズは特に恋愛要素を嫌がるわけではないですし、小林靖子自身は割と持ち込む方という印象を考えると、スタッフ間の強固な意思統一の元にそう演出されているとしか思えないのですが、ある意味ではそれも、お兄ちゃん刑事の存在感を出す為の手法なのか……?
ゲストエピソードを含めて、これだけモテない平成ライダー主人公って、剣崎以来ではないでしょうかもしかして。
……パンツか、パンツが悪いのか?!(多分そう)
そんな映司の事情を聞いたら涙を流して一緒に飲み明かしてくれるかもしれない廃品回収の男を親とするハゲタカヤミーが、再び出現して街を行く幸せそうなカップルの男を襲い、立ち向かうオーズ@シャゴタコとごバース。ハゲタカ突風に対して、タコ足粘着とクレーン掴みで耐えた両者は、ロケットゴリラパンチとセル課金バーストの合体技でヤミーを撃破。
だがそこにアンクが現れると、トラックの荷台にセルメダル(ハゲタカヤミーの残骸)を満載したまま逃走。
「映司……おまえの説教は聞き飽きた」
追いすがる映司に容赦ない火球攻撃を浴びせて撃退したアンクは、元ヤミーの親にしてトラックを運転する廃品回収の男――“緑の瞳”の男の、首筋に張り付いたメダルに話しかける。なんと男は、たった1枚のコアメダルだけが残ったウヴァが、執念の憑依洗脳で操っていたのだった!
…………あれ?
という事は、カップルの男を襲っていたのって、ウヴァの欲望???
と思ってドキドキしたのですが、回想シーンで憑依される前の男が「俺以外の男なんていらない」と発言しており、違ったようです(笑) ウヴァが憑依に際して声の届く相手を選んだという事は、何やらシンクロしやすい意識ではあったようですが、この問題は深く掘り返さない方がみんな幸せになれそうな気がするので、いつか映司くんがモテる日が来る事を心から祈ろうと思います。
「俺のお陰だ。きっちり恩返ししろよ、ウヴァ」
アンクの集めたセルメダルと、1枚のコアメダルにより、しぶとくウヴァ復活。
度重なるグリードの復活は、善とか悪とかではなく、根源的なエネルギーとしての欲望は決して消えないという事と、それすらも消してしまう“無”の恐怖が作品の構造の中で巧く示す形に。
そして揃ってドクター屋敷を訪れる、赤と緑。
「どうした? 古い仲間を歓迎して貰えないのか?」
二枚の翼を誇示するアンク、でつづく。