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『ビーファイターカブト』感想9

◆第13話「チェンジ!!爆走博士」◆ (監督:石田秀範 脚本:浅香晶)
博士回……というか、バイク回でした。
ロードビートルのプロトタイプである、自家製改造バイク・オサナイオーにまたがる中年ライダー・小山内博士は、行きつけのバイク屋の親子喧嘩を目撃し、荒れる息子を気に懸ける。プロレーサーを目指して気ばかり逸るバイク息子は、新型オイルの交換条件として、とあるトラックの足止めを依頼され二つ返事で引き受けるが、それはコスモアカデミアの開発した新型燃料を強奪しようという、デズルの策略であった!
防御バリア(飛んできた小石を木っ端微塵に粉砕)を張ったアカデミアの輸送トラックが、そのまま民間人のバイクに突っ込まないで本当に良かった(笑)
それをさせない為に民間人を巻き込む作戦だったと語られているので、どうやメルザード、以前にコスモアカデミアの輸送トラックを襲撃して、バリアに消し炭にされた事がある模様。
メルザードの狙いは、新型エネルギーを積んだトラックをコンビナート地帯に突入させる事。作戦を主導するカエル怪人は、息子を心配して現場に居合わせたバイク父を人質として助手席に乗せると、トラックを走らせる……これ、『特捜エクシードラフト』第1話(監督:三ツ村鐵治 脚本:宮下隼一)の意識的な翻案でしょうか?
ただの偶然かもしれませんが、車体をすっぽり覆うバリア搭載の車が大暴走、という状況は思い出してしまいます。
まあそのバリアは、クワガーがまさかの力技で発生装置を破壊してしまうのですが!
で、それならバリアを破った代わりにクワガーが脱落、という要素が終盤に活きるのかと思ったら全くそんな事は無く、通して諸々の要素が巧く繋がってくれないのがどうも残念(^^;
博士がバイク乗りの志とバイク父の本当の気持ちをバイク息子に伝えて、バイク息子が心を入れ替える、というのは外してないですし、博士は対メルザードで活躍、改心した息子も活躍、と要点を押さえ、変形するオサナイオーのギミックもネタとしては面白くないわけではないですが、それら全てがそこ単独で完結してしまっている為に、「ビーファイターの戦い」に巧く繋がらず、物語としてジャンプしてくれませんでした。
例えば、オサナイオーのギミックはギミックでいいとして、それはあくまでロードビートル活躍のバネになる要素だと思うのですが、オサナイオー凄い、で終わってしまう為に消化不良に。
根本的な所で、小山内博士を中心にして描くべきは、“ゲストキャラとの心の交流”ではなくビーファイター3人との関係性の掘り下げ”だったと思うのですが、そこから焦点がズレてしまっている為に、個々の要素はそれほど悪くないのに、それらが一つに繋がりきらないまま終わってしまうという形に。
……いやもしかしたら、スタッフ的には博士に問題を感じていなかったのかもしれませんが、BF3人の誰かの回ならこれでも問題は無いけれど(特別面白くもないけれど)、博士メイン回としては投げる所が違う気がする、というそんなエピソードでした(^^;
にしても、走行中のバイクから走行中のトラックに飛び移り、メルザード戦闘員を殴り倒す息子は、プロレーサーよりも、もっと向いた職業があるのではないか(笑)
新帝国ビートルは、志ある若人の参加を、待ってる!!


◆第14話「罠の街消された悲鳴」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子
ある穏やかな昼下がり、突然起きる、上空からの市民への無差別レーザー攻撃。ビーファイターはコウモリ怪人ザイレーンに一撃与えるも逃げられてしまい、倒れた市民を救助中、同じく市民に寄り添っていた女性が、1年前に教育実習でお世話になった遙先生だと気がつく甲平。だが、明るく溌剌として生徒達の人気者だった筈の遙はひどく暗い表情で、甲平に声を掛けられるなり走って逃げ出してしまう。
謎の閃光は人間だけを識別して同時多発的に攻撃していた事が判明し、その中で何故か唯一無事だった遙の元を訪れた甲平は、遙が交通事故で声を失い、教師の夢を絶たれていた事を知る……。
“旧知の人物が不審な行動”“1人だけ怪人に襲われない人物”という、大概、何か特殊なマジックアイテム的なものを持っていました、とかあまり面白くなりそうにない導入から(ゆえに予告時点では全く期待していませんでした)、態度がすっかり変わっていたのは声を失った為だった、という形で、“狙われない理由”→“性格の変化”ではなく、“性格の変化した原因”→“たまたま狙われない理由であった”とキャラクター本位で物語を転がしてきたのが、まず巧妙。
そしてそれがファンタジーな要素ではなく、現実に誰しもなりうる範疇の出来事というのが、危うい重さではあるものの、説得力を増していて、また巧い。
そんな遙に立ち直ってほしい甲平が、自分だけではなく、同じく遙先生の授業を受けた男友達3人を連れてきて励まそうとするのも、若さゆえの前のめりなりに、1人の力で何でも解決できると思っていない姿が良かったです。
「先生! あの試合で俺がホームラン打った時、先生は間違えてスクイズのサインを出してたんだぜ。でも俺にはわかったんだよ! サインは間違ってたけど、先生が打てって言ってるのが。わかったんだよ、言葉じゃなくても」
かつて皆で盛り上がった球技大会の思い出から、言葉は失っても気持ちを伝えられる方法はある筈、それが人間の心だから、諦めないでほしい、と甲平は声を振り絞り、涙をこぼす遙。
だがその時、街全体が黒雲に襲われ、再びレーザー攻撃が人々を襲う。前作−今作と、市街地破壊シーンが派手なシリーズですが、今回も市民がばったばったと倒れていく姿が克明に描かれて良いインパクトになっています。
遙が攻撃を受けなかった事と、追加調査から、街の上空を覆うのは雲ではなく小さなコウモリの群れであり、それが人間の声に反応して攻撃していると判明。
「超重甲のキーは声だ。その声が出せないとなれば……」
頼みのビーファイターは変身不能なまま、暗雲に包まれ、無言に閉ざされる街。街……という曖昧な表現ですが、ビットが「声を出さないように」という指示を防災スピーカーで発令する・コスモアカデミアの規模・ライジャの「次にコウモリが活動する時が人類の絶滅タイムだ!」発言など合わせると、少なく見積もっても東京全域レベルぐらいで捉えればいいのか。
甲平と先生達もひっそりと物陰に隠れ、ここで楽する為に存在を消さずに、友達トリオを残したのが素晴らしい。
「人間どもめ。いつまで悲鳴を我慢できるかな」
親コウモリ怪人は市街地を直接攻撃し、ビルが崩壊して逃げ惑う人々が悲鳴をあげると上空から子コウモリによるレーザー爆撃、という2段構えでエグい……!
最終回みたいな作戦だ!(笑)
親コウモリに見つかった甲平達はじわじわと追い詰められてしまうが、その時、教え子達の危機に勇気を出して立ち上がった遙が、かつて球技大会で使ったブロックサインを4人へと送る。それをしっかり覚えていた男子達(男の子のバカっぽさと、遙先生との信頼関係が過度の説明なしで表現されていて、またお見事)は行動を開始し、階段で遅れる太めと、それを引っ張る他2人、と友人トリオの使い方が実においしい(笑)
3人を追うコウモリが階段の上に立った所で、その足下に回り込んだ甲平が叫び声をあげ、それに反応したレーザーを誤爆させる、という鮮やかな連携が炸裂。親コウモリが深傷を負うと子コウモリの群れは消え、明るさを取り戻した街で、同じくかつての朗らかさを取り戻す遙先生。
弱ったコウモリに対して、ネオビートマシンタイムの後に、BF3連続必殺技でフィニッシュ。
今回は、コウモリ怪人を援護する、という理由はつけましたが、ネオビートマシンは出撃ノルマが露骨すぎる上に毎度ほぼバンク映像な為に、どうにも盛り上がりません。前作では、ロボットではないメカだからこそ映像に凝る、というのが良い方向に転がっていたのですが、今作では、ロボットではないメカなので30秒格闘戦というわけにいかない、というのが非常に悪い形で足を引っ張ってしまっています。
後日、もう一度、夢へ向かう心を取り戻した遙と、キャッチボールする甲平達。……先生、投げ方はそうでもないのに、屈んでグローブ構える姿だけやたら本格的なのは何故(笑)
(ありがとう。私はもう一度、別の形で教師の道を探す事にします。思いを伝えるのは、言葉だけでないとわかったから)
高校生戦士である甲平の要素をうまく活かし、青春の一幕と怪人退治を見事に結合。声を失った先生、というゲストキャラも、石田監督の演出センスと合っていて良かったです。また、メルザード側の作戦が良く出来ており、悪の作戦の出来不出来で話の引き締まり方が大きく変わる、というのがわかりやすく出た好エピソードでした。