今回の感想は、前回いただいた彗星恐竜さんとwayさんのコメントに特に大きなヒントをいただきました。ありがとうございます。
◆第42話「この星の行方」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
さわおを探し、二手に分かれるジュウオウジャー。大和・タスク・アム組でタスクの嗅覚が役に立ち、重傷を負って気絶していたさわおを発見。付近にある病院を思い浮かべた大和は一瞬固い表情になるも、さわおをそこへと運んでいく……。
一方、セラ・レオ組はなんと、クバルに囚われていたナリアを発見。そしてバドは、アザルドの強襲を受けていた!
「キューブ? おまえいったい……」
「まあいい。てめぇなら俺も遊んで構わねぇよな」
「待て! おまえデスガリアンなのか?! この星の生き物なんじゃないのか?!」
「なーに言ってんだ。こんな星、初めてだよ!」
鳥男はジュウオウバードに変身し、アザルドと交戦。ゴリラに粉々にされたりスキャニングサワオチャージに粉々にされたり、割と黒星先行のアザルドが久々にいい所を見せるも、やはりバードの鞭剣スピンで吹っ飛ぶ半身。だがアザルドは部分再生しながらの反撃をバードに浴びせて痛み分けに持ち込むと、バードが取り落とした4つの〔!〕キューブが、再生に紛れてアザルドの体に吸い込まれてしまう!
「なかなかやるじゃねぇか。楽しみが増えたぜ。じゃあな」
視聴者目線ではかなり衝撃の展開を全く自覚しないまま、当初の目的も忘れて、汗をかいたので満足して帰るアザルド(笑)
そしてバドは、地面に残された幾つかの青いキューブの代わりに、〔!〕キューブがアザルドの体に取り込まれてしまった事に気付く。
「まさか……ジュウオウキューブと入れ替わって……。……なんなんだ、あいつは」
折角集めたのに……!(涙)
再生に使用できる=アザルドを構成するキューブとジュウオウキューブは同質(ないし近似)の存在、という疑惑が急浮上しましたが、この期に及んでアザルドが全く我関さずで自分の生きたいようにしか生きていないのが物凄い(笑)
そもそもキューブとは何か? というのがアザルドの正体次第で予想だにしなかった方向へ転がっていきそうですが、変身パワーの源、という要素に踏み込み、ここに来てもう一面風呂敷を広げてきたのは、どう畳んでくるのか非常に楽しみです。
……た、畳める、んですよ、ね?(^^;
「どうしました? 私を仕留めないのですか」
その頃、鎖で柱に縛り付けられたナリアの姿にキューブ剣を取り出したレオは、鎖だけを切断。
あーやっちまったなぁみたいな顔で刀身を見つめるレオに対して一瞬驚くも、即座に殴りかかって人質に取るナリア格好いい(笑)
「下等生物は甘いですね。私には理解できません」
「女にトドメさせるかよ」
レオを後ろから締め付けるナリアに対し、セラもセラで躊躇無くレオの腹部に勢いを乗せた回し蹴り(笑)
貫通衝撃で吹っ飛んだナリアはそのまま去って行き、レオの本気で痛そうな顔がしっかり描かれているのが、(助ける為に)本気で蹴っている事・セラの思い切りの良さとレオへの怒り・そうでありながらもジュウオウジャーの武闘派コンビの根底に通じ合う覚悟の呼吸、が詰まっていて素晴らしい。
「何やってんのよ馬鹿!!」
セラに怒られて渋い顔になるもレオはくどくど言い訳はせず、そこでシーンをすぱっと切り替えてしまうのも秀逸で、短いながらも今作らしさの凝縮された良いシーンでした。
大和達はさわおを病院へと運び込み、今作一般において「デスガリアンにやられた」が通用する事が判明。大和はそこで、父・景幸(演:国広富之)と再会する。
「まさか……ここで会うとはな」
「来たくて来たわけじゃない」
叔父との関係、母の命日での反応など、それとなく匂わされてきた風切親子の軋轢が明確になり、硬い雰囲気を漂わせる二人。
「友達を……助けてくれ!」
それでも大和は、さわおの元へ向かう父の背中に頼み、背中を向けたままながらも、頷く父。
前回ラストの流れを引いて冒頭から3分割の展開でしたが、アザルドの謎、レオの選択とセラの蹴り、大和父登場、とそれぞれ大きな見せ場があり、テンポ良く進行。
弓矢基地では、帰還したジニス様の台車がお役御免。あれはあれで異形感があって好きだったのですが、最終盤に向けたモデルチェンジとしてはわかりやすい形に。クバルを止められなかった事を謝るナリアに対し、ようやく足を組んでくつろげるようになったジニスは涼しく告げる。
「殺す事などいつでも出来る。でも泳がせておけば、どんなゲームを仕掛けてくるか楽しめるじゃないか。さあ……この後どんな恐怖の叫びを聞かせてくれるか」
圧倒的強者として、自らの身に降りかかるトラブルも人生の余興に過ぎないと構えるジニス様、今回から声に不気味なエコーがかかるようになったのですが個人的にはこれは微妙。これもモデルチェンジの一貫なのでしょうが、ジニス様はあくまで、甘く怠惰な喋りが良いと思うのです。
そしてクバルは、下水道を彷徨っていた(笑)
「終わりだ……終わりだ。殺されるぅ! ジニスは、私を追ってくる! いたぶって、弄んで、絶望するまでしゃぶり尽くして殺す! 私はいったいどうすればぁ!」
ジニス(ブラッドゲーム)のもたらす真の恐怖を全身で示す役回りとなったクバルですが、デスガリアンの一員としてブラッドゲームに参加し、目的の為とはいえ下等生物を高みから見下ろす側に居たクバルが、再びデスガリアンから見た下等生物の側に転落する事で心から絶望して恐怖する、というのは実に皮肉かつ真に迫っています。
あと、下手に身近に居たせいで、ジニスの性格をよく把握している(笑)
この辺りちょっと裏技ではあるのですが、もう一つ描写が足りず安定していなかったジニス様について、元身内が「あいつはこんなに嫌で酷いヤツなんだーーー」と喚く事で今回一気にキャラクターとして肉付けが進み、なんという踏み台の有効活用。
病院では大和が、今晩はさわおに付き添いたいと頼み込むも看護師に断られ、そこに通りがかる大和父。
「よせ。子供じゃないんだ」
「父さん……」
もう(大和は)子供じゃないんだから我が儘を言わずに社会のルールを守れ、と、もう(さわおは)子供じゃないんだから心細いだろうなんて甘やかすな、がかかっていると同時に、いつまでも子供の頃の悲しみを引きずり続け、それを他者にも投影しているように見える大和の言葉を気にし、更に結果として、知らず知らず、さわおをフォローしてあげなくてはと庇護対象のように見ている面のある大和の頬をはたいている、と二重三重の意味があって素晴らしい台詞。
結局今回、前回気になった暴走気味の大和については特に踏み込まれないまま終わるのですが、やや描写が過剰には感じたものの、ここに持ってくる為だったとしたら、それなりに納得。恐らく母の死にまつわるトラウマスイッチが入った影響はあったのでしょうが、大和がさわおをフォローしすぎようとする傾向はこれまでも端々にありましたし、それが爆発した時に、ジューマン達がそこに対して何かおかしくないか、と首をひねったというのは、頷ける範囲です。まあこの後、年明け最終盤に改めて焦点が当たる可能性もありますが。
そしてこれは、今回後半に大きな意味を持ってくる事に。
「……大事な友達なんだよ。ついててやりたいと思うのは当たり前だろ。あんたとは違うんだ」
ここで大和が母の死を看取ったシーンの回想が挿入され、どうやら大和くんは、何らかの事情で父親が母の死の場に居合わせなかった事(見舞いなどに来なかった事?)を引きずっている、と判明。
「……俺に厭味を言ったところで許可は出ないぞ。……彼は大丈夫だ」
対する父は、口の中で言葉を転がすも外に出せず、何かを飲み込むような苦い表情で視線を外し、その姿にはどこか自責や後悔を感じさせます。結局、距離を取った一線を引いて立ち去るも、去り際、拳でポンと大和の肩を叩いていき、さわおの治療に向かう際も、このシーンも、大和に背中を向けた時だけ息子を勇気づけようとしており、互いに険悪というより、大和からの憎しみに対して、どう距離を詰めればいいのかわからない、といった様子。
引きに引いた大和父の出番は短い2シーンながらも、キャリアのある役者さんの読み込みもお見事で、年明けに向けて楽しみな存在感を残してくれました。父子の問題をこのエピソードでバタバタと片付けてしまわず、まずは布石を一つ、としてきた造りも良し。
「それで帰ってこないのか……」
森家では病院の話を聞いて頷いたマリオがわざとらしく席を外し、その背中をアムが見つめるアップが一つ。
冬だけどサバイバル能力が高いので平気で野外に座り込んでいた大和は、夜半に帰宅。ジューマンズは既に不在なものの、テーブルの上に残された大和の夕食の周りに4つの動物人形が置かれているというのが、気持ちいい。
「また家出少年に逆戻りしたかと思ったぞ」
「……あの人、全然変わってない。怖さも、心細さも、大事な人を心配する気持ちもわからない」
大和の言葉に、含み笑いを浮かべるマリオ。
「なに?」
「そういうとこ、おまえも子供ん時から変わってないよ? ちょっと待ってろ」
かつて子供の大和にしたように、ホットミルクを差し出すマリオ。
「でもまあ……そろそろもう一度……ちゃんと話す時期かもしれないな」
「え?」
「人は……変わらないとこもあれば、変わるとこもある」
病院での描写を見るに、息子が抱えている嫌悪感ほど、父の態度に冷たさはありませんが、さりとて亀裂を修復する方法もわからない、といった様子で、恐らくマリオ叔父さんは大人の男としてそれがわかっているから、大和をそれとなく促している感じ。
昔のお父さんは実際に性格が悪くて、妻の死で変わったという可能性もありますが、大和にはわからない形の「繋がり」というものもある、という方向もありそうで、どうまとめていくのかは楽しみです。
今作、特に大和周りでは語りすぎない物語の見せ方が一貫していますが、親子の関係や食卓の気遣いなど、さりげない描写の積み重ねで見せていく、省略の仕方が巧みで、アバンタイトル〜Aパート、非常に今作らしいドラマの描き方になりました。そして加藤監督、今季は本当に良い仕事。
翌朝――
「私が生き残る為には……これしかない」
一晩下水道で体育座りしていたクバルは、街に繰り出すと、無差別破壊を開始。
「ご覧下さいジニス様ぁ! これが私の罪滅ぼし! いえ、新たなブラッドゲームの始まりです!! 日没までにこの星の生き物ども全てを滅ぼしてご覧にいれます! ですからぁ……どうぞお助け下さい!! ブラッドゲーム勝利の報酬として、どうか、私の命ぉぉぉ……!!」
「クバル!」
「何やってんだあいつ」
本人も、チームのゲーム内容も、趣味で暴れているだけだったアザルドですが、この局面に至ってもあまりにマイペースすぎて(裏切った筈のクバルが普通に基地に戻ってきても普通に挨拶しそう)キャラの掘り下げが進んでしまうという、これもクバル効果で、なんという踏み台の有効活用(二回目)。
「なるほど? そう来たか」
ひざまずいてジニスの靴を隅々まで舐めつくす路線を選んだクバルが、どこから見ているのかわからない圧倒的恐怖に対して天に向かって手を広げ――すなわち神の慈悲を請い――哀願するのに対し、それを射手座基地から見下ろす面々、という構図が、これまたブラッドゲームの本質を提示しているようで、ここに来て凶悪。
「ジュウオウジャー……私の邪魔をしないで下さい」
クバルは駆けつけたジュウオウジャーに対してメーバ軍団を放ち、集団戦闘開始。
「邪魔するに、決まってんだろ!」
「人の星を、勝手に生け贄にしないで!」
「おまえも星を滅ぼされたなら、わかるだろう!」
「あんたにも、大事な仲間が居たんじゃないの?!」
「だから、おまえはジニスを倒そうとしたんじゃないのか?!」
前回、クバルにはクバルの事情がある事を知った5人は会話(コミュニケーション)を試みるが――
「フン、知った事かぁ!!」
クバルはそれを一言で切って捨て、その明確な断絶にメーバと戦いながらもハッと顔をあげる5人。
「おまえたちも見ただろう?! ジニスのあの凄まじく、凶悪な強さを! 我々がいくら足掻いた所で無駄なのだぁ! 生き残る為なら私は、プライドも何もかも捨てる! こんな星の事など、どうでもいいわーーー!!」
クバルは自らデスガリアンに潜り込み、復讐の為に臥薪嘗胆するほどには胆力があったわけで、命が惜しいとはいえただ殺されるだけならここまでおかしくもならなかったのかと思うのですが、「いたぶって、弄んで、絶望するまでしゃぶり尽くして殺す!」というジニス様評が、凄く効いています。
まあ今回の扱いの感じからすると、もともとクバルの一族は物凄く傲慢で他人に見下される事が我慢ならず、復讐の最大の動機もいつかジニスを這いつくばらせて床の雑巾がけとかさせたい、とかいうものだった可能性もありそうですが。
そんなクバルはここで、群れを切り捨てて自分一人だけが生き残ろうとする者と置かれる事で、ジュウオウジャーが戦わざるをえない今作における“悪”と既定。
一方で今回レオがナリアを見逃しているのですが、男の美学にプラスアルファのポイントがどこにあったかというと、「ご無事なのですね……」とジニスの無事に安堵した呟きであり、デスガリアンといえども「他者を心から心配する」姿に人間味を見てしまった為に切れなかった、というのは1エピソードの中で巧く対比になっています。
同時にレオが“美学だけ”でナリアを見逃してしまうのを回避しているのですが、今作の造りとそれこそレオの美学からすると、レオはこの件に関して何らかの形で責任を取ろうとする可能性が高いと思われ、前々回の電撃パンチの事も思うと、ここに来て急に前途に暗雲が漂ってきたなレオ……!(笑)
まあクバルがこんな事になったので電撃パンチはあそこだけのネタという気もしますが、ボディブローは後から効いてくるものと相場が決まっているのでさぁどうか……。
「クバルーーー!! ……おまえがジニスに抱いた恐怖を、みっちゃんも味わったんだ! はぁぁぁぁぁっ! 自分勝手にみっちゃんを利用して! 今度はこの星を利用して! 許さない!」
ジニスへ反抗したクバルは、しかし力に敗れ隷属を選んだ結果、自分の目的(遊興)の為に他者を弄ぶジニスと、自分の目的(復讐/生存)の為に他者を利用するクバル、として重ね合わされ、他者の命を尊重しない傲慢に激怒するイーグルは野生解放。
「私が欲しいのは、ジニス様のお許しだけだぁ!!」
ヒーローの怒りに対してこの局面で面白い返しをするクバルへ、ゴリラ&ジューマンズが連続攻撃を浴びせ、番長キャノンによるスプラッシュでの目くらましからスライディング番長変身は格好良かったです。その後、左手にキャノンつけたまま低い位置で斜め回転からの攻撃が、腰回りのヒラヒラと足捌きも栄えて格好良かったのですが、どうやっているんだ、あれ。立ち回り時に地面などにぶつかっても壊れないように、柔軟素材のキャノンとか用意してあるのかしら。
最後は全員集合(あ、一人足りない……)ファイナル番長キャノンが、最高出力のクバルガンを上回り、クバルは大爆発。弓矢基地では、はいじゃあ、台所の掃除掃除、みたいな感じで視線を外すナリア(笑) だが……
「ナリア、コンティニューを」
「ええっ?! しかしジニス様! クバルは!」
「いいじゃないかナリア。私は楽しかったよ?」
オーナー命令で仕方なく地上へ降りてきたナリアに対し、一歩前へ出たライオンが呼びかけるも完全スルー、というのはポイント高く、最終盤で拾っていってほしい要素です。
「ジニス様の御慈悲に、感謝なさい!」
クバルを足蹴にして起こしたナリアは、たぶん嫌がらせで、大量のコンティニューメダルを投入(笑)
「うおぉぉぉ、ジニス様ぁ!! 有り難うございます! このブラッドゲーム、必ずや成功させてみせます!」
前回の今回で、いっそ哀れレベルの、清々しいまでのクバルの卑屈ぶりは非常に素晴らしい。
サワオ不在の為、ジュウオウジャーはキング、ワイルド、ドデカ、を起動し、タコキングの意味も出る事に。他の武装アニマルがまがりなりにも2クール以上の付き合いだけに、ぽっと出の新人が(文字通りに)でかい顔をしている感がどうしても強いですが(^^;
「体に漲るジニス様の御力、思い知るがいいぃぃぃ!」
クバルはエネルギー触手によるオールレンジ攻撃で3大ロボと渡り合い、周囲の騒ぎから病室で目を覚ましたさわおは、窓からこの戦いを目撃。
「待っていて下さいジニス様。間もなく、間もなくジュウオウジャーを倒してご覧にいれますゆえぇ!」
「みんな……」
ジニスへの恐怖から変身アイテムに手を伸ばす事ができず、戦う5人の姿を目にしながらも、さわおは窓辺に座り込んでしまう。
「俺は、怖い……でも……変わりたい」
オ「おい、操。わかってんだろ?」
「……え?」
ワ「わかってるくせに。いつまで座ってんだ?」
サ「変わりたい、じゃ、いつまでたっても変わらない。だろ?」
「……うん!! 変わりたいじゃない……」
サ・ワ・オ「「「うん」」」
「変わるんだっ!!」
サ・ワ・オ・サワオ・サワオ!
変身!!
現実で立ち上がる事とそのシンボライズとしてのヒーローの「変身」を重ねてきて非常に熱いのですが、ここで凄く良かったのは、久々登場の脳内フレンズが「わからないのか?」でなく、「わかってんだろ?」と声をかけること。
そう、門藤操は、もう、わかってる。
落ち込んで座り込んで、手を引いてくれる人を待っているのではなく、自分が、誰かの手を引ける側になりたいと願うなら――自らそうなろうとしなければならない事を。
それが、子供じゃない、という事を。
そして、その手が震えを越えて掴んだ変身アイテムは、闇を照らす光の標。
「俺に! 怯えてる資格はない!」
ここまでずっとネガティブに使ってきた十八番のフレーズの意味も逆転し、看護師の制止を振り切って病院の外へ飛び出すさわお。
ロボ戦では、クバルが触手で捕まえたドデカをジャイアントスイングしており、戦隊ロボ戦ではあまり見ない、セットを広く使った構図でクバルのこれまでにない強さの表現にもなり、格好良かったです。
「はははははははっ、貴様等の命が私を救う! トドメだ」
3大ロボに迫るクバル、だが、しかし……!
「させるかーーー!!」
サワオの操るトウサイジュウオーが参戦すると、右ストレートでクバルをぶっ飛ばす。
「俺はもう逃げない! ジニスがなんだ、デスガリアンがなんだ! 俺には、みんなが居る。……昔の俺とは、レベルが違うんだよぉ!!」
一方的に与えられた力で、レベルが違うのではない。
みんなと高め合ってきた事で、レベルが違う。
恐怖を乗り越え、仲間とともに変わる姿でサワオとクバルが鮮やかに対比され、ここでもまた、かつての決め台詞が別の意味を持って塗り替えられる、とジュウオウ/ザワールドの要素を使い切り、実にお見事。
そしてサワオは、ジニスの呪縛を、“昔の俺”を乗り越える事で、今、真の意味でヒーローになる。
――誰かに手を伸ばせる者になる。
サワオ加入時(第20話)、洗脳解除→シリアスに進むのかと思ったらかなりコミカル→凄く変なテンション、という予想外の展開に「面白いか面白くないかで言えば面白かったのですが、何だか凄く、眩惑された気分があります(^^;」と書きましたが、あれはまさしく眩惑であったのだな、と20数話を超えて辿り着いた大ジャンプの着地点に、脱帽。
「さあ、みんなでクバルを倒すぞ!」
3大ロボットが立ち上がり、流れ出す主題歌。
「世界の王者! ジュウオウザワールド!」
&トウサイジュウオー
「雪原の王者! ジュウオウタイガー!」「森林の王者! ジュウオウエレファント!」
&ジュウオウワイルド
「サバンナの王者! ジュウオウライオン!」「荒海の王者! ジュウオウシャーク!」
&ジュウオウキングオクトパス
「王者の中の王者! ジュウオウホエール!」
&ドデカイオー
「動物戦隊!」
「「「「「「ジュウオウジャー!」」」」」」
最終的にロボで揃い踏みポーズというのはありますが、コックピットの座席から一人一人立ち上がって名乗りポーズを決め、その背景にそれぞれ搭乗ロボを重ねて見せる、というのはちょっとした新機軸でしょうか?
「ひゃはははははははは! 皆が居る? ふざけるなっ! この星は私のジニス様への手土産! それ以外の未来はない!」
「この星を――舐めるなよ」
毎年お馴染みクリスマス決戦らしく、動物武装と4大ロボが総攻撃で大活躍からの全合体。今回頑張って存在感を出していたタコは、やはり全合体すると居なくなるのですが、これはもう、どうしようもなかったのか(笑)
「クバル! おまえが負けた恐怖に、みっちゃんは勝ったんだ! そのみっちゃんが俺達を勇気づけてくれた。もうおまえなんかには負けない!」
弱者が集って世界から目を逸らすのでも、圧倒的な強者が集団を支配するのでも、一握りの優れた者達がその他大勢の劣った者達を一方的に庇護するのでもなく――
「動物が群れを作るのはな、大事な仲間とみんなで、生き抜く為だ!!」
この辺り、動物行動学としてあらゆる“群れ”に該当するわけでは勿論ないでしょうが、今作における“群れ”というキーワードによるなぞらえが、大和達が変えたさわおが大和達を勇気づけるようになる、という生き抜く為に互いが強くなる関係性に集約。
“守るヒーローと支える大衆”というテーゼから互いの関係をもう一歩近付けた、強い者も弱い者も皆が一緒に成長していく関係と描かれ、それはすなわち、
今はヒーローに守られている君達も、いつかは誰かを守れるヒーローになれる
いや……
「なるんだっ!!」
という事でありましょう。
それが今回サワオが辿り着いた、誰かに手を伸ばせる者、ではないかなどと思うのです。
「まだだぁ! まだ私はっ!」
ワイ(中略)キングの猛攻に耐えるクバルだが、遂に必殺の百獣乱舞が直撃。
「ジニス様ーーー!!」
そしてクバルは、同じ手を伸ばすのでも、ただ強者の慈悲を乞いながら爆散し、断末魔の台詞が、実に哀しい。
「面白かったよ――クバル」
クバルの超踏み台運動により、今回だいぶ自身が面白くなってくれたジニス様ですが、今作の悪としては最終的に惨めに這いつくばって「馬鹿な?! プリキュアが作って食べて戦うだと……!? ……じゃなくて、馬鹿な!?」と散るのがふさわしいかなとは思いつつ、「自分の命がかかった恐怖! 肌にひりつくこのスリル! 最高のゲームだった……!」と満足して散っていく可能性もありそうで、私としては割とどちらでもOKなのですが、どう決着をつけるのかだいぶ楽しみになって参りました。
「つーかおまえ、ホント強くなったよ。昔の操なら、俺は役立たずだーっつって、座り込んで動かなかったろ」
「人って変われるんだねー」
戦い終わり、車椅子に乗せたさわおを病院へと運ぶ面々。
「…………みっちゃんの方が、俺より大人かもしれないなぁ」
はにかむさわおの姿に、ぽそっと呟く大和くん、で続く。
今回、さわおが過去を乗り越えてヒーローとして脱皮する一方、これまで“大人の対応”を見せる事が多かった大和が、マリオおじさんから変わらない部分を指摘されて自分の姿を顧みる事で、サワオとクバルだけではなく、さわおと大和も対比されている、というのが面白いポイント。
また主人公として今作におけるテーゼの体現者だった大和くんが、今回はさわおにそれを“教えられる”立場になっており、この立ち位置の変化というのが最終盤に作用してくるのかどうかは、注目したい部分です。
とはいえ人間、幼少の頃のトラウマを消化するというのは簡単な事ではありませんし、マリオも必ずしも変わらない事を否定しているわけではないのですが、今回さわおを通して、“子供からの脱皮”というのを明確に描いたので、物語として大和が父親とどう向き合っていくのか、年明けの展開が楽しみです。
大和(達)がサワオを良い方向に変えてきたのは確かだけれども、もしかしたらその大和(達)がサワオ自らが立ち上がる事を妨げていた面もあったのかもしれない、という事が「よせ。子供じゃないんだ」という台詞で間接的に示唆されており、大和がその事を、目を背け続けてきた父親から教えられている(恐らくまだ、自覚は無いけど)、というのも父子の関係性として面白い所。
大和には二人の擬似的な父親(マリオ、バド)が居るわけですが、その辺りを含めた描き方もどうなるか興味深いです。
とにかく今回、色々な要素が多重に絡んでおり、非常に濃密で面白い1本でした。クバル退場でシェイプアップされつつ、敵味方の間に幾本かのロープが張られて新たな面白みも生まれており、この勢いのまま完走を願いたい。
個人的には後、「百獣の王者」というフレーズありきであったろう「王者の資格」の「王者」とは何か、という点が繋がってきてくれると嬉しいのですが、さてさて。
……そういえば、前回ラストで大和くんの頭上を飛んでいた何かには一切触れられなかったけど、あれは何だったのだろう……(^^; コラボ映画ネタ……?(手裏剣?)
次回、一山越えてクリスマスでコスプレ収め、と思ったらここで一気の叔父さんバレ?!