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『ビーファイターカブト』感想1

◆第1話「2代目は高校戦士」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
東映側プロデューサーが、『特警ウインスペクター』以降6作品に渡って担当していた堀長文から、前作にも参加していた日笠淳に一本化。関係者いうところの“堀学校”が終わりを迎え、《メタルヒーロー》シリーズも、今作を持って一つの節目を迎える事に。
物語の舞台は、ジャマールの侵攻を退けた前作から5年後――アースアカデミアは発展継承されてコスモアカデミアと名前を変え、見るからに規模の大きくなった日本支部ビートルベース職員の、青いつなぎの制服が、凄く超力基地に見せるのは気のせいでしょーか。裏で三浦が糸を引いていると考えると、急速な組織拡大にも納得がいくのですが。
真相はさておき、ニューヨーク本部の開発主任となっていた甲斐拓也は、未知の侵略者への対抗策として、老師グルの協力を得て新たなビーファイター計画――ネオインセクトアーマーを完成させていた。
5年の歳月の表現として、拓也はオールバック+眼鏡で登場。向井博士が研究を進めていた昆虫魂抜きの発展型プロトアーマーではなく、引き続き昆虫魂にずぶずぶのインセクトアーマーが次世代型アーマーとして採用された影には、凄絶な政治的暗闘があったに違いありません。
ああ! 向井博士の運転する車が蛾の群れに囲まれて交差点に突っ込んだーいったいなにがあったんだー(棒)
半身をサイボーグ化し復讐に燃える向井博士がムカイダーJ9部隊(リーダーは大作)を率いてネオインセクトアーマーと戦うとかなったら熱いなぁ(おぃ)
そんな折、深海で発見された巨大な何物かが浮上、そして突如、ムカデ状のメカ怪物が市街地を蹂躙する大破壊が巻き起こされる!
「我が子よ……メルザードの子らよ、地球は我ら2億年の眠りから醒めた、メルザード一族のものだ」
深海から浮上した巨大生物要塞メルザードスに君臨する女帝、その名をマザーメルザード。
「抹殺せよ! 地上に生きる全ての生命を!」
それこそが、地球の生命に対する新たな敵の、出現であった――!
箱物系のマザーメルザードは、デザインや色彩からすると、女王アリのイメージか。石炭みたいなものを取り込んだ女帝が出産するという形で怪人エレバンモスが誕生するのですが、幹部はどちらかというと怪奇寄りのデザインなのに、怪人の目がつぶら(笑)
また、「地上に生きる全ての生命を抹殺せよ!」という女帝が、滅びた種を怪物として復活させる、というのが組織コンセプトとしてもう一つしっくり来ず。この辺りは次回以降で説明されるのかもしれませんが、何となくちぐはぐ。
ちぐはぐといえば、前作の敵が異次元からの侵略者で、それを意識して次世代アーマーを開発していたら、敵は地球の中に居たというのも、何となく噛み合っていません(^^; ……というか、メルザード一族は5年前に、あわやガオームホールに飲み込まれる所だったのか(笑) まあ、その影響で封印が〜とか繋げてくるのかもですが。
コスモアカデミアでは、新たなビーファイターとして、環境捜査員の橘健吾、電脳工学研究員の鮎川蘭が選抜される。最後の1人が見つからないまま街へ向かった健吾と蘭は、そこで、ムカデメカを《挑発》して市街地から引き離すスポーツ万能の高校生・鳥羽甲平を目撃。そして学校に現れたマンモス怪人に立ち向かう甲平の姿を、延々と傍観。
甲平を目立たせる都合はわかるのですが、2人とも、何をしに来たのか。
「動物は自由に野を跳ね……走り回る。昆虫は、空を飛び、花は、美しい姿で……人間に、安らかな心を与える」
「何もかも一緒に踏みつぶしてやる!」
「自然と人間が調和している地球を、破壊する事は許さん!」
マンモス怪人に立ち向かう甲平の特攻精神に昆虫魂が反応し、変身アイテム・コマンドボイサーが甲平の元に飛来。
「なんだこれ?」
「まさか、あいつが、あの高校生が!」
「嘘? あたし達の同志?」
ずっと傍観していた健吾と蘭、甲平が同志と確認されたので、ようやく助ける(^^;
健吾と蘭の動きも酷いのですが、甲平の姿に対するアースアカデミアのリアクションを挟んでシーン切り替わったら、学校から全く別の場所に移動してしまっていたのが大失敗。戦闘の都合による場所移動というのは頻繁にありますし個人的にはほぼ気にしないタチですが、甲平がマンモス怪人の凍結ガスで妹ゆいが凍らされてしまった怒りで我武者羅に立ち向かっている、という重要な感情の流れ――学校という場で戦っている事に意味がある――が、プツンと切断されてしまいました。
とにかく全体的にすっごく雑で、東條監督のパイロット版としてはショックなレベル。
3人は変身アイテム・コマンドボイサーにカードをインプットして、超重甲!
ビーファイタークワガー(黒)・ビーファイターテントウ(紫)・ビーファイターカブト(金)
て、凄い配色。
前作がボディビルダーを彷彿させたのに対して、今回は甲冑を思わせるデザインで、「カブト」という名称もそこからでしょうか。怪人軍団を蹴散らしたBFカブトが前作には無かったバイク型マシンを召喚し、それぞれ槍系の武器を構える、というのも騎馬武者のイメージを感じます。
長物を手にマンモス怪人に突っ込んでいって、すれ違いざまに一閃×2、最後に金が正面突撃で撃破、という必殺攻撃は変化球で格好良かったです。……撮影が面倒そうなので、早晩なくなりそうな来もしますが(^^;
戦い終わって妹の無事も確認し、部活が忙しいし受験もあるしとヒーロー活動に及び腰な甲平に、
「地球の平和は任せた。頼むぞ!」
と物陰から押しつける気満々の拓也(笑)
まあ、昆虫魂に選ばれたから、仕方ないですね……。
「遂に……遂に誕生した。若き戦士達。邪悪なメルザードの侵略から地球を守れ。地球に生きる全ての命を守れ。ビーファイタークワガー、ビーファイターテントウ、ビーファイターカブト
そして、強引にまとめるコスモアカデミアの小山内博士。新生ビーファイターが3人並んで波止場を歩くというお約束のシーンまで入ってしまっているのですが、博士の妄想なのか、反論など無かったかのように甲平が取り込まれてしまったのかは不明。次回果たして、この要素は引っ張るのかどうなのか。
雑な部分が目立ち、正直あまり面白くない第1話でしたが、今後に期待する要素としては、敵の指揮系統が、恐竜長男+カマキリ女、魚次男+アンモナイト爺、という2派閥で対立している様子な所。恐竜兄貴からは絶妙にへたれ臭が漂っているので、ただの乱暴者ではなく、残念王子路線に進んでくれるといいなぁ……(笑)
あと、今回ラストを締めた小山内博士が実質的にナレーション兼任なのか予告を担当しているのですが、劇中でまだ一面識もない女子高生(甲平の妹・ゆい)にデレデレ、みたいな調子の予告が、正直、気持ち悪い(^^; 近年はとんと見ないノリですが、96年だとまだ許されていたのか。


◆第2話「三葉虫は放課後誘う」◆ (監督:東條昭平 脚本:宮下隼一)
地上攻略に功績が大きい方を後継者、劣った方は食料にする、と兄弟に告げ、派閥争いに油を注ぐマザーメルザード。しかし怪人はマザーに強制的に与えられるようなので、結構、当たり外れが大きいような(笑)
学校でビーファイターのマニュアルに目を通す甲平は、帰ってきたテストが38点で、スポーツ万能だけど成績はあまり良くない様子(勉強どころではなかった発言があるので、普段はもう少しマシ――少なくとも、勉強はしている、と思われますが)。前回ラストの抵抗むなしく、権力の横暴に負けてコスモアカデミアに組み込まれてしまった甲平は、授業中に何の配慮もない呼び出しを受け、妹(両親が仕事でアメリカに居て2人暮らしの為に何かと兄の面倒を見ている設定)に後のフォローを頼んだ事で口論に。
「何よその言い方! 勝手に正義の味方なんかになっちゃって!」
「勝手じゃねえ! 選ばれちまったんだ。仕方ねぇだろ」
断ると、毎晩窓ガラスに昆虫の群れがガンガン体当たりしてくるので、仕方ないですね。
にしても、高校生らしさを出したいという意図だったのかもしれませんが、一週間経ったら完全に割り切っているのなら、前回ラストの甲平の反駁は特にいらなかったような。むしろ一体全体、前回と今回の間にどんな 脅迫 説得が行われたのか、コスモアカデミアと昆虫界の闇だけが深まります。
昆虫魂に選ばれたからには、コスモの為に命を捧げよ!


 「迷うな。俺達の命は、地球上全ての命を守る為にこそある。たとえ誰かが倒れても、最後の一人まで、戦って、戦って、戦い抜く。それがビーファイターだ!」
(甲斐拓也)
開発者、こういう思想に骨の髄まで染まっているので。
かくして全体主義の英雄候補として世界を守る生け贄に選ばれた甲平はコスモアカデミアに出勤し、連続女子高生行方不明事件について聞かされるが、
「たーいへんだスケジュール調整。さっそくマネージャーに」
どうして蘭は、巻き込んだ民間人をいきなり煽っているのか。
脚本上では、場を和ませる軽口という意図だったのかもしれませんが、女優さんの演技の問題もあって、割と普通に腹が立ちます。
街での聞き込みから新任教師が怪しいと目星をつけた3人は甲平の学校に向かい、ゆいやその友人が謎の繭に囚われた事を知る。地下の隠し部屋を見つけるも蘭がさっそく触手に捕まってぎゃーぎゃーわめき……この女、個人的に、某先輩女性刑事(序盤)を思い出して、物凄くイラッとするんですが。
BFは蘭を救出して超重甲し、戦闘員ポジションが恐竜派と魚派で顔パターンが数バリエーションある、というのは凝っていて面白い所。
三葉虫はさらい集めた女子高生達の生命エネルギーで巨大化し、さんざん生命力を吸い取られた女子高生達が自力で繭からよろよろ出てきた所を助ける、という第2話にしてヒーローとして異常に格好のつかないビーファイター(^^;
ただ巨大三葉虫が市街地を派手に破壊し、逃げ惑う市民を戦闘員ポジションが襲って虐殺する、という二段構えはかなりエグく、よくある映像にワンポイントを加えて面白くしてきました。
基地の人工知能が巨大三葉虫の弱点を見つけ、カブトの攻撃により巨大化エネルギーを消し飛ばして元のサイズに戻った所に、ランスアタック。巨大な触手に食らいついて攻撃を仕掛けるカブト、の画はなかなかの迫力なのですが、ランスアタック炸裂までの間、黒と紫が一切戦闘に関わらないのは、どうしたものか(^^; 弱った三葉虫へトドメを刺す一斉ビーム攻撃の所だけ出てきて、やる気が全く感じられません。
要塞へ戻った魚とアンモナイトはマザーのお仕置きを受け、前回に続いて、マザー短気。
「我が子らよ……メルザードが地上を制し、覇者となるその日まで。憎め、競え!」
両派閥の戦闘員達が殴り合いを始め、凄く駄目そうな組織なのですが、構成員の小競り合いが頻繁に煽られるというのは、ネロス帝国(『超人機メタルダー』)オマージュ?
三葉虫を撃破した事で女子高生達は生命エネルギーを取り戻し、兄のヒーロー活動を応援しようと思い直す妹。
(そうだよね。選ばれちゃったんだよね、お兄ちゃん。ちょっぴり寂しいけど、OK。ゆいも頑張って、お兄ちゃんの、ビーファイターのマネージャーしてあげる)
受け入れないと、毎晩窓ガラスに(以下略)なので、仕方ないですね。
「ナイスファイト! その調子で、追試も頑張れよ」
女子高生にきゃーきゃー囲まれて戻ってきたカブトに、物凄い他人事エールを送る、ビーファイタークワガー。
「いくら名マネージャーでも、代わりに試験は受けられないもんね。頑張れ、お兄ちゃん」
甲平が爽やかに追試へ向かうので救われていますが、大人2人が高校生に配慮する気配が全く無くて、凄く最低な感じ。
コスモアカデミアも国際的な組織っぽいのに、学業関係の対応は本人に丸投げしており、何この腐った組織。
前作も立ち上がり手探り感が強かったですが、昆虫魂+科学の融合であるインセクトアーマーというポイントは存在していたのに対し、なまじ世界観を繋げて設定を踏襲してしまった為に変身システムにポイントを置けず、独自性とインパクトをどこで出すか探っている内に、これといった売りのないパイロット版になってしまった、という印象(^^;
敢えて言えば主人公が高校生という所なのでしょうが、現段階ではむしろ、話の足を引っ張ってしまっています。甲平に対する周囲の態度があまりに酷いのですが、社会人達の対応は改善されてくれるのか。集団ヒーロー物の1−2話で、主人公以外のメンバー(博士含む)に、ここまで好感持てないのって、なかなか無い気が。
思い返せば同じく完全続編であった『特救指令ソルブレイン』も立ち上がり散々でしたが、東映ヒーロー物の作り方と、完全続編というのがあまり相性が良くないのでは、と思ってしまう所。
次回、現在、好感度が−50点ぐらいの蘭話になるようなので、好感が持てるようになるといいなぁ……。