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『宇宙戦隊キュウレンジャー』感想・第15話

◆Space.15「海の惑星ベラの救世主」◆ (監督:加藤弘之 脚本:毛利亘宏)
 不遇不遇と言ってきましたが、いざハミィ回が来てみると、台詞が長いほど気になる舌足らずな喋り方、「押しが強い」「子供の頃は引っ込み思案だった」という性格設定が強引に台詞で押し込まれて冷める、などなど重なり、割とハミィがどうでも良くなっている事に気付かされてしまう、そんなハミィ回でした(^^;
 ハミィの意外な一面が……!とか、実はこんな過去を持っていたハミィが閉ざされた少女の心を開く、とか、見せ方次第でもっと劇的になったと思うわけなのですけれども。
 ヒロイン枠としてはもう、ラプターか小太郎かスティンガー推しで良いのではないでしょうか?!
 宇宙冒険活劇としては、後半戦の鍵を握る亡国のお姫様とか出てきそうではありますし、アルゴ船からの流れで、王女メデイア的な位置づけのキャラクターがラッキーと恋に落ちる、とかもありそうですが。
 そんな今回の見所は、まるで前回凄く活躍したかのように編集された、ハミィの捏造前振り。
 羅針盤キュータマが再起動し、帆キュータマは帆座系、竜骨キュータマは竜骨座系、というそのままの場所にある事が判明。綺麗な海がある星で骨休めしたいというハミィの意見が通り、赤・緑・黄・桃・銀の5人が帆座系の惑星ベラへと向かうが、そこで待っていたのは宇宙観光ガイドの情報とは大違いの酷く汚れた海、そして村にけしかけた雑兵を蹴散らして海の救世主を詐称し、村人から貢ぎ物をせしめて私腹を肥やす、しょーもない悪代官であった。
 悪代官は正体を目撃した少女を生け贄に捧げようとさせ、助けに入ったラッキーとハミィは海を汚す侵入者扱いされて一時撤退。気の弱い少女に自分の言葉で村人達と向き合ってほしいと考えたハミィは、引っ込み思案で他者の輪に入れなかった過去の自分を語る……。
 自己主張ができずニンジャ村で孤独だったハミィは、ある日村に近づくジャークマターを目撃。意を決して師匠にそれを告げた事で「先手を打った私たちは、逃げる事ができた」……て、あれーーーーー?! 結局言葉に出来なかったせいで村は全滅、一人生き残ったハミィは重いトラウマを背負いながらも二度と同じ過ちを犯さない事を決意するのであった、が『キュウレンジャー』ルールなのでは(おぃ)
 いや、あっちこっちも一族郎党皆殺しだと背景被りすぎではあるのですが、しかしハミィだけ妙にマイルドというのもそれはそれで引っかかり、そもそも全然別の状況設定を考えた方が良かったのでは、とは思うところ。まあ少女を励ます為の語りなので、ハミィが優しい嘘をついたという可能性もまたありますが。
 ハミィは少女の説得に成功するが、一方、何故か村人に混じっていたナーガが何故か自分が生け贄になろうと進み出ていた。
 「俺が、生け贄になろう」
 つまり、女 装
 …………てあれ、しないの?!
 どうして?!
 混線する時空はさておき、ラッキーとハミィに連れられて村に戻った少女は、海の救世主の正体が悪代官である事を村人達に伝え、そのタイミングで桃と黄が仕掛けを暴露。
 海中を華麗に泳ぎ、ほぼ顔面で悪代官の臀部へ突っ込むという体を張った大技を披露するカジキイエローに、勇者を見た。
 そいつの名はスパーダ、おいしい料理の為なら、鬼にも修羅にもなれる男。
 悪代官が正体をさらした事で村人達も少女の言葉を信じ、戦いの中で炸裂するカメレオン忍法、そしてラッキー。
 「シシ忍法! よっしゃラッキーぃぃの、術!」
 ……毛利さん&加藤監督、そのセンスは、ほぼタカ兄ではないでしょうか(笑)
 キュウレンジャーは巨大化した悪代官を海底のモアイ基地ごと葬り去り、平和の戻る惑星ベラ。そして村の宝物であった帆キュータマを入手し、地球へ帰還するのであった。
 ・救世主に生け贄を求められると一瞬の躊躇もなく少女を生け贄に差し出そうとする閉鎖的な村社会の描写なのに、排斥される事なく受け入れられるナーガ
 ・ハミィのニンジャ村回想には同世代の子供達が描かれているのにベラの村には居ないので、いっけん重なり合っている“引っ込み思案の少女”という設定に生じているズレ
 ・現行の最重要アイテムである帆キュータマ入手の障害となるのが、99%ギャグ怪人
 と、総じて色々ちぐはぐ。
 怪人のUMAモチーフから、ネッシー頭の悪代官が未知の存在を演出して素朴な村人達を騙す、というアイデア自体はひねりも効いて悪くなかったと思うのですが、話の内容との相性が非常に良くなかったと思います。……全くの憶測ですが、当初は下山脚本で2話息抜き回を挟む筈が、急遽1話分詰めなくてはいけなくなり、下山さんの怪人アイデアをベースに毛利さんが大筋の進行する脚本を書く事になった、みたいな事情だと凄く腑に落ちるんですが(笑)
 その上で今回最大の問題は、唯々諾々と貢ぎ物を差し出し続けた挙げ句に年端も行かぬ少女を生け贄にしようとする村人達も、そんな村人達を前に一言も口にできない少女も、みんなまとめて「お前達に人間としての価値はねぇ!!」と断じて相手にしなさそうなラッキーが、不自然に大人しい事。
 第13話を経て、ラッキーにも、世界に立ち向かう牙を持たない人々の心情が多少は理解できるようになった、という事なのかもしれませんが……それならそれで、いつもの調子で「運試しだ!」と少女の背中を十字砲火に向けて蹴り飛ばそうとする(完全に善意)もかえって心を閉ざされ、それをハミィが別のアプローチでうまく解きほぐすのを見て、「そういうやり方もあるんだな」と気付くなどすれば、ラッキーの心理の変化も伝わるし、それぞれ人間関係も有機的に機能するのですが、そういった工夫は一切なし。
 ただただ、妙に大人しいラッキーの代わりをハミィが務めるという描き方になってしまった為に、ハミィだったからこそ説得できた、という印象も薄くなってしまい、ラッキーとハミィがまとめてマイナスに。
 或いは、海の救世主の偽装工作さえ暴露できれば解決だと考えるラッキー達に対し、少女の心を救って立ち上がれるようにしてあげたい、と過去の自分を重ねたハミィが主張するなどあればまた違ったのですが……個人の感情が物語の要求の中に大人しく収まっているばかりで、個性の描写に繋がる行動の差別化も弱く、冴えないエピソードでした。
 一方――地球に赴任した蠍座系家老がスコルピオである可能性が高い、という情報を得たスティンガーとチャンプは早くも奉行所に潜入し、そこで風雲サソリ仮面様と遭遇。
 「おまえ……スコルピオという男を知っているか?」
 「――ああ、知っている」
 激しくぶつかり合う両者の尾と尾、というのは兄弟の証明と衝突を象徴的に描いて格好いい絵。そして、尾の攻撃を牽制に用いて一瞬で間合いを詰めたサソリ仮面様は、至近距離でスティンガーを見つめる。
 「まさか……!」
 「俺だ。俺の声を忘れたか? スティンガー」
 「…………兄貴」
 地味に顔芸を得意とするスティンガーが頬をピクピクさせて、つづく!
 牛と蠍が別働隊、暗殺者が何故か家老に、という要素からもう少し情報を限定して錯綜させるのかと思いましたが、作風としてそういう方向にはせず、わかりやすい形で進行する模様。次回さっそく激突となるようで、まずはサソリ仮面様のアクションに期待。