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駆け足『仮面ライダーフォーゼ』感想8

◆第27話「変・身・却・下」◆ (監督:石田秀範 脚本:中島かずき
「軽い……私の扱いが、非常に軽い」 (速水公平)
ちょうどクールの切れ目ですし、卒業したキングとクイーンはOPの映像を差し替えて欲しかった所。ラストカットのフォーゼはどんどん増えているのですけれど。
――春休み、仮面ライダー部が弦太朗の家に集まって宇宙鍋パーティーを開催する事になる中、落語家に呼ばれた流星は一人体育館に向かうが、そこではカニが生徒達に一発ギャグで自分を笑わせる事を要求し、不合格の人間の魂(生命エネルギー)を奪い取る、という新たな能力を発動させていた。
「ねえ流ちゃん、あたしと組んで、おもしろーい事しようよ。頭は切れるし、腹も座ってる。何よりあんた……――嘘つきでしょ」
「厚意は嬉しいが、断るよ」
落語家からゾディアーツにヘットハントされるも流星は断り、春休みの校内を回りながら戦うメテオとカニ。戦闘中のべつまくなしに喋り続けているカニの台詞回しがなかなか面白く、カニのペースに翻弄されながらも木星パンチを浴びせたメテオは、カニが逃げたと思い込んで油断から変身解除した所を、バッチリ目撃され正体を掴まれてしまう。
「もしメテオが君である事が他人にばれたら、君は、メテオの力を失う事になる」
よりにもよって体育館に来る直前、メテオの強化をタチバナに要請した際に、ご近所の平和を守る美少女仮面のような設定を念押しされていた流星、大ピンチ。
まあバレた瞬間に、衛星からお仕置きビームが飛んできてローストチキンにされない分、だいぶん人道的とはいえますが。
その頃、残りのメンバーは如月家に集い、弦太朗の両親が交通事故で亡くなっている事、弦太朗は祖父の吾郎と2人暮らしである事、レースチームのメカニックを務めていた吾郎と日本各地を転々としていた為に転校続きの生活だった事など、これまで謎だった如月家の背景が色々と明らかに。
てっきり、弦太朗は背景不明の風来坊で通すと思っていたので意外でしたが、さすがに2010年代に主人公の素性を一切描かずに走り抜けるのは無理だったのか。そして生前の弦太朗の両親は何やら難しい事ばかり話していたと、仕事を変に隠される不穏な伏線。
「友達作れよ弦太朗! 友達がおまえを救ってくれる」
弦太朗が友情にこだわるのは、友達を作ると父親が非常に喜んでくれたから、とストレートに補強し、上のレスでちょうど言語化できたのですが、今作、良くも悪くも、ときどき正気に戻ります。たぶん今作にもう一つ足りないのは、全てを振り切る狂気(そういう点で『MEGAMAX』は、狂気とその感染拡大の描写が秀逸でした)。
遅れてやってきた流星は弦太朗の発言に「君はまだ、友達の重さをわかってはいない」と飛び出していき、親友にスイッチを選ばせてしまった過去のトラウマを思い起こす。
――友達? くだらない。俺に必要なのはスイッチだ!
(俺はあの時、十字架を背負った。もう二度と友を作らない。そう決めた。……やはり俺は一人で戦う)
「やっぱり、何かおかしい……」
流星の異変に気付いた友子がそれを追いかけていき、先日不満を述べたら、急に距離が……!(笑)
まあ以前に書いたように、せっかくメインキャラの人数が多いのだから、弦太朗を軸にする以外の所でキャラクターの横の繋がりがあった方が断然面白くなりますし、折角なら男女ペアの方が嬉しいという点も含め、コミュニケーションは苦手だけど勘の鋭い友子、というのは裏表の激しい流星に対して絶妙な位置づけになりました。
一方その煽りを受けて、賢吾の存在感が日に日に薄れていきますが、色々と背負っているので後半の巻き返しがあるでしょうし、ほどほど頑張っていただきたい。ところで今回の私服賢吾、凄く横幅が広く見えるのですが、もう、クール二枚目路線は諦めたのか。
秘密を守る為、実力行使でカニ口封じしようとする流星だったが、魔法少女の掟により、変身不能に。メテオスイッチを持っている限り、流星のプライベートは全てタチバナに筒抜けだったのだ!
友子と一緒に弦太朗が駆けつけてフォーゼに変身するも、超電磁ボンバーさえ通用せず、進化を続けるカニは自ら超新星を発動。そして流星には、非情な言葉が告げられる――。
「残念ながら、君はもう、メテオではない」
なお今回、理事長に「これからいよいよ計画は動き出す。もう少し大きな精神操作を考えた方がいいかもな」発言があり、ゾディアーツサイドも後半戦の開始でじわじわと蠢動。


◆第28話「星・嵐・再・起」◆ (監督:石田秀範 脚本:中島かずき
仮面ライダーメテオストーム。俺の定めは嵐を呼ぶぜ!」 (朔田流星)
えええーっ?!
メテオの左右非対称ヘッドが気に入っていた身としては、メテオストームの左右対称の金色イガグリヘッドが大ショック。そして拳法系の武器として棒術なのはまあいいとして、どうして先端にベイブレード(TAKA●ATOMY)付いているんですかタチバナさーーーーーん。
玩具の再現性を優先したのかもしれませんが、必殺技が完全に手元だけで発動しているのに不条理レベルの威力で、映像的な説得力が弱いのもマイナス(^^;
超新星を発動するも制御しきれないカニは、流星の魂の輪を奪って撤退。それを取り返そうと向かう流星だが、病院の二郎の容態が急変したという連絡で大パニック。それを知った弦太朗、そして仮面ライダー部員達は、流星の身代わりを申し出て自分たちの魂をカニに預け、「なんだいなんだい、この、集団『走れメロス』は」……て、セルフでツッコんだ!
16時までに必ず戻ると約束して病院へ向かった流星は二郎を力づける事に間に合うが、今度はそこに鉄仮面から、約束の時間までにある場所に来れば強化アイテムと一緒にもう一度メテオになるチャンスを与えよう、と学園に戻れない時間を指定されてしまう……。
(すまない……。期待には応えられない。俺にはやらなければならない事があるんだ)
流星が選んだ場所、それは――
「流星さん……!」
「おや……戻ってきたのかい。あんたも結構馬鹿だねぇ」
「馬鹿で結構。やるべき事をやるだけだ」
イムリミット寸前に学園へ戻ってくる流星だが、そこでは既に、友子以外の仮面ライダー部員が厳しいお笑い審査の壁に阻まれて倒れていた。部員達を救うべく一発ギャグを要求される流星だったが、それを拒否してカニに立ち向かうも生身では敵うべくもなく一方的に叩き伏せられてしまう(ここで改めて、友子が流星の本気戦闘を目撃)。
「ただの人間が刃向かって何とかなると思ったのかい? 笑わせるねぇ全く。はっはっはっはっは」
「――今笑ったな」
「あ?」
「確かに今君は笑った」
「え、違う」
「君は戦っている時、笑わせるなが口癖なんだよ。今回も言うと思った」
流星の機転を見せると共に、前回カニが戦闘中にひたすらベラベラ喋っていたのが巧い眩惑となって、良い逆転劇。
「僕の勝ちだ」
魂が解放されて部員達は息を吹き返し、フォーゼが戦闘している間に、時間に遅れているのを承知でタチバナとの約束の場所へ辿り着いた流星は懸命に言葉を紡ぐ。
「俺はあいつらの笑顔の重さを知った。俺はあいつらに、この秘密だらけの男を信じた仮面ライダー部の連中に借りを返したいんだ!」
メテオスイッチは変わらず無反応……だがその時、流星は怪しげな靴箱に気がつく。
メテオストームスイッチ――それが、君の選択の結果だ」
魔法を取り戻した流星はメテオに変身して戦場へ飛んでいくと、強化スイッチによりメテオストームにステイツチェンジ。ど派手な青金の姿になると新装備の棒術でカニ忍者を蹴散らし、必殺マジカルメテオ独楽で巨大化したカニの手足とどめに舌をもいで粉砕。
「俺がやられると掛けて、黒い犬と解く。そのこころは、そりゃあ、おもしろくない。おあとがよろしいよ、う、うぎゃっ、うぉぉぉ」
メテオストームの第一印象は正直がっくりなのですが、いきなりこの姿になるわけではないだけ、マシと思うべきでしょうか。主役ライダーの最強フォームより先に第二ライダーがパワーアップ、というのは珍しい……か?
辛うじて学園まで逃げ延びた鬼島だが、軽石校長にスイッチを奪われ、幻術によって学園を探っていた刑事の姿に変えられると、校長に乗せられたバルゴの手でシベリア送りにされてしまい……リタイア。
12使徒、増えそうでなかなか増えません。
今回、流星を善導するような動きを見せた鉄仮面ですが、最後に思わせぶりなアップのカットがあったり、まだまだ素直に受け止めきれない謎だらけ。流星は部員達に感謝の念を抱くも距離を取るのは変わらずで友情タッチは拒否し、次回、新年度スタート。


◆第29話「後・輩・無・言」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一
「簡単に友達になろうなんて奴、信用できない」 (黒木蘭)
平成24年度入学式――さっそく新入生に絡む弦太朗は気の強い合気道少女・黒木蘭に投げ飛ばされ、その光景を、“他人に無関心な今時の若者”とか雑にくくられても凄く困るのですが、自虐ネタなのですか歌星さん。弦太朗に絡まれていた気弱なもじゃもじゃ頭の草尾ハルは、校長に目をつけられてスイッチを渡され、蘭に守られてばかりではなく「僕も、強くなりたい!」という想いから、ハエ座のゾディアーツへと変貌してしまう……!
あの子に守られている自分を変えたい男の子、という定番プロットですが、今作これまで、“既に何度もゾディアーツに変貌している生徒”がほとんどだったので、ゾディアーツスイッチの、使用前/使用後による人間性の変化を、後半戦&新年度のスタートに合わせて描いてきたのはポイント。新入生、という素材もそれを見せる良い理由付けになりました。
見所は、ハエを殴るだけ殴って、こいつ弱いから役立たずだ、と帰るメテオ(笑)
だがハエは素体の感情の昂ぶりに応じて急速に進化していき、より攻撃的な性格になると共に思わぬ能力を発揮していく。
一方、弦太朗・ユウキ・賢吾は、新たに3−Bの担任となった大杉に目の敵にされて付きまとわれ、ライダー部の活動に支障が出る事に。
……毎度思うのですが、弦太朗とユウキはともかく、どうして賢吾はここまで問題児トリオとしてくくられているのか。授業をよく欠席するといっても体が弱くて保健室通いなのは事実ですし、何より成績が学年主席というだけで相当おめこぼしされると思うのですが、画面に映っていない所でいったいどんな悪事をしているのか心配になるレベル。猫ゾディアーツに狙われる理由だけの為に、学年トップの成績という設定にしたのは地味に失敗した気がしてなりません。頭は良いけど、テストは適当にやっている設定で良かったのではないか。
そして小型に分裂したハエ対策の為にネットスイッチをラビットハッチに取りに戻った賢吾は、それを見とがめた大杉にラビットハッチへの侵入を許してしまう……。
大杉先生がどうでもいいので、この展開自体が凄くどうでもいいのですが、新年度早々訪れた仮面ライダー部最大の危機を、8人は果たして乗り越える事が出来るのか?!


◆第30話「先・輩・無・用」◆ (監督:坂本浩一 脚本:長谷川圭一
「おまえのダチは、俺達のダチだ」 (如月弦太朗)
進退窮まった仮面ライダー部は、大杉先生に素直に事情を説明。弦太朗は目の前でフォーゼに変身し、大杉を月面に連れ出して そのまま宇宙へ追放 説得するが、大杉はライダー部の解散を通告し、ラビットハッチの中でてんやわんやの大騒ぎに。一方流星はタチバナから、流星が以前に通っていた昴星高校で新たにゾディアーツが覚醒したと知らされる。
「スイッチャーの覚醒は、<ザ・ホール>の影響下にある天ノ川学園に限られていると聞いていたが」
とここで、物語の核心に近いと思われる情報が一つ。
昴星の様子を見に行った流星は、そこでフラフラしていたリブラと交戦するが、校長、またも女装。
「前より遙かに強くなっている。――でも、心の甘さはそのままだな」
友子の姿に眩惑されている内に校長に逃げられてしまうメテオだが、昴星には何か、以前と違う奇妙な空気が漂っているのであった……。
天ノ川学園では、蘭を守りたいという思いはそのままに、面変わりし、性格の変わっていくもじゃもじゃ。弦太朗達は蘭に代わって川に捨てられた大事なストラップを探し出し、その姿に蘭は弦太朗達を信じて助けを求める。
「最初から素直にそう言えよ、後輩」
……いやもうほとんど、弦太朗が悪いと思うわけですが。
もじゃもじゃを助ける為に協力しろと執拗に迫る弦太朗を頑なに拒否する蘭は、中学時代の出来事で「先輩」という存在に強い不審を抱いていた……というのが前後編を繋ぐ重要な要素として描かれるのですが、根本的な所で入学式の日に短ランリーゼントの先輩から強引に「今日から友達だ!」と言われたら、宗教の勧誘かイジメの始まりと思って逃げるのが自然な反応なので、蘭の側の問題を強調されても困るという、今作の悪い部分が盛大に噴出。
弦太朗の「良かったら事情を話してみないか」ではなく「いいから俺に全てを話せ!」は、どうしても穏便に流せない部分ですが、それを劇中人物が正面から否定できないひづみが、後半戦早々に思い切り出てしまいました。
前回今回で、弦太朗が蘭の肩に気軽に手を置いて投げ飛ばされるシーンが2回ほどあるのですが、正直、それでもまだ払いが足りないレベル(^^;
フォーゼはラストワンしたハエと主題歌をバックに戦い、バキューム、スコップ、プロペラを、恐らく実質的な初使用。再び小型分裂したハエをネットで捕らえるが、そのままリミットブレイクすると魂が肉体に戻っても精神崩壊してしまうので、怪人になる前の心を取り戻させなければいけない、と賢吾が制止。
なんだか急に設定が増えた気がするのですが、ラストワンした生徒のその後に関する前半のブレを修正する為でしょうか。ラストワンすると魂が肉体から離れているという言及も今回初ですが、これはカニが突然、魂の輪を取り出す能力を発揮した部分のフォローか。
何はともあれ、蘭の言葉が届いて正気を取り戻したハエは、改めてマグネットでリミットブレイクされ、後輩2人は仮面ライダー部の仮部員に。そして、もじゃもじゃが耳にした言葉から、スイッチを生徒に渡しているのが学校の教員であるという疑惑を知った大杉は校長への報告を思いとどまり、自らが顧問を名乗り出る事で仮面ライダー部の存在を非公式に承認するのであった。
大杉先生が珍しく頭を使いつつ男を見せたのですが、引き続きどうでもいいです(直球) ところで、「先生」と呼ばれる人物がスイッチを配っている件について、もじゃもじゃ→蘭→大杉で、情報止まった?(^^;
こうして新入生とライダー部の危機は解決されるが、二郎から貰った時計のガラスが割れ、不吉な予感に襲われる流星。そして昴星では、流星と交換で編入された天ノ川学園の生徒が、アリエスゾディアーツに覚醒していた――。
カニのリタイアに代わって新たなホロスコープスが誕生しましたが、理事長の口ぶりだと、12使徒は覚醒したスイッチさえあればいいのかなぁ……まあ、そうでなければシベリア送りにしない気はしますが。