〔GYAO!〕で1週間12話ずつ配信されている、『仮面ライダーフォーゼ』感想。タイトル通り駆け足気味で、ボリュームは、その週の視聴ペースと、心身の余裕により増減予定。
◆第35話「怪・人・放・送」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:長谷川圭一)
「あのDJジーンは、俺の夢の残骸なんス」 (JK)
渡辺勝也監督は『アギト』以来の《平成ライダー》参戦? と思って確認したら、そうでした。余談にそれますが、今季(2016年)は『仮面ライダーゴースト』にがっちり入っていたそうで、渡辺監督をライダーに回した上で、スーパー戦隊シリーズ1999−2000回SPを任されるなど、戦隊の方では加藤弘之監督が次代の主力監督として期待と信頼感が増しているのだなぁと改めて。
正式に仮面ライダーになった、という事でか、タイトルロゴ表示前にフォーゼと並ぶ形でメテオが追加され、これは格好良い、と思ったら、キングとクイーンもようやく新カットに。更に大杉先生も(何故か)新カット、メテオストームにコズミック、如何にも悪の大ボス然とした理事長も目を光らせ、実質的な後期OPに。ライダー部全員集合シーンまで撮り直されているので、むしろこれ、全キャラクター新規カットに出来なかったのかレベル。
ところで、ハエを追いかける時にも出てきたキングの真っ赤なオープンカーは、これはもう「アメ車」と呼ぶべきであろう所まで含めて、如何にもキングな感じで好きです(笑)
天高の生徒にも大人気で弦太朗やユウキも気に入っている人気ネットラジオDJ・ジーンを探して友達になろう、と盛り上がる仮面ライダー部(の一部)。実はジーンの正体であるジェイクは、ラジオ放送中に旧友・五藤東次郎から連絡を受け再会するが、数日前に転校してきたという五藤は無造作に山羊座のゾディアーツに変身。驚くジェイクに構わずギターを弾き出すと何故か人間の時とは似ても似つかぬ技巧を発揮し、それに合わせたジェイクの歌まで上手くなってしまう……!
京都上空の<ザ・ホール>が消滅した影響で、天高に降り注ぐコズミックエナジーが増量された事と、リブラがラプラスの瞳によって他人のクラスチェンジを解明できるようになった事の二つが説明され、残り話数も考えると、今後はざくざく12使徒が敵として出てくる事になるのか。
なお、校長は、超調子に乗っていた。
ジーンを探していたライダー部が楽器店でヤギとジェイクと鉢合わせし、その場はどっちつかずに誤魔化すジェイクだったが、ヤギの誘いに乗ってバンドを再結成、ジーン&ゴッドとしてヤギのメロディをラジオで流してしまう。プロのギタリストであった父に憧れて歌手を目指していたジェイクは、中学自体に五藤とバンドを組んでいたが、お互いの適性不足から笑いものにされ、夢を諦めた過去を持っていたのだ……。
ラジオから流れるヤギの音楽は聴取者を興奮状態にする作用を持っており、ラビットハッチに響き渡る「はやぶさくん」ロックアレンジ(笑)(ユウキ・賢吾・友子バンド)
「はやぶさくん」も、ここまで使われれば本望でしょう……!
なお今回と次回の賢吾は、ほぼひたすらドラムを叩き狂っているだけという、主人公の相棒ポジションだった気がするキャラクターとしては近年稀に見る悲惨な扱い。底辺から一歩ずつ這い上がっていくのではなく、高みから見下ろしていた筈が気がつくと地下の背景の一コマに引きずり込まれているという相棒ポジションはなかなか斬新でしょうか!
学生達の異変を知ったジェイクは「友達の方が大事だ」と放送を中止しようとするが、五島に父親の話を持ち出され、番組を継続してしまう……一度は諦めた夢へのチャンスを餌に、悪いと知りながら易きに流れてしまう人間の欲望、という流れは秀逸で、信念や良識や誠実さという言葉からは遠めに位置するジェイクの立ち位置も上手く拾いました。
放送を止めに向かうフォーゼとメテオだがヤギと戦闘になり、そしてジェイクはフォーゼに自分の選択を告げる。
「気付いたんスよ。……大切なのは今じゃない。未来だって」
「どういう意味だ」
「俺は夢を捨てて、親父みたいな大人になりたくない。……ビッグになりたいんスよ! 高校生活なんて人生に比べたらほんの一瞬。友達だって……卒業したら二度と会わない奴がほとんどだ。そんなもんの為に将来のチャンス逃したら、一生負け犬っすよ!」
「それ本気で言ってるのか!?」
「俺……ライダー部辞めます」
その途端、先の戦いでも不具合のあったコズミックスイッチに異変が起こり、コズミックステイツが強制解除されてしまう……て、うーん……。
◆第36話「本・気・伝・歌」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:長谷川圭一)
「ジーンに会いに来た。ジーンとダチになる為にな!」 (如月弦太朗)
「コズミックは……絆の力」
この流れだと、コズミックスイッチの発動条件は、弦太朗(フォーゼ)に対する仮面ライダー部6人分の絆エネルギー(流星は含まれない)、という事になってしまうのですが、それでいいのか。弦太朗が話を大きくしようとしているのに物語が小さくまとめてしまう、という今作の悪癖がまた出てしまった気がします。
今作において重要な部分は、弦太朗が出会う人々全てとダチになろうとしている事であり、だからこそ
「如月、君のやってきた事は正しかったんだ!」
が活きてくるわけで、コズミック発動に際して“弦太朗が繋いできた絆の象徴”としての仮面ライダー部、というのはわかりますが、実際にコズミックスイッチに不具合が出てしまうとまた話が変わってきてしまいます。理屈をつけるなら、ラビットハッチに一定の時間以上滞在した人間が宇宙パワーによりマーキングされているとも考えられますが、それならそれで、コズミック発動回の話の組み立て――現場に居合わせたのは賢吾1人で、残り5人もその時特別弦太朗の事を考えているというわけでもなかった――に改めて疑問が生じてしまいます(^^;
仮面ライダー部から脱退宣言をしたジェイクはジーンの正体だと名乗り出ると、ジーン&ゴッドのメロディを全高に放送し、それを聞いた生徒達は熱に浮かされたように狂奔する。一方、ヤギの音楽がスイッチと共鳴する事を知ったレオは、その共鳴作用を利用して失われた筈のコアスイッチの探索を進言し、理事長はヤギに超新星を投入。レオにはシベリア送りになった面々の12使徒スイッチを渡す。
「歌星が使って消滅したと思っていたが……コアスイッチか」
とここで、終盤のキーになると思われるアイテムの存在が浮上。
レオは放送を妨害しようとするメテオを相手に、他の12使徒スイッチを使って変身できる特異体質を披露するが……そもそもレオの時点で圧倒的に強いので、別の12使徒に変身する必要性が感じられないのが困った所(^^; この能力に関しては何やら今後の展開の為に必要な布石なのかもしれませんが、既にリタイアしているヒツジ・カニ・サソリの戦闘を見ても大して嬉しくなかったりと、現時点ではかなり微妙な展開。急に口数が増えた事も合わせて、重厚だったレオの存在感がむしろ軽くなってしまいました。
そして、本格的にただの玩具扱いでメテオ独楽を弾き返されたメテオストームの存在感は、そろそろヘリウム並に軽くなっていた。
予告された大規模ライブの当日、メテオはまたもレオに足止めを受けるが、ステージ会場に飛び込んだ弦太朗が、会場から罵声を浴びながらもギターを披露。
「俺はジーンの原点を探しに行った!」
学園を流星と大学生組に任せた弦太朗は、今は漁師をやっているジェイク父と会い、頼み込んでギターを教えて貰っていたのだった。
「歌えジェイク! おまえが夢見た、本当のジーンの歌を!」
懐かしいメロディをバックに、ヤギの宇宙パワー無しで会場の笑い物になりながらも本当の歌を取り戻すジェイク。
「やっと会えたなジーン。俺とダチになってくれ」
弦太朗はジーン(ジェイク)と友情タッチを交わし、その瞬間に解除される聴衆達の洗脳。
弦太朗が虚構の存在であるジーンと真っ直ぐに向き合う事で、それによって顕在化したジーンにジェイクも向き合わざるを得なくなり、本当ジーン(夢)と誘惑に負けたジェイク(夢)が再合一を果たす事でジェイクの自己と仮面ライダー部の絆が取り戻される、というのは友情タッチの物語的意味づけが鮮やかに収まり、コズミックスイッチ周りの設定に疑問がある以外は、まとまりの綺麗な好エピソード。
ヤギはざっくりコズミック宇宙斬りされ、今回も本体とスイッチはバルゴが回収。……これ、バルゴが割と暇かつ生真面目な人だから助かっていますが(無論、万が一のない証言封じの目的があるのでしょうが)、中身を知った上での仕事としては、やはり弦太朗が雑すぎでは。
理事長が満足する仕事をしたヤギは、ダークネビュラ送りにされず記憶を消されて一般学生へと戻り、理事長は、コアスイッチの波動を確かに感じ取っていた。それは、学園の誰かの手の中に……?
なお、ヘリウムのように軽くなったメテオストームは、一点集中攻撃で文字通りにレオの足下をすくって撤退させる事に成功していたが、正直こちらは、メテオとレオの扱いをまとめて軽くしてしまった感(^^;
最後に、自分1人だけのラジオ最終回というポエムを奏でていたジェイクの本名が、JK=神宮海蔵と明かされ、次回へつづく。
海蔵は、「カイゾーグ」+「(Xとゆかりの深い)海」という事かと思われますが、同時に、ジェイクが本名を名乗らない理由にそれとなく納得できたのは秀逸(笑) で、相棒は、ゴート/五藤/ゴッド/GOD、という事か。
次回――みんな、宇宙飛行士になりたいかーーー?!
◆第37話「星・徒・選・抜」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
「まったく、生徒に好かれない校長先生だな」 (立神吼)
弦太朗がロケットの前で知り合った女生徒、エリーヌ須田は宇宙飛行士を目指す転校生だが、同じ夢を持ちながらふざけているようにしか見えないユウキと激しく反目。折しも天高の恒例行事、合格者は特別奨学生となる宇宙飛行士選抜試験がスタートし、筆記テストを突破して一次選考に進んだ弦太朗、ユウキ、流星、賢吾、友子は、エリーヌと同じチームに。試験中、いつもの目眩で賢吾が倒れた時、突然現れた水瓶座のゾディアーツが賢吾を治療し、弦太朗はその正体がエリーヌだと知る……。
「ゾディアーツは人間が宇宙で生きる為の体だから!」
理事長と旧知の仲というエリーヌが騙されているだけかもしれませんが、思わせぶりな台詞が一つ。
宇宙へ行けなかった宇宙飛行士である父の為にも、どうしても宇宙飛行士になりたい、というエリーヌの真っ直ぐな想いを知った弦太朗は、エリーヌが宇宙飛行士の資格なしと断定するユウキが最後まで勝ち残ったらゾディアーツスイッチを捨てて欲しいと約束するが、二次試験においてユウキが故意に自分の足を引っ張ったと思い込んだエリーヌは激昂。それを止めようとするフォーゼと再び戦う事に。
ハーフ?設定で日本語がやや不自由なエリーヌ(それが正体判明のきっかけになる)は、演技なのか役者さんの素なのか、興奮して叫ぶと台詞がわちゃくちゃになって何言っているのかさっぱりわからないのですが、試験中、冷静と評していた試験管の見る目が節穴な事だけはわかります。試験官が目にしている限りでも明らかに冷静からはほど遠いのですが、今回次回と、そういった細かい部分が凄く雑(^^;
後、ユウキがテンション高すぎて、今作序盤を思い起こさせる面倒くささ。
選抜試験の緊張状態の中で12使徒の資格者を観察する為に一枚噛んでいたリブラと、一次試験で不合格になっていたメテオが戦闘に加わり、大量に出現する忍者軍団。メテオの「ちょっと火を貸してくれ!」という台詞は格好良かったのですが、そこから放ったファイアー旋風脚で忍者軍団を一掃…………できず、軽い、メテオストームの扱いが、非常に軽い……。
結局、コズミックとメテオストームの同時攻撃で忍者を改めて一掃し、巻き込まれてダメージを負うアクエリアスだが無敵の治癒能力で復活。果たして怒りのアクエリアスを弦太朗は止める事は出来るのか……?! で続く。
◆第38話「勝・者・決・定」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸)
「俺は友情に関しては超甘党だ」 (如月弦太朗)
二次試験の結果が発表され、選抜試験の最終候補者は、エリーヌ、賢吾、ユウキ、杉浦(生徒会副会長)の4名に決定。怒れるエリーヌを説得する為に弦太朗は理事長、そして審査委員長に話を聞き、ユウキが認められた理由が「宇宙飛行士としての覚悟の強さ」だと知る。二次試験においてユウキがエリーヌの足を引っ張ったように見えたのは実は、故意にトラブルを起こすようにという、審査員の仕込みによる指示だったのだ。
既に脱落している弦太朗相手とはいえ、まだ試験中なのに二次試験の仕込みをペラペラ喋ってしまう審査委員長が非常に雑。
そんな「覚悟」を評価されたユウキが最終試験のトレッキングで、吊り橋を嫌がって逃げ出す素振りを見せるしつこいギャグが、凄く雑。
エリーヌは明らかに場の和を乱しまくるタイプで理事長と校長の手回しがなければ最終候補に残れなかったのが歴然としており、一体全体どういう基準でリーダーシップがあると評価されているのか、基盤から雑(審査員全員が理事長サイドの人間と考えれば筋は通りますが)。
一方で、割とリアルで使い物にならないユウキとコンビを組まされながら、文句一つ言わずにユウキを引っ張り、励まし、水瓶座に闇討ちされたユウキが負傷した際には懸命に探し回る杉浦が、とてつもなくデキる人。
前回ノーマークでしたが、完全に今回のオアシスです。
弦太朗から二次試験の真実を聞いたエリーヌは水瓶座の力でユウキを治療し、全く与り知らぬ所で試験を台無しにされかけていた杉浦とも合流した4人は仲良く合格。エリーヌとユウキは友情を結ぶが、エリーヌは12使徒スイッチを捨てるという弦太朗との約束を反故にする。
「ホロスコープスのボスは私の大好きな人。その人を裏切れない。これ、私のプライド。覚悟だよ」
互いの譲れないものの為にフォーゼとアクエリアスは敢えて激突し、ロケット剣にクロースイッチをはめたコズミックフォーゼは水瓶の両肩にある回復装置を同時破壊する事で、特殊能力を奪ってからアクエリアスを撃破。
「ありがとう……弦太朗」
「馬鹿野郎……」
この戦闘、対峙から決着までやたらドラマチックに描かれているのですが、そもそも、これまで一切の逡巡も躊躇もなく(12使徒)ゾディアーツをぶった切ってきた弦太朗が、“12使徒を倒すとどうなると認識しているのか”がさっぱりわからない為、何をそこまで悲痛になっているのか、弦太朗の感情に全く乗れませんでした。
アリエス山田が意識不明になっているので、それなりのリスクを覚悟しているという事かもしれませんが、そこに焦点を合わせてしまうと、その後リブラとカプリコーンを何の迷いもなく宇宙斬りしているという大問題が噴出。
結局ここ、弦太朗がエリーヌの心情を知っているからという従来作品における“いい怪人”の文法で物語を処理してしまっているのですが、今作が「ダチ」という概念を持ち込む事によって従来作品と違う倫理観で展開しようとしていた事を思うと、それはやってはいけない処理だった筈で、ここまででも十分にブレてはいたのですが、最終クール前にトドメを刺す形になってしまいました。
水瓶は今日も仕事熱心なバルゴに回収され、かき消えたエリーヌの姿にフォーゼが「俺がやっちまったぁぁぁ」みたいなポーズなのですが、弦太朗は本当にどういう認識で戦っているのか。
ラスト、タウラスの候補者が見つかった事で上機嫌な理事長に、記憶を消されただけで放流されたエリーヌとロケットの前で再会し、
(覚えてねぇのか……)
(記憶を、消されちゃったんだね)
という反応から、ヤギの件を踏まえて記憶を消される可能性を認識していたという事はわかり、結んだ絆を自分の手で断ち切る苦しさがあった、というのはここでようやく頷けるのですが、それを活かす為には、この点は水瓶との戦闘前に強調しておく必要があったと思います。どちらにせよ、これまでの12使徒に対する躊躇無い宇宙斬りは弁解不能なので、根本的にここに焦点を合わせて話を作ってはいけなかったと思うのですが。
またこのシーンもやたら苦い感じで描写されるのですが、エリーヌとはすぐにダチになるし、本人の「宇宙飛行士になる」という夢も全く消えていないしで、逆に不幸中の幸いもいい所であり、話の流れが全く噛み合っておらず、石田×三条で、どうしてここまで頓珍漢な事になってしまったのか。
(今度こそ私の忠実な手駒になってくれよ……タウラス、杉浦雄太)
一方、杉浦くんが、ポイント稼ぎすぎて退場を許されなかったーーーーー。そしてこれまで、理事長に従っている理由が特に描かれていなかった校長に、少々思わせぶりな台詞。
そんな軽石の心中を知ってか知らずか、理事長は、揃いつつある星団を見つめる――。
「残るは2名。ジェミニとピスケス」