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『動物戦隊ジュウオウジャー』感想・第35話

◆第35話「ジュウオウジャー最後の日」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
念入りに鎖で繋いだ大和をいたぶり、変態ロードをまっしぐらに突き進むバングレイは、大和とキューブホエールを交換する時間と場所をセラ達に連絡。その上で大和には、揃った仲間達を上空からのビーム攻撃で綺麗さっぱり消し炭にしてやる、と邪悪に宣告する。
「言ったろう? 俺はおまえの信じる繋がりが切れて、絶望する姿が見たいんだって。おまえの仲間は助けに来るだろうなぁ。なんたって、繋がってる大事な仲間だもんなぁ。ははははは」
「そんな……みんな、俺のせいで……」
一方5人は、どうせバングレイが素直に人質交換をするとは思えないのだから、クジラは置いたまま力尽くで大和を取り出そうと覚悟を決めるが、話を聞いていたクジラが脱走してしまい、捕虫網で確保。
「何してんのあんた!」
「こんな時に勝手な事をするな」
「俺は…………キューブホエールの気持ちがわかる。…………気がする」
ホエールを責めるジューマンズに対し、さわおがホエールに共感を抱く、というのは実に巧く、いきなり正面切っては別の意見を言えないので、体育座りで背中を向けながら呟く、というのも秀逸。
「キューブホエールにとって大和は、現代で出来た、初めての仲間だ。もし置いていったとしても、きっと勝手に、後から来る。だったら最初から! みんなで、力を合わせる事は出来ないか?」
さわおの変な所に力の入った台詞回しも、他人に自分の意思を伝えるのが苦手なキャラクターを表現する為にかなり計算されているのだと見えてきて、つくづく感心。
「大和くんは絶対、連れてくるなって、思ってるよね……」
「だろうな」
「俺でも言うぜ」
「でも! 大和、言ってた……」
前回の大和の、今ホエールを守れるなら後で嫌われても構わない、という言葉を思い出すセラ。
「もし、大和が怒っても、大和を助けられるなら……」
コミュニケーション方法に関する疑問という方向には進みませんでしたが、前回印象的な表情で描いていたセラも拾って、手抜かりのない作り。
またこの状況(囚われの大和をジューマンズ&さわおが救出しようとする)自体が、1クール目の山だったギフト回を裏返しており、ジューマン達の「うちに帰る時間」を守る為に、ある意味で仲間を裏切って一人で戦いに赴いた大和を、今度は皆が裏切って助けに行く、という構図になっているとも見えます。
決意を新たにした5人はホエールと共に指定された場所へと向かい、そこでは大和が、鎖で縛られた上に猿ぐつわまでかまされて大変念入りに拘束されていた。
……なんか不意に、こういう展開で敵にいきなり空襲ぶちかました戦隊があった事を思い出してしまいました(笑)
「知ってるか? 約束ってのは、破る為にあるんだぜ」
ホエールを手に入れたバングレイは大和を返す事を拒否し、ここで、声の出せない大和が視線で上空に注意を向けようとしているのが細かい。
台詞から一瞬、上空の宇宙船で待機していたクバルが約束を破ってバングレイを砲撃、という展開も頭をよぎったのですが、クバルは真面目にジュウオウジャーを標的とし、ビーム攻撃で消し飛ぶ5人。
「どうだ、風切大和。てめぇのせいで仲間を皆殺しにされた気分は。その顔、もっとよーく見せろよ」
「あぁぁ! あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ははははははははは、いいじゃん、バリバリ最高じゃん! てめぇの繋がりが招いた悲劇に、絶望した顔だ! はははははははは! 心配ねぇ。すぐ後を追わせてやるぜ」
だがその時、背後の崖をキューブモグラで突き破って、不意打ちを仕掛けた仲間達が大和とホエールの奪還に成功。クジラはすかさず巨大化すると宇宙船とバトルに入り、死んだ魚のような目になっていた大和が、無事な皆の姿を見てすぐに喜ぶのではなく、しばらく呆けた表情を見せるというのがまた秀逸。
「みんな……」
「うがぁぁぁ! いったいどうなってやがる?!」
「おまえ! 大和にしつこく、嫌がらせしていただろう!」
全くその通りなんですが、妙に面白い台詞に(笑)
「大和くんの目の前で、私たちも皆殺しにしたら……大和くんすっっっごい苦しむぞ、て考えそうだなって」
「来てみたらクバル居ないし。……だからずっと、警戒してたの!」
高空からの砲撃を受けた5人は、咄嗟にキューブモグラを使って地中に回避し、背後に回り込んでいたのである。
「良かった……。…………俺、みんなに死なれたら俺……良かった……」
泣きの芝居もばっちり入れ、感極まって立ち上がった大和はレオの胸に飛び込み、まあ位置的に真ん中の人に飛びついた形ではありますが、勢いでも女子には抱きつけないし、タスクorさわおに抱きつくのはどこか躊躇するものがあるしで、こんな時でも真人間の大和くんらしいチョイス(笑)
「大和こそ、無事で良かった」
「大丈夫。私たちは簡単に死なないよ」
「大和が繋げた仲間だ」
「あたし達が力合わせたら最強」
「ああ。気合い入れ直せ大和! バングレイを倒すぞ。今度は俺等……全員でなぁ!」
「ああ」
揃った6人はバングレイに向き直り、一転、据わった目で一歩踏み出す大和。
「へ! また繋がりか。弱い奴ほど群れたがる」
「うるさい! 動物が群れを作るのはな、大事な仲間とみんなで、生き抜く為だ!! ……俺も戦い抜く。この仲間達と一緒に!」
仲間の意味を示す定番のテーゼを、作品の個性としっかり繋げて綺麗な決め台詞に持ち込み、今回も山場の風切大和に外れなし。
勿論、撮影現場では通しで撮っているわけでもなければ順番に演じているとも限りませんが、大和くんはこの数分間の中で、絶望→呆然→感涙→歓喜→激怒、と目まぐるしい感情の動きを、必ずしも全てフルオープンではない演技で見せており、実に良い芝居。
戦隊やライダーの場合、脚本や演出で役者を育てていく部分が強いわけですが、中尾暢樹(大和)なら演じきれる、という三十数話の中で重ねてきたスタッフからの信頼感が見えて、お盆回(第24話)に引き続き、見事に物語を引き上げてくれました。
また、やはり大和くんは本気で怒ると、「だ」とか「は」とかいう言い回しになるのが、良いアクセントになっています。


「「「「「「本能覚醒!!」」」」」」
「動物戦隊」
「「「「「「ジュウオウジャー!!!」」」」」」


「そんなに言うなら……群れごとぶっ殺してやるよ!」
「俺の仲間を、舐めるなよ」
揃い踏みの所でイントロから主題歌が始まり、バングレイがメーバを繰り出して戦闘に。ジュウオウ番長とシャドウゴリラの柔剛対決は絵的に面白かったので、「こっちは頼む!」とあっさり譲ってしまってちょっと残念(笑)
シャドウゴリラは、サワオスローによる打ち上げからジューマンズの一斉射撃で撃破し、宇宙船はクジラミサイルで吹き飛んで、クバルは脱出。
「バングレイ! 後はお前だ!」
「やれるもんならやってみな!」
ゴリラをあっさり5人に任せてしまい、一騎打ちで番長無双になるのは最近の『ジュウオウジャー』の流れではあるけど、ここでそれは嫌かなぁと不安がよぎったのですが、クジラを倒したメンバーが参戦し、しっかりと、「全員で倒す」構図に。
次々と切りかかるジューマンズ

バングレイの範囲攻撃を受けるがこらえる

バックの主題歌「百獣の王者!」

煙の中から飛び出して「野生解放!」
というのは、素晴らしく格好良かったです。
エレファントステップから、ライオン・タイガー・シャークが次々と必殺攻撃を浴びせ、足の止まったバングレイをサワオスローした所に、番長キックが直撃。ここだけちょっと仮面ライダーになってしまいましたが、ホエール丸太を投げつけるのはどうかという判断だったのか(笑)
回が進むごとにジューマンズの戦力面での不遇な扱いが気になっていた今作ですが、終盤へ向けての一山となる所で、戦隊らしい連携バトルを綺麗に決めてきました。
盛大に吹き飛んだバングレイは近づいてきたクバルに手助けを要求するが、クバルはバングレイの右手を切り落とす!
「てめぇ?!」
「おや? まさか、いつまでも私が手を貸すと? あり得ないでしょう。奴等の言葉を借りるなら……私とあなたに、仲間の繋がりなんて、無いのですから」
バングレイとクバルがお互いを利用し合う関係なのは明白として、このままバングレイに退場されるとクバルがただ働きになってしまう点をどうするのかと思っていたら、クバルはバングレイの右手を確保。本体抜きでリーディング能力が発動できるのかはわかりませんが、クバルのテクノロジーなら何とでもなりそうで、面白い布石に。
基本、一つの伏線を明かすとそれが次の伏線に繋がる、というのを丁寧にやっている今作らしく、キャラクターの退場もしっかりと次の展開に繋げてきて、ポイ捨て感が無いのが良い所。
バングレイは失った右手の先に錨を接続してジュウオウジャーに襲いかかるが、「みんなで行くぞ」と、ここで満を持して番長キャノンを全員で使用。後半の必殺武器を個人で使用してしまう事には不満があったのですが、物語の中で全員で使用する流れに意味を持たせ、番長周りのちょっとした不満点を全てジュウオウジャーの更なる団結に繋げてくるという作劇に、脱帽する他ありません(^^;
まあ次回、しれっと一人で撃つ可能性もありますが(笑)
演出としても、初使用時が月の表面を削るという派手なものだったのですが、今回は全員のジューマンパワーを結集する事で太陽系規模のエフェクトが入り、映像でわかりやすくパワーアップが表現されているのも良い所。バングレイが海の仮想空間に引きずり込まれるのは謎でしたが、地球パワーの象徴が「水の惑星」という事でしょうか?
最大出力の番長キャノンを受けて倒れるバングレイだが、クバルが餞別という名の厭味で残していった芋ようかん……じゃなかったコンティニューメダルを喰らう事で自ら巨大化。
「まだだ……伝説の獲物、狩らずに死ねるかぁ!!」
それに対して、またも謎のメール受信から史上最大規模の火の輪が浮かび上がり、ホエールを含めた全キューブアニマルが一斉にくぐり抜ける事で、今こそ超動物合体!
「「「「「「完成! ワイルドトウサイドデカキング」」」」」」
人を騙すとか誤魔化すとかが苦手なメンバーが揃っているジュウオウジャーですが、あなた方、ロボットの名前ぐらいはもう少しひねってもいいんですよ?!
14体合体にして名前総数14文字のワイルドトウサイドデカキングは、右足が1234縦積み、左足が5678縦積みという、凄くわかりやすいけど、史上空前の脚部(笑) 一方で、9が割れて10の中に収まるのは面白かっただけに、頭部が亜空間から発生してしまったのはちょっと残念。
まあ元々、ジュウオウキングの芯からして突然飛んで来る仕様ではあるのですが、今作この、謎の電波でロボット合体、どこからともなくパーツが飛来、という点に劇中で理屈付けできれば更に完成度が上がるのですが、さてそこまで詰め切れるか。
「俺達は負けない!」
「確かにあんたは一人でも強い!」
「でも今より強くはなれない!」
「このワイルドトウサイドデカキングは、地球のパワーの結晶と!」
「6人の王者の集まりだ!」
「一人じゃ出来なかった事が、みんなとなら出来る!」
サワオの言葉の凄まじい重さが、定番のヒーロー台詞に今作ならではの説得力を上乗せしており、今作における追加戦士としてのサワオの填め込み方は、本当にレベルが高い。
ワイ(中略)キングのオーラ攻撃・ジュウオウドデカショットに耐えるバングレイだが、ジュウオウジャーは更に追い打ち。
「これで最後だバングレイ! 俺達の繋がりは――」
「「「「「「おまえなんかに壊せない!!」」」」」」
ワイルド(以下略)の足下から柱がニョキニョキと伸び、竹馬状態で放たれる百獣乱舞・ジュウオウドデカダイナマイトストリーム(19文字)が炸裂し、遂にバングレイを粉砕。
「俺の獲物が! 俺の夢がぁぁぁ!!」
デスガリアンとは別勢力ながら、悪役としての性質はデスガリアンに重ねられていたバングレイですが、その最期の言葉も、自分の身勝手なロマンの為に他者を踏みにじってきた悪、として貫かれて決着。
登場当初は、アザルドとの色被りと雑な性格から数話で退場するのかと思っていたのですが、デスガリアンをかき乱し、SPコラボ編の仇役となり、3号ロボの引き金に留まらず全合体ロボの踏み台にまでなる、という想像を超える活躍ぶり。巨獣ハンターとしてのクジラへの執着と、アンチ大和としての粘着が今回しっかり融合し、最終的に倒し甲斐のある良い悪役になりました。神奈さんの演技も凄く嫌らしくて良かったです。
例年のパターンなら最強ロボと思われる(前略)キングは、パーツ構造の都合による太い上半身と細い下半身の歪さを、比較的格好良い顔をつけて誤魔化した感じ(笑) やたら股下長いですが、日下さん(?)、どうやって入ってるんだこれ。右腕がキャノンで左腕がドリルという、戦う為だけに生まれた感じが潔いですが、『ジュウオウジャー』ロボの行き着いた先としては、足から溢れるキューブ感は割と好き。
かくして散々引っかき回してくれた宇宙ストーカーを撃破した帰路、ふと足を止めた大和は、仲間達に感謝を告げる。
「ありがとう。あの時、一瞬、絶望したんだ……。俺のせいでみんな! 殺されたんだって思って! ……生きていてくれたから、救われたんだ」
そんな大和に駆け寄り、肩を抱くレオ。
「……大和! 後悔すんなよ。――俺等と繋がった事」
後ろから手を添えるセラ。
「後悔されたら、あたし達がさみしいじゃん」
それぞれ、大和に触れる仲間達……。
今回、“繋がっているからこそ失われる”という絶望を改めてバングレイが突きつけてくる事で、繋がりと喪失の表裏一体が描かれた上で、でも、繋がった事を後悔してほしくないというのは、大和が幻の母と再会する第24話も踏まえての、今作最終盤に向けた大きな布石だと思われ、ニンゲンとジューマンが出会って生まれた群れに何が待ち受けるのか、様々な想像をかき立て、震えるラストでした。
まあ勝手に重く受け止めているのですが、レオの台詞はかなり狙った仕込みであろうと、期待も込めて。
全合体ロボのお披露目に、アンチ大和としてバングレイがぶつけてくる悪意を全員で乗り越える姿を見事に重ね、単独のエピソードとしてもシリーズ全体の構成としても、非常に良かったです。途中で2000回SPの経由までしつつ、上げたハードルを見事に越えてきて、ぐぅの音も出ません。
メインライターとして十全の筆を振るう香村さんもお見事なら、今回、加藤監督の演出も非常に素晴らしい冴え。ハッタリの効くシーン以外でも、手抜かりなく細かい描写が行き届いて全体の盛り上がりに繋げ、個人的にこれまで見た加藤監督の演出エピソードで最高傑作かも。
次回――ハロウィンでタスクが王子様?! 戦隊で季節ネタとしてハロウィンが持ち込まれるのって、初でしょうか……? 予告で、女装ミニスカのレオが、スカートの前を押さえながらジャンプしているのが奥ゆかしい(笑)