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『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第24話

◆第24話「よみがえる記憶」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)
バングレイをスカウトするジニス様だが、身内からは大ブーイング。
前回ゲームを邪魔されたアザルドの、「一緒に遊べなんて、冗談じゃねえぜ」というのは、繰り返しジュウオウジャーにを阻止されているものの、未だゲーム気分は微塵も変わらないデスガリアンのスタンスが明確に出ていて秀逸。
バングレイはクバルの記憶をちょっぴり読み取ると、面白そうな事には噛むのがモットー、とテストプレイヤーとして自ら出撃。
クバルの記憶の他、「本命」が他にある、と巨獣ハンターとして(?)地球に来た目的を匂わせ、今後に向けた伏線を二つ。……ところで、バングレイと打つ時に何故か「バンデラス」「バンテリン」と打ちそうになる事がありまして、もし感想中にこの単語が混ざっていたら、バングレイの事だと思って下さい(^^;
その頃、大和はマリオと共に母親の墓参りに行っていたが、デスガリアン反応(というかバングレイ反応)を感知したジューマンに連絡を受け現場に向かう途中、そのバングレイと単独で遭遇。
「獲物はっけ〜ん」
「……バングレイ」
と言う時の表情と声のトーンが非常に格好良くて、大和くんはホント、当たり引いたなぁ。
1人立ち向かうイーグルだったがバングレイに叩きのめされ、気絶。
「いい夢見なよ」
バングレイは大和の記憶を読み取って姿を消し、目を覚ました大和が目にしたのは、自分を助け起こす、死んだはずの母・和歌子の姿だった。
一方ジューマン達は、死んだ筈の身近な人物が目の前に現れるという事態に大パニックになっている公園に到着。
「この時期には霊が戻ってくるって本で読んだ事はあるが」
ニンゲン界(日本)の風習をちょっぴり誤解するタスク、というのは小ネタながらいい味。
女性に迫っていた幽霊?にレオが背負い投げを決めると消滅し、前回の怪人の消え方を思い出したタスクは、バングレイには死者を蘇らせる能力があるのではないか、と推測。
そんな状況を知らない大和は、母親?に傷の手当てを受けながら、幼い日の記憶を甦らせていた。
「死んじゃ嫌だよ、お母さん。僕を1人にしないで……」
「大丈夫。お話したでしょ。この星の生き物は、みんな……どこかで繋がってる。私たち家族も、ずーっと、繋がってる……。だから大和は、独りじゃない」
「お母さん……」
作品全体のキーでもある大和くんの信念が、鳥男との関係性だけだと少々弱いかなとは思っていたのですが、ここで幼少期に失った母親の言葉として、補強。
(いや、まさか、幽霊なんて……でも、だとしたら、この人は)
間違いなく過去の記憶を持つ幻の母に、戸惑いを募らせる大和。
「誰なんだよ……」
「大和?」
「幽霊なんているわけないんだ。俺は二度と、母さんには会えないんだよ!」
神妙な墓参りから戦いへの切り替え、さわおに連絡をという柔らかい表情からバングレイへの厳しい視線、失った筈の母への戸惑いと困惑による苛立ち、と、今回、頭からずっと、大和くんに色々と芝居させているのが物語を引き締めており、脚本×演出×役者の間に、しっかりした信頼関係があるのが窺えます。
「……言ったでしょ。ずっーっと、繋がってるって」
「なんなんだよ……なんで……暖かいんだよ……」
ランニング中のさわお、ベンチで手を握り合う、大和くんと妙齢の女性の姿を目撃。……思わず木陰に隠れる(笑)
「……大人だ」
まあ、さわおでなくても、そう見えて仕方がない。なお、もう少しよく確認すると、大和母の左手の薬指に指輪が見えて更に大変な事態になったのですが、さわおに望遠視力のジューマンパワーが無くて本当に良かった。
一旦家に戻ったジューマン達は、墓参りから帰ってきたマリオが落とした写真を拾い、病死した大和の母親(マリオの姉)の事を知る。そこに現れたさわおは、公園で大和が写真の女性といちゃいちゃしていた件を報告。
「しかしまさか……大和がお姉ちゃんそっくりの人と付き合ってるとはなぁ」
今作ここまで、色々な勘違いと、それを誤魔化せていない誤魔化しとが繰り返されてきましたが、物語中最大の地雷ではないか、これ(笑)
早く訂正してあげないと、色々とこう、あれだ……!
さわおと叔父さんの誤解はともかく、さわおが目撃したのは、バングレイが甦らせた大和母ではないか、と推測するジューマン達。
「操! 大和はどこに居たの?! 連れてって」
叩きつけるように迫るセラ(新しい髪型が可愛い)は既にさわおの操作方法を忘れ気味……だが、さわおは満更でもなさそうだった。何か、さわおの中の目覚めさせてはいけないスイッチを入れてしまったような気がして、今後が不安です(真剣)。
一方、戸惑いながらも母親と公園を歩き、最近出来た“変わった友達”の事などを話す大和は徐々に笑顔もこぼれだすが、そこにバングレイが姿を見せる。
「バリ楽しそうじゃん? 仲間に入れてくれよ」
バングレイは変身を阻んで大和を蹴散らすと、駆けつけたジューマン達も一撃で吹き飛ばし、大和母をあっさりとずんばらりん。
「母さん!!」
大きな衝撃を受けた大和母は、やはり金色の光となって消滅していく……。
「大和……もうちょっと……お話したかったな……」
「母さん……」
「ホント……大きくなったね。……ありがとう大和。また会えて……嬉しかった」
母親の二度目の死を目撃する事になり、崩れ落ちる大和の姿に、高笑いするバングレイ。
「ぬふふふ……ぬはははははははは! 見ろ! 何がずっと繋がってるだ! わかったろ? んなもんは、ただの夢幻だ。繋がりなんてな、こーんなあっさり切れちまうんだよぉ。ぬははははは!!」
根っからデスガリアンではないバングレイですが、この悪辣さと性格のねじくれ具合は実にデスガリアンと遜色なく劇中における“悪”のトーンが統一されているのも、良いポイント。
「笑ってんじゃないわよ!!」
「あ?」
そしてここで、最近何かと埋没を心配されがちだったセラが、真っ先に啖呵を切る、というのがとても良かったです。迫力もしっかりあって、思わずバングレイが振り向く、という流れに説得力も出て女っぷりが上がりました。
さ「どうしてこんな酷い事が出来るんだ!」
た「人の気持ちを……玩具みたいに……」
あ「許せない……許さない!」
れ「てめぇの腐った根性こそ、ぎったぎたにしてやるよ!」
「「「「「本能覚醒!!」」」」」
「こんなふざけた遊びの為にに、死者を生き返らせるなんて!」
「生き返らせた? 違うよ。俺はな、記憶を読み取れるんだ。そっから面白そうなもんをチョイスして、実体化すんだよぉ! こんな風にな!」
バングレイは自身の能力を種明かしし、緑の記憶から、髭スナイパーを実体化。…………タスクの記憶で一番面白そうなの、それだったのか(笑)
「記憶を読み取る……。あいつ、まさか……」
クバルは自分の記憶が読まれた可能性に気付き、一方、久々にお酒が進む。ジニス様。
「ふふははははははは、これは興味深い能力だ。バングレイ、リーダーとして迎えるのも、面白い」
前回の水兵怪人への台詞から“記憶を読み取れる”事は明白でしたが、そこから、タスクが勘違いした「死者を蘇らせる」だとトンデモすぎるので、劇中で早めにハッキリ説明してくれたのは良かった所。
「おまえらみんなただの記憶に振り回されまくりじゃねぇか! ひゃはははははは! バリくだらねぇ! ひやはははは、あっははははは!」
ヒゲメランに苦戦する5人の姿を嘲弄するバングレイ、だが……
「ただの、記憶……?」
その言葉に、座り込んでいた大和の、スイッチ入る。
「違う……ただの記憶なんかじゃない」
「あぁ?」
「ずっと覚えてた。大事な思い出だ! だからまた会えたんだ、母さんと。……おまえが証明したんだよ。覚えてる限り、ずっと繋がってるって! 俺の持ってる繋がりは、おまえには壊せない!!
――本能覚醒!!」

悪に突きつけられたアンチテーゼを更にひっくり返す、というのはヒーローの王道ですが、決め台詞へ向けた綺麗な集約を得意とする香村さんの持ち味が冴え、非常に格好良く決まりました。
特に「おまえが証明したんだ」ではなく、「おまえが証明したんだよ」というのが、大和くんの凄く怒っている感じが出ていて秀逸。
ここまで、大和くんに幅のある芝居をさせてきた流れも、最後のこの激情に鮮やかに繋がり、とてもいいシーンでした。
また今作はこれまで、ジューマンパワーの委譲という形で、「命を食べる」というのは、「他者の命を受け取る事」であり、その繋がりの中であらゆる命は生きている(この対存在が、遊びで命を奪うデスガリアン)事を示していたのですが、そこにもう一つ、「他者を覚えている事」も命の繋がりであり、想いが受け継がれていく限り、死者も消えてなくなりはしない――命は、他の誰かの中に別の形で生き続けている――とする事で、心身の両面で、繋がる先の命の生き方、という根幹のテーマを補強。
ちょうど折り返し地点できっちり、主人公と物語のテーマの繋がりを強固にしつつ厚みを増やし、実にお見事。
キューブを拾ってイーグルにダッシュ変身した大和は、反撃開始。最近ゴリラの影に存在が薄れがちだったイーグルですが、怒りの鞭剣ラッシュから超火炎イーグルスピン更に真っ向両断、の怒濤の連続攻撃。……ここまで盛り上げてくれれば、多少の戦力差など跳ね返せて当然です(笑)
「行け操!」
ヒゲメランの方はサワオ@クロコダイルが、棒術ワニワニパニックで粉砕。とにかく勢いで技を繰り出すサワオですが、フィニッシュ後の謎のポーズが格好いい(笑) ……ワニが口を開いたイメージ?
前回今回と、サワオが怪人を抹殺する為のマジックアイテム化しているのはちょっと気になりますが、技を変えている所といい、これは釣り竿強化キャンペーンか。
「バリおもしれぇじゃん。……なあ赤いの、おまえ名前なんだっけ?」
「ジュウオウイーグル――風切大和だ!!」
「風切大和……OK〜。今日はこの辺でお預けだ」
バングレイはシャークの記憶から巨大怪人を2体実体化すると、自前の宇宙船で退却。乗ってきた船の存在が忘れられてなくて良かったですが(前回ナリアとワープしたし)、それにしても、高速移動から記憶読みは強力すぎるなぁ……(^^;
「大和くん、大丈夫?」
今回は地味めながら、しっかり気遣いポイントを稼ぐ白。
復活怪人相手という事もありロボ戦はざっくりめで、ワイルドキングとトウサイジュウオーで適度に痛めつけた後、サイキングが左腕の銃器で粉砕(キリンの存在価値……)。
かくして戦い終わり、大和の過去を知ったジューマン達は、大和が家族の話題を避けていた事に納得する、が……
「お母さんの事だけなのかな……?」
「え?」
「……ううん、なんでもない」
アムは慎重に言葉を濁し、その背後で何かを考える表情になるタスク。ジューマンメンバーの中では最も父親との繋がりを深く描かれるタスクだけに、アムと同じ発想に至ったと思いたい所ですが、なにぶんタスクだけに、(そういえば、あの歳で死んだ姉を「お姉ちゃん」と呼んでいるマリオさんは、割とシスコンじゃないのか? 今度、それとなく大和に聞いてみよう)と、全く見当違いの事を考えている可能性も否定できまないので頑張れタスク。
夕暮れの陽を浴びながら、一人、母の墓に手を合わせる大和。
「大丈夫。ずっと繋がってるから……」
その視線が、墓前に供えられた新たな花束に向けられるも大和は無言のまま立ち去り、不在の父親の存在が匂わされた所で、つづく。
この辺り、直接的には語らず、遠回しな表現を二つ重ねるだけに留める、というのは今作の演出ラインの渋い所です。想像できる範囲の中で、一つの伏せたカードを開くと、それが次の伏せたカードに繋がるという展開も、厭らしくなく鮮やか。
新たな強敵の登場から大和の過去が……という、否が応でも期待の高まりすぎる予告から逆に若干の不安を覚えたりもしていたのですが、蓋を開けてみれば見事に期待を上回る出来でした。
今作ここまで、山場の大和くんに外れ無しなのが、実に素晴らしい。
次回は、何やら知られてはいけない事を知られてしまった風情のクバルがバングレイにいきなりの直接攻撃。バングレイの特殊能力を、予算節約・大和の掘り下げだけに留まらず、デスガリアン側の波乱要素にまでしてきたのは実に巧い。
今回の次回でバングレイ退場とは思えないので、どちらかというとクバルの一時退場→復活コースの方がオッズが高そうですが、真面目にチームリーダーをこなしていたクバルに、新たなアクセントが加わってくる事に、期待したいです。
どう転ぶにせよ、アザルドと色が被りすぎで気になる・特殊能力の使い勝手が天井知らず過ぎる・リーダーとしてのチームの差別化が難しそう、とバングレイの命は夏休み中な気はするのですが、アザルドかバングレイの色が赤くなったりする可能性はあるのか(笑)
いわゆる夏休み展開の季節にしては割と話が動き加減ですが、バングレイで幾つか種を蒔いておいて、休み明けから満を持して鳥男再びみたいな流れになるのかなぁ……ジュウオウジャーサイドは追加戦士キャンペーンに戻ってサワオ×レオ回になるようですが、2人の“相性の悪さ”を誤魔化さずに主題に据えてくれそうなので、どう転がすか楽しみです。
そしてセラは、ローテを飛ばされずに無事にサワオ×セラ回に辿り着けるのか。今回も最後に回されてちょっぴり不安ですが、巨獣ハンターの妨害にくじけず、ニンゲン界の海を目にする機会は、果たして?!(厳密には、海岸線で戦闘はしていますが)