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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第2話

◆Space.2「いくぜっ!怪盗BN団」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)
 銀河のほぼ全域を支配する宇宙幕府は、将軍を頂点に、88星系をそれぞれ取り仕切る家老と、その下で各惑星を統治する悪代官がいる、という組織構造がラプターから説明。……まあ十中八九、将軍の上に真のラスボスたる大御所が居そうですが。
 倒幕の為には、何はなくともキュータマに選ばれた救世主を探さなくてはいけないというスパーダの言葉に、ジニス様みたいなノリでダーツを投げて適当に行き先を決めたラッキーは、一人でオリオン号を飛び出していってしまう。
 「惑星ジガマ……?」
 「よっしゃラッキー! 近いぞ。俺、連れてくる!」
 ええええええと……ラッキーの「よっしゃラッキー!」は、賭け金が自分の命だけなら多少暴走しても自己責任の範疇だと思いますが、仲間を巻き込んで「運試しだ!」はどう考えてもアウトでは。
 「僕たちぃーは、いい泥棒! 盗む相手はジャークマターだけよ」
 「へぇ〜、面白いな! じゃあ、仲間になってやるよ!」
 挙げ句、惑星で出会った2人組の背景をろくに確認もせずに協力を即断し、
 「仲間とはなんだ?」
 「自分のやりたい事は自分で決める。それを支え合うのが、仲間ってもんだ」
 とか言われても、今回のラッキーがしている事って、「思い込みを根拠に一人で出撃して仲間を巻き込む」「巻き込んだ仲間を放置して泥棒と同行」「忍び込んだ先で押したいからスイッチを押して仲間(金銀)をピンチに巻き込む」という自分勝手のオンパレードでしかなく、それは支え合っているのではなく仲間の存在をトイレットペーパー扱いしているだけでは。
 「(この程度の事では困らない)仲間の強さを信じている」という言い抜けも出来ますが、それにしても周囲に1ミリの配慮もなく、致命的に集団行動に向かない事が明確になったラッキー「仲間とは何か」を語るのが物凄く空疎な事に。
 キュウレンジャーの方はキュウレンジャーの方で、ラッキーと兄弟盃モードのもふもふヤクザ(新参者)が何故か主導権を握る事で、ラッキーの暴走をなぁなぁで済ませてしまい、初期メンバーの黄緑黒が案山子状態。
 変に「仲間」語りとかしなければ、これぐらいの事では動じない超ポジティブ反乱軍という事で構わないのですが、エピソードのテーマとラッキーの言行がまるで噛み合っていないので気になってしまいます。
 「俺はバランスを信じる。俺の信じるバランスを信じろ」
 そして、力強く口にするラッキーが付き合いも浅ければ人格もよくわかっていないバランスを信じる根拠は、幕府軍を爆破していた事を除くと、本人が言っている通りに「(この二人と出会った)俺の運を信じろ」であり、つまり今回、ラッキーが何を信じているかというと、それは「仲間」ではなくて「自分の強運」なのですが、そんなラッキーにナーガがころっと引っかかってしまう為、ナーガとバランスの相棒関係まで浅い感じに。
 実際バランスとナーガの付き合いも出会って一週間ぐらいの可能性はありますが、物語として二人の相棒関係が浅く見えてしまう事で、バランスがナーガの為に翻意するという場面も軽くなってしまい、それぞれキャラクターの心の動き――最終的にはナーガが目覚める感情――が劇的にならないという、負のドミノ倒し。
 そして劇的な積み上げが生じていないので、
 「僕は宇宙一のお宝、あなたは感情。どちらもラッキーと仲間になった方が、手に入る気がしてね」
 と意気投合からナーガが怒りの感情を露わにする事で宝石の中からキュータマが飛び出してくる、という場面がクライマックスとして機能不全を起こしてしまい、本来なら物語のダイナミズムが乗っかる筈だったキュータマ出現が非常に適当に見えてしまうという……ここまで鮮やかな負のドミノ倒しは久々に見る気がして、ある意味で、会心の出来(^^;
 前回の、赤が青を立ち直らせるのは、忙しいなりに芯がハッキリしていた事と、二人の関係性の中で解決していたので成立したのですが、今回は赤が銀の心を変えるだけではなく、元々の銀と金の関係があり、更にそこから金の変心に繋がる、と二つの要素が追加されるにも関わらず、似たような勢いでやってしまった為に、非常に荒っぽくなってしまいました。
 ラッキーを差し出した事でバランスをあっさり信用して少ない護衛で宝物庫に案内してしまうとか、ナーガが「ラッキーは俺の仲間だ!」と反抗したにも関わらずバランスはそのまま素通しとか、代官の対応もあまりに粗雑。
 「感情」を求めるキャラクターを中心に描いているにも関わらず、周囲のキャラクターの心理の描き方が乱暴という、どうにもお粗末な展開。
 ……にしてもキュータマの反応を見る限り、これ、某昆虫魂ばりに銀河のあちこちに要資格者が転がっていて、「とりあえず君に決めた」という感じで選抜されていく、代替え可能な消耗品なのではないか、究極の救世主。
 或いは最終的に、救世主は9人どころか88人居た! みたいになりそうな気もしてきましたが。
 矢バーミリオン! 六分儀アイボリー! 南の三角ビリジアン! 顕微鏡ナイルブルー! 画架エクルベージュ!
 救世主に関する真実は今後の物語に委ねるとして、トリックスター・天秤ゴールドと、サイレントスター・蛇遣いシルバーが誕生。3人だけどオールスタークラッシュで撃破した代官は身につけた印籠の力で巨大化し、ロボット出撃。マシン→人型→腕、に3段変形する金銀メカがシンクロ攻撃からロボの両腕となり、キュウレンオー・トリックブレイクにより代官と幕府宇宙船を撃破するのであった。
 キュウレンオーはどうやら、担当ボイジャーにより○○ブレイクという複数の必殺技を使えるようで、という事は、フードマイブレイクがあるのか?!
 キラキラ☆スパーダアラモード。
 従来の戦隊シリーズとはかなり毛色が違う&宇宙の様々な種族らしさを出せそう、という事で期待していた金銀コンビは、水上アトラクション(ジェットデッキという物で、ベルトさんの奥様がこういったハイドロフライトスポーツを趣味にしているそうで、OPクレジットにも名前がありましたが、その辺りからの繋がりか)しながらの登場と、
 「探すは銀河の一等星! 神出鬼没の盗人家業、僕たち怪盗BN団!」
 と軽快な喋りと無表情でいきなり踊り始めるのは面白かったのですが、エピソードとしては残念な出来。
 金銀コンビがメインとはいっても、第2話にして「怪人を倒す」3人と、「家老に一方的に負ける」4人、という分け方も酷く、今作の不安要素の内の二つ(よっしゃラッキー!、メンバーの人数)が、いきなりの大爆発。
 家老も家老で戦闘力を見せつけたのは良かったのですが、前回将軍様から厳しい叱責を受けているにも関わらず、ちょっと戦ったら代官無視して以後話に出てこなくなるとか、話の都合が丸出しすぎて、全体的にとにかく雑な造りが目立ってしまいました。
 金銀コンビはキャラクターとしては引き続き期待しているので、面白く転がってほしいところ。バランスの声を務める小野友樹がかなり芸達者な人というイメージがあるので、得意技路線で安定させる役割の大塚明夫中井和哉に対して、どういう演技バランスになるのかも、ちょっと楽しみにしています。
 あと本編と別に少し気になっている事としては、OPでキュウレンジャーを人間とスーツ組をシャッフルして見せるのなら、スーツ組も名前と担当声優を紹介カットの所に出せばいいと思うのですが、出来ない理由でもあるのでしょうか。顔出し役者優先にしても、なんか変な違和感が(^^; まあこれは、数話も見ていると慣れるかもですが。主題歌自体はけっこう好きです。